◎ Olympus (オリンパス光学) F.Zuiko Auto-S 38mm/f1.8(PEN-F/FT)
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今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、オリンパス光学製
標準レンズ・・・・
『F.Zuiko Auto-S 38mm/f1.8 (PEN-F/FT)』です。
今回の扱いが累計で5本目になりますが、今まで全てオーバーホール/修理のご依頼分で承っていました。オーバーホール済でヤフオク! 出品するのは今回が初めてになります。
実は当方はOLYMPUS製オールドレンズが個人的には好きなのですが、せっかくオーバーホール済でヤフオク! 出品しても落札されずにいつまでも残ってしまうので(笑)、仕方なく敬遠しているのが現実です。
オーバーホール/修理ご依頼分で前回このモデルを扱ったのが2017年でしたので、2年ぶりに今回扱いました (あまり扱わずにいると内部構造を忘れてしまうので2〜3年したらできるだけ扱うようにしています)。
今回このモデルをチョイスした理由は、ありきたりな開放f値「f1.8」の標準レンズですが、そもそもOLYMPUS製オールドレンズの筐体サイズが大変小さい中で「さらに小さい (コンパクト)」モデルで、且つ当時の旭光学工業製「SMC TAKUMARシリーズ」の同格クラスの描写性と比べても遙かに優れていると評価しているからです。
当方は基本的に写真を画全体的な印象で捉えるので、オールドレンズの描写性について等倍でチェックしてピント面の鋭さや収差/周辺部の流れなどを逐一細かく評価したりしません (スペック至上主義者ではない/写真を等倍鑑賞しない)。そのような評価方法は今ドキのデジタルなレンズのほうで行えば良いと言う考え方です。逆に言えば、ピント面の鋭さだけに限らず、アウトフォーカス部の滲み方や収差の影響なども「オールドレンズとしての味 (個性)」と捉えているので、むしろカリカリに鋭く精緻なだけの写真を観てもあまり良い印象を持ちません。
例えば、どんなにトロトロのボケ味で溶けていくように写っていても「ノッペリした平面的な写り」には頷けませんし、緻密で端正な写りだとしても被写体の材質感や素材感が感じられない描写には何ら感動を覚えません。ところが収差が酷くてもボケが汚くても「質感/立体感/リアル感」を感じられる写真には唸ってしまいます(笑) その意味で一般的に皆さんが評価されるところの「ボケが汚い」と言う感覚は当方にはあまり無いので、少々異質な感覚で写真を捉えている変わり者です(笑) 従ってこのブログに記載されている内容や評価などもたいして役に立たないのでご留意下さいませ。そもそも当方は写真センスが皆無なので(笑)、そのような人間の評価は何の足しにも成り得ません。
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1963年に世界初、そして世界で唯一無二のハーフサイズ・システム一眼レフ (フィルム) カメラとして登場したのが第1世代の「OLYMPUS-PEN-F」です。
フィルムをハーフサイズで使うので倍の枚数を撮ることができるワケですが、その為には基本概念を変更せざるを得ず、独特な (特異な) 発想に基づき設計され、細部にまでわたり非常に良く考え尽くされているフィルムカメラです。
ハーフサイズとは、フィルム (135mmフィルム) のいわゆるライカ判フォーマット36mm x 24mmの半分のサイズで使ってしまう発想で、OLYMPUSでは「18mm x 24mm」としました (Canon/Konica同様、RICOHは17mm)。
ちなみに、現在ライカ判フォーマットであるフィルムサイズは「フルサイズ」とも呼称していますね。
従って、フィルムカメラ側の発想としてフランジバックを短縮化するためにミラーを縦長位置で開閉する機構を開発し、同時にペンタプリズムからポロプリズムへと変更することで装着する交換レンズを中央から右側にオフセットした、当時としては斬新なフォルムのフィルムカメラが誕生したようです (右写真はPEN-FT)。
なおデジカメ一眼/ミラーレス一眼などで撮像素子が「APS-C」サイズのカメラボディにこのモデルを装着した場合、35mm判換算で「1.4倍」になるので「焦点距離:53mm」程度になりますが (時々勘違いをしている方が居ますが)、あくまでも画角は本来の焦点距離38mmのままで、その内側の (中心部から) 焦点距離53mm分の領域が撮影時に記録されるので、歪曲やパースペクティブなどはそのままで切り取られます (つまり53mmの画角に変化するワケではない/このモデルは1.5倍ではなく1.4倍です)。
1966年には巻き上げを1回に仕様変更し (PEN-Fは2回巻)、同時にTTL露出機構を実装してきた「PEN-FT」を発売します。
実はこの「PEN-F/FT」などのシリーズ用に同時発売された交換レンズ群は、当初は焦点距離を「cm」表記でレンズ銘板を刻んでいました。従って今回のモデルも「3.8cm/f1.8」だったワケですが、1966年時点では「38mm/f1.8」表記へと変更していますから、それで大凡の製産時期を推測することができます。
(それぞれ取扱説明書を確認して交換レンズ群をチェック)
さらに1966年には「PEN-FT」からTTL露出機構部を取り外した廉価版モデル「PEN-FV」も用意しています。
初代の「PEN-F」はセルフタイマーの有無相違で判断できますが「PEN-FT/FV」は正面から見ただけでは判別しにくいと思います。
実際はトップ部分にモデル銘を刻んでいるのでそれをチェックしないと間違って入手しかねませんね。
(厳密にはシャッタースピードのダイアルで判別できる)
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上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。
◉ 一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して円形ボケへと変わっていく様をピックアップしました。このモデルの光学系が5群6枚のウルトロン型構成なのですが、一丁前にキレイなエッジを伴うシャボン玉ボケを表出できているところが凄いです (但し収差の影響を受けるので真円にはなりにくい)。また破綻して円形ボケへと変わっていくにしても滑らかで階調の豊かな滲み方が自然に写って違和感を感じず美しいので、シャボン玉ボケ派の人にはこのモデルは大変小っちゃくてコンパクトな分、所有欲がそそられるのではないかと個人的には評価しています。
◉ 二段目
ところが致命的な残存収差が表出するので、シ〜ンによっては背景に気を遣わざるを得ない場合が出てきます。一般的な表現で言うなら「汚いボケ方」とでも言うのでしょうか。当方にとってはこれはこれで「味 (個性)」と受け取るので決してマイナス要素にはなりませんが(笑) ピント面は意外にも鋭く (感じられるような) 残し方ですし、且つ被写体色に忠実な印象が当方好みでもあります。
◉ 三段目
これがこの筐体サイズから吐き出す写真なのかと、実は一番最初にこのモデルを扱いたい気持ちに陥った理由が「ダイナミックレンジの広さ」です。暗部に粘りがあり頑張ってちゃんと写し込んでくれています。それはそのまま何の変哲もない街中スナップ写真でも表れ、遠方までキッチリ解像しています。さらにピント面の鋭さがあるので被写体の材質感や素材感を写し込む質感表現能力に優れ、それらの要素が相まり右端写真のような「距離感」さえも感じてしまうリアルな写真を残します。
◉ 四段目
これも意外だったので正直驚いた要素ですが、まるで開放f値「f1.4」クラスのオールドレンズ並に大変リアルで活き活きとした人物撮影をこなしてくれます。焦点距離が「38mm (35mm判換算53mm程度)」なので、ポートレートレンズほどにはインパクトを出せませんが、それでも開放f値「f1.4」クラスでさえもこのくらいの生々しい人物描写が出せないモデルがたくさんありますから、これは予想外のオドロキでした(笑)
光学系はこんなに小っちゃくてコンパクトな筐体サイズながらも、一丁前に本格的な5群6枚のウルトロン型構成を採っています。
ネット上のこのモデルの評価を読んでいると「背景ボケが汚い」とか「収差が多くて周辺部の流れも酷い」など、まさしく酷評の嵐です(笑)
今回の個体もそうでしたが、実は当初バラす前の実写チェックでピント面はさほど鋭く出ず、且つ収差の影響が極端に出ていたので「こんなモンだったかしら?」と半ば落胆していました。
ところがバラしてみると何のことはなく、光学系の光路長確保を過去メンテナンス時に実施していなかったことが原因でした。オーバーホールが完了してみれば期待通りの素晴らしい描写性が戻りました (このページの一番最後に今回出品個体の実写を載せています)。
なお、ネット上を検索しまくってもなかなか光学系構成図が出てきませんが、右図は今回バラして清掃時にデジタルノギスで計測しほぼ正確にトレースした構成図です。当方が計測したトレース図なので信憑性は低いですから、ネット上で確認できる大多数の構成図のほうが「正」です (つまり当方のトレース図は参考程度の価値もありません)。
(各硝子レンズのサイズ/厚み/凹凸/曲率/間隔など計測)
オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。
↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。筐体サイズが本当に小さいのですが、バラしてみると内部構造も構成パーツ点数も理に適った設計を採っており、決して手を抜いていなかったことが分かります。
今回2年ぶりに解体したのですが、内部にトラップが仕掛けられていることをスッカリ忘れており危うく壊しそうでした(笑) 過去メンテナンスが施されており、ヘリコイド (オスメス) はもちろん絞り環からマウント部内部に至るまで、結構多めの「白色系グリース」が塗られていたので、さすがに経年劣化の進行により揮発した油成分の影響で一部パーツは既にサビが出ていました (絞り羽根にも3枚サビが発生)。
オールドレンズ内部の「経年で揮発した油成分で酸化/腐食/錆びは生じない」と思い込んでいる方が居ますが、確かに「油分で酸化/腐食/錆びは発生しない」のは正しいです。然し、揮発油成分の周囲に水分/湿気が引き留められる (表面張力の原理) ので、結果的にそれが因果関係となり金属製パーツの酸化/腐食/錆びを促します。
逆に言うなら、仮に前述の話がウソだと言うなら、ヘリコイドのネジ山などに酸化/腐食/錆びが生じている理由を説明できません。ヘリコイドのグリースから揮発した油成分に引き留められた水分/湿気は、ヘリコイドの駆動でグリース内部に引き込まれますが決して融和しません。グリースの中に混在した水分/湿気はやがて酸化/腐食/錆びを進行させます。
↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルはヘリコイド (オス側) が独立しており別に存在します。
↑絞りユニットの構成パーツを並べて撮影しました。一般的なオールドレンズでは「位置決め環/開閉環」だけが絞りユニット内部に組み込まれますが、OLYMPUS製オールドレンズの場合は「制御環」まで絞りユニット内部にセットされます。
絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。
◉ 位置決めキー
「位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー
◉ 開閉キー
「開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー
◉ 位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)
◉ 開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環
↑こんな感じで絞りユニットが完成し鏡筒最深部にセットされます。
↑このモデルの筐体サイズは大変小っちゃくてコンパクトですが、そのほとんどの容積を占めているのが光学系前後群であることが横から撮影すると分かります。それは光学系を簡素化した設計ではない5群6枚のウルトロン型構成であることからも明白です。
↑絞り環との「連係環」をセットしたところを撮影しました。OLYMPUS製オールドレンズの多くに採用されている設計概念ですが、鏡筒内部の絞りユニットは「4層構造」を採っています。
① 第1階層:制御環
② 第2階層:開閉環+絞り羽根
③ 第3階層:制御機構部+位置決め環
④ 第4階層:絞り環連係環+なだらかなカーブ
すると、④ 第4階層の「連係環」に用意されている「なだらかなカーブ」にカムが突き当たることで、具体的な絞り羽根の開閉角度が決まります。「なだらかなカーブ」の麓部分が「最小絞り値側」になり、勾配 (坂) を登りつめた頂上部分が「開放側」です (グリーンの矢印)。上の写真ではカムが麓部分で突き当たっているので、ちゃんと絞り羽根が最小絞り値「f16」まで閉じていますね。
実際は「第5階層」としてこの絞りユニットの上に光学系前群がセットされ、さらにその上に今度は絞り環 (とその機構部) が組み込まれますから、使える限りのスペースを有効活用した (考え尽くされた) 設計概念であることが分かります。
それもそのハズで、OLYMPUS製一眼レフ (フィルム) カメラ「OMシリーズ」自体がコンパクトに作られていることから、交換レンズ群の多くも「筐体サイズありき」で設計スタートしていたのではないかと推測しています。時代に倣い他社光学メーカーの多くがマウント側直前位置に「絞り環」を配置した設計を主体とする中で、OLYMPUSはまるで1950年代のオールドレンズの如く前玉側に「絞り環」を配置した設計を踏襲し続けたワケですが、それは筐体サイズが小さいが故に前玉側に配置せざるを得なかったのではないかと考えています (マウント側の配置だと指で掴めず操作し辛いから)。
逆に考えると、前玉側に「絞り環」を配置したが為に、設定絞り値の伝達をマウント部まで繋げなければならず、然しその間には絞りユニットと光学系前後群が介在するワケで、そもそも発想時点でだいぶムリのある話だったのをここまで完成の域に到達させた「その心意気と意地」にただただ脱帽です。それは、まさしく当時の日本工業技術の最たるモノであり、それを今さらながらに当方は誇りに感じてしまいますね。
OLYMPUS製オールドレンズが好きな理由の中には、実は描写性だけではなく、そんなロマンも大切な要素になっている次第です (日本人に生まれてきて良かった)。
↑真鍮製のヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。
↑完成した鏡筒+ヘリコイド (オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で7箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。
↑こちらはマウント部内部の写真ですが、既に各構成パーツを取り外して当方による「磨き研磨」を終わらせた状態で撮っています。当初バラした直後は、過去メンテナンス時にこのマウント部内部にまでビッチリと「白色系グリース」が塗られてしまい、さらに悪いことにその後「潤滑油」まで注入されてしまいましたから、相当な箇所と領域で酸化/腐食/錆びが発生していました。
↑取り外した各構成パーツも個別に「磨き研磨」して酸化/腐食/錆びを可能な限り除去し組み付けます。OLYMPUS製オールドレンズに共通な仕組みですが、マウント部には「ロックボタン/プレビューボタン」がちゃんと用意されています。しかし、この「PEN-F/FT」用交換レンズ群でもそれをやってしまう拘り方が凄いですね (何故なら単なる丸形ボタンではなくちゃんとOMシリーズと同じボタン形状を設計しているから感心)。
こう言う部分にも「決して手を抜かない」思想が見え隠れして、当方などは楽しくて仕方ありません(笑)
↑後からセットできないので先に光学系後群側を組み込み、完成したマウント部をセットします。
↑ひっくり返して距離環を仮止めした後、光学系前群を組み込んでから無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後に絞り環とその機構部、及びフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。
ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。
↑このモデルのフィルター枠サイズが⌀43mmですから、どんだけ筐体サイズが小さいのかお分かりでしょうか? 然し光学系は本格的な5群6枚ウルトロン型構成で、しかもそのピント面の鋭さは相当なモノです。
少なくとも当方には「ボケが汚い/収差が酷い」と酷評に伏すだけで終わらせてしまうことなどできません。第一、今ドキのデジカメ一眼/ミラーレス一眼にマウントアダプタ経由装着した時の「取り回しの良さ/コンパクトさ/見栄えの良さ」が憑き纏うとなれば、それは描写性が好みならば (ボケ味や収差が許容内なら) 「これ以上所有欲を掻き立てられるモノは無い」くらいに感じてしまうほどOLYMPUS製オールドレンズは徹底した思想が大好きです(笑)
今でこそ医療事業/業界がメインの会社で、悲しいかなイメージング事業部の肩身の狭さと言ったら相当なのでしょうが(泣)、このような光学技術と何事も小さく作ることに固執したからこそ、成し得た「今」なのではないかと拍手を贈りたいですね。
(と言いながら実は当方は富士フイルムのファンなのですが)(笑)
↑光学系内の透明度が非常に高い個体ですが、各群の光学硝子の経年劣化状況はそれほど良くありません。つまり相応に「点キズ」が生じており (CO2溶解/カビ発生による) 或いはコーティング層の経年劣化も進んでいます。一応、コーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリはLED光照射でも皆無です。
↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
↑光学系後群側のほうが「点キズ」が多めなので、相応に水分/湿気の耐用試験の如く保管状況があまり良くなかったのだと推測します (つまり前キャップだけ付けてフィルムカメラに装着されたまま長期間の保管と推測)。
↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
【光学系の状態】(順光目視で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:13点、目立つ点キズ:9点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:16点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内)
・バルサム切れ:無し (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系第4群裏面側の外周に一部コーティング層の経年劣化に伴うカビ除去痕としてコーティングのハガレがありますが写真には一切影響しません。
・光学系内の透明度が非常に高い個体です。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。
↑5枚の絞り羽根もキレイになり (但し3枚は赤サビが一部にあり) 絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は完璧に正五角形を維持しています。
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度と軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人によって「重め」に感じ「全域に渡ってほぼ均一」です(極僅かにトルクムラあり)。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。
【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
↑ハッキリ言って当方がオーバーホール済でヤフオク! 出品しても人気が無いので、また数ヶ月落札されずに残ったままだと思いますが(笑)、以下の当方が拘る描写性の要素3点を全て体現できるモデルですので、特にOLYMPUS製オールドレンズのファンの方ならその良さはご存知でしょうからご検討下さいませ。
【当方が拘る描写性の要素として以下の3つがあります】
① 被写体の素材感や材質感を写し込む質感表現能力
② 距離感や空気感を感じる立体的な表現能力
③ 現場の雰囲気や臨場感を留めるリアル感の表現性
このモデルはピントの山が大変分かりやすく、アッと言う間なのでそれを考慮した距離環のトルク感に仕上げています。
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下の実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい。当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません。
↑当レンズによる最短撮影距離35cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります。しかし簡易検査具による光学系の検査を実施しており光軸確認はもちろん偏心まで含め適正/正常です。
↑絞り環を回して設定絞り値「f2」で撮影しています。一般的なオールドレンズで言うと、開放f値が「f1.8」の場合次の絞り値は「f2.8」なのですが、このモデルはそれを拘って「f2」に設計してきているのも自信の表れだと当方は感心しています。
↑各絞り値での実写は、実は全景を入れる為に少々下がった位置で撮っていますが、上の写真は本当に最短撮影距離35cm位置で撮影しています。するとケラレ (四隅が黒くなる) や周辺減光 (四隅の光量が低下) も無く、ご覧のようにキレイに撮影できるので、筐体サイズが小っちゃくてもちゃんと「フルサイズ」のイメージサークルをカバーしていることが分かります。