◎ SIGMA (シグマ) MINI-WIDE 28mm/f2.8 MULTI-COATED(PK)
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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません
今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、SIGMA製
広角レンズ・・・・、
『MINI-WIDE 28mm/f2.8 MULTI-COATED (PK)』です。
今回初めて扱うモデルですが、いわゆる『ゲテモノ食い』になるのでしょうかね(笑)
とは言いつつ、実はこのモデルを調達する為に何と半年間も光学系の状態が良さそうな個体、且つポピュラーなマウントで探し続けていたワケです (当方はCanon/Nikonのオールドレンズは扱わないのでM42かPKマウントを探していた)。
市場の流通を見ていると、残念ながらこのモデルの光学系は既に限界に到達しているようで、まともな状態を維持した個体がとても少ないようです (たいていクモリが生じている)。今回 調達した個体は相当厳しい目で光学系の状態をチェックしつつチョイスしましたが、それでもクモリが残っていたのでなかなか難しいところです。
残念ながら人気が無いようなので(笑)、今回が最初で最後の扱いとします。
オーバーホール/修理ご依頼は可能です (今後ヤフオク! には出品しません)。
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SIGMAが一番最初に発売した焦点距離28mmの広角レンズは、1965年頃に登場した「28mm/f2.8 WIDEMAX」らしいのですが (右写真)、当時の他社光学メーカーが発売していた広角28mm域は「f3.5」が まだ主流だったようで、その中で敢えて「f2.8」を採ってきた各社の広角レンズは必然的に大口径モデルの設計になっていたようです。
このWIDEMAXは6群7枚のレトロフォーカス型光学系を実装していましたが、次の第2世代 モデルとして登場したのが今回扱うオールドレンズで1978年の発売です。
しかしこの1978年前後の時期に登場したSIGMA製品をみていくと、主流はズームレンズへと大きくシフトしていっている最中だった事が分かります。単焦点モデルで当時登場していたのは24mm (1975年発売) に18mm (1977年発売) そして1978年に16mmの他28mmFILTER
MATIC (フィルターターレット内蔵モデル) などがあり、1980年には16mmFish-Eyeタイプ、1981年18mm/24mmなど単焦点モデルは広角レンズが中心的存在だったようです (他は全てズームレンズばかり)。
そんなSIGMAの背景を調べて知ってしまったが為に、この28mmと言う広角レンズに少々興味が湧いてしまい探し始めた次第です。
【モデルバリエーション】
※オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。
モデル銘:28mm/f2.8 WIDWMAX
1965年発売 (?)
光学系:6群7枚レトロフォーカス型構成
フィルター枠:⌀ 62mm
最短撮影距離:30cm
絞り値:f2.8 – f22
モデル銘:28mm/f2.8 SIGMA-Z/XQ
1976年〜1977年発売
光学系:6群7枚レトロフォーカス型構成
フィルター枠:⌀ 62mm
最短撮影距離:40cm
絞り値:f2.8 – f22
モデル銘:MINI-WIDE 28mm/f2.8
1978年発売
光学系:6群7枚レトロフォーカス型構成
フィルター枠:⌀ 52mm
最短撮影距離:22cm
絞り値:f2.8 – f22
モデル銘:NON-VIGNETTING 28mm/f2.8 ★
1984年発売
光学系:6群7枚レトロフォーカス型構成
フィルター枠:⌀ 52mm
最短撮影距離:22cm
絞り値:f2.8 – f22
モデル銘:MINI-WIDE II 28mm/f2.8
1985年発売
光学系:5群6枚レトロフォーカス型構成
フィルター枠:⌀ 52mm
最短撮影距離:22cm
絞り値:f2.8 – f22
・・こんな感じですが、上の一覧で★マークを付けた「NON-VIGNETTING」とは「口径食」を低減させたモデルで、後に「HIGHLIGHT」にモデル銘が変更されているようです。
光学系は6群7枚のレトロフォーカス型構成ですが、ネット上の何処を探してもこのモデルの光学系構成図がヒットしません。仕方ないので、今回完全解体してバラしてから光学系の清掃時に光学硝子レンズを1枚ずつデジタルノギスで計測し、且つ同時に光学硝子レンズ格納筒の前後群について格納箇所のサイズを計測して右構成図をトレースしました。
(従ってほぼ正確な構成図になっています)
すると右構成図の 部分で、3群3枚のトリプレット型構成を基本成分としている事が分かります。また最短撮影距離「22cm」とほぼハーフマクロ域に近い近接撮影まで対応した為、その分の屈折率と色収差の改善に第2群にいきなり貼り合わせレンズを持ってきているのが分かります (ちなみに第1群前玉はバックフォーカスを稼ぐ役目)。
この「レトロフォーカス型光学系」について時々思い違いしている人が居ます。「レトロ」の部分から抱くイメージとして「甘い写り方/コントラストが低い写真」など、凡そレトロ調的な印象の写真しか撮れないと思い込んでいる場合ですが、これは全く当てはまりません。
「レトロフォーカス」は「レトロ (後退)」と「フォーカス (焦点)」がくっついた造語なので、要は戦前〜戦後まで主流だったフィルムカメラが当時はレンジファインダーカメラだった為、広角レンズは標準レンズ域の光学系を延伸させただけで対応できていました。
ところがクィックリターンミラーを装備した一眼レフ (フィルム) カメラが主流になると広角 レンズの光学系に標準レンズ域の構成を使えず、バックフォーカスを採った本格的な専用光学系の開発が急務だったワケです。
そこで1950年に世界で初めて登場したのがフランスの光学メーカーP. ANGÈNIEUX PARIS社が発売した広角レンズ「RETROFOCUS TYPE R1 35mm/f2.5」だったワケで、この時商標登録されたモデル銘、且つ光学系の設計「RETROFOCUS」がその後、世界的に広角レンズの光学系として流行った為に商標権を黙認した経緯があります。
従って「レトロフォーカス型光学系」は十分に基本成分として採用している構成部分で鋭いピント面を確保している為、決して「甘い写り/低コントラスト」には堕ちたりしません (つまりレトロ調のイメージとは相容れません)。
上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。
◉ 一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して滲んで円形ボケへと溶けていく様をピックアップしています。広角レンズのしかも焦点距離28mm域のモデルで、ここまでキレイなシャボン玉ボケほ表出させる事ができるモデルをあまり多く知りません。但しそうは言っても非点収差の影響や口径食が出てしまい真円を維持するのは難しいようです。また同時に特に開放〜数段分までの絞り値では画の周辺域で流れが顕著に表れ、だいぶ乱れた写り方になる特徴もあるようですが、これはこれで今だからこそデジカメ一眼/ミラーレス一眼などで背景の「効果」として使ってしまうのが、特に「インスタ映え」を考えると一理あります。
◉ 二段目
ピント面は基本的にエッジが骨太で出てくるのでとても明確ですが、決してギラギラと鋭さだけが誇張的に表現されず「程良い甘さ」で落ち着いて見えます。この「素性の良い鋭さ」がまさに前述の「3群3枚トリプレット型構成」の良さではないかとみています。さすがSIGMAだけあって被写体の素材感や材質感を写し込む質感表現能力に相当長けており、特に焦点距離28mmの広角レンズでここまで質感表現能力を確実に表現できるモデルと言うのもSIGMAならではでしょうか。
◉ 三段目
ダイナミックレンジが相当広いので明暗部がギリギリまで耐え凌いでおり、暗がりへの自然な階調変化が安心して見ていられる印象です。また階調がとても滑らかなのでグラデーションの表現性も素晴らしく、たかが低価格品の28mmなどと侮ると痛い目を見そうです(笑)
オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。
↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。今回の個体はバラしたところ「過去に一度だけメンテナンスされている」事が分かりましたが、実はその過去のメンテナンス時に完全解体していません。つまり今回初めて完全解体でバラしたと言えます。
すると例えばヘリコイド (オスメス) に「黄褐色系グリース」が塗られていたり、或いは固着剤の使い方や、そもそも絞り環やその他の駆動箇所へのグリースの塗り方など、凡そ一般的な整備会社のレベルとは全く次元が違っていました。
つまり本当に必要な箇所にだけしかグリースを塗らず、且つ固着剤も全ての締付ネジなどに塗布せずやはり必要箇所だけに留めている事が判明しました。特に固着剤は「SIGMAの純正は黒色」なのが分かりますし、一方過去メンテナンス時に塗られた固着剤は「グリーン色」だったりするので非常に分かりやすいですね(笑)
例えば絞り環にグリースが塗られていない点について、皆さんはどのように説明されますか?(笑)
まず間違いなく過去メンテナンス時には必ず絞り環にグリースを塗っていますが、このSIGMA製モデルは「絞り環は筐体共々鏡面仕上げ」なのでグリースは必要ありません (実際今回のオーバーホールでも一切塗布していない)。同様にマウント部内部の「絞り値伝達環 (真鍮/黄銅製)」もやはり鏡面仕上げなのでグリースを塗る必要がありません。
当方は「原理原則」を理解しているので、バラして各構成パーツを見れば自ずとグリースを塗るべきか否かすぐに判定できるのですが、その判定どおりに今回の個体はバラしてみるとグリースがほとんど使われていませんでした (つまりほとんどの部位が製産時点のまま)。
おそらく過去メンテナンス時にヘリコイド (オスメス) を外そうと試みたものの叶わずに解体できていないと考えます。過去メンテナンス時は仕方なく光学系の清掃だけ実施したのではないでしょうか。
どうして過去メンテナンス時にヘリコイド (オスメス) を解体できなかったのでしょうか?(笑)
その理由は、このモデルの構造が「高難度モデル」だからです(笑)
市場での流通価格帯と言えば「数百円〜5千円以下」と言う、まるで底辺で這いずり回っているような不人気モデルですが(笑)、実はこのモデルを完璧に調整して組み上げられる整備者と言うのはそれほど多く居ません。
その理由のひとつは減り (オスメス) の制御概念が一般的なオールドレンズとは逆だからです。普通一般的なオールドレンズは距離環を回してヘリコイドを繰り出すと最短撮影距離方向に向かいますが、このモデルは正反対の動きをして「ヘリコイドを繰り出すと無限遠位置」と言う設計です。
つまりヘリコイド (オス側) が繰り出された時に「鏡筒は最も収納されている状態」だから正反対の動きだと言えるワケです。
さらにこのモデルはSIGMAでは当たり前ですが、数種類のマウント規格に対応した共通設計で「絞り羽根開閉駆動」を設計している為、絞り羽根の制御方法が「3種類」あります(笑)
この3つの制御方法のどれを使って組み上げれば良いのか判断できなければ正しく絞り羽根が開閉しません。
↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒ですがとても小さいサイズです。それもそのハズでこのモデルは鏡筒から先に「光学系前群の延長筒」が入る設計を採っています。
絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。
◉ 位置決めキー
「位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー
◉ 開閉キー
「開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー
◉ 位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)
◉ 開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環
↑6枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを組み込んだ状態を撮っていますが、もう既にこの工程だけでそうとう「高難度」に組み立て工程を経ています(笑)
↑完成した鏡筒をひっくり返して裏側 (つまり後玉側方向) から撮影しています。上の写真の鏡筒の先には「光学系後群」がネジ込まれます。
鏡筒の回りに長いアームが2本飛び出ていますが、このモデルの最短撮影距離が「22cm」とだいぶ近接撮影ができる分、ヘリコイドの繰り出し量が多いのでアームの長さも長くなっています。
するとグリーンの矢印の箇所にある「なだらかなカーブ」に「カム」が突き当たる事で「絞り羽根の開閉角度が決まる」仕組みですが、前述のとおりこのモデルには「全部で3種類の絞り羽根開閉角度のセット」が用意されています。
つまり「なだらかなカーブが3種類ある」ワケで、そのどれを使うのかでもちろん絞り羽根の開閉が変化しますし、もっと言えば「絞り羽根の閉じ具合の微調整機能も3種類ある」ワケですから、相当な調整箇所の多さですね(笑)
↑こんな感じでブルーの矢印で指し示したように「なだらかなカーブ」が附随しており、その坂の麓部分が「最小絞り値側」になり、坂を登り切った頂上が「開放側」です。
従ってこの「なだらかなカーブ」が他にもう2つ用意されているのがSIGMA製オールドレンズの設計概念の特徴です (多くのモデルで共通)。
すると当初バラす前のチェック時点で既に「絞り羽根が閉じすぎていた」ので、特に最小絞り値「f22」ではもう閉じきっているような状態でした (つまり過去メンテナンス時の調整ミス)(笑)
↑距離環やマウント部が組み付けられる基台です。光学系がレトロフォーカス型構成なので奥行きがある分、この基台の深さも必要になります。
↑ヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。
前述のとおり、このモデルのヘリコイド (オスメス) の使い方が一般的なオールドレンズとは「正反対」なので、ヘリコイドを繰り出した時が無限遠位置になり、逆に収納した時が最短撮影距離位置ですから、無限遠位置も確定せず同時に最短撮影距離位置まで定まりません。
要は「原理原則」を理解している人でない限りこのモデルのヘリコイド (オスメス) を正しく組み込む事ができませんね(笑)
↑ヘリコイド (オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルでは全部で7箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。
上の写真ではヘリコイド (オス側) を繰り出している状態なので、この時ヘリコイド (メス側) は最も収納している状態でなければイケマセン。
なお赤色矢印部分にある「銀色に削れている箇所」は、過去メンテナンス者が「イモネジ」を外さずにフィルター枠を外そうと回してしまったので、イモネジが刺さったままですからご覧のように削れてしまったワケです。
過去の不始末も全て一目瞭然ですね(笑)
↑上の写真は絞り環ですが「絞り羽根の開閉制御を3種類装備」しているので、ご覧のとおり「印刷アルミ板の絞り値数値も3箇所」あるワケです (当然ながらマウント規格別に違うので向きも逆に印刷されています)(笑)
↑絞り環に鋼球ボールを組み込んでからセットしますが、前述のとおりグリースなど塗っていません(笑)
↑完成している鏡筒をセットしたところです。既にこの時点で鏡筒から飛び出ていた2本のアームとも絞り環が連係済です。
↑指標値環をセットしてマウント部を組み付けますが、実はここの工程が相当「高難度」なので、途中の写真を撮っていません(笑)
【マウント部組み込みの際の微調整】
① 絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量) の微調整
② 絞り羽根の開閉角度の微調整 (3つのなだらかなカーブの中の一つ)
③ 絞り羽根開閉アームとの連係時の位置調整
④ 距離環を回す際のトルク調整
これら4つの微調整を同時に進めつつマウント部をセットする必要があるので撮影している余裕がありませんでした(笑)
↑距離環を仮止めしてから光学系前後群を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。
ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。
↑完璧なオーバーホールが終わっています。『ゲテモノ食い』かも知れませんが(笑)、決して安かろう悪かろうではない「今ドキのインスタ映え」には十分使い勝手がある広角レンズの一つだと当方は評価しています (但し市場の評価は限りなくゼロに等しい)(笑)
「高難度モデル」ですが、何か大変かというと「微調整」ではなくてむしろ「組み立て工程手順」の見極めのほうが相当厄介です。サービスマニュアルが欲しいくらいでしたね(笑)
今回初めて扱ったので、当然ながら当初バラしていく際に「組み立て工程の手順考察」を同時進行で考えながら解体していかなければ組み上げ方法が見えてきません(笑)
SNSなどで当方を指して「バラすのは上手い」などと揶揄していますが(笑)、完全解体ができるだけでは組み立て時の微調整は完璧にできません。それは必ずしもその時手にしているパーツの微調整だけで終わらないからです (他の部位からのチカラの影響を必ず受けているから)。
従ってバラしていく際は、外そうとしている構成パーツがどのように他の部位に影響を及ぼしているのかをシッカリと見極めていかなければ、組み立てる時は「単に組み上げるだけ」になってしまい肝心な使い易くする為の適切な微調整が全くできません。
逆に言えば「単にバラして逆手順で組み立てるだけ」なら誰にでもできますね(笑)
よくネットを見ていると、オールドレンズをバラす際に構成パーツが重なっている位置をマーキングしたりしていますが、もちろん当方もマーキングするものの、その意味が全く違います。
皆さんがやっているマーキングは「その位置で組み立ての際固定する為」であり、要はバラす前と同じ位置で固定しようと言う思惑がありますね(笑)
当方がマーキングする理由は「当初の動き方の位置を確認する為」であり、その当初の位置が「正しいとは考えていない」ワケです(笑)
例えば光学系を清掃するのにバラしたら、次に組み上げる際は検査具を使って検査していかなければ適切な光路長を確保できません。また絞り羽根を清掃したら組み上げる時は「絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量)」も検査しなければ不明なままです。もちろん無限遠位置もヘリコイド (オスメス) をバラしたのなら必然的にズレますね(笑)
これもよく言われる話ですが「固着剤」は一番最初の製産時点で塗られた位置が適切なので「固着剤を残したままその位置で固定するのが適切」だと言う考え方です。これは非常に多くの整備者がいまだに執り続けている考え方ですが、当方は間違っていると思っています。
そもそもバラした時に塗布されていた古い「固着剤」が製産時点の固着剤だと誰が言っているのでしょうか?(笑)
既に過去に何回かメンテナンスされているのだとすれば、その「固着剤」が製産時点の固定位置を維持している保証がありません。整備者なら誰しも「固着剤を剥がさないから」必然的に製産時点を維持している可能性が高いと踏んでいるワケですが、そのような確証は一切ありません。
もっと言うなら、光学系にしろヘリコイド (オスメス) にしろ他の部位も含めて一度でもバラしたらベストな微調整位置は自ずと「0.1〜0.5mm単位」でズレが生じています。「締付ネジ」でさえマチがあればそれすらズレています。
要はオールドレンズは一度でもバラしたら当初の位置は何の意味も持っていません。あくまでもバラす前の微調整位置でしかないからです。バラしたらその都度適切な位置をもう一度調べて判定しなければダメですね(笑)
整備者に求められるのはその判定能力なのではないでしょうか・・(笑)
↑光学系第2群の貼り合わせレンズはコバ端の塗膜が経年劣化で浮き始めており、ご覧のように汚い状態です。また貼り合わせレンズの裏面側外周附近にLED光照射で視認できる「非常に薄いクモリ」が極僅かにありますが、コーティング層の経年劣化なので清掃でも除去できません。写真には一切影響しませんし、光源を含むシ〜ンや逆光撮影時などでも全く影響しないレベルです。
↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
↑光学系後群側も透明度が高い状態を維持しています。LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です。
↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:11点、目立つ点キズ:7点
後群内:16点、目立つ点キズ:11点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(極微細で薄い3ミリ長が数本あります)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):あり
(第2群貼り合わせレンズ裏面側の外周寄りにLED光照射で浮き上がる極薄いクモリがあります)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・第2群貼り合わせレンズのコバ端は反射防止塗膜に経年劣化に伴う浮きが生じているため、少々汚く見えますがカビなどではなく写真に影響もありません。
・光学系内の透明度が非常に高いレベルです。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。
↑6枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正六角形を維持」したまま閉じていきます。
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「重め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。
【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
・当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
・附属の中古フィルターは清掃済ですが微かな拭きキズなどが残っています(実用レベルでキレイ)。
↑今回初めて扱いましたが、ハッキリ言ってオーバーホールの作業対価分の回収がムリなモデルだと感じしました (それほど高難度)。時々扱うつもりで今回試してみましたが、どうもこの微調整の難しさでは二度と扱いたくない気持ちのほうが大きい気がします(笑)
下手すると今回が最初で最後の扱いになるかも知れません・・。
『ゲテモノ食い』したい方は是非ご検討下さいませ (このモデルはこれが最後かも知れません)。
無限遠位置 (当初バラす前の位置から適切な位置に調整済/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい。当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません。
↑中古ですがUVフィルターが附属します (後キャップはありますが前キャップはありません)。
ブライトブラックの筐体がとても美しく光り輝きます。最短撮影距離「22cm」とハーフマクロに近い位置まで寄れるので、なかなか使い出のあるモデルと思います。
↑最短撮影距離22cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります (簡易検査具による光学系検査を実施済で偏心まで含め光軸確認は適正/正常)。