◎ Carl Zeiss (カールツァイス) Triotar 85mm/f4 (chrome)《後期型》(CONTAX RF C)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、旧西ドイツは
Carl Zeiss製中望遠レンズ・・・・、
Triotar 85mm/f4 (chrome)《後期型》(CONTAX RF C)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回完璧なオーバーホールが終わってヤフオク! 出品するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた13年前からの累計で捉えても初めての扱いです。

先ずは冒頭で、このような大変希少なオールドレンズのオーバーホール/修理ご依頼を賜り
ました事、ご依頼者様に感謝とお礼を申し上げたいと思います・・ありがとう御座います

つい昨年までは「CONTAX 旧レンジファインダーカメラマウント C規格」について、どう
しても市場流通するマウントアダプタに対してしの正確性に疑念が払えず、扱いを躊躇して
ばかりいました。

いつも懇意にして頂く『神々しい方』方から「amedeo adapter」の存在をご教授頂き、意を決して海外オークションebayから手に入れ、ようやくオーバーホール/修理する気持ちに至り
ボチボチと扱いを進めているところで御座います・・ありがとう御座います。

何しろ当方は『極度のカメラ音痴』「写真スキルが皆無」な上に「光学知識も皆無」なので、そもそもオールドレンズのことをよく知りませんし、ましてやこういう本来注目すべき
モデルについて、本当に疎いばかりでお恥ずかしい限りです (スミマセン)(汗)

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1932年に戦前ドイツのZeiss IKonから発売されたレンジファインダーカメラ「CONTAX I型」向けに供給されたオプション交換レンズ群の中の一つが今回扱うモデルTriotar 85mm/f4 (chrome)《後期型》(CONTAX RF C)』ですが、そのモデルバリエーションで捉えるなら、筐体外装まで含めまるッきし一新された「後期型」との認識が必要になります。

←左図は「CONTAX I型」発売時の取扱説明書からの抜粋で、オプ
ション交換レンズ群を明示しているページです。

これを観ていくと、例えば「2.8cm」と言う広角レンズが既にこの当時 (1932年) から存在していたことを示しますが、注視すべき問題は名前=モデル銘です(笑)

Tessar 2.8cm/f8」ですから、どうしてもその開放f値「F8」に目が向いてしまいますが(笑)、そうではなくて、注視すべきは「Tessar銘」です(汗)

どうして広角レンズ域のモデルなのに「標準レンズ域の光学設計であるTessar銘がつくのか
???
」との疑問を抱かなければイケナイと言っているのです(笑)

その根源なのが「レンジファインダーカメラ」の素性であり、戦後になってからようやく普及が始まった「クイックリターンミラーを内蔵した一眼 (レフ) フィルムカメラ」ではない点を「光学系から捉える時に、必ずそのスタートラインに据えるべき見る為の位置」であることを
述べています(汗)

逆に言えば、そのような立場に立って見なければ「今回扱うTriotarの性格が正しく伝わら
ない
」ことを覚悟するべきです(汗)

この左図のオプション交換レンズ群一覧を眺める際に「モデル銘」に注目するべきで、例えば唯一存在していた前述広角レンズが「Tessar銘」に対し、次に登場するのは標準レンズばかりです。そして中望遠レンズ域に入るとイキナシ「Sonnar銘」がガツンッと現れ、その先の焦点距離たる13.5cmにまで「Sonnar銘」が居ます(汗)


↑この当時、ちょうど1800年代後半辺り〜第一次世界大戦前夜の頃は、各国で数多く光学設計者が群雄闊歩していた時代で(笑)、オールドレンズにとりまさに「光学設計の黎明期」とも受け取れます。

二段に分かれていますが、上段左端から1889年に米国天文学者の「Alvan Graham Clark (アルバン・グラハム・クラーク)」氏が発案した特許出願申請書US399499 (1889-03-12)』を指して、近年では「ダブルガウス型光学系の始祖」と捉えるようになっています (光学系名称は不明)。

さらに上段左から2つめが英国人「Harold Dennis Taylor (ハロルド・デニス・テイラー)」氏による1896年の発明「Triplet (トリプレット) 型光学系」になり、3枚玉というシンブルさ故に未だに人気が高い光学設計の一つです。そしてその時の特許出願申請書US568052 (1896-09-22)』がまさに今回扱うモデルの始祖たる立場です。

時を同じくしてドイツ人物理学者「Paul Rudolph (パウル・ルドルフ)」氏による1896年の発明「Planar (プラナー) 型光学系」は画期的発明案件で、今現在でも畏敬の念を以て捉えられています。その特許出願申請書GB189627635 (1896-12-04)』が3つめになり、同じくドイツ人「Goerz Carl Paul (グルツ・カール・ポール)」氏による1900年発明「Hypergon (ハイペルゴン) 型光学系」のUS706650 (1900-11-05)』などに続きます。

下段に移るといよいよ光学系発明に係る考察の角度が様々に画策され、その濃厚さを増して
いきます(笑) サクッとより味わい深く美味しく堪能したい人向けの設計群です(笑)

下段左端から何はともあれ、現代でも現役でガンバル「Tessar (テッサー) 型光学系」を開発した「Paul Rudolph (パウル・ルドルフ)」氏による1902年のGB190213061 (1902-06-02)』に、英国人「Horace William Lee (ホーレンス・ウィリアム・リー)」氏発明の「Double Gauss (ダブルガウス) 型光学系」として1920年申請のGB157040 (1920-08-14)』と続きます (下段2つめ)。

さらにそこから影響を受けて発展した「Ludwig Jakob Bertele (ルートヴィッヒ・ヤコブ・ベルテレ)」氏発明の「Ernostar (エルノスター) 型光学系」が1924年にDE458499 (1924-07-22)』が登場 (3つめ)、そして同年いよいよ究極的、且つ高速高性能レンズたる「Sonnar (ゾナー) 型光学系」がUS1708863 (1924-12-05)』としてベルテレにより申請され日の目を見ます (右端)。

・・光学マニアには本当に美味しくて、アッと言う間に満腹になるくらいの時代です!(笑)

ここで話を戻しますが(汗)、このような1920年代辺りの流れから鑑みるに、はたして時代的にはとっくに高性能たる光学設計が登場していたのに「どうして3枚玉トリプレットにこだわって設計してきたのがTriotarだったのか???」と言う、或る意味最も素朴な疑問が湧いてきます(笑)

実はこの疑問の本質がちゃんとあり「前出したCONTAX I 型取扱説明書に掲載のオプション
交換レンズ群の中にあって、唯一の単独レンズ構成
」こそが、今回の解説での「純な3枚玉
たるトリプレット型光学系
」の立ち位置を明示している点を、ちゃんと読み取りましょう(笑)

・・そうなのです!(笑) 2枚〜複数枚の貼り合わせレンズをその光学設計内に内包しない、唯一の単独光学硝子レンズ群での設計として登場しているのです(笑) まさに当時の価格リストをチェックすれば歴然ですが(汗)、他のSonnar系モデルとは明確な価格差を付けられ「低価格の下手すれば廉価版的な性格」すら捉えられかねない、実際当時も今も巷の評定者達言い分は
そのような言い回しだったりします(汗)

さらにそれを裏付けるが如く当時の時代背景として「戦後までは、まだレンジファインダー
カメラ主体の時代だった
」単に合わせて、意外と今ドキに見落としがられてしまう要素として「当時の市勢での主流は未だに白黒写真と白黒印画紙」が当然の如く当たり前だった時代で
あった点を確実に考慮する必要があります(汗)

・・何を言いたいのか???

CONTAX I型」登場当時にその評価基準に晒されていたのは「白黒写真撮影」であり、その環境下だけに限定して照らし合わせると「意外にもこの3枚玉Triotarが吐き出す写りは、相当なレベルを保持し続けている」と受け入れてしまうのは「光学知識皆無」な当方の未熟さ故でしょうか???(汗)

画の全体から把握したがり屋」たる当方には(笑)、このTriotarが吐き出す写りには、まさに明暗部や陰影の微妙なグラデーションを留めつつも、然し明確にピント面の鋭さ感に誇張感を意識し、しかし決して違和感に至らないのが不思議なくらいに自然な中にも明確に撮影者の企図を伝達させる能力を持ち、意外にもパッとすぐに似たようなモデル銘が挙げられない特異的な特徴と性格を有するオールドレンズを感じ、本当に素晴らしく見えてしまいます(涙)

例え巷の評価通り「廉価版的な位置づけ」として戦略的に登場した背景や経緯があるのだとしても・・そんなのどうでもいいです!(笑) 血液型O型の性格が丸出しなので(汗)、感動したら周りが見えなくなってまっしぐらです (万歳突撃大好き派)!(笑)

・・ハッキリ言って今回扱うまで調べることもなく、全く知らなかった領域です!(涙)

・・恥ずかしい!(恥) 然し、今は逆に白黒撮影に於いての中望遠レンズ域には、なくてはならない存在の如く自身の中でそのポジショニングを与えられ、間違いなく当方の大好きなモデルの一つに組み入れです!(笑)

・・ご依頼者様、このような新鮮な完動を与える機会に恵まれ、ありがとう御座います!(涙)

やっぱり「CONTAX レンジファインダーカメラ Cマウント規格」のオールドレンズって、
凄いのですねぇ〜(汗)

  ●               



↑上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。

一段目
このモデルで撮影した円形ボケの状況を知りたかったのですが、左端1枚しか見つからず(汗)
もう少しカタチや崩れ方を見たかった感じです(笑) このモデルで撮影した実写は「ピント面のエッジが誇張表現されすぎて、見るのが辛い時がある」と言うのが、当方の正直な第一印象なのですが、それは実写の鑑賞を重ねていくと或る一つの結論に到達しました。このモデルは「白黒撮影でこそ、そのパワーを最大限に発揮できる」・・と。

そもそもモデルバリエーション上の「前期型/後期型」の違いで「光学設計が別モノ」に豹変することからも捉えるべきで、特にその点が大きく影響を与えるが為に、そのような写りの印象へと繋がったように思います(汗)

従って白黒写真になると安心して眺めていられるのですが(笑)、ご覧のように左端の円形ボケは「決して誇張的には至らず、むしろ優しく自然な印象さえ覚える」くらいの勢いで見られ
ます(笑)

2枚め〜3枚めまでは全て「空気感を漂わす印象」について感動しピックアップしています。
撮っている被写体は当然ながら明確にちゃんとシッカリ撮れているのですが、それに合わせて「ピント面の背景や手前の空気感を写し込んでいる」と言う、要は「ボケ具合と光の制御」に対するコントロールの特徴が現れている写真に思います。

但し、リアルな現実には「モデルバリエーションの相違が明確になっていないまま」で眺めている実写なので、本当はハッキリ結論づけしないほうが良いのですが、ここにピックアップした実写の根拠は「8.5cm」とセンチ表記で撮影者が載せている実写です (85㎜表記になると後期型が混ざってしまうとの捉え方)。

そしてやはり白黒写真に限定しての話になりますが「空気感」を感じる写りは、そのピント面の境界でのボケ具合に起因するようにも感じるものの、実はそれに合わせて/同時に「光の制御が適材適所だから凄い」ようにも感じています(汗)・・よく分かっていないのですが(笑)

二段目
ここではイキナシ人物撮影になりますが、そもそも焦点距離:85㎜なので、ポートレート
レンズとしての性格が強いとの受け取り方からピックアップしています。はり白黒撮影になると断然人肌感までが違うように見えるから不思議です(笑) その一方でカラー撮影になると、やはりぎこちないと言うか「キツイから観ているのが辛くなる」くらいの勢いで、画の何かが誇張的で主張が強すぎるように思います(汗)・・それが白黒撮影になると途端に「ス~ッと心に感動を引き連れて入ってくる」から堪りません!(笑)

三段目
この段では明暗や陰影、或いはそこから来るグラデーションの素晴らしさについてピックアップしました。白黒写真は、単にリアルになるだけではなく、その場の臨場感や雰囲気まで漂わせる写真として写し込めてしまうから・・やっぱり凄いオールドレンズです!(驚)

なお、このオーバーホール/修理作業が終わってご案内したところ、ご依頼者様から大変ステキなお写真数枚ご送付頂き、確認できましたことお礼申し上げます・・ありがとう御座います

それらお写真、特にカラー写真を拝見するに、とても素晴らしい描写性 (誇張感なく、とても自然に写る) であることに改めて感じ入り、決して白黒撮影に限らないのだと反省したところで御座います(汗)・・なかなか当方の写真スキルが低すぎるので、本当にいつもながら申し訳なく思うばかりです(汗)

わざわざ実写をお送り頂く、ご依頼者様のお心遣いがとても痛み入ります・・ありがとう御座います!(涙)

↑やっとのことで本題に入ります(笑) 同様1932年発売「CONTAX I型」取扱説明書からの抜粋が左端の図です。巷で俗に「Black & Nickel (ブラック&ニッケル)」と呼称される初期
バージョンの「Triotar 8.5cm/f4 (C)」になります。

ニッケル金属材は鉄族元素の一つでレアメタルに入り、日本で例を挙げるなら「50円玉」が分かり易く、サビに強く耐熱性が高く特に海水に漬けても錆びにくい特徴を持ちます。

2つめに挙げたのは、1927年ドイツの写真機/光学メーカーたる「C.P. Görz (グゥルツ)」社がZeiss Ikonとの合弁により移籍していた「Robert Richter (ロバート・リヒター)」氏による特許出願申請書US1892162 (1930-05-27) 』になり、まさに発売直前の様相を呈して
いたと言わざるを得ません(汗)

そしてここからがようやく今回扱った個体の光学構成に繋がる内容になりますが(汗)、3つめの構成図がそれら取扱説明書から当方の手によりトレースした構成図になるものの、右端こそが今回のオーバーホールで完全解体した際、光学系の清掃時当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての光学硝子レンズを計測した現ブツのトレース図です。

↑上の2枚はネット上から拾ってきた「Triotar 8.5cm/f4《Black & Nickel》(左)」と「Triotar 85mm/f4 (chrome)《Oberkochenモデル》(右)」の光学系後群後玉を直視する向きで撮影した写真です。

すると赤色矢印で指し示している箇所に「距離計連動クッション環の内壁との隙間」があり、さらにグリーン色の矢印が「後玉の外縁」を示し、要は「後玉の大きさ/外形サイズが小さく変わっている」点を、一つ前の光学系構成図を明示するその証拠として挙げてみました(汗)

これらの事実から捉えられる内容は「Black & Nickel」発売時点は実装光学系に蒸着コーティング層が無いノンコーティングであるものの (1932年だからまだシングルコーティング層の特許出願申請書すら提出されていないタイミング)、右側写真の「oberkochenモデル」登場時点では、3枚全群にモノコーティングが施されており、一部の製産出荷個体には「zeissのT」刻印をレンズ銘板に伴っていたのが明白です (上の写真も右側はパープル系コーティング層が視認できる)(汗)

するとここで初めて「製造番号から捉えた時の、個体別の時系列的状況把握」に興味関心が
移ります(笑)


↑上に列挙した写真は、現在のネット上から拾ってきたサンプル58個の中からチョイスした8枚です(汗)

《モデルバリエーション》
※あくまでも製造番号から照らし合わせた一例であり、製造年は逆算しただけの目安です。

Carl Zeiss Jena製 (戦前〜戦時中) 上段
Black & Nickel (製造番号:1212463) 1930年製造
Black & Nickel (製造番号:1549611) 1934年製造
Chromeモデル (製造番号:1890345) 1936年製造
Chromeモデル (製造番号:2829955) 戦時中???

Oberkochen製 (戦後の旧西ドイツ側) 下段
zeissの刻印付 (製造番号:853449) 1952年製造
zeissの刻印付 (製造番号:958814) 1952年製造
zeissのT刻印無 (製造番号:1452478) 1954年製造
zeissのT刻印無 (製造番号:2612578) 1959年製造

そもそも「CONTAX I」の発売が1932年なのに、どうして Black & Nickelの製造番号で「1212463」が顕在するのか、今ひとつ理解に苦しみます (ネット上告知のシリアル値に
照合した場合
)(汗) さすがに刻印されているレンズ銘板の話なので、他の個体からの転用は
不可能で、どうにも逃げられ/誤魔化しようがありません(汗) この事実を真摯に受け取るなら「ネット上に告知されているCarl Zeiss Jenaモデルの製造番号帯が間違っている」としか考えられず、2年前に遡って既に量産品を製産していたとは考えられません (2年間も倉庫に寝かせておく理由が見つからない)(汗)

なお下段の「Oberkochenモデル」ので「zeissのT刻印が消えた」のは、単にレンズ銘板への刻印を省いてしまっただけで「世界規模でモノコーティングが当たり前の時代に突入したから」とも指摘できます (刻印が無くてもちゃんとzeissのモノコーティングが蒸着されている)。

ちなみに下段「Oberkochenモデルで、レンズ銘板のさらに先に「フィルター枠」のような突出があったり無かったりするのは、決して仕様ではなく「レンズ銘板の先/前玉締付環の先にフィルター枠の延伸環がネジ込まれているか、外れてしまったかの違いだけ」なので
この相違でモデルバリエーションを区分けする必要は一切ありません(笑)

逆に言うなら「装着したフィルターを硬締めしてしまうと、フィルターを外す際一緒に回って外れてしまう」という設計なので、注意が必要です・・内部でイモネジなどを使い、締め付け固定される設計を採っていません (単なる前玉枠外縁から同径のままの延伸環です)(汗)

以上、これらの考察から、戦前戦後含めCarl Zeiss Jena製モデルと、戦後に登場したOber-
kochenモデルとは、互いに全く別モノの光学設計を採っていたことが分かりました。当然と
言えば当然なのでしょうが、如何せんネット上で実写を確認する際は、撮影者の配慮に頼ら
ざるを得ません・・いったいどちらのモデルで撮影した写真なのか、明示してくれるか否かにかかっていると思います(汗)

但し、前述のピックアップした実写の多くは「8.5cm」と案内されていた写真ばかりを集めているので、どちらかと言うとCarl Zeiss Jena製モデル側の写真に集中してしまったのかも知れません(汗) なかなかそういう動作が/挙動が思考回路と連動できておらず、申し訳なく思ふところで御座いまする・・です、ハイ(汗)

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。モデル自体は鏡胴「前部/後部の二分割方式」なので、特に鏡胴「前部」はネジ込まれているだけですから回せば外せます。

その一方で鏡胴「後部」側はヘリコイド群であるのは他の一般的二分割方式のオールドレンズ同様としても「旧CONTAXレンジファインダーカメラCマウント規格」は「距離計連動環」を有する為、その機構部の仕組みを含め「距離環を回す時のトルク制御とその微調整」が必要になります(汗)

↑上の写真は今回の個体から取り外した光学系第1群前玉 (左) 〜第3群後玉 (右) を並べています。光学系前群が絞りユニットの前に位置するので赤色文字で示し、後群は背後なのでブルー色の文字で示しています。またグリーン色の矢印は前玉の露出側方向を明示しています。

↑同様ヒックリ返して今度は裏側を撮影しています。光学系前群後群に分け、前玉の露出側方向をグリーン色の矢印で指し示しています。

中央の光学系第2群を見ると、光学硝子レンズのコバ端に「白っぽく剥がれている箇所が手前側に見える」よう撮影しています。この剥がれ箇所を見ることで「経年で何回も着色されてきた反射防止黒色塗料の厚み」が理解できるのではないでしょうか???(汗)

ハッキリ言って「加熱処置」しなければ格納筒の中から取り出せなかったので、今回のオーバーホール/修理では溶剤を使い全て完全除去しています。

↑さらに光学系後群側第3群の後玉を立てて撮影しています。ブルー色の矢印方向が後玉の露出面側方向にあたります。するとご覧のように「後玉にカタチがある」ガラスレンズなのが分かると思います。

当方は「プロにもなれず、マニアすらなれなかった整備者モドキのクソな転売屋/転売ヤー」との話で、しかも「公然と平気で嘘を拡散し続けている」と某有名処のコメント欄に誹謗中傷が掲載され続けている始末なので(笑)、ネット上の数多く説明されている内容と違う解説の場合
いちいちちゃんと『証拠写真』を掲載しつつ解説しないとイケナイみたいです(汗)

冒頭で説明した当方がトレースした光学系構成図のカタチが、決して嘘ではないことをご理解頂けるでしょぅか???(汗)

特に前玉の外形サイズに比べて、第2群と第3群の大きさが極端に小径に設計変更してきた点について、その『証拠写真』として掲載しています (いちいち面倒くさい)(笑)

↑上の写真は筐体外装の一つで、距離環と絞り環の間に位置する基準「」マーカーの環/リング/輪っかを撮っています。すると赤色矢印で指し示しているように「筐体外装のブライト
クロームメッキが経年でくすんでいる
」のが分かると思います(汗)

一方、グリーン色のラインで囲った領域は、既に当方の手により「磨き入れ」している箇所を
ワザと故意に途中で止めてその違いを見比べる為に撮影しています(笑)

今回のオーバーホール/修理ご依頼者様、お一人様だけがこの個体が戻ってきた時、手にして
ご確認頂けますが「ピッカピカに磨き上げている」状況です(笑)

特に近年になると、海外オークションebayで流通しているピッカピカの個体が日本国内にまで輸入されて侵入してきています(汗) これらピッカピカの個体は、実は「筐体外装に光沢クリアを吹き付けて仕上げただけの紛い物」なので、惑わされないよう注意が必要です。

当方では基本、シルバー鏡胴も黒色鏡胴も関係なく、可能な限り「磨き入れ」により筐体外装の経年劣化進行に伴う酸化/腐食/サビを除去するので、本当にピッカピカになって戻ってきます (性能機能には一切影響せす、どうでも良い話ですが)(笑)

↑さらに完全解体まで進めて取り出した「ヘリコイド筒」をそのまま撮影しています (まだ古いグリースが残っている状態/だいぶ揮発し減っている)。2つの太い溝がグルッと回っていますが、この2列の溝が「2条ネジの役目」になり、グリーン色のラインで囲ったように「鏡筒の繰り出し量/収納量に一致する」ことを示しています。また「ネジ山としての機能を持つ代用の概念」なので、ご覧のとおりブルー色の矢印で指し示している箇所と位置は反対側にも存在し
赤色矢印の場所も同様なので「2つの列で溝がグルッと螺旋状に回って切削されている」ことを示しています・・つまりネジ山数=2列だけ・・という話です。

後で追加分の解説をしますが、このヘリコイドとしての設計概念/仕組みから、残念ながらこのモデルの距離環を回すトルク感は「既に摩耗して擦り減っている分」改善させるのは相当難しいとしか言いようがありません(汗)

今回の扱いが初めてだった為に認知しておらず、当初ご依頼時点の概算見積もり時にちゃんと事前のご案内ができておらず、大変申し訳ございません(汗)

↑ここから完全解体した後に当方の手により『磨き研磨』処置後のオーバーホール/修理工程を進めていきます。絞りユニットや光学系前後群を格納する為の鏡筒です。

↑絞りユニットを構成するパーツで「開閉環 (左)」と「位置決め環 (右)」になり、この間に
絞り羽根が挟まれてセットされます。

↑向きとしてはこんな感じで組み合わさりますが、右側「位置決め環」の途中には「切り欠き/開口部」が用意されていて、その左端が「開放側」を意味し、反対側右端が「最小絞り値側」になります。

さらに「位置決め環」の底面にはグリーン色の矢印で指し示している箇所に「セットする位置を確定させる溝が備わる」ことから、このモデルの絞り羽根の開閉幅/開口部の面積/カタチ/入射光量は微調整できないことが分かります (製産時点の位置でしか組み込まないつもりで設計してあることを意味するから)・・こういう要素から設計者の意図を探りとれるワケです。

それでは同じ底面の外縁に備わるクビレた溝は何かと言えば「単なるイモネジによる締め付け固定用の溝」との「観察と考察」に至ります(笑)

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

絞り羽根開閉幅
絞り羽根が閉じていく時の開口部の大きさ/広さ/面積を指し、光学系後群側への入射光量を決定づけている

↑ちなみに上の写真解説のとおり、この当時の「Oberkochen製オールドレンズ」の絞り羽根には「両サイド端でプレッシングされて繋がっているのを工具を使って切り取っていた」ことまで判明します(笑)

手前側のグリーン色の矢印箇所はだいぶ粗雑に切り取っていますが、反対側の赤色矢印側
ささくれ状にまだ残っています (つまり意外と適当にカットしていた)(笑)

なお今回の個体をバラしたところ「13枚ある絞り羽根のうち3枚の向きが反転していて組み込みミスしていた」と言う、過去メンテナンス時の整備者の手によるミスが発覚しています(笑)

上の写真のカタチを見れば、この絞り羽根がひっくり返った時に「プレッシングされている
キーの金属棒が何処に来るのか???
」誰でもすぐに分かると思うのですが(笑)、テキト〜に組み込まれていたとしか言いようがありません(汗)

つまりこのカタチの絞り羽根には、ちゃんと表裏面の方向性が設計されており、且つそれが
そのまま「絞り羽根を閉じていった時の開閉幅/開口部の面積/カタチ/入射光量の相違になる設計」であることを意味し「観察と考察」がまるでできていない整備者だったことがバレバレです(笑)

ちなみに、旧東ドイツ側のCarl Zeiss Jenaでこの当時造られていた数多くのオールドレンズ
・・シルバー鏡胴モデル・・の中に実装している絞り羽根は、絞り羽根の1つの端だけでぶら下がって「まるで枝豆の房状態」なのを、やはりパチンパチンと切り取っていたため、粗雑にカットされている箇所は片側だけに集中しています(笑)

↑完成した絞りユニットを前玉側方向あたる向きから撮影しました。ご覧のように赤色矢印で指し示している箇所を曲げることで「開閉環が外れないようにする設計」なのが分かり、曲げ過ぎれば抵抗/負荷/摩擦が増し、曲げが足りなければ「オールドレンズを逆さにした時に絞り羽根が浮いて脱落の原因に至る」と言う、意外に神経質な絞りユニットです(汗)

イモネジ
ネジ頭が存在せずネジ部にいきなりマイス切り込みが入るネジ種で
ネジ先端が尖っているタイプと平坦なタイプの2種類が存在する。

大きく2種類の役目に分かれ、締め付け固定位置を微調整する役目を兼ねる場合、或いは純粋に締め付け固定するだけの場合がある。

従って鏡筒最深部にこの絞りユニットがセットされますが、その際締め付け固定するイモネジによる「締め付けの強さ」如何で絞り羽根脱落の懸念さえ生ずる為「神経質な絞りユニット」と申し上げている次第で、そんなに簡単な設計概念ではありません(汗)・・イモネジを締め付け過ぎるとこの絞りユニットが押されて赤色矢印の3箇所がそのまま応力の働きで抵抗/負荷/摩擦の増大要因に至るワケです(怖)

何故なら、前述のとおり「イモネジの1本だけはグリーン色の矢印で指し示した時のように、位置確定用の溝に入る為、他の2本だけで締め付け固定している」設計です。すると上の写真手前位置の開口部に向かって、他の2箇所からイモネジの締め付け強度次第では「応力が働き絞り環操作に影響を来す」原因に至ります(汗)

・・こういう細かい要素の一つ一つに真摯に向き合うことで『本来在るべき姿』に繋がる(汗)

↑最深部に絞りユニットを組み込んだところです。

↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。

シリンダーネジ シリンダーネジ
円柱の反対側にネジ部が備わり、ネジ部が締め付け固定される事で円柱部分が他のパーツと連携させる能力を持ち、互いにチカラの伝達が実現できる役目として使う特殊ネジ (単なる連結のみに限らず多くの
場合でチカラの伝達がその役目に含まれる
)。

赤色矢印で指し示している箇所に絞り環と連結するための「シリンダーネジ用ネジ穴」が見えています。またグリーン色の矢印で指し示している箇所に「ドリルで穴あけされたイモネジ用の穴」が確認でき、過去メンテナンス時にワザと故意に絞りユニットの固定位置を強制変更していた時期があることが明白になります (この穴の位置から、凡そ2㎜弱閉じる量を増やしていたことが分かる)(汗)

・・完全解体してしまえば、全ての「ごまかしの整備」が白日の下に晒されます(笑)

詰まる処『本来在るべき姿』に組み上げていく工程と言うのは、単に注意深く「観察と考察」していれば良いだけの話なので、何一つ難しいこともハイレベルなスキルを要する内容も存在し得ず(笑)、ハッキリ言って当方の技術スキルはご覧のとおり低いです(恥)

↑上の写真は黄銅材で切削削り出しされている「光学系前群格納筒」ですが、グリーン色のラインで囲った最終3列のネジ山が削れており、当初この格納筒を回して外す際に「キーキー音」を伴いつつ、相当強いチカラで回さなければなりませんでした(汗)・・おそらく過去メンテナンス時にムリにネジ込んでしまったのだと思います。

↑完成した鏡筒の回して反対側を撮影しています。赤色矢印で指し示している箇所にイモネジ用の下穴が備わり、この1箇所だけでこの上からセットされるべき「縦線の基準マーカー環の固定位置が決まっている」ことを意味し、そこから導き出されるのは「絞り環刻印絞り値の停止位置まで決まっている」点に繋がり、要は絞り羽根の開閉幅に対し微調整機能を持たせていない設計だと断定されます(汗)

結果、この下穴の位置だけでそれぞれの構成パーツを組み上げていく必要性が、特にこの鏡胴「前部」について確定した話に到達します(笑)・・何故なら、縦線が刻まれている基準マーカー環は、絞り環の刻印絞り値の指標値を明示するからです (だから基準環だと言っている)。

↑鏡筒を再び寝かせて前玉側の方向から撮影していますが、実は赤色矢印で指し示している箇所に過去メンテナンス時に着色されていた「反射防止黒色塗料」が相当な厚みで残っていました(汗)

この内部に前述のキーキー音が鳴っていて硬くて外せなかった「光学系前群格納筒」がネジ込まれるので、その原因が分かります (不必要な反射防止黒色塗料の厚みのせいで軋んでいた)(汗)
・・だからこそ「黄銅材」なのが影響するのです(汗) 黄銅材は基本的に応力に弱い材なので
そういう点まで配慮が必要です(怖) しかもその対象が光学系の格納筒と言う、まるで光路長を心配すれば信じられないような話ですが、こう言う「迷光を防がんとする見てくれの良さ
だけを追求した整備
」の結末が、こう言う内容に至ります(汗)

↑前のほうで一度説明した光学系第2群のコバ端ですが、赤色矢印で指し示しているように「コバ端を反射防止黒色塗料で執拗に着色していた」ものの、そのインク成分が角質化して
残ってしまい、溶剤でも完全除去できませんでした(汗)

仕方ないので当方の手により『磨き研磨』している途中を撮影しています・・グリーン色の
ラインで囲った領域が既に研磨済みです
(汗)

もしもこのせいで格納筒内部に、確実に水平にセットできなかったらどうするのでしょうか
・・下手すれば「偏芯」の因果に繋がりかねません(怖)

・・本当に何も考えず、ただ単にバラした逆手順でしか組み上げようとしません!(怒)

そこに「見てくれの良さ」にこだわり、不必要な所為を重ねるので本当にロクなことをしません(汗) こういう個体がプロのカメラ店様の店頭など、Gケース内に並べられているオールド
レンズかも知れないと仮定したら、はたしてどう考えますか???(笑)

・・その見てくれの良さだけにお金を払っているのが、笑けてしまう!(笑)

例えば、クラシックコンサートや演奏者など、プロとしてそのスキルはその場で露わになるので、どうにもごまかしようがありません(汗) ところがオールドレンズになると、内部が見えないことを良いことに、好き放題なのがリアルな現実だったりします・・これが笑えると言っているのです(笑)

・・はたしてプロのカメラ店様店頭に並んでいる個体の信用/信頼とは、いったい何か???

下手すれば、そのカメラ店ではなく「別の外注会社に整備に出されているだけ」だったりするのが真実なので、それで唸りながら大枚を叩いているのが笑けると言っているのです(笑)

↑光学系前後群を清掃して組み込んだところです。

赤色矢印で指し示しているフィルター枠を、固着剤を注入しつつネジ込んでセットしました。

当初バラす前時点でこのフィルター枠が空転したまま外れなかったのは、或る意味フィルター枠の紛失が防げた効用もありましたが(笑)、実のところフィルター枠のネジ込みの向きが間違っていたので、絞り環のフチに引っかかってハズれなかっただけです (上の写真ではフィルター枠をヒックリ返して本来の向きでネジ込んであります/だからフチに凹みが無くキレイ)(笑)

↑絞り環用のベース感をネジ込みました。赤色矢印の箇所にシリンダーネジの頭が見えています (内部絞りユニットの開閉環と連結している証拠)。

この上から絞り環を被せますが、その固定に使うイモネジ用の下穴が備わり (全周に均等配置で3箇所) 上の写真でシルバーな円形に写っていますが、この他にイモネジの締め付け痕が無いことから「製産時点の位置を維持したまま絞り環がセットされ続けていた」ことを表し、要は「前のほうでごまかしの整備をしていたのは、絞り環の位置が微調整できずに基準マーカーの位置をズラしてごまかしていたと判明」します(笑)

↑ベース環の上から絞り環をセットしました。

↑さらにさんざん解説してきた「縦線の刻印」がある基準マーカー環を、やはりイモネジ3本を使い締め付け固定しました。ちゃんと赤色矢印のとおり、絞り環の刻印絞り値とグリーン色の矢印で指し示している箇所縦線 (基準マーカー) がビタリと合致します (当たり前の話です)。

このモデルの設計では「最小絞り値側でこれ以上閉じると絞り羽根の膨れ上がりを招く (要は噛み合い始めている話)」限界値なので、このようにピタリの位置で停止する設計なのが分かります・・分かると言うのは、今まで解説してきた下穴の位置で明白だからです (製産時点以外の締め付け痕が残っていないから)(笑)

・・全てには、ちゃんとした根拠があったりします(笑)

逆に言えば、当初バラす前時点のチェックで、上の写真のようにピタリ位置で「F22」が
停止していなかったので「???」です(笑)

どうしてわざわざドリルを使って穴あけしてまでズラしたのでしょうか???(汗)

なお「f22」刻印に付随するライン (刻印) は、1桁目の2の中心に位置する為、そのラインにピタリと合致するよう前述の下穴が用意されているのが判明したので、そのように組み上げると上の写真のように「基準縦線マーカー刻印とピタリと合致する」仕上がりになります(笑)

従ってその分「開放側にマチが現れる」のは、構造上/設計面から絞り羽根の開閉移動量が決まっているからで、それは当然ながら「開放最小絞り値」までの間で絞り羽根が閉じる角度は決まっているのと一致します (光学面から捉えても、絞り羽根を閉じきってしまったら入射光を遮蔽してしまうから)(笑)

結果、開放側でピタリの位置に合わせるのか、最小絞り値側で合わせるのかを考えたら、多くの場合で「最小絞り値側で合致させないと遮蔽してしまう (逆に言えば開放側は、そもそも面積が確定しているから)」とも指摘でき、どんなに絞り羽根を開こうと、結局のところ絞りユニット直前に配置されている「光学系前群の半径は確定している」ワケで、そこを透過してくる入射光量も一意の範囲を執るからです(笑)

↑鏡胴「前部」が完成したので、ここからは鏡胴「後部」の組立工程に入ります。

距離環 (アルミ合金材)
螺旋スプリング (反発用)
鏡胴 (アルミ合金材)
マウント部の爪 (真鍮製/ブラス製)
遮光兼ガイド環 (アルミ合金材)
繰り出し筒 (アルミ合金材)
螺旋筒 (硬質アルミ合金材)
距離計連動筒 (黄銅材)

上の一覧の中で 螺旋環 だけがアルミ合金材の成分/配合が異なり、おそらく硬いほうのアルミ合金材です。また 遮光兼ガイド環 の存在により、クッション時の 距離計連動筒 の全周ブレを防いでいる為、意外と重要だったりします(汗)

特にこの 距離計連動筒 にブレが生ずると、途端に距離環を回す時のトルクが重く変わるので、整備する上では要注意です(汗)

螺旋筒 繰り出し筒に対して、それら駆動を実現させる「螺旋キー (左)」と「直進キー (右)」です。

螺旋筒ですが、ご覧のとおり螺旋状の溝は、そのフチ部分と底面の切削時の粗さがそのまま残っていて、その上からメッキ加工されているのが分かります (赤色矢印)。またグリーン色の矢印で指し示しているように、経年で残った無数の物理的な抉れたキズが視認できます(汗)

繰り出し筒ですが、内側はさらに酷い状況に経年の擦れ痕が無数です (グリーン色の矢印)(汗)

↑こんな感じで 繰り出し筒がセットされ、上下動します。グリーン色の矢印で指し示している箇所の裏側に「菱形のカタチをした螺旋キーが居る」ものの、キッチリ本締めしている為、この 繰り出し筒の擦れ具合を微調整する手法が一切ありません(汗)

逆に言うと、この締付ネジを本締めせずに緩く締め付け固定すると、経年の中で突然距離環が固まったりして大変な騒ぎになります(怖) 従って今までも過去メンテナンス時にキッチリと本締めされてきたことを確認済です。

そもそも「菱形の螺旋キー」が真鍮製/ブラス製であり、且つ面取りが粗いのを以て「上下動に対し塗布するグリースの性質/成分に頼った設計概念」と明確に指摘でき、さすがにこのモデルでは「グリースに頼った整備」しか成り立ちません(笑)

・・その意味で、この後の時代に登場した無数のオールドレンズ達とは別次元です(笑)

↑鏡胴「後部」の組み上げが完成しました。

↑完成している鏡胴「前部」を鏡胴「後部」にネジ込んて本締めで締め付けるだけですが、その際に上の写真「薄いシム環」を挟んで無限遠位置を微調整する設計概念です (螺旋筒や繰り出し筒には無限遠位置を微調整する機能も概念も一切考慮されていない)。

シム環厚さ0.11㎜ x 2枚
シム環厚さ0.10㎜ x 1枚
シム環厚さ0.09㎜ x 1枚

これら4つのシム環を順に挟んだり外したりしながら、その都度無限遠位置を実写確認しつつ
ピタリと合わせていきます(笑)

当初バラす前の実写段階では、残念ながら「僅かなアンダーインフ状態」に陥っており、ピント面のピーキング反応は、ほんの微かでした (僅か数点のチラチラのみ)(汗) オーバーホール/修理工程完了後は、結局 シム環を1枚外してちょうどピタリ位置に改善した為、一緒に同梱してお戻しします。その際のピーキング反応は相当領域分がピント面で赤くなったので、その最大値でシム環を挟んでいます (ちゃんと多めに挟んでアンダーインフ状態も再現させて確認しています)。

DOHヘッダー

ここからは完璧なオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホール/修理が終わりました。このような希少なオールドレンズをオーバーホール/修理ご依頼頂き、本当にありがとう御座いました。当初の「概算見積もり」時点で、初めての扱いである旨ご案内しているにもかかわらず、ご快諾頂き、今回のオーバーホール/修理で大変勉強になり、感謝しかありません!(涙) ありがとう御座います

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。ごく微かな「気泡」が僅かに混入しています。

なお、前玉露出面側には経年並みの極僅かなコーティング劣化が視認できます (写真には影響を来たしません/光源からの入射角度でも影響なし)(汗)

気泡
光学硝子材精製時に、適正な高温度帯に一定時間到達し続け維持していたことを示す「」と捉えていたので、当時の光学メーカーは正常品として「気泡」を含む個体を出荷していました (写真に影響なし)。

↑後群側もスカッとクリアで、極薄いクモリが皆無です。また距離計連動筒のクッション性や
抵抗/負荷/摩擦なども無く、適切な状態に組み上がっています。ご覧のように距離計連動筒は外壁部分を「磨き研磨」して平滑性を取り戻している為、黄銅材の色合いに変わっています(汗)

↑13枚の絞り羽根もキレイになり確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧な円形絞りを維持」したまま閉じていきます。

前述のとおり3枚の絞り羽根の向きが反転していた為、それを正した分、美しい円形に戻りました (当たり前ですが)(笑)

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

もっと言うなら「光沢剤/研磨剤/化学反応」の類も一切利用しないので、金属材表層面に影響を及ぼしてしまう処置は何一つ講じていません(笑) 特にヘリコイドのネジ山などを研磨剤にて処置すると、塗布するヘリコイドグリースの成分/配合によってはそれらの浸透を促してしまうので、ザリザリ感やスレ感が数年で増大し製品寿命の短命化を促す結果に到達しますから要注意です(泣)・・当方独自のヌメヌメ感を感じるシットリしたトルク感は、それら「光沢剤/研磨剤/化学反応」の類を一切利用しない磨き研磨により実現している特異なトルク感であり、巷で流行る「分解整備済」とは全く異なる完全解体を前提とした製品寿命の延命化が最終目的です(笑)

もちろんそれらの根拠として「当時製産時点に使っていたであろう成分/配合の分類に可能な限り近い黄褐色系グリースだけを使う」事をその前提と据えており、今ドキ流行っているシリコーン系「白色系グリースの何♯ (番)」などを謳って整備するのは以ての外で(泣)、そのような整備は「製品の延命処置」からはまさに逆行した所為と指摘せざるを得ません(涙)

実際それらシリコーン系「白色系グリース」が塗布されている個体を数多く確認していますが
距離環を回した時のトルク感は「ツルツルした感触」しか感じず、合わせてピントのピーク/山の前後微動に於いて、意識せずとも微動してしまう使いづらささえその印象として残るので、はたしてそれで撮影に没頭できる操作環境を真に提供できているのかとの疑念さえも湧いて
きます(笑)

その意味でも整備で塗布するグリースの問題は、製産時点/設計概念に配慮した内容だけに留まらず、組み上げられたオールドレンズの使用感にまで気配りした概念がそこには介在し、結果的に「製品寿命の延命化」に到達できていれば、なおさらに最高ではないかとのポリシ~が
根底にあったりするのが当方が施すDOHそのものなのです(笑)

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」を使い、当方が所有している最も粘度の低い軽いタイプを使いましたが・・申し訳ございません、限界です(汗)

当初バラす前時点の確認でも、特にトルクが重いとは当方の印象では感じていません(汗) しかしご依頼内容の中に「重すぎる」とありましたので、可能な限り軽く仕上げましたが、正直あまり変化していません(汗)

そもそも「当初時点で重く感じていなかった」ので、もしかしたら「重い」と仰るのはマウントアダプタ側のトルクではないでしょうか???(汗)・・分かりませんが。

とにかくたいして改善できていないので、合わせて「擦れ感も全く変化なし」であり、正直に申し上げて「当方所有グリースでは対応不可能」でした(涙)

・・申し訳ございません!!!

なお、当初バラした直後に塗られていた古いヘリコイドグリースは「ウレアグリース」だった為、相応のトルク感を有する粘性でしたが、今回のオーバーホール/修理で当方が塗布したヘリコイドグリースは「ウレアタイプ」を使っていないので、スルスルと回る印象である分「逆に擦れ感は増しているように感じる」印象に繋がるかも知れません・・スミマセン!(涙)

ウレアタイプのグリースだと、その添加物の関係からそもそもトルクを与える印象に繋がる抵抗/負荷/摩擦を抱くので、結果的に今回の個体のような「大小無数のキズが多い状況」の中にあって、それらを相殺する役目も果たし「擦れ感を減じられる」ものの、反面トルクは重い方向に向かうので一長一短です。

特にこのモデル「Oberkochenモデル」については、ピント面のピーク/山の迎え方がゆっくりとまだかまだかなので、さらにピーク/山の頂上超えも決して浅くはなく、その意味で確かにご依頼者様が仰るとおり「軽めが良い」のは理に適っているご要望だと思います(汗)・・ご期待に添えず、本当に申し訳ございません!(涙)

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

↑ご報告すべき瑕疵内容としては、前述の「重いトルク感 (と言うかバラす前と同じレベル) と酷い擦れ感」だけです。絞り環側のトルクには「トルクを与えた」ので、むしろシッカリした操作性に変わっています。また空転していたフィルター枠は固着剤を入れたので固まっていますが、フィルター装着時に硬締めすると、また一緒に回ってしまい空転する懸念があるのでご留意下さいませ・・申し訳ございません(汗)

無限遠位置はピタリ位置で合わせてあります。結果、鏡胴「前部/後部」で間に挟まなかった「シム環0.11㎜ x 1枚」をビニル袋に入れて同梱します(汗)

↑当方で使用したマウントアダプタは「amedeoアタプタCONTAX-NIKON / E MOUNT」を使って無限遠位置の確認等、ちゃんと実写しながら微調整しています (微調整と言っても、
単にシム環を挟んだり外したりだけの作業ですが
)(汗)

無限遠位置 (当初バラす前の位置から改善/ピタリの状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

被写界深度から捉えた時のこのモデルの無限遠位置を計算すると「焦点距離85㎜開放F値f4.0被写体までの距離70m許容錯乱円径0.026㎜」とした時、その計算結果は「前方被写界深度35m後方被写界深度∞m被写界深度∞m」の為、40m辺りの被写体にピント合わせしつつ、以降後方の∞の状況 (特に計算値想定被写体の70m付近) をチェックしながら微調整し仕上げています。

・・一言に無限遠位置と述べてもいったいどの距離で検査したのかが不明瞭ですね(笑)

↑当レンズによる最短撮影距離1m付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f5.6」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f8」で撮りました。

↑f値は「f11」に上がっています。ピント面の解像度は何とか維持しているようですが、背景のお城の模型にフレアが入り始めています(汗)

↑f値は「f16」になりました。「回折現象」の影響が視認できるように変わり、特に焦点移動が起きているのが分かります(汗)

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。今回のオーバーホール/修理ご依頼、真にありがとう御座いました。引き続き次のモデルの整備作業に入ります。どうぞよろしくお願い申し上げます。