◎ YASHICA (ヤシカ) AUTO YASHINON-DS 50mm/f1.7《富岡光学製》(M42)

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今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、ヤシカ製
標準レンズ・・・・
AUTO YASHINON-DS 50mm/f1.7《富岡光学製》(M42)』です。


このモデルを特に敬遠していたワケではないのですが、死角に入っていたようで実は今回の扱いが初めてです(笑) そもそも市場評価が低いので、このモデルをオーバーホール済でヤフオク! 出品しても作業対価分回収できないという懸念があったのも事実です。実際今回初めてオーバーホールしたところ、他のヤシカ製オールドレンズと同様な作業 (調整) を強いられる為、確かに作業対価分の回収は難しいと結論しました。

従って、今のところ次回の扱い予定はありません (今回が最初で最後のつもり)。

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1972年にヤシカが発売したフィルムカメラ「YASHICA ELECTRO AX」用のセットレンズとして用意された標準レンズの中の一つです。開放f値「f1.4」と「f1.7」が用意されました。

【ヤシカ製フィルムカメラにみる交換レンズ群】
※各発売フィルムカメラの取扱説明書記載による

YASHICA PENTA J-4 (1965年発売):YASHINON-R
YASHICA TL SUPER (1967年発売):AUTO YASHINON-DX
YASHICA PENTA J-7 (1968年発売):YASHINON-R
YASHICA TL (1968年発売):AUTO YASHINON-DX
YASHICA TL ELECTRO (1969年発売):AUTO YASHINON DS-M
YASHICA TL ELECTRO X (1969年発売):AUTO YASHINON-DX
YASHICA TL ELECTRO X ITS (1970年発売):AUTO YASHINON (AUTO YASHINON-DX)
YASHICA ELECTRO AX (1972年発売):AUTO YASHINON-DS
YASHICA FFT (1973年発売):AUTO YASHINON-DS

ネット上ではAUTO YASHINON-DX/DSの相違点が「A/Mスイッチの有無」と案内されていることが多い (スイッチ装備がDX) ですが、一部モデルはDSタイプでもA/Mスイッチを装備していました (例:広角レンズ24mmなど)。またそもそもDSの発売時期がDXと同じタイミングではなく、当時発売されていたヤシカ製フィルムカメラの取扱説明書を見ていくと、1970年代以前のフィルムカメラにはその交換レンズ群一覧にDSタイプの記載がありません。
(当時のレンズカタログをチェックしても記載無し)

さらにDX/DS共にモノコーティング仕様ですが、途中で発売されたマルチコーティングの「DS-M」は1969年に登場していながら()、その後のセットレンズは再びモノコーティングのモデルばかりに戻っています。しかもA/Mスイッチ装備のDXからDSにセットレンズの主体を変更しているので、何だかやっていることが当時の他社光学メーカーの動きとは逆のようにも見えよく分かりません。

一方、マウント種別を従前の「M42マウント」から「コンタックス/ヤシカマウント (C/Y)」に変更してきた1977年以降はマルチコーティング化された「YASHICA LENS ML」タイプがそのセットレンズとして主流になりますから、当時の時代背景として、既に陳腐化していた「M42マウント」からの撤退タイミングを見計らっていたのかも知れませんし、もちろん経営難に逼迫した状況から脱出できず、ついに1983年には京セラに吸収され消滅しますから、既に余裕がない状況だったのかも知れません。

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今回扱うモデルも『富岡光学製』と当方では捉えているのですが、そのように謳ってヤフオク! 出品するとSNSなどで批判対象になるようです(笑)

その根拠の基となるモデルがあり、モデルのレンズ銘板に発売メーカーの刻印以外に「TOMIOKA」銘を刻んだいわゆる「ダブルネーム」のオールドレンズが存在します。

AUTO CHINON 55mm/f1.4 TOMIOKA (M42)」の特異的な構造要素から判定しています (右写真は過去にオーバーホールした際の写真から転載)。

具体的には『富岡光学製』の構造的な要素として3点あり、いずれか1点、或いは複数合致した時に判定しています。

M42マウントの場合に特異なマウント面の設計をしている (外観だけで判断できる)。
内部構造の設計として特異な絞り環のクリック方式を採っている (外観だけでは不明)。
内部構造の設計として特異な絞り羽根開閉幅調整方式を採っている (外観だけでは不明)。

上記3点は今までに2,000本以上のオールドレンズを扱ってきて、富岡光学以外の光学メーカーで採っていない設計なので判定の基準としています。それは、そもそもオールドレンズを設計する時、他社の設計をそっくりそのまま真似て (模倣して) 設計図面を起こす必要性が薄いからです。推測の域を出ませんが、たいていの光学メーカーでは自社工場の機械設備などを勘案して、最も都合の良い設計で図面を起こすハズだと考えられるからです (ワザワザ費用を掛けてまで同じ設計を採る必要性が見出せないから)。具体的な特異点の解説はコシナ製標準レンズ「COSINON AUTO 55mm/f1.4《富岡光学製》(M42)」でご案内しています。

今回扱うモデル『AUTO YASHINON-DS 50mm/f1.7《富岡光学製》(M42)』は、上記判定のが当てはまります。なお、今回扱うモデルは当時のヤシカ製オールドレンズ「MLシリーズ」の同一仕様 (50mm/f1.7) と内部構造が一部近似しているので、それも合わせて以下のオーバーホール工程で解説していきます。

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上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して円形ボケへと変わっていく様を集めていますが、光学系の構成がウルトロン型なのでそもそもキレイな真円の円形ボケ表出が収差の影響や口径食から苦手だったりします。

二段目
さらに背景ボケを見ていくと、独特な少々変わったボケ方をする場合があるので好き嫌いが分かれやすいモデルなのかも知れません。基本的に鮮やかな発色性で高いコントラストに振れる描写性ですが、特に3枚目の写真のように赤色に極端に反応するので、ご覧のように色飽和ギリギリの線まで到達しています (非常に特徴的な反応です)。ウルトロン型光学系ながらもボケ味と相まり特徴的な描写を考えると、この当時のヤシカがこのモデルに何を狙っていたのかがちょっと分かりませんね。個人的にはこのボケ味の好き嫌いは別としても、この発色性/コントラストの掛かり方は好きですし、それがこの廉価版モデルで愉しめるのも有難いと感じますね。その意味では決してバカにできないモデルではないかと思います。

光学系は5群6枚のウルトロン型構成です。そもそもネット上で当モデルの情報がほとんどヒットしませんが(笑)、使われている構成図をチェックすると今回バラして採寸した光学系は違っていました。
右図は今回バラして清掃時にデジタルノギスで計測しほぼ正確にトレースした構成図です。
(各硝子レンズのサイズ/厚み/凹凸/曲率/間隔など計測)

一方右図は当時の「MLシリーズ」から同一仕様の50mm/f1.7を転載しました。右図は以前そのモデルをオーバーホールした際の清掃時にデジタルノギスで計測しほぼ正確にトレースした構成図です。
(各硝子レンズのサイズ/厚み/凹凸/曲率/間隔など計測)

おそらくネット上で使われている今回のモデルDSタイプ (50mm/f1.7) の構成図は「MLタイプ」の構成図をそのまま使ってしまっているのではないかと推察します。
ご覧のとおりそもそもモノコーティング (DS) とマルチコーティング (ML) の違いがあるので、必然的に同一の光学設計にはなり得ません (解像度も収差も異なるから)。

第3群のサイズが違いますし後群側第4群や第5群 (後玉) も全く違います (曲率も全て異なる)。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。内部構造や使われている構成パーツの設計概念などが当時の「MLシリーズ」と非常に似ています。但し、同じ焦点距離50mm/f1.7同士で比べても、マウント種別が異なる点を除いても決して同一ではありません。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルはヘリコイド (オス側) が独立しており別に存在します。

↑6枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを鏡筒最深部にセットします。

↑完成した鏡筒をひっくり返して反対側 (後玉側) 方向から撮影しました。主要制御系パーツがビッシリと鏡筒裏側に配置されています。

連係アーム
絞り環と連係 (接続) する役目のアーム
制御環
途中に「なだらかなカーブ」を有する絞り羽根の開閉角度を制御する環 (リング/輪っか)
開閉アーム
マウント面の「絞り連動ピン」押し込みに連動して絞り羽根開閉をする役目
カム
絞り羽根の開閉角度を決定し絞りユニットに伝達する役目

制御環」に用意されている「なだらかなカーブ」に「カム」が突き当たることで、絞り環操作で設定された絞り値に絞り羽根の開閉角度が決まり絞りユニットに伝達される仕組みです。

ところが一般的なオールドレンズの設計とは異なり「なだらかなカーブ」の勾配 (坂) の使い方が真逆です。「なだらかなカーブ」の麓部分が開放側になり、登りつめた頂上が最小絞り値側です (一般的なオーバーホールはその反対)。上の写真では「なだらかなカーブ」の頂上でカムが突き当たっているので「開閉アーム」が操作されると (つまりマウント面の絞り連動ピンが押し込まれると) 瞬時に絞り羽根が最小絞り値まで勢いよく閉じます。

左写真は以前オーバーホールした同一仕様「MLタイプ」の鏡筒をひっくり返した時の写真です。

やはり同じで「制御環」に備わっている「なだらかなカーブ」の使い方が一般的なオールドレンズとは真逆です。然し、配置されている各制御パーツが今回のモデル「DSタイプ」と同じ設計概念であることが分かります。

↑同じく完成した鏡筒をひっくり返したまま、今度は別の角度から撮影しました (後玉側方向からの写真)。「開閉アーム」側を撮影しましたが、ご覧のようにスプリングのチカラで「常に絞り羽根を開こうとするチカラ」が及んでいます。つまり「開閉アーム」が操作されることで絞り羽根が設定絞り値まで閉じる考え方です (ブルーの矢印)。

同様左写真は以前オーバーホールした「MLタイプ」の鏡筒を同一面で撮影したものです。

すると各制御パーツの設計概念は全く同一なのですが、よ〜く見ると「なだらかなカーブ」や他のパーツの「向きが逆」であることが分かります。

つまり「DSとMLでは絞り羽根の開閉方向が互いに反対方向」なのがこのように制御系パーツの配置の違いでちゃんと分かりますね(笑)

なお「DS/ML」共に鏡筒には「絞り羽根開閉幅調整キー」が備わっていて、絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量) を鏡筒の位置を微調整することで変更している仕組みであることが分かり、それは冒頭解説の『富岡光学製』の判定要素にあたります。

↑距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。

↑真鍮製のヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑ヘリコイド (オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で7箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

ヘリコイド (オス側) の内側には両サイドに「直進キーガイド (溝)」が用意されていて、そこに「直進キー」が刺さってスライドします (ブルーの矢印)。距離環は真鍮製のヘリコイド (メス側) に固定されるので (グリーンの矢印の穴)、距離環を回すとヘリコイド (メス側) が回転し、それに連動して「直進キー」がガイド (溝) を行ったり来たりするので、結果ヘリコイド (オス側) が直進動する仕組みです。

直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目

↑完成した基台をひっくり返して反対側を撮影しました (後玉側方向からみた写真)。ご覧のように基台の両サイドに「直進キー」がネジ止めされて、且つヘリコイド (オス側) のガイド (溝) をスライドするようになっているので、距離環が回ってもヘリコイド (オス側) は回転せずに「直進動する」ワケですね(笑)

このことから何が分かるのかと言えば、このモデルを解体しようとした時、フィルター枠がヘリコイド (オス側) に締め付け固定されているので、フィルター枠を回して外そうとしたら一発で「直進キーが変形する (下手すれば折れる)」ことに気がつかなければイケマセン。一度変形してしまった「直進キー」はまず元の状態には戻りませんから、必然的に距離環を回すトルクムラは酷くなり、ひいては「製品寿命」に至ってしまう恐ろしい所為と言えます。

オールドレンズは「観察と考察」がとても重要ですし、もちろんそれにより「構造検討」して組み立て手順や調整範囲を把握している次第です (単に内部構造を知るだけではなく本来の製産時点での調整範囲を把握するのが最終的な目的)。

↑こちらはマウント部内部の写真ですが、既に各構成パーツを取り外して当方による「磨き研磨」を終わらせた状態で撮影しています。当初バラした時は、この内部に過去メンテナンス時に塗られた「白色系グリース」がビッチリ附着しており、且つ経年劣化から液化が進行してしまい一部パーツには酸化/腐食/錆びが生じていました。

↑取り外していた各構成パーツも個別に「磨き研磨」を施してセットします。一部真鍮製パーツには完全除去できない「錆び」が残っています。

マウント面の「絞り連動ピン」が押し込まれる (ブルーの矢印①) と、その押し込まれた量の分だけ「開閉爪」が移動して ()、鏡筒から飛び出ている「開閉アーム」を動かします。

↑完成したマウント部に絞り環をセットします。絞り環にはベアリング+スプリングが組み込まれますが、絞り環操作した時にカチカチとクリック感を伴うのは「絞り値キー」と言う「」が用意されていて、そこにベアリングがカチカチ填るからです。

ところが、その「絞り値キー (溝)」は別のパーツ「指標値環」側に用意されており、絞り環の上に被さる (グリーンの矢印) ことでクリック感が実現されます。このようにワザワザ別のパーツに「絞り値キー (溝)」を用意する設計概念が冒頭解説『富岡光学製の証』にあたります。

↑さらに基台側には指標値環が入る際の微調整幅をもたせる目的で「微調整キー」が用意されます。何の為にそんなキーを用意するのかと言えば、それは指標値環側に「絞り値キー (溝)」が用意されている為に、絞り環操作した時のクリック感が絞り環に刻印されている絞り値の位置とチグハグにならないようにする為です。

つまり指標値環は「固定位置を微調整する必要がある」ことに気がつかなければイケマセンが、過去メンテナンス時に疎かにされていることが多いですね(笑) そもそも「微調整キー」の組み込み方が適切ではないことが多いので、疎かにされていることがそれだけで判明してしまいます(笑)

↑実際に指標値環をイモネジ (ネジ頭が無くネジ部にいきなりマイナスの切り込みを入れたネジ種) 3本で締め付け固定します。

グリーンの矢印で指し示した箇所に「微調整キー」があり、しかもマチ (微調整用の隙間) がちゃんとあることを気がつかなければダメですね(笑)

実は、同じ設計概念が「MLタイプ」にも採用されており「微調整キー」が存在します。

左写真は以前オーバーホールした同一仕様の「MLタイプ」からの転載写真ですが、グリーンの矢印箇所にちゃんと「微調整キー」が備わっています。

つまり、この「微調整キー」が何の為に用意されているのか、そしてその付近にどうしてマチ (隙間) が備わっているのか、そのような事柄を逐一「観察と考察」することで、結果的に指標値環の固定位置調整でクリック位置もズレることに思い至らなければイケナイ訳です。

この後は距離環を仮止めしてから光学系前後群を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

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ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑今回初めて扱いましたが、市場評価が極端に低いモデル『AUTO YASHINON-DS 50mm/f1.7《富岡光学製》(M42)』です(笑) オーバーホールしてみて、当初予測のとおり、とても作業対価分を回収できるものではないことが分かり、今回の扱いが最初で最後になります。「MLタイプ」との相違点を調べたかったので今回は仕方なく扱ったと言うのが正直なところでしょうか。

↑光学系内の透明度が非常に高い個体ですが、残念ながら前後玉には経年相応なカビ除去痕が残っています。但し写真には一切影響しないレベルです。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群側も透明度が高いですが後玉表面には経年相応なカビ除去痕が残っています (LED光照射で浮き上がる)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。第4群の貼り合わせレンズ表面のコーティング層経年劣化が、パッと見で「清掃時の拭き残し」のように見えますが、実際は清掃しても除去できないコーティング層の劣化部分です (カビ除去痕含む)。

【光学系の状態】(順光目視で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:12、目立つ点キズ:8点
後群内:19点、目立つ点キズ:15点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内)
・バルサム切れ:無し (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・前後群内にコーティング層経年劣化とカビの発生によるコーティング層劣化が進行している箇所が僅かにあり、一見すると清掃時の拭き残しのように見えますが清掃しても取れません。
光学系内の透明度が非常に高い個体です
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑6枚の絞り羽根はキレイになり絞り環共々確実に駆動します。経年の油染み痕が少し多めでしょうか。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「∫」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びなどが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度と軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人によって「重め」に感じ「全域に渡って完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。
・マウント部内部の捻りバネ経年劣化が原因で絞り環操作時に絞り羽根が必ず出てきてしまいます。
従って手動絞り(実絞り)状態ですがマウント面の絞り連動ピンが押し込まれないと正しい絞り羽根の開閉動作になりません。マウントアダプタ経由での使用をお勧めします(フィルムカメラ装着時必ず絞り羽根が出てきますが途中で止まります/但しシャッターボタン押し下げ時は正常に閉じます)。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。

↑マウント部内部の「捻りバネ」が経年劣化で弱っている為「絞り羽根を常に閉じようとするチカラ」と鏡筒裏側の「常に開こうとするチカラ」とのバランス調整が上手くいかず、改善処置を試みましたがムリでした。それが絞り羽根開閉の不具合 (自動絞りの問題) に繋がっているので、今回の個体はマウントアダプタ経由装着する前提でご検討下さいませ。フィルムカメラ装着時は絞り環を回すと絞り羽根が出てきてしまいます (途中で止まる)。但しフィルムカメラ装着時もシャッターボタン押し込みで正しい絞り値まで絞り羽根がちゃんと閉じます。

今ドキのデジカメ一眼/ミラーレス一眼にマウントアダプタ経由 (ピン押し底面タイプ) 装着時は絞り環操作は「手動絞り (実絞り)」のみですから (このモデルがそもそも設計上そういう仕組み) 何ら問題にはなりません。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

左写真はこのモデルの後玉の突出量を計測した写真です。最大で「3.5mm」飛び出るので、カメラボディ側のミラー干渉などご留意下さいませ。

↑当レンズによる最短撮影距離50cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります。しかし簡易検査具による光学系の検査を実施しており光軸確認はもちろん偏心まで含め適正/正常です。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2」で撮影していますが、絞り環の刻印絞り値は「●」になっています。

↑さらに回して設定絞り値「f2.8」で撮りました。

↑f値は「f4」に変わっています。

↑f値「f5.6」になりました。

↑f値「f8」です。

↑f値「f11」になりました。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。