◎ Carl Zeiss (カールツァイス) CONTAX Planar 50mm/f1.4 T*《MMJ》(C/Y)
(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません
今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、Carl Zeiss製
標準レンズ・・・・、
『CONTAX Planar 50mm/f1.4 T*《MMJ》(C/Y)』です。
CONTAX版Planar 50mm/f1.4のシリーズは今回の扱いが累計で23本目ですが、その中で最後期に登場した「MMJ」をカウントすると僅か6本目です。
このCONTAX版Carl Zeiss製Planar 50mm/f1.4 T*に関する解説、或いはそもそもCONTAXが登場した背景などについては、既にアップしたページがあるので次をご参照下さいませ。
☞『CONTAX Planar 50mm/f1.4 T*《MMJ》(C/Y)』
今回はオーバーホール済でヤフオク! に出品する個体ですが、実は先日このモデルに関する 問い合わせメールが着信したので、合わせてここで解説したいと思います。
【問い合わせの内容】
AEJとMMJの光学系について、設計が異なるとの指摘は納得できないから
訂正してほしい (信憑性が低いので訂正してほしい)。
このようなご指摘です・・。
そもそも信用/信頼が皆無な当方がこのブログに載せた内容なので信憑性が低いのは否めませんが、そうは言っても設計が同一ではないのでその説明ができない限り訂正のしようがありません。そこでもう少し詳しく解説しようと言う試みです。
このCONTAX版Carl Zeiss製Planar 50mm/f1.4 T*は、初期モデルが旧西ドイツのブラウンシュヴァイク工場で生産しましたが、その後日本のヤシカとの提携により日本で製産が始まりました (旧西ドイツの工場はVOIGTLÄNDERに売却)。
そのような変遷から、或いは後に登場したフィルムカメラ「CONTAXシリーズ」の展開に伴い対応可能な撮影モードの相違が顕在するようになりました。具体的にはマニュアル/絞り優先モードを備える「AEタイプ (Auto Exposure)」と、その後1985年登場のプログラムモードとシャッター速度優先モードを備える「MMタイプ (Multi Mode)」とに大きく分かれます。
同時に生産国の違いから「旧西ドイツ製:Germany」或いは「日本のヤシカ製:Japan」からそれぞれのタイプに生産国を表す頭文字を附随させて「AEG/AEJ」或いは「MMJ」などと巷では呼称しています。
上の写真は左側が「AEJ」(赤色矢印) 或いは右側が「MMJ」(グリーンの矢印) になり、絞り環の最小絞り値「f16」の刻印色で判定でき「白色=AEタイプ」と「緑色=MMタイプ」です。
当方では今までに「AEタイプ/MMタイプ」共に完全解体によりオーバーホールしており (共にヤシカ製)、その際光学系の清掃時に各群のサイズをデジタルノギスを使い当方の手で計測しました。
右図は「AEJ」の光学系構成図ですが、後群側を1枚増やした6群7枚の拡張ウルトロン型構成になっています。これは当初のRollei版がそもそもこの光学設計を採ってきていたので (1972年発売) 同じ構成を継承したと言えます。
「AEJ」は最短撮影距離:45cmで実装絞り羽根枚数:6枚、
且つフィルター枠径⌀ 55mmという仕様です。
一方、右図はその後に登場した「MMJ」ですが、やはり6群7枚の拡張ダブルガウス型構成です。そもそも光学系第1群 (前玉) のサイズと曲率/厚みからして実測値が従前の「AEJ」とは異なっており、必然的にその後の第2群〜第6群まですべての計測値が違います。
両方の構成図を見比べてみればビミョ〜に違うのが分かると思いますが頂いた問い合わせメールの指摘では「光学系は同一であり異なる構成図を並べ載せているのは納得できない」との事でした。
そうは言われても実際に各々デジタルノギスで各群を計測して、その計測値を下にトレース した図なので「同一ではないモノを同一とは説明できない」のが当方の見解です。
確かに仕様上は「AEJ/MMJ」共に何ら変更が無く同一であり、もちろんフィルター枠径まで同じですが、次の写真をご覧下さいませ。
↑上の写真は左側「AEJ」右側「MMJ」であり、それぞれ過去にオーバーホールした際の工程写真から転載しました。
◉ AEJ:Carl Zeiss CONTAX Planar 50mm/f1.4 T*《AEJ》
◉ MMJ:Carl Zeiss CONTAX Planar 50mm/f1.4 T*《MMJ》
それぞれオーバーホール工程を解説したページをご覧頂けるよう列記しました。
(クリックするとページが表示されるので同一写真なのが検証できます/ウソではありません)
すると写真解説のとおり、そもそもヘリコイド (オスメス) の「ネジ山数が異なる」ので、ヘリコイド (オス側) に組み込まれる「鏡筒の繰り出し量/収納量が距離環の刻印距離指標値の任意位置で異なる」のが歴然です。
ネジ山数が違うと言う事は、上の写真のとおり「繰り出し/収納時の勾配角度も違う」話になりますが、実際上の写真を見れば一目瞭然です。緩やかにグルグルと回しながら繰り出し/収納する「AEJ」に対し、さらに急勾配で短い回転量だけで鏡筒を繰り出し/収納できる「MMJ」ですね。
つまりは「鏡筒の距離指標値の対する繰り出し/収納量が違う」からこそ、どう考えても当方には「同じ光学系になるハズがない」としか言いようがありません。
従ってそこまで深く考えずに光学系の清掃時にデジタルノギスで実測したワケですが、実測し終わった時点で「???」になってしまい、どうして光学系の実測値が違うのか考え込んで しまったワケです (計測誤差どころの相違ではないから)(笑)
そこでいろいろ内部構造や構成パーツを調べていてようやく気が付いたのがヘリコイドネジ山数の相違でした。それで光学系が違うことに納得できた次第です。
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確かにネット上の何処を探しても「光学系が別モノ」などと案内しているサイトなどありませんし、ましてやヘリコイドのネジ山数が違うことを指摘している人など居ません(笑)
まさに仰るとおり当方だけが独りバカな解説を公然と平気で掲載し続けているのは、確かに 「紛れもない事実」です(涙)
従って、当方のこの解説 (過去にアップした解説ページ) の信憑性が低く納得できないのは重々承知なのですが、大変申し訳御座いません。当方の信用/信頼が皆無で信憑性すら無い点に ついても、何ら反論致しません (すべて認めます)。
確かに仰るとおりだと思います・・しかし「違うモノを同じとは言えない」のが当方の性格なので、こればかりは謝る事しかできません。
それでお許し頂けるのであれば、メールにて真摯にお詫びしますので今一度正しいメールアドレスをお知らせ下さいませ。と言うのも頂きましたメールの送信アドレスに返信してもエラーで送信できません。
この場を借りて、お詫び方々ご案内させて頂きました。本当に申し訳御座いませんでした。
(もっとちゃんと細かく丁寧に解説すべきであったと反省しています)
↑今回出品の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程の解説などは「Carl Zeiss CONTAX Planar 50mm/f1.4 T*《MMJ》(C/Y)」のページをご参照下さい ませ。
ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。
ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。
↑完璧なオーバーホールが終わりました。このモデルを探していらっしゃる方々には、まさしく余計な説明に付き合わせてしまい申し訳御座いませんでした。
↑現在市場流通している個体の多くには、光学系内に「薄いクモリ」が発生している率が非常に高いのが「MMJ」の問題ですが、今回の個体も同様貼り合わせレンズに薄いクモリが生じていました (実写チェックするとシ〜ンによってはコントラスト低下が僅かに現れる状況)。
しかし清掃したところ、過去メンテナンス時に塗布された「白色系グリース」のせいで、その揮発油成分が附着してクモリに至っていたようです。清掃によりスカッとクリアに戻りましたので、ご安心下さいませ。
また当初バラす前の実写チェック時に「期待ほどの鋭いピント面ではない」問題についても、第3群の緩みが原因だったので、出品個体は鋭い描写性に改善できています。
↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
↑光学系後群側もLED光照射でコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。まさにスカッとクリアな状態を維持しています。
↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:14点、目立つ点キズ:10点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:6点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(極微細で薄い7ミリ長が数本あります)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内は見る角度により拭き残しのように見えてしまうコーティング層の経年劣化に伴う汚れ状などが残っていますが清掃しても除去できません。
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。
↑6枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正六角形を維持」したまま閉じていきます (僅かに経年で生じていた油染み痕が残っています)。
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「重め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。
【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
・当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
・附属の中古フィルターは清掃済ですが微かな拭きキズなどが残っています(実用レベルでキレイ)。
↑距離環を回すトルク感は結構「軽め」の印象ですが、神経質な人には「普通」か「重め」に感じられると思うので、一応念の為そのような表記で出品します。距離環などのローレット (滑り止め) が多少経年劣化進行しており僅かにラバーの色がくすんでいます。
絞り環の操作性が少々シッカリした硬さに仕上がっています。また光学系内には微細で薄いヘアラインキズが数本残っています。よ〜く目を凝らしてチェックすると、後玉外周に1箇所展示用の汚れのような痕が1点残っていますが写真には一切関係ありません。
冒頭の解説のとおり、結局「MMJ」のほうがヘリコイドネジ山数が (1列) 少なく、繰り出し/収納量が多いとなれば、それは必然的に「ピントの合い方」も違います。スパッと急にピントが合うような印象なのが「MMJ」なので、当然ながらピント面の鋭さも被写界深度と共にちゃんとオーバーホール工程の中でキッチリ合わせています。
鋭いピント面に戻りました・・。
↑附属の純正フィルターとスナップ式の樹脂製前キャップと汎用後キャップを附属させています。
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい。当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません。
↑当レンズによる最短撮影距離45cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります (簡易検査具による光学系検査を実施済で偏心まで含め光軸確認は適正/正常)。
↑f値「f11」での撮影です。まだ「回折現象」の影響が感じられません。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。