◎ Carl Zeiss Jena (カールツァイス・イエナ) Tessar 80mm/f2.8 T《初期型》(exakta)
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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません
今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧東ドイツの
Carl Zeiss Jena製中望遠レンズ・・・・、
『Tessar 80mm/f2.8 T《初期型》(exakta)』です。
今回初めての扱いになりますが、調達して届いた個体はヘリコイドが完全固着しており距離環が全く回らない状態でした。バラす為に外す必要がある鏡胴のイモネジも、既にネジ山がほとんど潰れており外れません。おそらく前オーナーが自分で整備しようと試みたもののイモネジを潰してしまい解体できず、仕方なく隙間から「潤滑油」を注入して距離環を回すトルクを 軽くしようと試みたと推測できます。
よくあるパターンですが(笑)、注入した「潤滑油」が最悪でした。呉工業製「CRC5-56」の スプレーをプシュッとやってしまったのです(泣)
これはオールドレンズには絶対に処置してはイケナイ「禁じ手」です。まずたいていのオールドレンズがほぼ間違いなく過去メンテナンスされています。その際8割以上の確率で「白色系 グリース」を塗布しており、特に呉工業製「CRC5-56」の場合は化学反応により数ヶ月〜1年で粘性を帯びてしまい「ヘリコイドの固着」に至ります。
調達時にヘリコイドの固着を案内していた為、当初より予測できましたが「バラし始めた途端ひたすらに後悔」(笑)、もぉ〜気分が悪くて吐きそうになります(泣) それほど強烈な臭いに 変質しており、且つ問題なのは「アルミ合金材に浸透している」点です。つまり臭いが完全に除去できないワケですが、それ以上に「再び白色系グリースを塗布したらまた固着する」ワケで始末が悪いのです。
今回のオーバーホールでは基本的に当方は「黄褐色系グリース」しか使わないので問題になりませんが (化学反応しないから粘着化しない)、臭いの除去は相当大変です(泣)
潰れかけているイモネジを外すだけでも大変ですが、さらに固着しているヘリコイドを溶剤だけで回そうとすればネジ山の再利用に問題を残します。つまり奥の手を使わなければならず、臭い以前にそれだけで面倒くさい話です(笑)
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3群4枚のテッサー型光学系自体は1902年のクラシックレンズ時代 から存在しているので相当歴史が長いワケですが、6×6中判サイズの標準レンズ域で登場するのは戦前になり、1938年のIhagee Dresden製120mmフィルム6×6判「Exakta66」向けに用意されたCarl Zeiss Jena製Tessar 8cm/f3.5辺りからです (主力はSchneider-Kreuznach製Xenonシリーズ)。
さらに戦後の1953年には新たなマウント規格としてExakta66が登場し、今回扱うCarl Zeiss Jena製中望遠レンズ『Tessar 80mm/f2.8 T《初期型》(exakta66)』になります。
マウント規格が異なるので戦前と戦後モデルとでは互換性がありま せん。
135mm判も含めこの当時のテッサーモデルに対し「鷹の目テッサー」を謳う人が日本では 意外と多いですが「鷹ではなくて鷲」です(笑)
当時の旧東ドイツCarl Zeiss Jenaの広告を見ると「ZEISS-TESSAR Das Adlerauge Ihrer Kamera」とドイツ語で記載されており、そのままラテン語/英語に邦訳すれば「ZEISS-TESSAR The eagle eye of your camera」になり、ちゃんと「鷲の目 (eagle eye)」と表記されています。
さらに「鷲」を連想するアイキャッチまで用意して載せていたワケで、特に欧米では「権威や強さ」の象徴として君臨するのは「鷲」であり、高高度より地上の獲物を捕るその目の鋭さ 故に「鷲の目テッサー」の異名があるのだと受け取れます。
光学系は言わずと知れた3群4枚テッサー型ですが、右図は某有名処で 案内されている今回扱うモデルの構成図をトレースしました。
ところが実際にバラしてみると確かに3群4枚のテッサー型構成ながらも「各群の曲率/厚み/カタチ」全てが異なることが判明しました。
特に今回扱う個体はまさに「Exakta66マウント」の鏡胴を持つ転用品なので、その実装光学系の信憑性は高いと判定するべきですが、例に よって当方1人だけが主張している話なので「信憑性が無い」と認識頂くほうが無難です(笑)
右図は今回の個体をバラした際に光学系のガラスレンズを清掃した時、1枚ずつデジタルノギスで当方の手で計測したトレース図です。
少なくとも「外径サイズや厚み」はどう計測しようともごまかしようが無いと思うのですが、それ以前に当方に対する信用/信頼の問題が憑き纏うらしいので(笑)、仕方ありません (SNSでそのような評判らしい)。
一応ウソではない事の「証拠」として、光学系第2群の両凹レンズを 真横から見た時の写真を載せました。
某有名処の構成図とはちょっと違うように当方には見えます(笑)
また今回の個体をバラしたところ「鏡胴本体側にExakta66規格の マウントがある」ので、説明上「初期型」としています。
上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。
◉ 一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して円形ボケ/玉ボケへと変わっていく様をピックアップしています。焦点距離80mmにしては小さめな印象のシャボン玉ボケですが、ちゃんとエッジを明確にして表出させられるところがたいしたものです。
◉ 二段目
さらに背景ボケとして円形ボケを基本としつつも収差の影響を受けて変形していく背景ボケを集めてみました。おそらくシ〜ンによっては一部がグルグルボケのような感じに写ることもあると思います。
◉ 三段目
ピント面のアウトフォーカス部がトロトロにボケていく場合を左側2枚でピックアップしています。ピント面との境界が誇張感/違和感なく表現できて、且ついきなりトロトロボケしていくテッサーらしからぬボケ味です(笑) また階調が豊かなのでビミョ〜なグラデーション表現も違和感なく仕上げてしまい、特にコントラストの高いシ〜ンでもちゃんと階調表現できているポテンシャルの高さも合わせ持ちます。
◉ 四段目
たかだか3群4枚のテッサー型光学系でよくもここまでリアルな人物撮影をこなせるものだと偉く感心してしまいました。下手な細工をするよりも背景の溶ける様子が自由にコントロールできるので、おそらく撮っていてポートレートレンズ的な使い方が簡単にできているのではないでしょうか。素晴らしい素質を持っているオールドレンズです。
なお、どう言うワケか某有名処も含めてネット上では「最短撮影距離:90cm」の仕様になっていますが、距離環の刻印距離指標値を見ると「1m」です。一応念の為にオーバーホール後の実写確認時に最短撮影距離を実測しましたが、確かに「実測値:1.01m」でしたから間違いないと思います。しかしそのように案内しているサイトは英語圏に幾つかある程度なので信憑性はありません (そもそも当方の実測なので)(笑)
オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。
↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。この当時の135mmフィルムカメラ向けに登場している他のシルバー鏡胴モデルと、基本的な内部構造の設計概念は同一ですから「プリセット絞り機構」の構造も同じですね。
↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルはヘリコイド (オス側) が独立しており別に存在します。
絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。
◉ 位置決めキー
「位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー
◉ 開閉キー
「開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー
◉ 位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)
◉ 開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環
↑16枚もある絞り羽根を組み付けて絞りユニットを最深部にセットします。絞り羽根が閉じる際は「完璧な真円の円形絞り」です。
↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。写真上側が前玉側方向になります。
↑まずは前玉直下の最初のネジ山に「プリセット絞り環」をネジ込みますが最後までネジ込んでしまうと正しく機能しません。下部には「溝」の切り込みが各絞り値に見合う場所に用意されています。ここに絞り環の内側に備わる「爪」がポチポチとハマるのでプリセット絞りが実現する設計です。
↑こんな感じで今度は「絞り環」をセットしました。スプリングが内蔵されているのでクッション性があります。
↑さらにヘリコイド (オス側) を組み付けます。ヘリコイド (オス側) のネジ山には両サイドに「溝」の切り込みが用意されており「直進キーガイド」の役目になっています。この切り込み部分に「棒状の直進キー」が刺さり、スライドしていくので鏡筒が繰り出したり収納したりする設計概念です。
従って「距離環を回す時に掛けられるチカラ→鏡筒を繰り出していくチカラ」と言う話 (設計概念) なので、距離環を回すトルクが重くなりがちです。逆に言うと繰り出し量が多いので、その分ヘリコイドのネジ山数も多く長い距離が用意されているワケです。
つまりは「距離環を回すトルク感が決まる箇所とその原理」なのであって、決して塗布するヘリコイドグリースの粘性だけで決まらない事が明確ではないでしょうか。要は「如何に抵抗/負荷/摩擦無く回転するチカラが直進動するチカラに変換されていくのか」が問われる話であり、それは決してグリースの粘性だけで決まる話ではない事がご理解頂けると思います (その為に磨き研磨している)。
↑鏡胴「前部」は残すところ光学系前後群の格納だけになったので、ここからは鏡胴「後部」の組み立て工程です。本来のオリジナルになる「Exakta66マウント規格」の部分です。
↑距離環 (ヘリコイド:メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。
↑完成している鏡筒 (ヘリコイド:オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で9箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。
つまり最後組み上げが終わった時点で「無限遠位置の微調整」ができない設計の頃のオールドレンズだと言えますから、もしも大幅に無限遠位置が狂っていたらここまで戻って「再びヘリコイドのネジ込み位置を変更する」作業が必要になります。しかしその際前述のとおり「直進キーが刺さる場所」が必ずあるので、その位置との関係になる為そう簡単な話ではありませんね(笑)
↑この状態でオリジナルの「Exakta66マウント規格品」に至ったので、光学系前後群を組み込んでいきます (上の写真は光学系前群をセットした状態)。
↑同様今度は光学系後群側をセットしました。ご覧のように赤色矢印で指し示した「爪」が3箇所あり、且つリリースキーを備えるので全く以て「Exaktaのデカイ判」と言えますね(笑) これが「Exakta66マウント規格」です。
この後は延長鏡胴を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。
ちなみに某有名処でも疑問視されていますが、この当時の旧東西ドイツ内各光学メーカーに 於いて今回モデルのように「6×6中判サイズモデルを135mm判へ転用した製品が流行った」点を疑問視していますが、以前当方がヘリコイドグリースのお話を伺う為に金属加工会社の 社長さんにお会いした時、同じ質問を当方も投げかけていました。
「樹脂材であれ金属材であれ設計変更などによって一部構成パーツのカタチや大きさが変わる場合、資材コスト管理面では全く以て大差なく、むしろ構成パーツの仕様変更に伴う組み立て工程の増大のほうが人件費面から考えてもコストを圧迫する」事が一般的に認識されていない点を当方は逆に疑問視しました。
つまり「利益を圧迫する資材の増大はデメリットという認識」が主流である点に、当方はむしろ逆に疑問を感じると指摘したワケです。
すると社長さんは全く当方と同意見で、たかがオールドレンズで使う樹脂材も金属材も使う材の量が例え2倍に増えたとしてもたいしてコスト面に跳ね返らない (車のような大きな製品の 場合とは違う)。むしろ組み立て工程を1工程増やしてしまう事のほうが間違いなく人件費が 増え、下手すればラインの維持費 (光熱費含め) まで増えるので結果的に企業利益を圧迫するのは「工程管理」のほうとの事でした (実際に社長さんの工場でも同じ状況になるとの事)。
すると今回のモデルに当てはめて考えた時、6×6中判サイズの「Exakt66マウント規格品」に延長鏡胴を一つ用意して他の135mm判マウント規格に転用してまで製品化した理由が「実は別の背景にある」と考えられます。
それは戦前からの流れとして考えなければ見えてきません。戦前までは大判サイズの潮流が 一つあり、そこに新たな一眼レフ (フィルム) カメラの流行りとして「レンジファインダー
カメラ」が登場しました。戦後大判から中判へと業界の主力が変化してきた時に、同時に民生分野でもクィックリターンミラーを装備した一眼レフ (フィルム) カメラが登場し、新たな大きな潮流としてバックフォーカスを採った光学系への流れが始まります。
ところが描写性能を優先した中判サイズに期待を寄せていた各光学メーカーの目論見とは裏腹に、民生分野の一眼レフ (フィルム) カメラの普及のほうが勢いづいてしまいました。ここに「中判サイズで作ってしまった製品の転用」要は「目論見が外れて余ってしまった在庫品の 消化」が最優先課題になったので「各光学メーカーが大きく舵を切った」のではないかと推察します (だから当時転用自体が流行ったように見えてしまう/然しそれは思い込みで別の理由)。
つまり業界のプロ向け商品でガッポリ儲けようという目論見は音をたてて崩れ去り(笑)、むしろ民生向けで薄利多売 (業界向けから見ればの話) になざるを得なくなった事が大きく影響していると考えます。そしてそこに「ある一つの国の登場」がより拍車を掛ける流れを作ってしまい、旧東西ドイツの各光学メーカーは「もうなりふり構わず一目散に対処するしかなかった」まさに背水の陣の状態だったことが見えてきます。
それはまさしく「日本の光学メーカーの台頭」であり、低価格で質の良いカメラ製品が市場に大量に流れ始めると、もはや中判サイズなどに軸足を置いていられなくなってしまったのではないでしょうか。そのような背景が同時進行で流れていたからこそ「自動絞り方式」の開発が急がれ、アッと言う間にシルバー鏡胴時代は終焉を迎えゼブラ柄へと変わっていったのだと 考えています。
従って、今回のモデルにおける「転用品」の捉え方は、それ自体が当初からの製品戦略だったのではなく「あくまでも急場凌ぎ」的な展開だったのではないかと当方は考察しています。
(そんくらい日本の光学メーカーの勢いは凄かったのではないか)(怖)
実はこのような考察を抱いた背景が当方にはあります。当時流行っていた左写真のシールを皆さんは一度は見たことがあると思います。今でも市場に出回っているオールドレンズの多くの個体に貼られている場合が多いですね。
下手するとこのシールが貼り付けられている事を「安心材料」の一つとして捉えている人も 居るかも知れません。しかしそれは全くの思い込みです(笑)
はたしてこのシールの意味とは???(笑)
戦後日本の光学機械工業は飛躍的に発展しますが、そうは言っても戦争で工業界の全ての分野に渡って疲弊してしまった国内市場がすぐに活況を帯びることにはなりません。そこで海外 輸出にまずは弾みを付けることで国内市場の景況感も向上してくると考えるのは自然です。 日本の光学メーカーは挙って海外製オールドレンズの模倣を始めますが、戦後の輸出品の中には大手光学メーカー以外のアウトサイダー品も流れていました (いわゆるパクリ品)。結果海外光学製品メーカーからのクレームが起き (一部訴訟あり)、その品質に於いて政府を挙げて対応したのがこのシール登場の背景です (つまり政府が業界に直接関与した背景があるシールとも言える)。
◉ JCIA:日本写真機工業会
終戦当時1946年に発足した光学精機工業界写真部会 (当時17社) を前身とし1953年に政府からカメラ産業が重要輸出産業に指定されたことを受け、1954年に部会を独立させて「日本写真機工業会 (JCIA)」としました。任務は日本の世界に於けるカメラ産業の発展、及び写真文化の普及を命題としていました。2000年に団体は解散し「カメラ映像機器工業会 (CIPA)」へと引き継がれます。
◉ JCII:日本写真機検査協会
輸出品取締法 (1948年制定) により日本工業規格 (JIS) の前身として日本輸出規格 (JES:輸出39携帯写真機) の最低標準規格/梱包規格が制定され、当初輸出業者の自主検査により実施されていましたが品質向上/管理の寄与には程遠く1956年に第三者検査機関として「日本写真機検査協会 (JCII)」が発足し (当初7名)、輸出品取締法から輸出検査法に改訂された1957年を契機に一定水準を満たさなければ輸出できない検査/審査を執り行う機関へと変貌しました。
◉ JMDC:財団法人日本機械デザインセンター
当時海外光学メーカーより意匠 (デザイン) 模倣のクレームや訴訟が多数発生したのを受け製品意匠と輸出価格の適正化 (自主輸出規制) を狙い発足したのが始まりです。輸出品に対するデザイン認定 (意匠審査/認定) 業務の他認定書の発行及び製品個体への認定シール貼付を課していましたが、実際はJMDCからの委託を受けてJCIIが輸出品全数にシール貼付を代行していたようです (製産メーカーにシールが渡り出荷時に貼付済なのを輸出認定時に抜き取り検査して全数検査としていた/輸出認可は事前申請だった為)。
これらのことからこの「PASSED」シールはある一定の品質基準に合致した製品であり、同時に海外意匠を模倣していないことを証明する「証」であったことが分かります。しかし製品の性能機能を厳密に保証する (つまり精度保証する) 目的で貼り付けしていたワケではなく、あくまでもグローバル的な視点から見た最低基準の話であり、さらにそれは輸出品全数に及ぶ個体の「全数検査」を意味するものではないことを理解しなければイケマセン。
つまりこのシールには「何の意味も無い」と考えたほうが良さそうですね(笑) ヤフオク! などを見ていても、時々このシールが張り付いている事をメリットとして謳っている出品者が居ますが、笑ってしまいます。当方などはこのシールが貼り付いていたせいで経年焼けしてしまうので (シールの痕が残る) むしろ厄介だと受け取っています。
ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。
↑完璧なオーバーホールが終わりました。ハッキリ言ってまともな光学系の個体を探すのが偉く大変なモデルで(笑)、今までは散々調達する機会を見送っていました。光学系がベストな個体と思いきや、実はヘリコイドが固着しており「地獄のCRC5-56」と言う、本当に吐く寸前までいくレベルの強烈な「まさに異臭」です。
作業が終わっても鼻の奥深くまで臭いがこびり付いてしまったように錯覚するくらい、気持ち悪い時間が続きます(泣) 従って相当な覚悟が必要ですね(笑)
と言うことで納得できる状況に仕上がりましたが、鏡胴には数箇所に打痕があり、且つ距離環にも落下した時に付いたと推測できる凹みも1箇所ありますが、最終的に距離環を回すトルクには一切影響を与えていません。
もちろんそもそもバラす前の時点で完全固着していたヘリコイドのネジ山にも何ら影響がありません。結果、本当に素晴らしい状態まで「復元」できていると思います。また臭いに関してもほぼ除去できているので、よほど鼻を近づけてチェックしないかぎり分からないと思います (異臭は消えている)。
↑光学系内は非常に透明度が高くLED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。
↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
↑製品自体はご覧のとおり135mm判のフォーマットなので、延長筒によって「exaktaマウント規格」に変換されていますが、オーバーホール工程の中で撮影したとおり中味には「Exakta66マウント規格」のままと言うことです。
↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:15点、目立つ点キズ:6点
後群内:16点、目立つ点キズ:10点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(極微細で薄い8ミリ長が数本あります)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・光学系内には大小の「気泡」が複数あり、一部は一見すると極微細な塵/埃に見えますが「気泡」です(当時気泡は正常品として出荷されていた為クレーム対象としません)。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。
↑光学系内にある「気泡」き、こんな感じで拡大撮影すると「ちゃんと大小の泡」なのが分かります。
↑16枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に真円の円形絞りを維持したまま」閉じていきます。
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「重め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せますが、クリック感の無い無段階式(実絞り)です。
【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
・当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
・附属の中古フィルターは清掃済ですが微かな拭きキズなどが残っています(実用レベルでキレイ)。
↑元々オリジナルが6×6判の中判フォーマットなので、そのイメージサークルが大きい分光学系の一番美味しいところだけを使って撮っているような話なので、その描写性にどことなくポテンシャルを感じるのは至極当たり前の話と言えば当たり前です(笑) 特にポートレート撮影時には、まさかこれが3群4枚のテッサー型光学系が吐き出しているとは、写真を見ても分からないでしょう(笑)
是非一度ご検討下さいませ。
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい。当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません。
↑なお、ここからはこのモデルが装備している「プリセット絞り機構」の使い方をご存知ない方の為に解説していきます。
まず時々間違えて認識している方がいらっしゃいますが(笑)、前玉側に配置されている「プリセット絞り環/絞り環」を逆に認識すると、いつまで経っても「プリセット絞り機構」の概念が理解できません(笑) ヤフオク! で自ら整備して出品を続けているプロの写真家も認識を違えたままロシアンレンズの出品を続けていますが(笑)、この当時のオールドレンズに於ける「プリセット絞り機構」の概念把握は、必須だと思います。
上の写真解説のとおり「上側:プリセット絞り環」であり「下側:絞り環」です。実際にオーバーホール工程の中でそれぞれの環 (リング/輪っか) の状態をちゃんと撮影しているので、ご確認頂けると思います。
グリーンの矢印で指し示した箇所に基準「▼」マーカーがあるので、まずはそれがポイントになります。また「絞り環」側にも基準「●」マーカー刻印があり、設定に対する目安の意味を持つので把握して下さい (オレンジ色矢印)。
まずは当初プリセット絞り値を設定する前の時点で「開放状態の設定」だったオールドレンズのプリセット絞り値を変更していく方法です。今回の例として「プリセット絞り値:f5.6」で説明していきます。
「絞り環」側を保持してマウント側方向に引っぱり (クッションがついています:ブルーの矢印①) そのまま保持したまま回して設定絞り値「f5.6」まで持っていきます (ブルーの矢印②)。そこでカチンと音がするので指を離すと「f5.6」に基準「●」マーカーが合致しており、シッカリと填まります (ブルーの矢印③)。
↑これで「プリセット絞り値:f5.6」の設定が実現できたので (オレンジ色矢印)、今度はこの状態で「開放のままでピント合わせを行う」作業に移ります。距離環を回してピント合わせをして下さい。この時絞り羽根は「完全開放のまま」なので、ピント合わせもし易いですね (グリーンの矢印)。
距離環でのピント合わせが終わったら、最後にカメラボディ側シャッターボタンを押し込むワケですが、その前に一手間入り「設定絞り値まで絞り羽根を閉じる必要がある」のでブルーの矢印④のように「絞り環側を回して絞り羽根を閉じる」作業が入ります。
グリーンの矢印の基準「▼」マーカー位置が開放状態だったので、設定絞り値まで「絞り羽根を閉じたい」からブルーの矢印④方向に回します。この時絞り値をチェックしながら回す必要は無く「絞り環をブルーの矢印④方向に回せばカチンと突き当て停止した位置が設定絞り値 (絞り羽根がちゃんと閉じている)」ワケです。
これが「プリセット絞り機構の操作方法」です。
この後はシャッターボタンを押し込んで感動の1枚を撮って下さい。
↑こんな感じでちゃんと絞り羽根が「設定絞り値:f5.6」まで閉じていますね (グリーンの矢印とオレンジ色矢印)。
撮影が終わったので、ここで再び「開放f値まで設定を戻す方法」を説明していきます。慣れてしまえば都度戻さずとも構いませんが、慣れるまでは都度戻した方が無難です。
「絞り環」を保持したままブルーの矢印⑤方向に回してカチンと突き当てて停止するまで回しきります。
↑すると基準「▼」マーカー位置に開放f値「f2.8」が来ていて (グリーンの矢印)、実際絞り羽根は完全開放状態に復帰しています。当初の逆の作業をすれば良いだけなので、やはり「絞り環」側を保持したままマウント側方向に引き戻し (ブルーの矢印⑥) そのまま保持したまま開放f値「f2.8」まで回します (ブルーの矢印⑦)。カチンと音が聞こえて突き当て停止位置に到達するので指を離します (ブルーの矢印⑧)。
ちゃんと「絞り環」側の基準「●」マーカーが開放f値「f2.8」に合致しており (オレンジ色矢印)、同時にそこから動かないようになり「完全開放状態を維持」している事になっています。
つまり「プリセット絞り値が開放に設定できた」ワケです。
↑当初の状態に戻ったので全く同じ状況写真になりますが、一応念の為ちゃんと撮影しています (グリーンの矢印とオレンジ色矢印)(笑)
これが「プリセット絞り機構」の概念解説であり、根本的に「プリセット絞り環/絞り環」の別が理解できていないとお話になりません。
前述のプロの写真家は、そもそも「プリセット絞り環/絞り環」を逆に認識しているので「絞り値の最大値が開放で逆になっている」などと意味不明な解説を平気で行っています(笑)
何も面倒な事は一切ありません。そもそも「写真を撮る時の動作/手順と一致している」話なのであって、まさにそれが「プリセット絞り機構の概念」そのものです(笑)
↑当レンズによる最短撮影距離1m付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありません。またフード未装着なので多少フレア気味だったりします。
↑最小絞り値「f16」での撮影です。印象としては最小絞り値でも「回折現象」の影響を感じないので、さすがテッサー型光学系です。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。
◉ 被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。