◎ TAMRON (タムロン) SP 180mm/f2.5 LD (IF) 35th Anniversary (#63B)(PK)

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今回初めて扱うTAMRON製望遠レンズ『SP 180mm/f2.5 LD (IF) 35th Anniversary (63B) (PK)』です。

1988年に創立35周年記念として僅か3,000本だけ製産された限定のモデルですが、その後1992年まで受注製産が続きました (受注製産 モデルはレンズ銘板プレート刻印文字に35the Anniversaryが無い/モデル銘のみ)。

モデル銘についてご案内すると「SP」は「Special Performance」頭文字で「高級シリーズ」を意味します。また「LD」は「特殊低分散硝子」を意味し「Low Dispersion」の頭文字を 採った略号ですが、例えばCanonは「UD」Nikon/OLYMUS「ED」SONY「AD」など各光学メーカー別で呼称が変わったりしています。

光学系は7群10枚と言う大変贅沢な、TAMRONのこだわりを追求した変形テレフォト型光学系です (右図はクリックすると拡大できます)。

特定の波長帯域に対して通常よりも低い屈折率の分散特性を持つ 「蛍石硝子レンズ」がありますが、2枚使う事でその「蛍石硝子
レンズ1枚
」に相当若しくは近い分散特性を得られる「特殊低分散 硝子レンズ」をTAMRONでは「LDレンズ」と呼称しており、今回のモデルでは右構成図の 部分、第1群 (前玉) 〜第2群に使用しています。

第1群 (前玉) は裏面の曲率が非常に緩やかな両凸硝子レンズを採り、且つ第2群には凸平硝子レンズを配置しています (共にLDレンズ)。

この「特殊低分散硝子レンズ」を用いる事で「色収差を徹底的に排除したアポクロマート」を実現するのがその目的で、優れた解像力とヌケの良い描写性を体現している光学設計です。

さらに今回のモデルでは筐体全長が変化しない「インナーフォーカスシステム」を積極的に 採用し、焦点距離:180mmと望遠レンズ域のモデルながら僅か12.4cmのコンパクトな筐体を実現しています (モデル銘のIFはインナーフォーカスの略)。

上構成図で 部分の第5群〜第6群が絞りユニット直前で直進動する「インナーフォーカス」を採っています (赤色矢印)。従って構造面で光学系内に「昇降機能」を内包しているのが大きな特徴と言えますね。

さらにこの光学系を別の角度から捉えると (考察すると) 昇降筒を含む第4群〜第7群までの 部分をまとめて「ヘリアー成分」と捉えれば、アポクロマートの前配置 (第1群〜第2群) 及び望遠レンズの焦点距離としてのテレフォト特性を加味する意味から第3群の凹成分を用意して入射光制御している事が分かります。

筐体サイズのコンパクトさを最大限に重要視しつつも望遠レンズとしての当時最高の描写性能を徹底的に追求したモデルと言えるのではないでしょうか。
(TAMRON社内の型番として63Bになります)

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上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端から円形ボケが破綻して背景ボケへと変わっていく様をピックアップしていますが、円形ボケの表出自体が苦手なのか実写として円形ボケがとても少ないように思います (よく分かりません)。上のピックアップの中で「3枚目」をご覧下さいませ。「LDレンズ」を贅沢に活用したアポクロマートレンズである事がこの写真を見ただけで納得です(笑) とても鋭いピント面を構成しながらも、少々誇張気味にさえ感じるほどにピント面のエッジは過剰補正された鋭さを維持し、しかしその背景へと「光の移り変わり」を余すことなく写真として写し込めている部分が、まさに当方にとっては「溜息モノ」です(笑)

この実写をたったの1枚見ただけで、このモデルのポテンシャルを確信してしまったほどです・・。

二段目
左端のダイナミックレンジをご覧頂ければ、どんだけ広いのかと言う話です(笑) 陰影を違和感なく滑らかなグラデーションで保持してしまうところがさすがとしか言いようがありません。2枚目の写真はディストーションをチェックできると思いますが、広角レンズではないので歪みの率が低いのは当然なのですが、問題はこの「均質感」の表現性です。単にゴチャッと写ってしまうのではなく、シッカリと微細な部分まで見ようという気持ちになる写し込みができているところに、当方は感心しました。そして3枚目の写真ではビミョ〜なイントネーションの違いを、然しちゃんと質感表現能力を発揮して写真に残しているところがオドロキです。

実写が少なめですが、然し十分にこのモデルの素晴らしさが堪能できるピックアップばかりでさすが「35th Anniversary」を謳うだけの事はあると感心してしまいました。

↑上の写真は当初バラし始めたところで撮影していますが、距離環のラバー製ローレット (滑り止め) だけを取り外した状態です。

まずご依頼者様が我慢できなかったのは「レンズ銘板の位置がズレている」点です(笑) 基準「」マーカー位置から右方向に外れた場所に金色のレンズ銘板が位置しています。さらにその基準「」マーカー自体も最短撮影距離位置「1.2m」に到達していないと言うズレが生じています。

そして致命的なのはテーピングの汚さですね (当方にとっては致命的と言う意味)(笑) セロテープを使うのは分かりますが、なにゆえにこんなに汚くしたまま仕上げるのでしょうかね?

左写真はその拡大撮影になりますが、よ〜く観察するとそもそもアルミシート板をとめていた黒色のテーピングが施されていた時期がある事がこれで分かります。つまりこの個体は過去メンテナンスが「2回目のメンテナンス」である事が明白です (最低でも2回目で下手すれば 3回目なのか?)。

しかしいずれにしてもテーピングが汚すぎです(笑) ラバー製ローレット (滑り止め) で分からなくなってしまいますが、だからと言ってここまで酷いテーピングをしなくても良いように思うのですがね(笑)

さらにアルミシート板のテーピングを剥がしてその下をチェックしたところ、再びセロテープが現れました(笑)

よほどセロテープが好きな整備者だったようですね(笑) 既に経年劣化進行からセロテープの糊が滲み出ておりセロテープ自体に「浮き」が現れています。

ここまで距離環に施されているテーピングについてご案内してきましたが、このテーピング 自体は過去メンテナンス者の好みで施した話ではなく「このモデルの構造自体がテーピングを前提とした設計」であり、この当時のTAMRON製オールドレンズには実は意外と多く採用されている手法です。

固定するのにテープなの?」と不安になるかも知れませんが(笑)、然し全周に渡ってテーピングを施した時、その「固定力」は相当なレベルに達しますから、不安がらずにご覧下さい。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。一部を解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。筐体サイズが特大なので撮影に使っている楢材のお盆に並びきりませんが(笑)、残念ながら鏡胴のヘリコイド (オスメス) 部分が解体できませんでした。

↑絞りユニットを内包する鏡筒ですが、このモデルの設計上「インナーフォーカス」を採り入れてるので、鏡筒前部にそのシステム機構が配置されます。且つアポクロマートレンズなのでその為「LD硝子レンズ」もさらにその前に必要ですから、要は「延長筒」がドカッと鏡筒の前側に来ると言う設計です (従って何と絞りユニットがマウント側ギリギリに配置されている)。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑実は一つ前の写真になりますが「鏡筒」の内側「絞り羽根が配置される箇所」にビッチリとグリースが塗られていました。上の写真をご覧頂くと分かりますが、残念ながら一部構成パーツには「赤サビ」が出ており、洗浄したのですがご覧のようにキレイになりません (もちろん油染みは清掃できています)。

おそらく過去メンテナンス時に既に「絞り羽根の戻りが緩慢」と言う異常が発生していたのだと推測します。そこでその微調整を実施せずに安直にグリースをを塗ったくったのですが(笑)然しいくら何でも「絞りユニット内部にグリースを塗る」と言う発想自体が当方には信じられませんね (極寒地帯を国土に持つロシアンレンズではないですし)(笑)

どうして絞りユニット内部にグリースを塗ったらダメなのか???

光学系の硝子レンズに最も悪影響を及ぼすのは「経年の揮発油成分」です。もちろんそれはヘリコイドグリースから揮発している事が多いワケですが、その「揮発油成分」が光学系のコーティング層に付着する事で、その油分により「界面原理」が働き光学系内に侵入してきた空気内の「湿気/水分」が揮発油成分に留められてしまいます (引き寄せてしまう)。

するとその「湿気/水分」に含まれている有機物質を糧として同様に侵入していた「カビ菌」が繁殖を始めると言う話です。他にも「湿気/水分」に含まれる二酸化炭素 (CO2) 溶解に伴う「点キズ」の発生や、下手すれば光学硝子面のコーティング層に対して悪影響を来します。

従って当方が実施する「DOH」の最大の目的は一にも二にも「経年の揮発油成分の排除」及び「その因果関係の徹底的な除去」により「光学系のコーティング層寿命を可能な限り長らえる」事を使命とした処置です。簡単にひと言で言ってしまえば「製品寿命の延命処置」とでも言いましょうか(笑)

そんな程度の話です・・(笑)

↑こちらは解体できなかったヘリコイド (オスメス) の部位ですが、実際は「昇降機能」なのでヘリコイドと言っても「スライド筒」の組み合わせと言えます。

上の写真下部にあるネジ山に前述の鏡筒がネジ込まれますから、マウント直前に鏡筒が配置される特異な設計です。

昇降制御筒」には均等配置された3箇所に「スリット/切り欠き」が用意されており、そこに「昇降キー」なるシリンダーネジが刺さっています (グリーンの矢印)。シリンダーネジとは そのコトバのとおり「円柱にネジ山が備わっているネジ種」ですが、この当時のTAMRONではご覧のように「ナイロン製キャップ」を介在させる方式で金属面との抵抗/負荷/摩擦低減を 果たしています。

これは例えば他社光学メーカーになるとCanon/Nikonなども含めて「真鍮 (黄銅) 製キー」が多いですから、ある意味このような樹脂材を積極的に好んで使っていたのが当時のTAMRONとも言えます。

実はこの「昇降キー」には延長筒などの筐体外装まで含めた「光学硝子レンズの重量」全てが一極集中します。しかも稼動部に使われているワケですから、経年でヒビ割れしたり破損したりと言う「耐用性」に関して信頼性が問われる話になります。

当方がこの当時のTAMRONの技術力としていつも感心するのがこの「樹脂材を多用したキーの設計」であり、大手光学メーカーでさえ多用していなかったその技術力があると思っています。何故なら樹脂材の成分/資材配合についての確かに研究が成されていない限り「耐用性」で安心できないハズだからです。

たかが小さなネジかも知れませんが(笑)、然しそこには確かな技術力が宿っていると当方は 考えますね (さすがTAMRONです)。

昇降制御筒」に用意されている「スリット/切り欠き」の勾配 () は麓部分が「最短撮影距離位置」になり、坂を登りつめた頂上部分が「無限遠位置側」にあたります (グリーンの矢印)。

すると距離環を回すことで内部にセットされている「昇降筒」が行ったり来たり上下動を繰り返すので、その「昇降筒」に組み付けられている光学系の第4群〜第5群が可変している事になりますね (冒頭の構成図 部分)。

左写真はちょうど最短撮影距離の位置に距離環が来ている時の「昇降キー」の位置です。

するとちょっと詳しい方ならもう既に気が付いていると思いますが、ご覧のとおり「最短撮影距離位置」に来ている時に内側の「昇降筒は最も収納した位置」と言えます。逆に言えば「内側の昇降筒を最も繰り出した位置が無限遠位置」になりますね。

つまりこのモデルは一般的なオールドレンズで鏡筒を最大限に繰り出した時が「最短撮影距離位置」の設計とは真逆と言う話です。従って最大限に繰り出した時が無限遠位置で、最も収納した時に最短撮影距離になりますから、必然的にその基準位置が普通のオールドレンズの概念では組み上げられない事になる「高難度モデル」と言えます。

このように一般的なオールドレンズとは逆になっている場合に無限遠位置/最短撮影距離位置の微調整作業ができる整備者と言うのは、それほど多くないのではないでしょうか。実際今回の個体も過去メンテナンス時の微調整をミスっており距離環の刻印指標値が適切ではありませんでした。何故なら今回のモデルのように最短撮影距離位置の時、距離環の刻印指標値が仕様上の「1.2m」を超過して停止している場合、いったいどの位置で停止していれば適切なのかの目安がつきません。逆に言えば、一般的なオールドレンズでは無限遠位置は一つしか存在しないので、そこで距離環が突き当て停止すれば良い話になり、目安が付け易いワケです(笑)

これがまさに当方がいつも話している「原理原則」であり、曲げようがない理論とも言えますね(笑) 従って「原理原則」を熟知している整備者なのか否かがモロに問われる構造なのが今回のモデルと言える次第です (だから高難度モデル)。

↑完成している鏡筒をセットします。

↑距離環の下部分と基準「」マーカーがある指標値環を組み込みます。

↑後からでは面倒なので (なにしろ重い)(笑)、先にここで光学系前後群を組み付けてしまいますが、上の写真は光学系第2群の「LD硝子レンズ」の表面側を撮っています。

するとご覧のとおり既に2/3の領域に対して清掃を行っているのですが、残りの1/3の領域 (硝子右側) に「極薄いクモリのように写っている箇所」が分かります。

今回の個体をバラして光学硝子レンズを清掃したところ以下2つの問題点が発生しました。

光学硝子レンズ表層面に頑固な油膜がある
光学硝子レンズのコーティング層に黒インク成分が付着

はまさに前述のヘリコイドグリースはもとより絞りユニット内部にまで塗られてしまった 過去メンテナンス時のグリースから揮発した「揮発油成分」が油膜となっています。

普通は光学硝子洗浄液で清掃すればサッと一拭きでキレイに「揮発油成分」が除去できるのですが、今回の個体は3回清掃してようやく完全除去できるレベルでしたから(笑)、相当なモノです。実際上の写真も2回目の清掃が終わった状態で撮っていますから、まだ一度も拭いていない右側との境界部分に「拭き残りの揮発油成分/油膜」がちゃんと写っています(笑)

またの黒インク成分と言うのは、光学硝子レンズのコバ端に塗られてしまった「黒色反射 防止塗料」のインク成分で光学硝子面の清掃時に使っているシルボン紙が薄く黒ずみます(笑)

つまりはメーカー製産時点で塗布していない「コバ端着色」にこだわっていた事が過去メンテナンス者の所為とも言えます。これはいわゆる「整備者の自己満足大会」としか言いようが ありませんが(笑)、コバ端を黒色に塗れば「光学系内の迷光を低減できる」と信じ込んでいるワケです(笑)

もっと端的に言えば、仕上がったオールドレンズの光学系を覗き込んだ時に「光学系の中が 真っ黒に見える」ほうが良いから、そう見えるように「コバ端着色」にこだわるワケで、いわゆる体裁面の話ですョね?(笑)

しかし考えてみて下さい。製産時点、或いは設計時点でコバ端着色していなかったのに、どうしてそれにこだわる必要性があるのでしょうか???

当方にとってはチャンチャラ可笑しい話にしか見えませんが(笑)、先日のニュース記事にもあったように、光学系内の「迷光」が大きく影響するのは「人工衛星レベルの話」であり、先日のニュースでは「反射防止率99.99%」と言うマットな漆黒の黒色の塗料開発が世界で初めて行われたと言うニュースでした。

もっと言えば光学硝子レンズ精製会社の方にお聞きしても、一般的なオールドレンズの光学系内で「迷光」を問題視するなら「ではどうして絞り羽根は真っ黒ではないのですか?」と逆に質問されてしまう始末です(笑)

まさしくそのとおりで、当方は9年間オーバーホールをし続けていますが今までに「マットな漆黒な 真っ黒の絞り羽根」を見た事がありません(笑)

そうですね、たいていはせいぜい黒っぽくても「メタリックグレー/ダークグレー」程度の 絞り羽根ばかりであり、はたしてその絞り羽根に反射した光を「迷光」とは呼ばないのかと 言う疑問が湧きます(笑)

よく光学系内の光学硝子レンズコバ端が「真っ黒ではない」点を指摘している人が居ますが、甚だ可笑しい話です(笑) もちろん「迷光」がゼロなほうが良いには決まっていますが、それにこだわる必要性は非常に低いのが一般的なオールドレンズの世界ではないのでしょうか。

迷光
光学系内で必要外の反射により適正な入射光に対して悪影響を及ぼす乱れた反射光

↑絞り環をセットしたところです。

↑マウント部を組み上げました。

この当時のTAMRON製オールドレンズはそのほとんどのモデルで「ADAPTALL 2 (アダプトール2)」と言うマウント種別を差し替え 可能な独自規格を採用していましたね。
特に問題となるのが「絞り連動リング」の反応で、今回の個体もこの車輪が押し込まれても適切に「チカラの伝達」が成されておらず、それをごまかす為にグリースを塗りつけた「グリースに頼った整備」が過去メンテナンス時に行われていました。

↑距離環の上下に分割している部位をテーピングで固定してから、さらにアルミ板で固定します。今回のオーバーホールではご覧のようにセロテープではなく遮光テープを使ってキレイに固定しました(笑)

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ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑このモデルの組み上げができる技術スキルを有する整備者なので、さすがにシロウト整備はムリで過去メンテナンス者は「プロの整備者」だと考えますが、どう言うワケか距離環の指標値との駆動ズレは放置プレイですし(笑)、さらに「グリースに頼った整備」で仕上げており、それらの手口からプロのカメラ店様や修理専門会社様に在籍する整備者ではないかと推測しています(笑)

こういう整備者が今も居るんですョ・・(笑)

↑都合5回も清掃してしまいましたが(笑)、光学系内に頑固にこびり付いていた「油膜」もキレイに除去できて、LED光照射でもコーティング層の経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無な「スカッとクリア」な状態に仕上がりました。

少々微細な点キズなどが多めでしようか・・。

↑今回の個体は残念ながら「昇降機能」の部位が解体できませんでしたが、それでもキッチリ微調整がちゃんと終わっています。

昇降機能」の部位が解体できなかった理由は、前述の「昇降キー」が3本のうち1本しか外れず、他の2本が残った為に解体できませんでした。おそらく過去メンテナンス時に充電ドリルによる機械締めをしていると考えます。

とても「人力」では外せないレベルでした。
申し訳御座いません・・。

↑当初緩慢な戻りだった絞り羽根の動きも小気味良く改善され、且つ正しい絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量) に簡易検査具を使って微調整しました。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑前述のとおり「昇降機能」の部位を解体できていないので、申し訳御座いませんがヘリコイドグリースもそのままです。従って距離環を回すトルクも当初バラす前のトルク感と何ら変わっていません (ヘリコイドグリースを入れ替えていないから)。

残念ながら解体できない限りヘリコイドグリースの入れ替えはできません。何故なら過去メンテナンス時に塗られているのが「白色系グリース」だからです。

↑「ADAPTALL2」マウントは「PKマウント」がセットされています。また最小絞り値も「f22」止まりになります。

指標値ズレも含めて無限遠位置なども適切に微調整を行いました・・但し、無限遠位置の「∞」左側の◉部分で停止するよう位置をセットしました。昇降筒を解体できていないので 位置の微調整に限界があり「∞」の中心に合わせられていません。

申し訳御座いません・・。

無限遠位置 (当初バラす前の位置から適切に微調整/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離1.2m付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります (簡易検査具による光学系検査を実施済で偏心まで含め光軸確認は適正/正常)。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮っています。

↑f値は「f8」に変わりました。

↑f値「f11」に上がっています。

↑f値「f16」での撮影です。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。極僅かですが「回折現象」の影響が現れているでしょうか。然しここまで最小限に留められているので、さすがだと思います。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

大変長い期間に渡ってお待たせし続けてしまい本当に申し訳御座いませんでした。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。