◎ SEARS (シアーズ) AUTO SEARS MC 50mm/f1.7《富岡光学製》(PK)

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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、アメリカはSEARS製
標準レンズ・・・・、
 『AUTO SEARS MC 50mm/f1.7《富岡光学製》(PK)』です。


このモデルの上位格「AUTO SEARS MC 50mm/f1.4《富岡光学製》(PK)」は6年ほど前に 一度だけ扱った事があるのですが、今回オーバーホール済でヤフオク! 出品するモデルのほう「50mm/f1.7」は一度も扱った事がありません。

と言うか「f1.4/f1.7」共に、当方がオーバーホールを始めてから9年経過する中で一度しか 目にしていない事のほうが重要でしょうか。まず以て海外オークションebayでも下位格の「50mm/f2」は頻繁に出回りますが、マルチコーティングのほうは年間数本レベルの出現率です。

もちろんOEMの原型モデルたるRICOH製「XR RIKENONシリーズ」のほうなら、いくらでも市場にゴロゴロ転がっていますから特に珍しいモデルでもありません(笑)

そうですね、このモデルはRICOH製「XR RIKENON 50mm/f1.7《富岡光学製》(PK)」の海外輸出用OEMモデルなのです (f1.4モデルも同じ)。まさにレンズ銘板だけをすげ替えただけの 筐体外装から内部構成パーツに至るまで100%同一の完全なるOEMモデルです。

ところがどう言うワケか、光学系を様々な角度で覗き込むと本家「XR RIKENONシリーズ」と異なる光彩を放っているように見えて仕方ありません。SEARSモデルもRICOH製モデルも共に「マルチコーティング」である点は全く同一なのに、その放つ光彩が違います。

↑上の写真 (2枚) は、その光彩を比べる為に過去に扱った際の写真から転載しています。左側が本家原型モデルたるRICOH製「XR RIKENON 50mm/f1.4 (PK)」であり、右側がOEMモデル『AUTO SEARS MC 50mm/f1.4 (PK)』です。

共にマルチコーティングであり、且つ基本的にアンバーマゼンタコーティング層蒸着モデルでもあります。RICOH製のほうはほぼアンバー寄りが強くマゼンタは僅かな光彩ですが、SEARS製のほうは逆転しておりマゼンタが相当濃く放ちます (アンバーも濃いめ)。

つまりパッと見ですがSEARS製のほうはマルチコーティングと言われて、その放つ光彩を見ただけで納得できてしまうほど色濃く光り輝いているワケです。ワザワザモデル銘にマルチコーティングを示す『MC』を含み、さらに開放f値まで強調して「f1.7/f1.4」としているので余計に目立ちますね(笑)

  ●               ● 

実はここがポイントで、当方は完璧に思い込みしていたのです。「如何にテキト〜に考察しているのか!」を表す本当に恥ずかしい話 (ヤツ) ですョね?!(汗)

当方はつい最近まで、何とこのモデルの原型たるRICOH製「XR RIKENONシリーズ」を、モノコーティングのオールドレンズだとばかり思い込んでいたのです (恥ずかしい)(笑)

まさに穴があったら入りたいくらいです・・(笑)

RICOH製「XR RIKENONシリーズ」は『MC』こそモデル銘にも含まず表記していませんが、歴としたマルチコーティングですね。

1977年9月にRICOHから発売された自社初の一眼レフ (フィルム) カメラ「XR-1/XR-2」のセット用標準レンズとして用意されたのが今回扱うモデルで、他に開放f値「f1.4」モデルも同時に登場しています。
(右写真は1979年7月登場の北米向けモデル)

また格下の廉価版標準レンズとして、巷で俗に「和製ズミクロン」 或いは「貧者ズミクロン」と呼ばれ続けている「XR RIKENON 50mm/f2 (PK)」も同時に発売されています (f2.0のほうのみモノコーティング)。

これら3種類のセット用標準レンズが同じタイミングで登場していた事に気をとられ、蒸着しているコーティング層の相違に全く気がつかなかったワケです(笑)

当時1982年時点のリコーのカタログ記載を例としてピックアップしました (右写真)。

すると『XR RIKENON 50mm/f1.4 (PK)』が載っているワケですが「11層のコーティング層」である事を謳っており、さらに「マルチ コーティング」とちゃんと記載されていました。

またSNSで当方がウソを案内していると言われてしまうので(笑)、証拠となる取扱説明書の抜粋を以下に掲載します。

ご覧のとおり、1977年に発売された一眼レフ (フィルム) カメラ「XR-1」の取扱説明書から用意されているセット用標準レンズの項目欄だけを抜粋しました。

すると「f1.4/f1.7」の2本に対してのみマルチ コーティングを謳っており「f2.0」はモノコー ティングである事が分かります。

そうなのです。「和製ズミクロン」の名声を欲しいままにしている下位格の廉価版モデル「XR RIKENON 50mm/f2 (PK)」だけがモノコーティングだったのです。

・・・・恥ずかしい・・(汗)

そもそも光学系が放つ光彩を見ただけで、その色合いからモノコーティングと決め込んでいた事がイケナイのです(笑) 何故なら「f1.4/f1.7」も下位格「f2.0」も3本とも同じアンバー寄りアンバーマゼンタにしか見えなかったからです。一方SEARS製のほうはちゃんと『MC』表記されており、且つ光学系が放つ光彩も「色濃いマゼンタアンバー」の印象で凝り固まっていたから始末が悪いワケです(笑)

  ●               ● 

アメリカの百貨店で有名なSEARS (シアーズ) ですが、現在はホールディング格付まで巨大化しており、例のKマートも傘下に収める郊外型GMSなので百貨店とは言いつつも実は日本で言うところのイトーヨーカドーやイオンなどに代表されるスーパーに分類される廉価量販が主体な小売業です。

そのシアーズが1896年〜1993年まで実施していたカタログ通販によるPB (プライベート・ブランド) 商品の一つが「SEARS」になります (そのままのネーミングですが)。

話が反れますが、当方が小売業界に足を踏み入れた若かりし頃は、研修などでこのシアーズの会長リチャード・ウォーレン・シアーズ氏の名言集を暗記させられたほどの方です (今となっては何ひとつ覚えていない)(笑)

もはや当時の勢いは無くちょっとした田舎のモールみたいな印象になっていますが(笑) 残念ながら2018年に連邦破産法11条を申請し、事実上の倒産に至っています。

今回扱うモデルAUTO SEARS MC 50mm/f1.7《富岡光学製》(PK)』は、やはりRICOH製一眼レフ (フィルム) カメラ「XR-1/XR-1s」のOEM輸出機「KS1000」或いは「KSX SUPER」のセット用 標準レンズとして出荷されていたようです。

実際市場に多く出回っているのはやはり下位格の「AUTO SEARS 50mm/f2.0 (PK)」がセットされたカメラのほうですから、日本で こそ「和製ズミクロン」「貧者ズミクロン」などと揶揄されつつも認知度が高いですが、おかげでその影に隠れてしまい、すっかり忘れ去られているかわいそうな存在が今回のモデルでもあります(笑)

光学系は一丁前に5群6枚のウルトロン型構成を実装し、第1群 (前玉) も外径が⌀31.47mmもあるので、下位格の「f2.0」モデルが僅か⌀24.79mmなのを考えれば、相当こだわって光学設計している事が
分かります (f1.4モデルは⌀38.01mm)。

今回バラした清掃時に光学硝子レンズを1枚ずつデジタルノギスで計測した実測値を元に当方がトレースしたのが右図ですが、実は第2群の 曲率が相当あり、且つ第3群もギリギリの面積を使って屈折率を高めているので影が薄い存在なのが余計にかわいそうです(笑)



上の写真はFlickriverで、このモデルの実写が少ない為に原型モデルたるRICOH製「XR RIKENON」で特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

上の写真はFlickriverで、このモデル「SEARS」の特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端から真円でキレイなシャボン玉ボケが破綻して滲んで円形ボケへと変わっていく様をピックアップしていますが、光学系の5群6枚ウルトロン型構成でこれだけ真円を維持しつつ、且つ驚いた事に明確なエッジを伴いながらシャボン玉ボケを表出できているところに感心させられました。ハッキリ言って「円形ボケの質が高い」印象を受けましたね。上手く「効果」として使えばまるで「油絵」の如く絵画風に撮影するところまで円形ボケを突き詰める事ができると期待できます。

またアウトフォーカス部の滲み方が階調豊かなのでクセが無く自然に溶けていく感じが好印象です。素晴らしい・・!

二段目
左端は敢えて背景の収差ボケを拾いましたが、やはり印象としては収差の制御が効いているようで質の良い乱れ方をして煩さを感じません。また2枚目の赤色が要チェックです!(驚) ここまで色飽和せずに素晴らしい赤色表現ができるオールドレンズをあまり多く知りません (たいていは色再現性が偏るのでここまで色飽和寸前になると色合いの偏りが明確になってくる)。

ハッキリ言ってこの赤色は特筆モノです・・!

さらに驚いたのが右側2枚の写真です。これだけダイナミックレンジを広く採ってきて階調が乱れず (ストンと堕ちずに) なだらかにグラデーション表現できるのは相当ポテンシャルが高いのではないでしょうか。ライトト〜ンもしっかり表現できており、且つ壁材の材質感や素材感をちゃんと表現できているからオドロキです!

三段目
標準レンズでここまで人物撮影をリアルにこなせるのもたいしたものです。竹の質感表現も素晴らしく開放f値「f1.7」とは思えないほどの被写界深度の狭さ (浅さ) を持っているので、この辺りを上手く活用したいですね(笑)

四段目
SEARモデルでの実写を数枚ですがピックアップできました。グルグルボケが現れた写真もちゃんと撮れていますし、背景の溶け方がやはり素直なので逆にピント面がより強調されて「画全体的な繊細感」がしっかりキープできているところが凄いと感じました (ピント面のエッジが意外にも強調的に出てくる性質があるのに画全体として繊細感を漂わせているところにビックリ!)。

そして何は置いても人肌の表現性でここまでリアルに写し込みできる「f1.7」モデルと言うのもなかなか思い付きません。やはり背景のアウトフォーカス部の滲み方がとろけるように滲んでいく要素が功を奏して、バックの扉との「距離感/空気感」がどんなオールドレンズでも簡単に表現できない要素だと思います (このリアル感に相当魅力を感じます!)。

一にも二にも被写体の素材感や材質感を写し込む質感表現能力の高さと、それに附随してアウトフォーカス部の独特な滲み方が「空気感/距離感」まで表現しきったリアル感として結実しているのではないでしょうか。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。内部構造や使われている構成パーツなどは100%RICOH製「XR RIKENONシリーズ」と同一ですが、それはあくまでも「前期型」の話で富岡光学製モデルでの話です (後期型以降は富岡光学製ではなくなるから)。

実は今回の個体は過去メンテナンスされているワケですが、例によって「片っ端に固着剤塗布」しまくり、且つ「白色系グリース」塗りまくりと言う「グリースに頼った整備」と、典型的な日本の整備者の仕業である事をここで伝えておきます

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒 (ヘリコイド:オス側) です。まず光学系前群をこの鏡筒から外す時点で既に「ネジ山全周に渡る固着剤」でビクともせず頭に来ましたね(笑)

仕方ないので「加熱処置」する事3回!(怒) やっとの事で光学系前群が回り始めました。

↑絞りユニットのベース環ですが、何とここの稼動部にまで「白色系グリース」を塗ったくっていると言うどうしようもない整備です。ハッキリ言ってどうして絞りユニットにグリースを塗るのか全く以てその思考回路が分かりません!(怒)

上の写真を見れば明白ですが、金属製の絞りユニットのベース環は「マットな梨地仕上げ」メッキ加工です。これは表層面に極微細な凹凸をつけた艶消しのメッキ加工が施されており、絞りユニットも含め絞り羽根への「経年の揮発油成分附着を防ぐ」設計者の目的がヒシヒシと伝わってきます。

それを「稼動部だからとグリースを平気で塗る」その考え方が全く以て信じられません。

ではいったいどうしてワザワザコストを掛けて「マットな梨地仕上げ」でメッキ加工しているのですか???

何でもかんでも動く箇所にはグリースを塗れば良いと言う浅はかな考え方が「アホ」ですョ。

整備者としてこれほど恥ずかしい話はありませんね・・(笑)

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑6枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させたところです。ご覧のようにとても薄い厚みしかない絞りユニットなのですが、そこには「制御環」が組み込まれており「絞り羽根の開閉角度をコントロールしている」のが分かります。

そうなんですョ、この「制御環」が接触する外周部分に過去メンテナンス時の整備者は「白色系グリース」を塗ったくっていたワケです!(怒)

全く以て信じられません!(怒)

制御環」には「なだらかなカーブ」が途中に用意されており、そこに「カム」が突き当たる事でその坂の勾配で「絞り羽根の開閉角度が決まる」仕組みです。

すると坂 (勾配) の麓部分が最小絞り値側になり、坂を登りつめた頂上部分が開放側です。上の写真では坂の麓で「カム」が突き当たっているので「最小絞り値まで絞り羽根が閉じている」ワケですね (グリーンの矢印)。

↑完成して微調整が終わった絞りユニットを鏡筒最深部にセットしました。ご覧のように最深部に入りますから、この絞りユニットに「白色系グリース」を塗られてしまうと光学系前群の直下にグリースがある事になり、コーティング層の経年劣化進行を促しているような話になってしまいます。従って普通一般的なメンテナンスでは、絞りユニットにグリースの類を塗る事はまずあり得ません (絞り羽根油染みの一因にもなる)。

但しロシアンレンズのように国土にマイナス40度以下になる厳寒地帯を有する場合には「金属凍結防止」の目的から、敢えて鏡筒内部/絞りユニット内部/光学系格納筒などに非常に油成分の強いグリースを塗布しますから、ロシアンレンズで絞り羽根に油染みが多いのは製産している工場、ひいては設計者自身も100%承知の上で設計/製産している事をお伝えしておきます。

すると絞り羽根の酸化/腐食/錆びが促され打ち込まれている「キー脱落」の懸念が高くなるので、ロシアンレンズはそもそも耐性 (長く経年使用できる事) を高める/求める設計面での努力を何らしていません(笑)

ロシアンレンズは製産時の切削が雑で粗いと言う話をよく聞きますが(笑)、少なくともココム違反事件が起きた1980年代後半辺りからは日本製ANC旋盤機が大量に導入されていますから、実際バラしていても特に切削が粗いとは感じません (1960年代の個体は確かに粗いモノがある)。

要は設計そのものが「金属凍結まで考慮した設計」なので、当時の普通一般的なオールドレンズとは少々趣が異なる造りになっているだけの話です。「観察と考察」する事で真贋の目を 養うことができますね(笑)

↑完成した鏡筒をひっくり返して裏側 (つまり後玉側方向) から撮影しました。「開閉アーム」が1本だけ飛び出ているだけと言う簡素な状況ですが、前述のとおり絞りユニットで制御機構が附随していたからですね。

↑距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。開放f値「f1.7」ながらも意外にも深さのある基台です (つまりそれだけ鏡筒の繰り出し/収納量が多い事を意味する)。

要はこの基台の厚みを見ただけでも光学系の「曲率が高い光学設計 (裏を返せば屈折率が高い事の現れ)」なのが明白ですね。

↑真鍮 (黄銅) 製のヘリコイド (メス側) を、無限遠位置のアタリをつけた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑完成している鏡筒 (ヘリコイド:オス側) を、やはり無限遠位置のアタリをつけた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で11箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

するとヘリコイド (オスメス) のネジ山を見れば分かりますが、ネジ切りが「急勾配」で切削されているので、前述のとおり「繰り出し/収納量が多い設計」なのが分かります。

何を言いたいのか???

つまり「距離環を回す時のトルク調整が大変なモデル」なのが事前に分かってしまう事を言っています (繰り出し量が多いからトルクムラも起き易い)。

↑上の写真はマウント部内部の写真ですが、既に各構成パーツを取り外して当方による「磨き研磨」を終わらせた状態で撮っています。当初バラした直後はこのマウント部内部にまでビッチリと「白色系グリース」が塗られており(笑)、既に経年劣化の進行から「濃いグレー状」に変質していました。

↑取り外していた各構成パーツもやはり個別に「磨き研磨」を施し、経年の酸化/腐食/錆びを取り除いて今回のオーバーホールでは「一切グリースの類を塗らずに」組み上げていきます(笑)

基本的に当方のオーバーホールではヘリコイド (オスメス) 以外の箇所にはまずグリースを塗りません(笑)

すると上の写真解説のとおり「制御アーム」がある環 (リング/輪っか) が存在し、クルクルと回るので (絞り環と連結するから) ここにグリースを塗りまくっていたワケです(笑)

さらに当方の怒りが爆発してしまったのが上の写真グリーンの矢印で指し示した「捻りバネ」です。

両端で「捻りバネ」を「固着剤で完全に固めて固定してしまった」ワケです (オレンジ色矢印の箇所に固着剤)。

過去メンテナンス時の整備者は「原理原則」を全く理解しておらず、さらに「観察と考察」すら全くできないどうしようもないバカな整備者ですが、実はこのような整備を平気でやっている会社が今現在も存在するのが既に分かっています(笑)

どうして分かるのかと言えば、オーバーホール/修理を承っていると整備会社で整備したその結果が納得できずに当方に再びオーバーホール/修理をご依頼される方がいらっしゃるからです

つまり整備が終わってまだ間も無いタイミングで当方にまた整備依頼が来るワケですね(笑)

当然ながら解体すれば内部に塗られている「白色系グリース」は真新しい状態であり、同時にどのような整備を施したのか迄100%分かってしまいます(笑)

するとご依頼者様が不満を感じていらっしゃる内容と、その整備会社が執り行った整備の内容とが一致すれば「整備の不始末」であり、一致しないなら「整備者の見逃し」でご依頼者様のご不満が解消されなかった事になり、どちらに転んでも「適切な整備が行われていない」と言う話です(笑)

このような事があるので、今現在も整備会社で今回のようなバカな整備が行われている事を、当方は知っているのです

上の写真で言えば「捻りバネ」の特性を過去の整備者は全く無視しきっています。

捻りバネ」はその字の如く「中央でクルクルと巻き込んでハの字型にバネ部を左右に広げているバネ種」です。従って稼動部のパーツが動く際に「中央のグルグルと巻かれている部位を中心として左右のバネ部の位置がズレる事で弾性/反発力を与える概念」です。

つまり今回の個体で言えば、過去メンテナンス者は「捻りバネ」の左右を「固着剤」で完璧に固めてしまったので、稼動部のアームが動く際に左右で位置がズレないので「中央部が持ち上がる」現象に至ります (そうしないと反発力チカラが逃がしきれない)。

何を言いたいのか???

つまり「捻りバネ」左右を固定したが為に「捻りバネが弱ってしまった」のが問題なのです。

整備する事でむしろ「絞り羽根開閉異常」の因果関係を用意してしまっているような話だと言いたいのです!(怒)

実際、今回の個体を当初バラす前のチェック時点で、マウント部の「絞り連動レバー」を操作した時の「絞り羽根の戻りが緩慢」だったので、すぐに原因が分かっていました(笑)

このような現象は今ドキのデジカメ一眼/ミラーレス一眼にマウントアダプタ経由装着するならまず気が付きませんが、フィルムカメラで使うなら絞り羽根の戻りが緩慢なのが気になるハズです(泣)

稼動部には全てグリース塗布」し「固着剤塗りまくり」で固めてしまう整備が今もなお横行していると言えます。

↑「絞り連動レバー」の動き方の微調整が完璧になり完成したマウント部を基台にセットしたところですが、ここでも過去メンテナンス者は「固着剤塗りまくり」しており、グリーンの矢印で指し示した「皿頭ネジ」3本をビッチリ固定してくれました (マウント部内部の内壁にまで固着剤で固定と言う念の入りよう)。

このマウント部を基台に締め付け固定するネジを固着剤で固定してしまう手法は「非常に多くの整備者が実施している」事をここでハッキリ言っておきます。

それほど本当に多くの個体が固着剤で固められています。

どうして「固着剤で固めるのか???

その理由は経年で緩まないようにするのが目的ですが、このマウント部が緩むと鏡胴がガチャガチャした感じで緩んできますから、そのような処置を講じたくなるのは分かります。

しかし「皿頭ネジ」ですョ、この締付ネジは・・(笑)

過去のメンテナンス者は「皿頭ネジ/鍋頭ネジ」の目的と使い方すら知らない輩ですョ!(怒)

マウント部からはマウント側方向に向かって「絞り連動レバー」が飛び出て、且つ横方向に「連係アーム」が飛び出ます。この「連係アーム」が絞り環と接続する事で設定絞り値が伝達される仕組みですね。

↑鋼球ボールを組み込んでから絞り環をセットします。

↑マウント部をセットします。

↑距離環を仮止めしてから光学系前後群を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

上の写真解説のとおり鏡筒内部にマウント側方向から「制御アーム」が突き刺さって (絞りユニットを貫通して) います。その理由は「鏡筒の繰り出し/収納量の分だけ長さが必要だから」ですね(笑)

従って距離環を回すトルクに大きく影響してくるのがこの「制御アーム」であり、何故なら距離環を回して鏡筒が繰り出し/収納の直進動をしている最中に「制御アームが絞りユニットを貫通したままその抵抗/負荷/摩擦が伝わっているから」と言えます。

つまりヘリコイド (オスメス) のトルクはこの「制御アーム」からの抵抗/負荷/摩擦の分も含めて決まると言うワケですから、単にヘリコイドグリースの粘性を軽くすれば良い話ではありませんね(笑)

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑今回当方がオーバーホールを始めてからの9年間で「今回の初の扱い」になる開放f値「f1.7」モデルです。原型モデルたる「XR RIKENONシリーズ」も含めて、全く以て死角に入っていましたね(笑)

完璧なオーバーホールが終わりました。「使い勝手の良さ」を整備者自らがこだわって追求するとこうまで完璧な仕上がりになるのか、と言うくらいのレベルで完成しています (ご落札者様お1人様だけ分かって頂ける仕上がり状態)(笑)

その描写性を見れば一目瞭然ですが、下位格の「和製ズミクロン」たる「f2.0」モデルよりも、むしろこだわった光学系の設計なのではないかと考えています (それだけに余計にかわいそうでなりません)。

↑光学系内の透明度は「これでもか!」と言わんばかりに限りなくスカッとクリアで、もちろんLED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。

当方が「皆無」と言えば本当に皆無です・・(笑)

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

残念ながら過去メンテナンス時の「当てキズ」が光学系第3群の外周附近に1箇所目立つキズとして残っています (当方がつけたのではありません/写真には全く影響しません)(笑)

おそらくカニ目レンチで締付環を回そうとして滑ったのではないかと思います。

↑光学系後群側もスカッとクリアでもちろんLED光照射で極薄いクモリが皆無です。多少経年相応に「CO2溶解に伴う極微細な点キズ」が多めですが、パッと見で「微細な塵/」にみえてしまいますが、実は何度清掃しても一切除去できない「極微細な点キズ」です。

これは水分に含まれている「二酸化炭素 (つまりはCO2)」が溶け出してその際にコーティング層を浸食するとポツッと残る「極微細な点キズ」です。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:10点、目立つ点キズ:6点
後群内:19点、目立つ点キズ:11点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(極微細で薄い4ミリ長が数本あります)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:あり
(第3群外周附近に過去メンテナンス時の当てキズが1箇所あります/微細なので写真に影響せず)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内は見る角度により拭き残しのように見えてしまうコーティング層の経年劣化に伴う汚れ状などが残っていますが清掃しても除去できません。
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑6枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根か閉じる際は「完璧に正六角形を維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「重め」に感じ「全域に渡りほぼ均一」です(1m前後で僅かにトルク/抵抗を感じます)。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

↑今回の扱いに際し、このモデルの境遇から「大切に使って頂ける人に落札してもらえれば」との想い一心でオーバーホールを行いました。そのような完璧な仕上がりに至っています。

総金属製の『富岡光学製』OEMモデルであり、元祖「XR RIKENONシリーズ」そのままではありますが、当方の考察では多少なりともマルチコーティングのコーティング層蒸着の質が違うのではないかと踏んでいます (放つ光彩が違うから)。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離45cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります (簡易検査具による光学系検査を実施済で偏心まで含め光軸確認は適正/正常)。

ピント面が非常に浅いので (狭いので) ピンボケのようにしかみえませんが(笑)、実際はちゃんと撮影時に右手前ヘッドライトの本当に電球の球部分にしかピントが合っていませんから、相当なピント面の鋭さです。

背景のお城のボケ具合をチェックすれば一目瞭然ですが「光軸ズレが皆無」なのも分かりますね(笑) もちろんちゃんと簡易検査具ですが必ず検査しつつ組み上げているのでズレているハズがありません(笑)

当方の技術スキルはヤフオク! 評価のとおり低いので(笑)、できましたらプロのカメラ店様や修理専門会社様などが手掛けている、信用/信頼が高い完璧な仕上がりのオールドレンズのほうをご落札下さいませ

当方が出品するオールドレンズは「当方のファンの方々だけ」の手にしか渡らなくて、それで十分です!

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f4」で撮りました。

↑f値は「f5.6」に変わっています。

↑f値「f8」になりました。

↑f値「f11」です。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。ここまで閉じきっていても「回折現象」の影響がほとんど見えないので相当な光学系のポテンシャルを持っていると言えないでしょうか?

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。