◎ Meyer-Optik Gorlitz Primagon 35mm/f4.5 V silver(M42)
オーバーホールのために解体した後、組み立てていく工程を掲載しています。
すべて解体したパーツの全景写真です。
ここからは解体したパーツを実際に組み上げていきます。
まずは絞りユニットと絞り環に光学系前群を収納する鏡筒です。
既に絞り環をセットしてあります。プリセット絞り方式になりますね。
絞り操作は無断階の手動絞りです。
実際に10枚もの絞り羽根を1枚ずつ組み付けて絞りユニットを格納します。
この当時1950年代は絞り羽根はまだカーボン仕上げが主流でしたが、このモデルは既にフッ素加工を施した絞り羽根を採用しています。
Carl Zeiss Jena が全盛の当時に於いて技術的にも Meyer-Optik が光学メーカーとして上位にランクしていた証ですね。
絞り環指標値をセットします。この段階でプリセット絞りの動作と絞り羽根の開閉を確認します。
ヘリコイド(オス側)を組み付けます。
凡そこの当時のドイツ製レンズでは距離環の「回転するチカラ」を「前後動のチカラ」に変換する「直進キー」は、溝に太目のネジをネジ込むという少々乱暴な方式が多いのですが、この部分も Meyer-Optik のモデルに関しては独特な頭が円錐状に尖った「小さな円筒」をバネで抑えこむという、手の込んだ特異な方式を採っています。
次の写真はマウント側の基台です。このモデルは他に exakta マウントや alifrex マウントもあるので、マウントだけを交換して製品化できるよう工夫されています。基台にはまだM42のマウントを組み付けていません。先の直進キーを組み込まないといけないからです。
距離環をネジ込みます。この時点で既に距離環の駆動域と無限遠位置の当たりをつけてあります。
この当時のモデルは組み上げが終わった後に無限遠位置の調整ができない仕組みなので、もしも最後になって無限遠が出ていない場合にはここの工程まで再度バラしてやり直しすることになります(笑)
鏡胴(ヘリコイド:オス側)をネジ込みます。もちろん無限遠位置の当たりをつけたネジ込み位置で鏡胴をネジ込んであります。
当たり前だと思われるでしょうが(笑) ▲マークの基準刻印が一直線上に並んでいますね。鏡胴のネジ込み位置が間違っていた場合、この基準刻印は一直線上に並ばすズレてしまいます(笑)
この後に M42 マウント部を仮組付けして無限遠位置の確認を行います。問題がなければ最後に固定ネジを本締めして完成ですね。
写真では分かりませんし、恐らく実物をご覧頂いても分からないと思いますが、前玉にアンバー系 (黄金色) のシングルコーティングが施されています。また中玉にも薄紫のコーティングが施されており、写真でも分かりますね。
光学系後群の1枚を組み付けます。とても小さなレンズです。
最近ではなかなか入手できなくなってきた Meyer-Optik のレンズです。
特に M42 マウントの RED「V」モデルは海外でも極端な品薄傾向で値が吊り上がっていますね。
現在出品中の掲載文にも記載した「フィルター枠の凹み修復痕」は下の写真「V」刻印の丁度上から「Meyer」の「M」辺りまでの箇所になります。既に修復がされており、キレイに仕上げてあります。
フィルターの着脱に際しては、元々フィルター用のネジ山数が少ないモデルですのでフィルターをネジ込む際は、少し時計の針とは逆方向に回してネジ山にハマるのを確認してからネジ込んだほうがいいです。当レンズに関してはフィルターネジ込み時に僅かな引っかかり感を感じる程度で支障なく着脱できます。
10枚の絞り羽根もとてもキレイになり確実に駆動しています。円形絞りです。
シングルコーティングなのですが、前玉にアンバー系コーティングが施され、中玉にもシアン系コーティングが施されているのでマルチコーティングではないにしても複数になるのでしょうか。解体するまで前玉のコーティングには気がつきませんでした。
ここからは鏡胴の写真です。アルミ材削り出し部分のメッキ処理を最終仕上げ磨きの光沢研磨を施しましたので、とても美しく輝いています。生産されてから半世紀以上の時間が経っていますからメッキが劣化して白濁している個体が多いですね。
ほぼ本来の製品の輝きに近い状態まで戻せていると思います。艶めかしく輝くクロームシルバーです。
貴重な RED「V」刻印付の M42 マウントモデル「Primagon 35mm/f4.5 silver」
オーバーホールも完璧に執り行いましたので、距離環も大変滑らかでピント合わせもとても楽です。
プリセット絞りの絞り環も確実に小気味良く駆動しています。絞り羽根は本来の輝きを取り戻していますね。
素晴らしい仕上がりです。
後玉もとてもキレイになりました。Carl Zeiss Jena の Biotar や Tessar などと比べると一回りコンパクトです。
この当時のドイツ製レンズにしては珍しく落ち着いた発色性ですね。好感が持てます。