◎ Meyer-Optik Görlitz (マイヤーオプティック・ゲルリッツ) Primoplan 58mm/f1.9 V《後期型ーII》(M42)
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今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧東ドイツの
Meyer-Optik Görlitz製標準レンズ
『Primoplan 58mm/f1.9 V《後期型ーII》(M42)』です。
今回の扱いが累計で10本目にあたりますが、近年市場価格が高騰し、なかなか手が出せなくなっているモデルの一つです。海外オークションebayでは、光学系の状態に拘らなければ3万円台〜5万円台で流通しており、光学系の状態が良い個体を手に入れようとすると6万円台〜10万円辺りまでがターゲットになります。
特にMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズがライカレンズに匹敵するほどの描写性能を有するのかと問われれば、決してそんなことは無いと答えてしまうのですが(笑)、実は人気の秘密は卓越したライカレンズのような描写性能ではなく、むしろ残存収差の影響をふんだんに受けた (当時は評価されていなかった) バラエティ豊かなボケ味にあるのではないかと考えます。
その意味で、今回のモデルPrimoplanの標準レンズは当時としては確かに開放f値「f1.9」の明るい高速レンズなのでしょうが、競合他社モデルの中にあって特に秀でていたとは言い難いと言えるのが現実的な当時の評価だと思います。それが近年このように市場価格が高騰してしまった背景は「インスタ映え」なのか、或いはカメラボディ側のミラーレス一眼化が進みフルサイズで様々なオールドレンズの描写性を堪能できる環境が整ったからとも言えます。
すると、その残存収差の影響を受けたボケ味の中で、いったい何がそんなに評価されているのか (人気があるのか) と言う疑問が湧いてきます。その最大の火付け役となったボケ味が「シャボン玉ボケ」です。世間では単に「バブルボケ」と呼ばれ、その一言だけで済ませていますが新人類世代の生き残りたる天の邪鬼な当方はそれをヨシとしません(笑)
【当方で表現してる円形ボケ】
◉ シャボン玉ボケ
真円で且つエッジが非常に繊細で明確な輪郭を伴うまさにシャボン玉のような美しいボケ方
◉ リングボケ
ほぼ真円に近い円形状でエッジが明確ながらもキレイではない (骨太だったり角張っていたりの) ボケ方
◉ 玉ボケ
円形状のボケが均等に中心部まで滲んでしまいノッペリしたボケ方 (イルミネーションの円形ボケのようなイメージ)
◉ 円形ボケ
その他歪んだりエッジが均一ではない、或いは一部が消えていく途中のボケ方 (円形状ボケの総称の意味もある)
一般的には上記の円形ボケ全てを一括りで「バブルボケ」と表現して終わってしまうのでしょうが(笑)、実はMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズ (の中で特に3群3枚のトリプレット型光学系を実装したTrioplanシリーズなど) に共通する描写特性として、非常に特徴的な「シャボン玉ボケ」が表出することから近年市場価格の高騰を招いたのではないかと考察しています。
つまり単なる「バブルボケ」と表現してしまうと全くMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズたる描写特性を表すことができませんが、非常に繊細なエッジで表出する真円の円形ボケが「まさにシャボン玉のよう」であるが故の「シャボン玉ボケ」ならば、それは様々なオールドレンズで表出できるのかと言えば、一部のモデルだけに限定される特徴だからこそMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズの人気集中が納得できるのではないかと考えます。
その中で、このPrimoplanは「シャボン玉ボケ」のみならず残存収差の影響を受けた数多くのボケ味を堪能できる、おそらくMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズの中で代表格たる標準レンズとしての要素を秘めているのではないかと評価しています (つまりボケ味の引き出しがとても多いモデル)。
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上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。
◉ 一段目
左端から順にシャボン玉ボケが破綻して円形ボケへと変わっていく様をピックアップしました。特に左端の細く繊細なエッジを伴う真円の円形ボケを指して「シャボン玉ボケ」と当方は定義しています。
◉ 二段目
左端の1枚目は光学系が4群6枚のダブルガウス型構成ではないのに、まるでその特徴たる美しいグルグルボケが背景に出ています。また2枚目の背景ボケは、まるで燃え上がるかのような「火焔ボケ」と当方では呼んでいます。3枚目はピント面のエッジに「二線ボケ」が憑き纏い、最後の右端は背景ボケが液体のようになる「液ボケ」と呼んでいます。
◉ 三段目
これが当方にとっては堪らないボケ味なのですが(笑)、左からの2枚は「油絵風」と定義しており、特に2枚目の写真はそのモノのように見えてしまいます。また残りの2枚は「水墨画風」と呼んでいますが、一番右端はビミョ〜なト〜ンの違いをシッカリ写し込んでいるところがさすがです。実はこの階調表現の素晴らしさを示しているのが次の四段目の写真です。
◉ 四段目
左端の2枚はダイナミックレンジを示す写真としてピックアップしました。明暗に至るまで階調幅が広いのですが、暗部が突然ストンと堕ちて黒潰れします。それがギリギリのところで潰れているのが何ともビミョ〜なニュアンスとして写真に効果を現しているのではないかと考えています。3枚目は被写体の材質感や素材感を写し込む質感表現能力の高さを表しますし、最後の右端はポートレートレンズに匹敵するほどに非常にリアルな人物撮影をこなしています。
◉ 五段目
左端からの2枚は絶妙なボケ味 (残存収差) から「空気感/距離感」を留める写真としてピックアップしました。単に背景ボケがこのように滲めば良いのではなく、何かしら複数の要素が相まり立体感を醸し出しているワケで、どんなオールドレンズでも必ず表現できる要素ではないと思います。
光学系は4群5枚のプリモプラン型構成です。ネット上では一部に「変形エルノスター型」との案内がありますが、絞りユニットの配置が異なり前後群のパワー配置まで違ってしまうので、それならむしろ「エルノスター型の発展系」と捉えるほうがより正しいと考えています (右の構成図は一般的なエルノスター型の構成図)。
左は今回のモデルが一番最初に開発された際の特許概要で1936年の申請/認可になります。モデルバリエーションで言えば「戦前型」にあたるワケですが、最後の「後期型−III」に至るまで光学系構成の基本概念は変化していません。
右図はこの「戦前型」の光学系構成図をトレースしたものです (最短撮影距離70cm)。
一方、今回出品個体の光学系構成図が右図で、モデルバリエーションで言えば「後期型−II」にあたります (最短撮影距離75cmのタイプ)。
「戦前型」に比べて最短撮影距離が75cmへと変わり光学系が再設計されています。
さらにその後に発売された「後期型−III」では最短撮影距離60cmの変更から再び光学系を再設計しています。
いずれも構成図はオーバーホールの際にバラして清掃時にデジタルノギスで計測しほぼ正確にトレースした構成図です。
当方が計測したトレース図なので信憑性は低いですから、ネット上で確認できる大多数の構成図のほうが「正」です (つまり当方のトレース図は参考程度の価値もありません)。
(各硝子レンズのサイズ/厚み/凹凸/曲率/間隔など計測)
【モデルバリエーション】
※オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。
「戦前型」Hugo-Meyer製:戦前の1936年発売
絞り値:f1.9〜f22
絞り羽根枚数:14枚
最短撮影距離:70cm
筐体材質:真鍮材がメイン
フィルター枠:⌀ 40.5mm
「前期型-I」Meyer-Optik Görlitz製:1949年発売
絞り値:f1.9〜f22
絞り羽根枚数:14枚
最短撮影距離:75cm
筐体材質:アルミ合金材がメイン
フィルター枠:⌀ 40.5mm
「前期型-II」Meyer-Optik Görlitz製:1950年発売
絞り値:f1.9〜f22
絞り羽根枚数:14枚
最短撮影距離:75cm
筐体材質:アルミ合金材がメイン
フィルター枠:⌀ 40.5mm
「後期型-I」Meyer-Optik Görlitz製:1954年 (?)
絞り値:f1.9〜f22
絞り羽根枚数:14枚
最短撮影距離:65cm
筐体材質:アルミ合金材がメイン
フィルター枠:⌀ 49mm
「後期型-II」Meyer-Optik Görlitz製:1957年発売
絞り値:f1.9〜f22
絞り羽根枚数:14枚
最短撮影距離:75cm
筐体材質:アルミ合金材のみ
フィルター枠:⌀ 49mm
「後期型-III」Meyer-Optik Görlitz製:1958年発売〜1959年まで
絞り値:f1.9〜f22
絞り羽根枚数:14枚
最短撮影距離:60cm
筐体材質:アルミ合金材のみ
フィルター枠:⌀ 49mm
オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。
↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。
このモデルの最大の問題点は大きく2つに集約されます。
① 光学系の経年劣化状況が酷い
光学系のコーティング層経年劣化に伴う劣化 (薄いクモリの発生や剥がれ) 或いはカビの発生。
② 解体できるか否か
整備する為に鏡筒〜鏡胴部分を解体できるのかどうかが問題。
特に②の解体に関して、Meyer-Optik Görlitz製オールドレンズの中で焦点距離100mmのTrioplanシリーズ同様、鏡筒〜鏡胴部分が解体できるかどうかがポイントになります。以下工程の中で解説しますが、ムリにチカラを加えて解体しようとすると下手すれば壊してしまいイキナシ「製品寿命」に至る懸念が捨てきれません。
もちろん、それ以前に光学系の状態が良い個体を手に入れられるのかどうかも問題になり、たいていの場合光学系内にクモリやカビが生じていたら、それは清掃後でも何かしら痕跡が残ります (結果的にコーティング層が剥がれることが多い)。
↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルはヘリコイド (オス側) が独立しており別に存在します。
この鏡筒の内外を見ると分かりますが、アルミ合金材で作られているもののメッキ加工は「微細な凹凸を伴う梨地仕上げ」です。これは経年の揮発油成分が廻らないよう、その流動を防ぐ意味から塗膜面に極微細な凹凸がつく「梨地仕上げのメッキ加工」を施しています。従って、この「原理原則」に則るならば絞りユニット内部にグリースを塗るなど以ての外と言えますが、時々過去メンテナンス時にグリースが塗られていることがあります (絞り環の操作性を良くする為に故意に塗布している)。
絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。
◉ 位置決めキー
「位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー
◉ 開閉キー
「開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー
◉ 位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)
◉ 開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環
すると、このモデルでは「位置決め環」は鏡筒最深部に絞り羽根の「位置決めキー」が刺さる穴が用意されています。一方絞り羽根を刺した後に「開閉環」がセットされて絞り羽根の「開閉キー」が入ります。絞り環を回すとその「開閉環」も一緒に連動して回るので、絞り羽根が開閉する仕組みです (つまり手動絞り/実絞り方式)。
従って、過去メンテナンス時に「絞り環を回した時に引っ掛かりがある/トルクが重い/トルクムラが酷い」などの理由で、この鏡筒内部絞りユニットにグリースを塗っていることがあります。設計段階でワザワザ経年の揮発油成分の対策を講じたのに台無しですね(笑)
なお、絞り羽根はパッと見で表裏対称型に見えますが、実はよ〜く観察するとカタチが表裏で違います。またキーの打ち込み位置も異なるので、希にこの絞り羽根がチグハグに刺さったまま過去メンテナンス時に組み上げられていることがあります。
特に全ての絞り羽根の表裏をそもそもミスッて逆にセットしても駆動 (開閉動作) はしてしまうので、気がつかずにそのまま組み上げている個体も今までに数本ありました。もちろんその場合、絞り環の刻印絞り値に適合しない絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量) に至りますが、それさえも「絞り値の整合性」を検査せずに実写確認だけで済ませているから、結局分からずにそのまま市場に流れていたりしますね(笑)
↑14枚のペラペラで非常に薄い絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。今回の個体は過去の一時期、絞り羽根に油じみが生じたあとに粘性を帯びてしまい、絞り環を回して絞り羽根が閉じていく際に「羽絞り根が膨れあがる」現象に至っていたことが判明しました。
これは、液化した絞り羽根の油染みがさらに経年で悪化すると粘性が生じ、絞り羽根が互いにくっつき合う「癒着」が起きます (揮発油成分による界面原理)。その結果最小絞り値まで絞り羽根を閉じていくと、各絞り羽根が重なり合っている面積の一番小さい箇所で抵抗/負荷/摩擦が蓄えられて中心部で山型に膨れあがります。
すると製産時点で垂直状態に打ち込まれていた「金属製のキー」にその抵抗/負荷/摩擦の分だけチカラが伝達されるので「キーが垂直を維持できなくなる (つまり絞り羽根の変形)」に至ります。これが絞り羽根が閉じていく際に開口部が歪なカタチになってしまう因果関係です。
ヤフオク! で毎月数十本のオールドレンズを出品している出品者が、この絞り羽根が閉じていく際に歪なカタチになる点について「売りたいが為の逃げ口上」を出品ページに掲載しています(笑) ムリのある案内なので惑わされぬようご注意下さいませ。
【絞り羽根が閉じる時歪になる点】
最小絞り値側で点光源のボケを楽しむことはない。開放時に絞り羽根が僅かに顔出ししていても点光源のボケが丸く写る場合問題ないので出品ページに明記しない。経験上、使われずに絞り羽根が擦り減っていない、或いはデッドストック品などでも開放で絞り羽根が顔出ししている個体がたくさんある。
このように案内していますが如何でしょうか?
まず、絞り羽根が開放時に「顔出し」していたり、或いは閉じていく際に「歪なカタチになる」場合、それは開放〜最小絞り値方向 (例:f1.8〜f8) までの間で円形ボケではなくても角張ったカタチでボケが表出した時「その歪なカタチがそのままボケのエッジとして表出する」のがレンズ光学の常識ではないでしょうか???(笑)
そもそも開放時に絞り羽根が顔出ししていて、それでも点光源でキレイな円形ボケが出るなら良いなどと、全く以て意味が分かりません! 何故なら、いくら円形ボケがキレイに表出していても、結局は絞り羽根が顔出ししている状態なので「仕様上の開放f値からさらに暗くなったままの状態」だと言えるワケで、それをヨシとする認識自体を疑いますね(笑)
例えば、実際に顕在するオールドレンズのモデルとして、光学系の設計上は開放f値「f1.8」辺りを実現しているが、絞り羽根を僅かに繰り出す事で (顔出しする事で) 開放f値を「f2」と設定して商品化しているオールドレンズが実在します。商品の仕様諸元値としては開放f値「f2.0」になるワケですが、それと同じ話をこの出品者は言っていますョね? これっておかしくないですか??? 絞り羽根が顔出しせずに商品化された開放f値として仕様上設定されているオールドレンズは、間違いなくその開放f値を実現していなければそれは「不具合の一つ」に入る話ではありませんか?
例えば、国産のオールドレンズで栗林写真工業製標準レンズ「C.C. Petri Orikkor 50mm/f2 (M42)」がまさしく前述の例にピッタリ当てはまります。前玉側方向から光学系内を覗くと、開放時に絞り羽根が僅かに顔出ししておりそれで開放f値「f2.0」の仕様諸元を実現していますが、後玉側方向から覗くと顔出ししている絞り羽根は見えません。これは光学系の設計が開放f値「f2.0」よりも明るい設定になっている事の現れではないかと考えます。その意味で声を大にして言いたいですね。売りたいが為にムリなこじつけで最もらしい案内をするのは、オールドレンズ沼初心者の方々には不誠実です! 問題ないのだと信じてしまうではありませんか!
また、絞り環を回して最小絞り値方向に絞り羽根を閉じていった時、点光源で「円形ボケ」を楽しむことはないと言っていますが、最小絞り値側で点光源による円形ボケを愉しまないとしても、それまでの絞り値で表出した角張ったボケのエッジに歪なカタチが明確に現れれば、それを気にする人が (実際に) いらっしゃいます。特にf5.6〜f8辺りでも光学系の設計によっては角張ったボケや下手すればアバウトながらも円形ボケが表出するオールドレンズもあるので、要は光学系設計の問題であり必ずしも開放時だけの円形ボケをチェックしただけで「顔出し/歪なカタチ」が問題無しとはならないと当方は考えます。
また「絞り羽根が擦り減っていない=使われていない」と言う明確な証はあり得ませんし、もっと言うならデッドストック品なのか否かさえも信憑性が低いです。逆に言えば、製産後の出荷時点で開放時に絞り羽根が顔出ししていた場合、いくら当時の話だとしても検査で引っ掛かり市場に流れてきません。
・・と言うか、当方は2,000本以上のオールドレンズを扱っていますが、そもそも「使われていない」と断言できる新品のオールドレンズを見た記憶がありません(笑) もちろん見た目で新品同様品に見える個体はありますが、それを以てして「未使用/デッドストック」と言う「証」には成り得ないと考えます (そういうこじつけは危険です)。
従って当方では「絞り羽根が閉じていく際に歪な場合 (開放時の顔出しも含む) は必ず告知する」を前提としています。詰まるところボケのエッジの受け取り方 (印象の感じ方) は人それぞれなので、落札者のことを考慮すれば自ずと事前に告知していたほうが「より良心的」だろうと言う方針に過ぎませんが、当方は信用/信頼が無いので前述の出品者のほうがヤフオク! では高評価で高い信頼を得ています (それが現実です)(笑) 世の中、正直者がバカを見ているワケですョ。
↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。ご覧のとおり鏡筒の内外全てが「極微細な凹凸の梨地仕上げ」メッキ加工です。
↑絞り環用の「制限板」を取りつけます。これは絞り環を回した時に開放〜最小絞り値までの駆動域を制限する目的のパーツです。
↑よく勘違いしている人が居ますが、上の写真の絞り値が刻印されている環 (リング/輪っか) が「絞り環」です。この上に被さるギザギザのジャギーが刻まれたローレット (滑り止め) の環を指して「絞り環」と呼んでいる人が居ますが、それは「プリセット絞り環」です。
つまりこのモデルは「プリセット絞り環/絞り環共用」の設計なので、回す時に保持するローレット (滑り止め) 部分は一つあればOKと言うワケですね。ところが、この認識を間違えるとプリセット絞り環操作で原理が理解できないまま使うことになり、壊してしまう方がいらっしゃいます。
絞り環を回そうとした時に「引っ掛かりがある」或いは「トルクが重い/硬い」場合に強いチカラで回そうとしてしまいます。例えば鏡筒内部の「開閉環」と「絞り環」との接続がネジなどによる固定ならば決して壊れる一因にはなりませんが、実際のオールドレンズはネジを使っている事が非常に希です。たいていの場合「絞りユニット」と「絞り環」との接続/連係は1箇所だけであり、逆の言い方をすれば「絞りユニット内の円形のカタチをした開閉環は1箇所にかかるチカラだけで回されている」点を皆さんご存知ないので、ムリなチカラで回してしまいます。
すると、その加えてしまったムリなチカラは全てが「絞りユニット/絞り環接続箇所」に一極集中します。今回のモデルで言えば、以下の説明で示しているパーツ (の軸部分) にチカラが蓄えられるので (伝達されるので) 非常に怖い話だと言っています。特に解体する場合の話ではなく、むしろ普段から絞り環操作でムリなチカラを加える事は、非常に危険性が高い操作である事を是非ともご理解頂きたいです。
左写真のパーツは鏡筒内部の「開閉環」とこの「絞り環」を連係させる目的で用意されている「シリンダーネジ (円柱にネジ部があるネジ種)」です。
長さ:8mm/径:⌀1.5mmですが、その軸部分の径は「僅か1mm」しかありません (アルミ合金材)。
問題なのは、当初解体する際に専用工具を使い鏡胴を保持して思いっきり回してバラすワケですが、その時にこの「シリンダーネジの軸部分で破断する (つまり折れる)」ので、アッと言う間に「製品寿命」に至ります (何故なら個体別に経年でどの程度固着が酷いのかが事前に分からないから)。
これが冒頭で案内したこのモデルのリスクであり、固着が酷い場合は解体を諦めたほうが無難です (折れてしまい使いモノにならなくなるから)。どのくらいのチカラをかけて回そうとするとこのアルミ合金材の軸部分が折れるのか、まだ試したことも実際に折った事もないので不明ですが、現実として絞り羽根が開閉しないと言う不具合でオーバーホール/修理ご依頼を承った個体の中に「シリンダーネジの破断」が原因だった個体が何本かあるので、間違いなく折れるでしょう (折れたパーツを元通りに修復する事は不可能)。
実際、このモデルではこの「シリンダーネジ」が前出の「制限板」に突き当たって停止している状態のまま、解体の際は思いっきりチカラを加えて回すので、これが解体できるか否か左右する (非常に恐ろしい) 問題点/リスクです。
↑ヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。
このモデルのヘリコイド (メス側) はネジ山が逆に切られているので「原理原則」を熟知している人でない限り適正にヘリコイド (オスメス) を組み上げられません。その意味で少々難易度が高いモデルの一つです。
↑ヘリコイド (オス側) を無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で5箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。
ところが、前述のとおりヘリコイド (メス側) のネジ山が逆ですから、ヘリコイドを繰り出した時に「収納」になり、収納した時は逆に「繰り出し」になります。つまりヘリコイド (オスメス) のどの位置が無限遠位置なのか、或いは最短撮影距離位置なのか、そのアタリ付けをキッチリできる人でなければ、ちゃんと組み上げられませんね(笑)
上の写真でグリーンのラインは、基準「▲」マーカーが鏡胴側とヘリコイド (オス側) の2箇所で一直線に並ぶ必要がある事を示しており、それも加味してヘリコイド (オスメス) をネジ込む事になるので、ここで一気にハードルが高くなります (つまり無限遠/最短撮影距離位置/▲位置の3つで適合の必要がある)。
↑ここでひっくり返してマウント側方向を撮影しました。「直進キー」と言うパーツが切り欠き部分「直進キーガイド」を行ったり来たりするので (スライドするので) 距離環を回すと鏡筒が直進動する仕組みです。
◉ 直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目
↑距離環用のローレット (滑り止め) をここで仮止めしておきます。何とこのモデルには「無限遠位置調整機能」が備わっているので助かります。
↑「プリセット絞り環」を組み付けて、この後光学系前後群をセットしてから無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。
ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。
↑当方では滅多に扱う事ができないMeyer-Optik Görlitz製標準レンズ『Primoplan 58mm/f1.9 V《後期型ーII》(M42)』です。
今回出品の個体は残念ながら光学系の状態が「並程度 (一般的な経年劣化状況)」です。逆に距離環を回すトルク感やプリセット絞り環/絞り環操作は絶妙に仕上がっているので、ちょっと悔しいですね(涙)
調達の際に注意深く掲載写真をチェックしたのですが、さすがに上手く撮影していると本当のことは何も分からないままですね(笑)
前回「exaktaマウント」の個体をオーバーホール済でヤフオク! しすぐにご落札頂きましたが今回の個体は「M42マウント」なので本来なら即決価格が1万円ほど高い設定になります。
しかし光学系の状況から同一価格で設定しますので、お探しの方は是非ご検討下さいませ。
一応光学系の状況があるとしても、オーバーホール完了後の実写確認では全く問題がありませんでした。
↑基本的に光学系内の透明度は非常に高いのですが、4群全てに何かしら経年劣化進行が残っているので「問題あり」と言う判定にしました。
然しそうは言っても製造番号から「1952年 (10月頃)」の製産品と推測できるので、さすがに「67年」も経っているとなれば、致し方ないのかも知れません。
↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
いつもの角度で撮影しただけでは分かりにくいので、追加撮影しました。
赤色で囲った箇所にコーティング層経年劣化に伴う汚れ (左端)、コーティング層を浸食したカビによるカビ除去痕/コーティング層のハガレ (2枚目〜3枚目) 及び前玉の経年の拭きキズ/ヘアラインキズ (右端) です。これらの箇所は全て「コーティング層の剥がれ」なので、覗き込んだ時に角度によって見えたり見えなかったりしますし、LED光照射では視認できないので箇所を特定できません (ヘアラインキズもLED光照射でも見えにくい)。
↑光学系後群側も内部の透明度自体は高くクリアです。しかしやはり第3群外周附近にもコーティング層の経年劣化が残っていますし、後玉もご覧のとおりです。これは後玉表面側に生じていたコーティング層を浸食したカビ除去痕ですが、当方に届いた時点で既にコーティング層が剥がれていたので過去メンテナンス時に清掃した分だと推測します。この部分がLED光照射で視認できる「極薄いクモリ」になりますが、写真には影響しません。
↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
【光学系の状態】(順光目視で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:16点、目立つ点キズ:11点
後群内:17点、目立つ点キズ:13点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内)
・バルサム切れ:無し (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):あり
(前後群共にLED光照射で視認可能)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・前玉表面に経年相応の極薄いヘアラインキズが無数にあります(いわゆる拭きキズ)。また外周附近から内側に向かって菌糸状のカビ除去痕が残っておりLED光照射で極薄いクモリが浮かび上がります。
・第2群貼り合わせレンズ外周附近にカビ除去痕とカビ除去に伴うコーティング剥がれがあります。
・第3群外周附近にコーティング層の経年劣化による極薄い汚れ状があります。
・後玉は経年相応なカビ除去痕が複数残っておりLED光照射で極薄いクモリを伴い浮かび上がります。
・光学系内には「極微細な気泡」が複数ありますがこの当時は正常品として出荷されていましたので写真にも影響ありません(一部塵/埃に見えます)。
(極微細な点キズは気泡もカウントしています)
・光学系内の透明度は高いレベルです(一部にクモリあり)。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。
↑14枚の絞り羽根も極僅かな変形を修復したので平に戻り、プリセット絞り環/絞り環共々確実に駆動しています。
このモデルは絞り環操作が「手動絞り (実絞り)」なので、軽いとスカスカになる為「故意に (ワザと) トルクを与えて」仕上げています。絞り羽根が閉じる際は極僅かに歪なカタチになりますが、ほぼ真円に近い「円形絞り」です。
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。もちろんアルミ合金材の「光沢研磨」も施したので当時のような眩い艶めかしい光彩を放っています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度と軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人によって「重め」に感じ「全域に渡って完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で僅かにトルクを与えています。
【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
↑当方は写真が下手クソなので(笑)、光沢感を上手く撮影できていませんが、現物は触ると指紋の痕が残るのが気になるくらい「ピッカピカ」です。もちろん操作性も完璧な仕上がり状態なので、本当に光学系の状況だけが惜しい限りです (但し光学系劣化レベルはそんなに酷くないので写真には一切影響しません)。
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下の実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい。当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません。
上の写真は光学系内の「気泡」の状況を撮影しました。前玉方向からの撮影 (左) と後玉側方向 (右) です。
◉ 気泡
この当時の光学メーカーは、光学硝子材精製時に一定の時間規定の高温を維持し続けた「証」として「気泡」を捉えており「正常品」として出荷していました (写真への影響なし)。
↑ここからは一部に壊してしまう方がいらっしゃるので「プリセット絞りの操作方法」を解説していきます。
ヤフオク! で自ら整備済で出品しているプロの写真家がいらっしゃいますが、その出品ページの中でよく分からない解説があります。
【プリセット絞り環/絞り環操作について】
最小絞り値が開放の位置で今の考えの逆になっています。プリセット絞り環を希望の絞り値に設定する事で、その最大値が絞り値になる仕組みの考え方のようです。
何を言っているのか全く分かりません・・(笑)
今回のモデルは上の解説のとおり、ギザギザのジャギーが刻まれている上部の環 (リング/輪っか) が「プリセット絞り環」です。その直下の各絞り値が刻印されている部分が「絞り環」なのが「設計上の部位の違い」です。
但し、このモデルは絞り羽根を実際に開閉操作する際は「プリセット絞り環/絞り環共用」の仕組みなので、絞り環の操作 (絞り羽根の開閉動作) は上部の「プリセット絞り環」のほうを回して行います (直下の絞り環側が一緒に回る)。
まず前提として、鏡胴の基準「▲」マーカー (グリーンの矢印) に開放f値「f1.9」を合わせておきます。この時上部の「プリセット絞り環」にも「●」マーカーが刻印されています (赤色矢印)。
今回は例として設定絞り値を「f4」にセットする説明をしていきます。
(1) プリセット絞り環を指で掴み上に引き上げます (ブルーの矢印①)
(2) 引き上げたままプリセット絞り環をf4位置まで回します (②)
(3) f4位置でカチッとハマる音が聞こえるので指を離します (③)
これでプリセット絞りとして設定絞り値「f4」にセットされましたが、直下の「絞り環」側は一切触っていないので (動いていないので) 「f1.9」位置のままですから、現状絞り羽根は「開放状態を維持」しています (f4まで閉じていません)。
↑絞り羽根が開放状態を維持しているので、ここで距離環を回してピント合わせを行います。ピントが合ったらシャッターボタン押し込みの直前で「プリセット絞り環」のローレット (滑り止め) を指で保持してグリーンの矢印で指し示した鏡胴の基準「▲」マーカー方向に回します (つまりプリセット絞り環の赤色矢印「●」マーカーが合致する:ブルーの矢印④)。
すると絞り羽根が設定した絞り値「f4」まで閉じますから、そこでシャッターボタンほ押し込んで撮影します。この時、「プリセット絞り環」に刻印されている「●」マーカーと一緒に直下の「絞り環側f4」も基準「▲」マーカーに移動しています (つまり合致している)。従って設定絞り値「f4」まで絞り羽根が閉じている原理が納得できると思います。
今度は撮影が終わって、再びプリセット絞り値を「f1.9の開放位置の戻す」方法を解説します。「プリセット絞り環」をそのまま元の位置まで回すと絞り羽根が開いて開放に戻ります (ブルーの矢印⑤)。この時赤色矢印の「●」も「f4」に填ったまま一緒に移動します。
すると突き当て停止するまで戻すと基準「▲」マーカー (グリーンの矢印) 位置に「f1.9」が来ますから、絞り羽根は開放状態に戻った事になります。
↑プリセット絞り値を「f4」から開放「f1.9」に戻します。最初の逆操作をすればOKですね。
(6) プリセット絞り環を持ち上げる。
(7) 「●」を「▲」まで持っていく。
(8) f1.9位置でカチッとハマる音が聞こえるので指を離す。
これでプリセット絞り機構上、絞り羽根の設定は「完全開放」に戻りました。
つまり「プリセット絞り環」と「絞り環」の役目とどちらの環なのか、それを正しく認識していないと「プリセット絞りの動作だけで覚える」ことになります。すると、オールドレンズによってはマウント側方向に引き戻すタイプもあるので、間違ってチカラを掛けてしまい壊すハメに陥ります (実際壊してしまう方がいらっしゃる)。
モデルによってプリセット絞り機構の操作方法が違うので一番最初は慎重に扱うべきですね。
↑最初の写真と同じ状態ですが、絞り羽根が開放に戻り、且つプリセット絞り値も開放にセットされています。
できれば必ずプリセット絞り値を変更する際は「必ず最初に一旦開放状態に戻してから設定絞り値に変更する」クセを面倒でもつけて頂くと、さらに安心です (内部の溝が擦り減りにくくなるから/壊れなくなるから)。
一応今回のオーバーホールでは「プリセット絞り環」側が軽い引き上げ動作ですぐに回せるよう (クッション性があるから) 調節して仕上げていますので、慣れている方はそのままカチカチと動かしても問題ありません。
余計な解説ばかりがいつも非常に多くて長文だと批判されていますが(笑)、ご存知ない方もこのブログをご覧になるので、まずは正しい概念と操作方法を知るべきと言う方針です (批判はそのとおりなので反論せずいつも真摯に受け取っています)。
↑当レンズによる最短撮影距離75cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります。しかし簡易検査具による光学系の検査を実施しており光軸確認はもちろん偏心まで含め適正/正常です。
↑プリセット絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。
↑f値「f16」になりました。そろそろ「回折現象」の影響が出始めています。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像力やコントラストの低下が発生し、ねむい画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞りの径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。