◎ TAMRON (タムロン) SP 90mm/f2.5 52BB《第2世代》(ADAPTALL2)

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今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、タムロン製の
ポートレートマクロレンズ・・
SP 90mm/f2.5 52BB《第2世代》(ADAPTALL2)』です。


1960年代〜1970年代まで、マクロレンズの主な用途は文献などの「複写撮影」が主体で、現在のように一般的に広く使われていませんでした。当時中望遠レンズ域では最短撮影距離が1m前後でしたが、1979年にタムロンから中望遠レンズとして初めて最短撮影距離を39cmまで短縮化したマクロレンズが発売されます。
(第1世代モデル番号:52B 右写真)

当時「ポートレートマクロ」と言う呼称/概念も存在せず一世風靡したワケですが、まさにこのモデルの登場から現在に至るまで通用する「伝説の90mmマクロレンズ」の登場だったとも言えます。今でこそ焦点距離90mmのマクロレンズは当たり前の存在ですが、その最大の魅力は何と言っても「タムロンだから」と言えます。

それは、旧西ドイツのVOIGTLÄNDERブランド (今ドキのコシナ製ではなくオリジナルのほう) に匹敵するアンバーに振れる「ヨーロピアンテイスト」な発色性でありながら、決してそれだけに終わらずナチュラルな色再現性にもちゃんとそのまま反応する素性の良さが、この当時の他社光学メーカー製ポートレートマクロとの描写性の相違ではないかと評価しています。その意味でこのモデルでなければ表現し得ない独特な発色性がその筋の通には堪えられません。

ポートレートマクロのレジェンドたる逸話はタムロンのサイトで確認することができます。
ちなみにこのモデルは1/2倍撮影が可能なハーフマクロです。

光学系は6群8枚の拡張ダブルガウス型構成です。第1群〜第4群までのダブルガウス型構成を基本としつつ、中望遠域のみならず最短撮影距離39cmまで短縮化してきた「マクロレンズ」としての要素を持たせる為に第5群〜第6群を追加配置している光学設計です。

右図は以前オーバーホールした際、バラして清掃時にデジタルノギスで計測しほぼ正確にトレースした第1世代「52B」の光学系構成図です。
(各硝子レンズのサイズ/厚み/凹凸/曲率/間隔など計測)

さらに右図が今回の第2世代「52BB」の光学系構成図で、6群8枚の構成を踏襲しながらもコーティング層の仕様変更に伴い各群を再設計していることが判明しました (ビミョ〜に各群のサイズや曲率/カタチなどが違う)。

つまりこの構成図の相違を見ただけで、コーティング層の蒸着を仕様変更した分解像度の向上と収差の改善が成されていることが分かり、その結果光学系の屈折率を上げてきたことも分かります。それが実写を見ると第1世代の「52B」のほうが極僅かにマイルドな雰囲気に仕上がっている描写性である点に気がつきます (今回の第2世代の52BBのほうがより解像度がアップしていると言う意味)。

同様右図は今回バラして清掃時にデジタルノギスで計測しほぼ正確にトレースした光学系構成図です。
(各硝子レンズのサイズ/厚み/凹凸/曲率/間隔など計測)

すると、後群側のうち 部分の第5群〜第6群が鏡胴に固定されており、 部分の第1群〜第4群までの4群6枚のダブルガウス型構成の要素だけが鏡筒に固定されたまま直進動していることになり、それは第1世代から共通の設計概念です (グリーンの矢印)。




上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して円形ボケへと変わっていく様をピックアップしています。エッジが際立って (繊細に) 出てこないのでどちらかと言うと玉ボケに近い円形ボケになりますが、それを逆に利用して右端のような「絵画風」の可愛い写真を撮るのもステキですね(笑)

二段目
収差ボケが途中で出てくるのでご覧のような楽しい写真が撮れます。しかし基本的にピント面は非常にカリカリの鋭さを保つので、その意味で収差ボケを上手く活用すると幻想的な写真も撮れるでしょう。

三段目
ワザと光の反射を伴う被写体を選んであげればピント面は鋭くもソフトフォーカス的な写りを期待できますし、赤色も決して違和感の無いナチュラルな発色性ですからクセがありません。ところが、ちゃんと「タムロンの色」としてアンバーに振れる色再現性を持っているので「ヨーロピアンテイスト」な仕上がりも楽しめます。右端の写真などはまさしくタムロンの色ですね。

四段目
意外にもダイナミックレンジが広いので暗部に粘りがあり黒潰れしにくい性格です。それが功を奏して「空気感/距離環」を感じさせる写真も得意です。

実は他社光学メーカーの (同じポートレートマクロ) の実写を見ていても、このピント面の鋭さと背景のボケ味とのバランスからその「空気感/距離環」を感じるか否かの相違が出てきていることが分かります。つまりトロトロボケになるとしても (どんなにピント面の鋭さを追求しても) それだけでは「空気感/距離環」の表現性には至らないことが分かります。これが何を意味しているのかと言えば、当方は決してスペック至上主義者ではないので写真を等倍鑑賞したりしませんが (等倍で光学性能をチェックしたりしませんが)、ボケ味やボケ方が汚いからと酷評に伏すのではなく、むしろそれが功を奏して「空気感/距離環」に至ることもあるのだと考えます。つまり写真全体の残像収差や滲み方 (ボケ味/ボケ方) から相対的に写真の味、強いて言うならオールドレンズの味が出てくると考えるので、仮に等倍で光学性能をチェックしたいのなら (それに拘るなら) 今ドキのデジタルなレンズを使えば良いのに、何故に敢えてオールドレンズであ〜だこ〜だ酷評するのか意味が分かりません(笑) その意味で当方は「アンチ等倍派」とも言えます (オールドレンズの実写を等倍にして光学性能を評価することに意義を感じ得ない)(笑) 何故なら、確かに等倍でチェックすることで光学性能が白日の下に曝されますが、その結果がそのままイコールその写真の「印象」には繋がらないと考えているからです。その結果を以てして酷評には価せず、それはそのまま写真家の作品でも撮影者の意図として感じることができるワケであり、特に今ドキのデジタルなレンズとは違うオールドレンズの世界観の中では意味を成さないと受け取っています。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。パーツ点数はそれほど多くないのですが筐体サイズがバカデカイので撮影で使っている小道具の楢材のお盆に並びきりません。焦点距離90mmながらも最短撮影距離を39cmまで短縮化してきた設計なので、必然的に繰り出し量が相当長く、それを実現する為に「内外ダブルヘリコイド方式」を採っています。

後の工程で解説しますが、その繰り出し量を実現しているのは「2組の内外ヘリコイド筒」だとしても、距離環は350度の回転域くらいで設計しないとグルグル回りすぎて使い辛くなります。すると繰り出し量の多い2組のヘリコイド筒の荷重に耐えながら (何故なら距離環はマウント側に近い位置に配置されるから) 距離環を滑らかに、且つ軽いチカラだけで操作しようと考えると相当な切削技術が必要になってきます。

それを日本工業技術として既に1979年時点で完成の域に到達させていた「事実」が、こうやってバラしてみると本当に凄いなぁ〜と感心してしまいます。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルは「内外ダブルヘリコイド方式」なのでヘリコイドが独立しており別に存在します。

上の写真をご覧頂くと分かりますが、鏡筒の内外には「マットで微細な梨地仕上げメッキ塗装」が施してあります。これは非常に微細な凹凸を有する塗膜により経年で生ずる揮発油成分の流動を防ぐ意味があります (従って当然ながら絞りユニット内部にグリースを塗るなど以ての外)。

↑9枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。

↑完成した鏡筒に「延長筒」を接続して立てて撮影しました。この「延長筒」に光学系前群側が格納され、鏡筒下部に第3群〜第4群がセットされると「4群6枚のダブルガウス型構成」部分が完成し、この鏡筒部分が丸ごと直進動することで合焦する仕組みです (全てマットで微細な梨地仕上げ)。

↑ここからは鏡胴の組み立て工程に入ります。距離環やマウント部が組み付けられる基台です。冒頭解説のとおり相当な長さの繰り出し量を誇るモデルなのですが、その繰り出し/収納を制御する「距離環の駆動域」を与えている基台はこんなに薄い (厚みが無い) サイズです。

この基台のネジ山を距離環がグルッと350度回っていくだけで、鏡筒がググ〜ッと繰り出して出てきて最短撮影距離39cmに至るので、相当な抵抗/負荷/摩擦が生じていることになります。つまりこの基台側のネジ山切削レベルが相当厳格でなければとても滑らかで軽い操作性を実現できないことが分かり、当時の日本の工業技術に感心せざるを得ません。

↑ヘリコイド (外筒メス側) を基台にセットします。ご覧のようにヘリコイド側のネジ山は決して細かくなく、且つ急勾配に切削されていることが分かります。

すると前出の基台側薄いネジ山部分だけでこの内外ヘリコイドの急勾配を駆動させていく「チカラの伝達の凄さ」に当方はいつも感心してしまいます。

例えば、何か重いモノを両手に1個ずつ持って胸の前に保持しているなら頑張れますが、重いモノを持ったまま両腕を広げて水平位置まで伸ばしたら水平を維持し続けるには相当なチカラ/パワーが必要です (筋肉がない当方などすぐにプルプル状態です)(笑)

つまり何を言いたいのか?

このモデルの距離環を回すトルク感を決定づけているのは、内外ヘリコイド筒に塗布するヘリコイドグリースではなく基台側のネジ山の切削精度なのだという点です (何故なら全てのチカラがそのネジ山に一極集中するから)。ところがたいていの場合、過去メンテナンス時に「白色系グリース」が内外ヘリコイド筒にも基台側ネジ山にも塗られています (今回の個体も同じ)。すると5〜6年経過すると揮発油成分がオールドレンズ内部に廻ると同時にグリースは粘性を帯びてきますから、必然的に重いトルク感に至ってしまいます。

↑距離環用ベース環を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑外ヘリコイド筒 (オス側) を無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルには全部で18箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

外側の黒色の距離環用ベース環がグルグルと回ると外ヘリコイド筒が繰り出されたり/収納したりしますから「回転するチカラを直進動に変換」していることになります。その役目が「直進キー」と言うパーツでヘリコイドの両サイドに1本ずつセットされています。

直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目

↑同様に「鏡筒カバー」をセットしますが、この内側にもネジ山が切られており「内ヘリコイド筒 (メス側)」になっています。すると必然的に繰り出し/収納をするワケですから、ここにも「直進キー」が両サイドに1本ずつセットされます (つまり2組目の直進キー)。

実際はこの内部に冒頭の鏡筒がセットされて初めて繰り出し/収納の意味を成すワケですから、その鏡筒にも「直進キー」が必要になります。

結果、このモデルには全部で「3組の直進キー」が両サイドに1本ずつ互い違いに刺さって「直進動」をしていることになります。一例として上の写真に「直進キー」を写していますが、ご覧のように上下に直進動します (グリーンの矢印)。

つまり距離環を回した時の「回転するチカラ」が「直進キー」によって「直進するチカラ」へと変換されているワケですが、その距離環を回した時のチカラをできるだけ100%そのまま伝達しなければスムーズに軽い操作性でピント合わせできません。

実際は仮に100%距離環を回した時のチカラが伝達されてしまったら「スルスル状態」のトルク感に至ってしまい、とてもピント合わせできるような操作性になりません (指を離しただけで微動してしまうから)(笑) かと言って距離環を回すだけでも重くて大変ならば、それもピント合わせするどころの話ではありません。

要はここで気がつかなければイケナイのですが、ヘリコイドグリースの問題ではなく「チカラの伝達経路の確保」が重要なのであり、例えば上の写真で写っている「直進キー」が上下に「直進動」する時の滑らかさも問題になってくると言えます。

そして、それは具体的に「ポリキャップ (ポリエチレン)」を使っていることからも明白なのですが、ここにグリースを塗る必要が無いことになります (グリースが必要にならないようポリキャップを使っているから)。ところが過去メンテナンス時にはビッチリこの「直進キー」にもグリースが塗られており既に揮発していて粘性を帯びていました。

何の為に設計段階で「ポリキャップ」にしたのか意味が無くなっていたと言うワケです(笑)

つまり何でもかんでもグリースさえ塗れば滑らかになると言う安直な考え方でしか組み立てていないことが、たったこれだけでも分かってしまいます(笑)

なお、上の写真を見てすぐに気がついた人は相当な技術スキルですが、距離環の長さ (写真では高さ) が相当です。すると基台は下側に位置しているので「少ないチカラだけで駆動させる」ことを実現させている設計概念が理解できると思います。

仮にこの距離環用ベース環が短い長さだと回す時に基台側に近づく位置の時、その分チカラが必要になる原理ですね。これが基台側ネジ山の切削を厳格にすることで、然し繰り出し量が多くても少ないチカラだけで距離環を回せるようにベース環を長く採ってきた設計なのが論理的に理解できます。

↑距離環の指標値環をセットします。

↑透明窓を備えた鏡胴カバーを組み付けます。

例えば前述の解説のとおり、この透明窓の環ほどの長さしかない距離環だとしたら (つまり半分の長さだったら) それ相応なチカラが回す時に必要になってきますから、距離環用ベース環の長さを倍以上にした分、少ないチカラだけで繰り出しの量の多い内外ダブルヘリコイドだとしても回転させることが実現できています。

↑鋼球ボールを組み込んでから絞り環をセットして、この後マウント部を組み付けて光学系前群をセットして無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行えば完成です。

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ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑前回オーバーホール済でヤフオク! 出品したのが2017年だったので2年経ってしまいました。なかなか光学系の状態が良い個体が市場に出回らないのと、トルクの問題がある為、頻繁には扱う気持ちになりません。また2年ほどしてほとぼりが冷めた頃に扱うつもりです (つまり敬遠しているモデルの一つ)。

特にこのモデルの場合、光学系内にカビが発生していたらグリーン色のコーティング層がアッと言う間に浸食されるのでそれだけでガッカリです。

↑光学系内の透明度が高い個体なのですが、残念ながら光学系後群側に (特に後玉) LED光照射で視認できる極薄いクモリが全面に渡って生じています。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。一部中玉 (第3群) の外周附近にもコーティング層経年劣化に伴う極薄い汚れ状がありますが写真には全く影響しません。

↑光学系後群側も透明度が高いのですが、惜しいかな後玉表面側にコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが全面に渡りLED光照射すると視認できます。但し、言われてジックリ凝視すれば分かるレベルなので幸いなことに写真には影響しません。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(順光目視で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:11点、目立つ点キズ:6点
後群内:19点、目立つ点キズ:16点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内)
・バルサム切れ:無し (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):あり
(後群側にLED光照射で視認可能な極薄いクモリ)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
光学系内の透明度が非常に高い個体です
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑9枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。

この絞り羽根の開閉動作で問題が発生し、その改善処置を試すのに丸2日掛かりになってしまいました。

当方で所有しているタムロンのADAPTALL2マウントアダプタで、Nikon用 (2個)、Canon用 (1個)、OLYMPUS用 (2個)、MINOLTA用 (1個) を取っ替え引っ替え付け替えて絞り羽根の開閉動作をチェックしましたが、同一マウント種別でもアダプタを替えると絞り羽根が最小絞り値まで閉じません。

また同様に今度はデジカメ一眼/ミラーレス一眼用のマウントアダプタとして「TAMRON → SONY Eマウントアダプタ」に装着しても最小絞り値まで閉じなくなります。

何度も何度もバラして絞りユニットやマウント部内部の絞り連動レバー機構部を調整しましたが、どうしても不安定で最小絞り値まで閉じたり閉じなかったりと一貫性がありません。

そこでついに諦めて「自動絞りの機能停止」処置を施しました。従って今回の出品個体は「手動絞り (実絞り)」のみでの絞り羽根開閉になりますのでご留意下さいませ。

この原因は分かっているのですが、内部で使われているスプリングのうち、絞りユニット側で「常時絞り羽根を閉じようとするチカラ」で1本スプリングが使われ、絞り連動機構部で「常に開こうとするチカラ」で1本スプリングを使っています。その2本のスプリングのチカラのバランスの中で絞り羽根が正しく開閉するのですが、そのバランスを適正化することができませんでした。理由は経年劣化でいずれかのスプリングが弱っているからですが、一方を強くするともう一方とのバランスが崩れて上手く絞り羽根が開閉しません。2日掛かりで取り組みましたが諦めました。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度と軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人によって「重め」に感じ「全域に渡って完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。
・絞り羽根の開閉は手動絞り(実絞り)のみで自動絞りは機能停止させています。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。

↑純正の樹脂製専用フードが附属しています。フードにはつめが用意されているのでフィルター枠外側にハメ込んで回すと填ります (単に填っているだけでロックはしません)。そもそも樹脂製なのであまり煩雑な填め込みをすると擦り減ってしまいます。また前キャップは純正の樹脂製ですが後キャップは代用品なので、単にマウント分にハメ込んでいるだけです。

↑上の写真 (3枚) は、距離環の透明窓部分の微細なキズと鏡胴の擦りキズ/テカリなどを撮影しています。

↑また専用の純正樹脂製フードにも経年の使用痕がキズとして残っています。

↑実際にマウントアダプタに装着して専用フードをセットするとこんな感じです。

↑今回のオーバーホールが終わって絞り羽根の開閉異常が発生した為に、いろいろガチャガチャと純正のタムロン製マウントアダプタ (各フィルムカメラ用) を幾つも脱着しましたが、どうも個体差があり上手く填ったり填らなかったり、或いは絞り羽根の開閉も不安定でした。

またフィルムカメラ用マウントアダプタでOKでも、そのままデジカメ一眼/ミラーレス一眼用のマウントアダプタにセットすると最小絞り値まで閉じなかったりします (つまり絞り連動ピンが瞬時に押し込まれるか常時押し込まれたままになるかで絞り羽根開閉がまた違う)。

そこでこの際面倒なので、デジカメ一眼/ミラーレス一眼用にマウントアダプタ経由使う前提に設定してしまいました。つまり絞り羽根の開閉を「手動絞り (実絞り) 限定」にセットしてあるので自動絞りになりません

マウントアダプタならば上の写真のように「●印のリリースマーカー」同士を一致させてハメ込んで回すだけなので簡単です。これがタムロンのフィルムカメラ用マウントアダプタになるとマウント種別によってはガチャガチャと装着が大変だったりします。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

↑当レンズによる最短撮影距離39cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

専用の純正樹脂製フードを装着して撮影しています。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。

↑f値は「f8」に変わっています。

↑f値「f11」になりました。

↑f値「f16」です。

↑f値「f22」ですが極僅かに「回折現象」が出始めているでしょうか。それでもこれだけコントラストを維持した写真が撮れるのだからたいしたものです。

回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像力やコントラストの低下が発生し、ねむい画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞りの径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

↑最小絞り値「f32」での撮影です。