◎ シマ光学 MC CIMKO MT Series 24mm/f2.4(Nikon F)

cimko6シマ光学は元々は東京光学の下請けとして設計生産をしていたようですが、1981年に東京光学が撤退したために独自ブランド「CIMKO (シムコ)」として様々なレンズ群を発売したようです。その後社名を「シィーマ」に変更しましたが、東京光学時代のレンズをそのままの設計で再度生産し発売していたのではなく、あくまでも再設計した上で生産していたようです。


あまり見かけない珍品「MC CIMKO MT Series 24mm/f2.8」ですが、その描写性が気になり、今回はオーバーホールして出品してみることにしました。

オーバーホールのために解体した後、組み立てていく工程を解説を交えて掲載しています。

すべて解体したパーツの全景写真です。

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それほど多いパーツ点数ではありませんが、その構造は他社光学メーカーと比較しても「特異」な構成や構造を採っています。コシナのこの当時のモデルの中に、このCIMKOのモデルと通じる構成パーツや構造化をしているモデルがあります。この当時のコシナのレンズは様々な内部構成や構造化が成されており、どうしてそのようにバラバラな構造化の仕様にしてしまったのか疑問がありましたが、今回のオーバーホールで納得できました。コシナがシムコからOEM供給を受けていたことになりますね・・コシナが現存する会社なので、どうしてもシムコがコシナからOEM供給を受けていたかのように考えてしまいがちですが、実際は逆だったようです。もちろんコシナ自身で設計し生産していたモデルもあるでしょうし、他にも他社光学メーカーからのOEM供給を受けていたモデルもあります。その意味では当時のコシナのレンズは複数のメーカーが関わっていたレンズ群とも言えます。

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ここからは解体したパーツを実際に使って組み上げていく組立工程の写真になります。

まずは絞りユニットや光学系前群を収納する鏡筒 (ヘリコイド:オス側) です。

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一般的な鏡筒のようにも見受けられますが、実は「特異」な意味を持つ箇所があり、鏡筒に3箇所の「縦方向の開口部」が用意されています。後ほど、その意味が分かります。

絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させ、同時に絞り連動の関係パーツ群もアタリを付けて組み付け位置調整をしておきます。ここをミスると後で再度バラすハメに陥ります。

CM2428(0628)13このような感じです。真鍮材の金具をネジで固定していますが調整幅を備えているので厄介ですね。

次の写真は距離環やマウント部を組み付けるための基台です。

CM2428(0628)14ヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けてネジ込みます。

CM2428(0628)15ヘリコイド (メス側) には側面に横方向に細長い開口部が3箇所用意されています。少々変わった構造ですね・・。

鏡筒を立てて写しました。

CM2428(0628)16この鏡筒のヘリコイドのネジ山 (オス側) がネジ込まれていくワケですが、鏡筒の側面には縦方向の開口部がありますね (3箇所)。

CM2428(0628)17鏡筒の内部に「もう一つの環」を差し込みます。この環は「光学系前群の収納筒」なのですが、鏡筒の3箇所の「開口部」から外側のエレベーター環にネジ止めして連係させる仕組みです・・凝ってますね。

上の写真ではボケてしまいましたが、鏡筒の内部に「レンズ収納筒 (アルミ材削り出しの環)」が入ってます。外側のエレベーター環にはネジ山は切られておらず「斜め状の開口部」がやはりあり、そこをポリ製のリングを通したネジが行き交うことで鏡筒内の「レンズ収納筒」が「上下動」する仕組みです。

ちなみに、エレベーター環にある「コの字型の溝 (上の写真右側)」は、このモデルでは何の意味も役目も成していません。他のモデルで使うために用意されていると思われます。

CM2428(0628)18上の写真は、ヘリコイド (メス側) がネジ込まれている基台をセットした写真です。ヘリコイドの「回転するチカラ」を鏡筒内の「レンズ収納筒」が前後動する「直進するチカラ」に変換する「直進キー」の役目が、このモデルではエレベーター環との関係で構成されています。

さらに、これらの仕組みは様々なモデルにも応用できるように設計されており、鏡筒やレンズ収納筒の繰り出し幅を調整できるようにしてあります。なかなかよく考えられた構造ですね・・。

この仕組みを採用したモデルがコシナ製の当時のレンズにありましたが、モデル銘を思い出せないので具体的にはご案内できません。しかし内部パーツにこのエレベーター機構部と同じパーツを使っていたのはハッキリ覚えています。それほど奇抜な印象を受けました。てっきりコシナの方式かと思い込んでいましたが、それほどコシナではいろいろな機構を採用したモデルが存在していました。今から考えればOEM供給を受けていたのは逆にコシナだったのかと言う結論に至りました。

CM2428(0628)19指標値環を組み付けて基準マーカー位置を確定させます。ここをミスるとすべての位置がズレていきます。この状態でひっくり返した写真が次の写真です。

CM2428(0628)20ここからはマウント部の構成パーツを組み付けていきます。

CM2428(0628)21絞り環とその内部パーツである「絞り環連係アーム」や「絞り連動カム」などを一緒に同時に組み付けます。

このモデルの構成パーツでは、どうしてそのような構造をしているのか「意味不明」な部分が幾つか存在しています。上の写真の「絞り環」もそのひとつで、どうして絞り値をワザワザ「二段刻印」しているのかが分かりません。例えばシグマ製レンズ等では「絞り値窓」を備えているので、絞り環のパーツ自体はこのような二段で作られていたりします。しかし、当レンズではそのような表示窓も無いので、二段にしている意味が分かりません。

CM2428(0628)22各部の連係パーツを噛み合わせた状態でマウント部を組み付けます。

CM2428(0628)23当レンズはニコンの「Fマウント」なのでマウントの爪をセットします。この状態で一旦距離環を仮止めで組み付けておきます。この後は光学系の前後群をセットして、その後に無限遠位置の確認などを行います。

CM2428(0628)24光学系の前群から組み付けていきます。

CM2428(0628)25マルチコーティングを採用した光学系で、7群8枚構成の典型的なレトロフォーカス型です。

CM2428(0628)26上の写真で光学系内に「白いキズ様のもの」が写っていますが、キズではなくレンズの固定環とその溝の間のキズです。

光学系は順光目視にて前玉は極微細な点キズ3点、第2群は極微細な点キズ2点と極微細なヘアラインキズあります。後玉は極微細な点キズ2点と中央附近に極微細な拭きキズ2本あります。後玉中央に真円状のコーティングスポットのような箇所がありますがコーティングそのものなのでスポットではありません。光学系内はLED光照射でようやく視認可能レベルの極微細な拭きキズや汚れもありますが、いずれもすべて写真への影響はありませんでした。

次は光学系後群です。

CM2428(0628)27後群もクモリや大きなキズも無く、とてもクリアな状態を維持しています。

CM2428(0628)28後玉の中央部を拡大撮影しました。広角レンズの後玉によく存在している「コーティングスポットのような部分」を写しました。これはキズでもコーティングスポットでもなく、コーティングそのものです。どうしてこのように中心部だけコーティングを変えているのかよく分かりませんが、希にコーティングスポットだとクレームを付けてくる方がいらっしゃるので写しました。後玉中央付近には極微細なヘアラインキズが2本あります。

ここからは組み上げが完成した出品商品の写真になります。特に銘玉でもなく評判が良いレンズでもありませんが、その描写性は独特であり、市場でもなかなか出回らないので珍品ではあるようですね・・。

CM2428(0628)1光学系内はクモリやカビ除去痕も無く、とてもクリアでキレイな状態を維持したマルチコーティングを採用した個体です。

CM2428(0628)2絞り羽根もキレイになり確実に駆動しています。

CM2428(0628)3ここからは鏡胴の写真になります。経年の使用感を感じさせないキレイな状態を維持した個体です。

距離環や絞り環の操作は大変滑らかになりました。距離環のトルク感は滑らかに感じほぼ均一ですが内部パーツのエレベーター機構に伴うゴリゴリ感を僅かに感じますが仕様ですので将来的に問題になることはありません。ヘリコイドは一部グリス溜まりによるトルクムラを感じるかも知れませんが操作しているうちに改善されます (グリス溜まりは移動します)。ピント合わせの際も軽いチカラで微妙な操作が楽に行えます。

CM2428(0628)4 CM2428(0628)5 CM2428(0628)6 CM2428(0628)7東京光学の流れを汲む、ある意味「末裔」たる珍品「MC CIMKO MT Series 24mm/f2.8 (Nikon F)」です。

CM2428(0628)8マウントはニコンの「Fマウント」になります。当方ではニコンやキヤノン製マウントのモデルをあまり扱わないので、マウントに関する詳細はよく知りません。

CM2428(0628)9当レンズによる最短撮影距離30cm附近での開放実写です。

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