◎ RICOH (リコー) XR RIKENON 24mm/f2.8(PK)

このモデルは市場でもあまり見かけませんが (海外オークションでは年間1本レベル) 「シグマ製」のOEMレンズになります。外観上の意匠デザインで「指標値環」のマーキングが「シグマ製」と判断するには最も判り易いでしょうか・・。内部パーツとしては絞り環部分の「共通化」の仕様とマウント部の「絞り連動ピン」が「シグマ製」の「証」になります。

ネット上でもほとんど解説されていませんが、描写性能は決して悪くなく、一部解説では「甘い描写」「周辺部の流れ」など言われています。しかしたまたまその時の個体がそのような光学系の整備レベルだったようで、今回オーバーホールしてみると決してそのような描写ではなく、周辺部の流れもネット上で載っていた写真に比べると全く出ていないレベルです。当方での扱いは今回が初めてになります。


オーバーホールのために解体した後、組み立てていく工程を解説を交えて掲載しています。

すべて解体したパーツの全景写真です。

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ここからは解体したパーツを実際に使って組み上げていく組立工程の写真になります。

まずは絞りユニットや光学系前群を収納する鏡筒です。このモデルではヘリコイド (オス側) は独立しており別に存在します。

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絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。

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ヘリコイド (オス側) に鏡筒を収納します。

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次の写真は距離環やマウント部を組み付けるための基台です。

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距離環用のヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けてネジ込みます。このモデルには「無限遠位置調整機能」が装備されているので大凡のアタリで構いません。

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鏡筒を差し込んだ状態のヘリコイド (オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。ネジ込み位置は12箇所あるので、さすがにここをミスるといくら「無限遠位置調整機能」があっても調整範囲を超えてしまい、最後にバラしての再組み直しに陥ります。

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ここまでは簡単な組立工程のように掲載しましたが、実は次の写真のように絞りユニットの反対側は相当複雑な構造をしています。

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まるでマウント部内部の絞り連動関係のパーツが組み込まれているかのような混み具合です(笑) どうしてこのような点数の多いパーツ構成になっているのか・・理由は後ほど出てきます。

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上の写真を見ると、調整範囲が相応に設けられています。ネジ止めによる位置調整ができるような仕様になっていますね・・。絞り羽根の開閉幅 (絞り羽根が開く大きさ) の調整を行うには、少々調整箇所が多過ぎます。

ヘリコイド (オス側) をネジ込んだ状態でひっくり返します。

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細かなパーツ類はこの中に仕込まれているワケで、上の写真を見ても分かりませんね・・いとも簡単に組み上げられそうな印象を受けます(笑)

さて、当レンズが「シグマ製」である「証」が次に出てきます。絞り環のベース環です。

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何の変哲もない普通の絞り環なのですが (写真右端のコの字型金属製パーツは「絞り連動アーム」です) 絞り値が2箇所刻印されています。しかもよく見ると各絞り値の間隔が微妙に異なっています。実はこの裏側にももう1つ絞り値が刻印されており、そちらは向きが逆方向になっています。つまり全部で「3つの絞り値」がこの絞り環には刻印されています。普通は刻印されている絞り値は「1つ」ですね・・(笑)

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上の写真が「種明かし」です。絞り環の反対側を撮影した写真です。3つ目の絞り値が刻印されており、各絞り値の「並び順」が逆方向ですね・・。そして何やら「省略文字」が3つ刻印されています。3種類のモデルに対して「共通」に使えるようにしてある絞り環なのです。

当レンズには指標値環に絞り値用の「窓」が用意されているので、当レンズに見合った絞り指標値をセットします。

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上の写真は当レンズ用の絞り指標値環になりプラスティック製です。この環を先の絞り環にワザワザネジ止めして使います。

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このような感じですね・・。これで絞り環がようやく「完成」したことになります(笑) 他社光学メーカーではやっていない方式です。前述の絞りユニット部でも調整箇所が多く用意されていたのは、実はこれが理由だったのです。全部で3つの種類のモデルに対応させた調整が既に用意されている仕様なのですね・・。シグマはOEMレンズを供給している会社ですので、なかなかよく考えられた構造です。

完成した絞り環を組み付けます。

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ちゃんと「窓」の中に絞り値で設定した指標値が位置していますね・・(笑) この時点では絞り環はまだ固定されていませんし、クリック感のある絞り環ですからベアリングも必要です。

ベアリングを入れ込んで絞り値用のキーを刻んである「環 (輪っか)」をさらにセットしますが、そのままではベアリングが飛んでしまうので、すぐにマウント部を「同時」に組み付けて固定してしまいます。初めてバラす方は気がつかないかも知れませんね(笑)

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上の写真で絞り環とクロームメッキのマウント部との「間」に、もうひとつの黒色の「環」が挟まっています。しかもこの「環」は固定されずにマウント部を組み付けて初めて固定される方式です。マウント部には合計で6本もの締め付けネジが用意されていますが、そのうちの3本は「絞り環固定用」で長さが異なるのです・・構造を理解できないと少々悩んでしまう仕様ですね(笑)

光学系の前後群を組み上げます。まずは前群です。

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光学系は順光目視にて前群は極微細な点キズ5点と第2群に3mm長の極微細な拭きキズがあります。後群は極微細な点キズ4点と第6群には極微細な2mm長の拭きキズがあります。光学系内はLED光照射でようやく視認可能レベルの極微細な拭きキズや汚れもありますが、いずれもすべて写真への影響はありませんでした。

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光学系内の状態は極微細な点キズや拭きキズもありますが、概ね良い状態を維持した個体です。

ここからは組み上げが完成した出品商品の写真になります。あまり市場では見かけないモデルですね・・。

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光学系内もキレイになりクモリなどもなく良い状態を維持しています。

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絞り羽根もキレイになり確実に駆動しています。

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ここからは鏡胴の写真になります。経年の使用感をあまり感じさせない良い状態を維持した個体です。

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同じシグマ製でもオリジナルのモデルとはレンズのコーティングが異なっているようで、特に第3群と第4群にはマルチコーティングが施されているようです。

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光学系後群もキレイです。

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当レンズによる最短撮影距離18cm附近での開放実写です。ピント面もシッカリしており、四隅の周辺部の流れも出ていません。光学系がキッチリ整備されていれば、なかなかの端正な描写です。下の写真では最短撮影距離18cmだと寄りすぎてしまい全体を写せないので、実際には最短撮影ではありません。

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