◎ YASHICA (ヤシカ) YASHICA LENS ML MACRO 55mm/f4《富岡光学製》(C/Y)
(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます
この掲載はオーバーホール/修理ご依頼分に関するご依頼者様や一般の方々へのご案内なのでヤフオク! 出品商品ではありません。
写真付解説のほうが分かり易いこともありますが、今回は当方での扱いが 初めてのモデルだったので記録の意味合いもあり無料で掲載しています。
(オーバーホール/修理の全行程の写真掲載/解説は有料です)
オールドレンズの製造番号部分は画像編集ソフトで加工し消しています。
1/2倍撮影が可能なハーフマクロのオールドレンズですが、当時YASHICAではMLシリーズとして全部で3種類のマクロレンズを発売していました。
① ML MACRO 55mm/f4
② ML MACRO 55mm/f2.8
③ ML MACRO 100mm/f3.5
(④ ML BELLOWS MACRO 100mm/f4)
上の中で④のみリングフラッシュが附随するヘリコイドが存在しないレンズ固定の (ベローズ式の) モデルで特殊です。
今回のモデル『ML MACRO 55mm/f4 (C/Y)』はネット上を調べても発売年度が不明です。そこで当時のフィルムカメラの取扱説明書をチェックして、オプション交換レンズ群の中にこのモデルの記載があるかどうかを調べてみました。
すると1976年に登場した日本未発売の輸出専用フィルムカメラである「FX-2」交換レンズ群の中に記載がありました。
また1975年のレンズカタログにも記載があるので1975年時点では発売されていた可能性が高いです (発売予定の表記ではないから)。逆に言うと、開放f値「f2.8」の55mmのほうが先に取扱説明書に記載されているので、今回の「f4」モデルは追加で登場した廉価版の格付だったのかも知れませんが、当時マクロレンズは割高で人気があるとは言い難い存在でしたから製産台数も出荷台数も伸び悩んでいたものと推測できます。
光学系は3群4枚の典型的なテッサー型構成です。マクロレンズとして考えればテッサー型光学系を使うのも理に適っているのですが、1960年代ならともかく何故にワザワザ1975年にテッサー型光学系で発売してきたのか、その意図が思い付きません(笑)
当時はハーフマクロが流行っていた (厳密には光学メーカーが流行らせたつもりになっていただけ?) ので各社挙って発売していますが、そうは言ってもフツ〜の標準レンズの売れ行きを拡張させるほどの人気があったとは考えにくいので、どうして暗い開放f値の「f4」を敢えて後から追加投入してきたのかがやはり分かりません。
確かに「ポートレートマクロ」と言うコトバを作ってしまったほど人気が高かったTAMRONのSP90シリーズ (52B/52BB他) なども1979年から登場してきますが、焦点距離も開放f値も異なります。
上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。
特徴的な実写がほとんど載っていないので、円形ボケの表出状況や背景のボケ味、或いは逆光耐性など掴めませんが、コントラストが高めであるもののナチュラルとは言えないにしても発色性自体は大人しめです。富岡光学らしいボケ味を持っていますがOLYMPUSやNikon/Canonと比べると少々硬めの印象でしょうか。
その辺の印象が、実は今回初めてバラしてみると内部構造にも垣間見え、富岡光学の中でも「過渡期」的な思考錯誤、或いは突き進む方向性を見出していないようなニュアンスをその設計に感じました。
オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。
↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。構成パーツ点数が少なめで内部構造も理に適っており、一見すると整備し易いモデルのように見えますが、なかなかどうしてこのモデルの調整をキッチリ執り行うには相応の技術スキルが必要です。まずは固着剤がこれでもかと塗られていて完全解体するのに四苦八苦です (何しろ初めてバラすので内部構造も知りませんし)(笑)
一つだけ事前にハッキリしていたのは、距離環を回して最短撮影距離まで鏡筒を繰り出したまま鏡筒カバーを外そうと捻ったりしたら、イキナシ「製品寿命になる」ことだけは分かっています(笑) しかし意外と過去メンテナンス時にその所為をしてしまい、中味が大変なことになっている個体があったりします(笑)
↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒ですが、たかが3群4枚のテッサー型光学系だとしてもマクロレンズなので非常に深い鏡筒です。
↑実際に5枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを最深部にセットすると、ご覧のように (深すぎて) もう暗くて見えません(笑)
このモデルをネット上で検索すると僅かにヒットしますが、何処を見ても「絞り羽根の油染みが酷い」と書かれています。今回の個体も絞り羽根の油染みが相当進んでいました。しかし、バラしてみると絞りユニットの設計の問題から、ヘリコイドグリースの経年に於ける揮発油成分が入り易い構造であることが判明しました。
このモデルの登場が1960年代後半ならば仕方ないかも知れませんが、1975年辺りともなればどうしてこのような絞りユニットの設計をしていたか疑問を抱きます。
↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。赤色矢印の箇所にイモネジ (ネジ頭が無くネジ部にいきなりマイナスの切り込みを入れたネジ種) が均等配置で3本締め付けされます。このイモネジは鏡筒最深部に位置している絞りユニットの「位置決め環」を締め付け固定していますが、この位置調整を行う必要がある為にイモネジを使っています。
つまり絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と当方が呼称している絞り羽根が閉じていく際の開口部の大きさ微調整を、絞りユニットの「位置決め環の微調整だけ」で可能にした設計なのですが、実はこのような設計は他社光学メーカーではとっくに当たり前の話でした。
ところが富岡光学は長年に渡って「鏡筒丸ごとの位置調整で絞り羽根の開閉幅を微調整する」方式を踏襲し続けたので、イモネジ3本だけで絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) の微調整ができるのは富岡光学製オールドレンズとしてみると画期的な設計変更なのです。
しかし、ここにも富岡光学製らしい長年続く「意味不明な設計」が残っています。せっかく絞りユニットだけで絞り羽根が閉じる際の大きさを微調整できるようにしたにも拘わらず (絞り羽根開閉幅の微調整)、従来どおり鏡筒を丸ごと動かして微調整できる機能まで残してしまったのです。
つまり絞り環操作との兼ね合いで絞りユニットと鏡筒の両方を調整する必要性が発生してしまいます。鏡筒の位置が固定ならば絞りユニットの微調整だけで済むのにワザワザ両方の微調整を備えてしまったので、結局工程数でみると却って増えてしまう「意味不明な設計」です(笑)
さらに厄介だったのが、この絞りユニットがイモネジだけで微調整するには不完全な設計だった点であり、今回のオーバーホールで適切な絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) にセットするのに難儀しました (ここの絞りユニット微調整だけで1時間かかってしまった)。
と言うのも「位置決め環」は前玉側方向に位置し、一方「開閉環」と言う絞り羽根の開閉角度を変更している環 (リング/輪っか) が後玉側方向に配置され、その間に絞り羽根が挟まります (絞り羽根を位置決め環と開閉環でサンドイッチしているイメージ)。
ところが「位置決め環は開閉環に被せるカタチ」で設計した為、上の写真のような非常に深い位置にセットする絞りユニットなので被せるのが大変だったワケです(笑)
もちろん被せる際に5枚の絞り羽根をサンドイッチしているワケですから、ちゃんとキッチリ刺さり、且つ絞り羽根が閉じる際キレイな正五角形にならなければ正しく「位置決め環」が被さっていないことになります (実際の作業時は確実に被さるとパチンと音が聞こえてくる)。例えると「位置決め環」が容器の蓋で「開閉環」が容器そのモノ (本体) のようなイメージです。
つまり、鏡筒を二分割して絞りユニット部分だけを別のパーツにすれば簡単だったのに、こんなに深い鏡筒にしたが為に被せるのが大変だったワケです (しかも被せた後に微調整が必要)。
↑1時間ほど絞りユニットと格闘して (正しくは位置決め環と格闘して) ようやく完成した鏡筒の裏側を撮影しました。多くの富岡光学製オールドレンズに採用されている制御系の概念をそのまま受け継いでいます。
絞り環と連係する「連係アーム」が移動することで「なだらかなカーブ」も移動して突き当たるカムの勾配が決まります。するとその勾配に従って絞り羽根の開閉角度が決定され「開閉アーム」の操作で閉じたり開いたりします。「なだらかなカーブ」の麓部分が最小絞り値側になり、登りつめた頂上が開放側です。
「開閉アーム」は絞りユニット内の「開閉環」から飛び出ているアームなので、先に絞りユニット内部にセットしておく必要があります (アームが引っ掛かるので後から鏡筒の最深部にセットできないから)。それから絞り羽根5枚を差し込んで最後に「位置決め環」を被せることで絞りユニットが完成します。しかし、カチッとハマる設計なのでなかなか被さってくれないワケです (もちろん絞り羽根の開閉も正五角形になってくれない)。
結局、絞りユニットを密封ではありませんが、ある程度コンパクトに閉鎖的な部位としてまとめてしまって鏡筒を二分割していれば、経年使用に於いてヘリコイドグリースの揮発油成分が簡単に絞りユニット内部に侵入しなかったと推測できます。
つまりこのモデルで「絞り羽根の油染みが多い」のはロシアンレンズではありませんが、それに近いくらいの必然であり設計の拙さそのモノです(笑) 何故なら、マクロレンズである以上鏡筒の繰り出し量が多い (長い) ので、それは必然的にヘリコイドのネジ山数も多いワケで、その分ヘリコイドグリースの量も多くなり、結果経年使用に於いてオールドレンズ内部に廻ってしまう揮発油成分の量も多くなるのは必然と言えます。
従って今回バラしてみて、絞りユニットの微調整にかかる問題点も含め (鏡筒の微調整まで存在したまま) 富岡光学としてはまだ過渡期的な設計だったのがこのモデルの絞りユニットの概念ではないかと考えました (せっかくイモネジを使ったにも拘わらず)。他社光学メーカーのほうがもっと簡単に絞りユニットが組み込まれて、且つ絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) 微調整もスマートです。吸収合併先のヤシカが倒産し消滅する1983年まで僅かのタイミングですが、富岡光学は相変わらず「意味不明な設計」を伴って利益をムダに消費し続けていたのかも知れません (ロマンが広がります)。
↑さらに意味不明なのがこの基台です。この当時の多くのオールドレンズで基台には距離環用のネジ山が一緒に切削されている (たいていは内側) のですが、どう言うワケかこのモデルは「距離環用のネジ込み環」が別に存在し二分割の設計です。開放f値「f2.8」の55mmハーフマクロが存在するので、そのパーツと共用化させる目的なのかと考えましたが、距離環側で調整した設計にすれば良いだけなので基台側を二分割する意味が全く不明です(笑)
↑こんな感じで基台が完成します。フツ〜はこれが基台そのモノなのですが (内側にネジ山が用意されているだけ)(笑)
↑真鍮製のズッシリと重いヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。
↑繰り出し量が相当長いので、やはり長さのあるアルミ合金材のヘリコイド (オス側) を無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で27箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。
↑ヘリコイド (オスメス) が正しくネジ込まれた状態でひっくり返して内部を撮影しました。解説のとおり「非常に長い直進キー」が両サイドに1本ずつセットされ、ヘリコイド (オス側) に用意されている「直進キーガイド (溝)」を行ったり来たりとスライドします (ブルーの矢印)。
◉ 直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目
従って、1/2倍の倍率だとしてもマクロレンズである以上、鏡筒の繰り出し量が相当長いのでご覧のように「長い直進キー」を使っているワケです。
過去メンテナンス時には (過去に1度だけメンテナンスされている) この「直進キーガイド (溝)」にもベットリとグリースが塗られていましたが、そのほとんどが使われないまま残っており、既に経年で液化していました。
過去メンテナンス時には「白色系グリース」が塗布されていましたが経年劣化で液化が進行し、且つヘリコイド (オス側) のアルミ材の摩耗も進んでいた為、バラした直後は「濃いグレー状」でした。
上の写真を撮影した時は既にヘリコイドグリース塗布が終わっており、黄褐色系グリースの「粘性:中程度と軽め」を使い分けて塗っています。しかも前述の「直進キーガイド (溝)」部分には一切グリースを塗布しません。
当方のオーバーホールではまず問題が無ければ直進キーガイドにはグリースを塗りません。理由はオールドレンズ内部に塗るグリースを可能な限り少なくするのが目的であり、それは将来的な経年使用に伴う「揮発油成分予備軍を抑制する」ためです。その結果、光学系内に侵入する揮発油成分によるコーティング層の経年劣化を防ぎ、且つ絞り羽根の油染みも抑制することで「製品寿命を延命する」ことが最終目的だからです。
何故ならば、絞り羽根の「キー」と言う金属製突起棒が経年の酸化/腐食/サビなどで脱落したら、それはそのまま「製品寿命を迎える」からです (脱落したキーは二度と戻せない)。皆さん光学系内に繁殖してしまったかカビを気にされるのに、意外にも「絞り羽根の油染みを放置」する方が多いですね(笑) 光学系内のカビ繁殖は相当長い時間を掛けて (環境と条件が整った中で) 進行しますが、絞り羽根の油染みは環境も条件も関係なく内部のグリースが劣化すれば必然的に発生しますから、例え整備しても数年後〜数十年後には再び油染みだらけです。
おそらく、その時にはもうその個体 (オールドレンズ) を使っていないから良いと判断してのことなのでしょうが、逆に言えば50年先には使えるオールドレンズが存在すること自体が希少であるほどに個体数が激減していると考えられます。自分が楽しめればそれでOKであり、ワザワザ後世の為にまで考えたりしないと言うのも、確かにアリなのでしょう。
2,000本以上バラしてオーバーホールし続けていますが、そのほとんどが「白色系グリース」ばかりであり、間違いなく50年後まで保たないと明言できます (それほど液化した揮発油成分は問題なのだと言う意味)。
↑絞り環と絞りユニットとの連係をする環 (リング/輪っか) をセットします。
↑鋼球ボール+スプリングを組み込んでから絞り環をセットします。
↑距離環と鏡筒カバーを仮止めしてから光学系前後群をセットして無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にレンズ銘板をセットすれば完成です。
ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。
↑今回初めてバラしてましたが、内部構造は良くも悪くも富岡光学製らしい設計が成されていました。どうせテッサー型だろうと踏んでいたのですが、まさか絞りユニットの微調整でハマるとは想定外でした(笑)
↑光学系内の透明度が非常に高い個体です。LED光照射でもコーティング層の経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。微細なカビ除去痕が僅かに残っていますがまず見えません。
↑3群4枚のテッサー型ですから後群側に貼り合わせレンズ (2枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせてひとつにしたレンズ群) が配置されていますが、もちろんバルサム切れ (貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態) も一切無くLED光照射でも極薄いクモリすら皆無です。
↑絞り羽根は5枚しかありませんが、絞り環共々確実に駆動し絞り羽根が閉じる際も「ほぼ正五角形を維持」します。
↑塗布したヘリコイドグリースは黄褐色系グリースの「粘性:中程度と軽め」を使い分けて塗り、距離環を回すトルクはそれはそれは気持ち良いほどに「全域に渡り完璧に均一なトルクのシットリした操作性」に仕上がっています。特にこのモデルはピントの山が一瞬でアッと言う間なので、ピント合わせ時の微調整は非常に軽く微動しないと使い辛くなります。もちろんそれを考慮した操作性に仕上げてあるので充分堪能できると思います。
いわゆる「白色系グリース」の全域に渡る軽いトルク感ではなく、距離環を回す際はシッカリしたトルクなのにピント合わせ時にはシットリしたほんの軽いチカラだけでススッと微動できる操作性と言う、独特な感触です。あるファンの方からライカレンズに近いと教えて頂きましたが、残念ながらライカレンズは高すぎて当方は手に入れたことがありませんから全く知らないのです(笑)
↑長い距離をズズ〜ッと鏡筒が繰り出されていくのがマクロレンズですが、それを遊びたくなるほどに気持ち良く操作して頂けるよう仕上げました。
今回のモデルは、富岡光学製オールドレンズの範疇で捉えた時、後の時代に登場する富岡光学製モデル (OEMモデル) に繋がる設計思想の過渡期的な印象を受けました。しかし同時に「意味不明な設計」を抱えつつも、それがそのままムダとして延々と企業利益を圧迫し続けていたハズだと推測できる事が実は「富岡光学らしさ」なのかも知れないと、その描写性を除いた特徴としてむしろ感心したような妙な気持ちです(笑)
当時の他社光学メーカーでは、既に製産工程の見直しや工夫により効率改善に努め現実的な効果を見出せていた時期でもあり、それはオールドレンズをバラして内部構造/設計をみれば自明の理です。当然ながらサービスレベル (メンテナンスレベルの話) が向上します。然し富岡光学はその遅れを取り戻すことができないままに、数多くの銘玉を世に送り出しながらも消えていく運命だったのかも知れませんね・・ロマンは広がっていきます。
以下の実写をしていると明確に分かりますが (実写の写真を見ても分かりませんが)、ピント合わせの時のスパッと合焦する瞬間の気持ちの良さが堪りません(笑) もちろんそれだけ非常に軽いチカラだけで微動できるからこそピント合わせに意識を集中できている証拠なのですが、ここまでピントの山が狭いと却って達成感と言うか充足感と言うか、不思議な気持ちを伴うのが何ともオモシロイです(笑)
数多くのテッサー型光学系を実装したオールドレンズを扱っていますが、ここまでスパッと来るピントの山を持つオールドレンズも珍しいのではないでしょうか・・。
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
↑当レンズの最短撮影距離25cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
合焦点は、本当に手前側ヘッドライトの球の、さらにその中心部にしかピントが合っていませんから、如何に明確にピント面をチェックできるのか「さすがマクロレンズだ」と感心してしまいました。その意味で、まさにこの当時のマクロレンズは今ドキのデジカメ一眼/ミラーレス一眼に装着してこそ「本領発揮」できる時代になったのだと却って感銘を受けました(笑)
ピピッと瞬時に合焦してしまう今ドキのデジタルなレンズもいいですが、高感度特性や手ブレ補正効果などカメラボディ側の進化を逐一感じ取れることで、むしろオールドレンズ使いとしては描写性だけに限らない相違 (撮る為のプロセスを堪能する楽しみ) を愉しめるワケで、本当に有難いですね (いい時代になりました!)(笑)
たかが3群4枚のテッサー型光学系・・決して侮れませんョ。
↑最短撮影距離25cm付近で被写体のミニカーの後に光りモノを置いて円形ボケの表出状況を撮っています。大変長い期間に渡りお待たせしてしまい申し訳御座いませんでした。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座います。