解説:絞り羽根の開閉幅について

当方のファンの方からご指摘頂き解説することにしました。当方が扱っているオールドレンズでオーバーホール/修理ご依頼やヤフオク! の出品商品をご落札頂くと、時々「絞り羽根が閉じていく時に歪なカタチになる」と言うクレームを頂きます。当方扱いのオールドレンズに限らず、実際市場に流れているオールドレンズの中には絞り羽根が閉じていく際に整ったキレイなカタチのまま閉じていかない個体が数多く出回っています。

どうしてそのような歪なカタチで閉じていくのでしょうか?
そして、それはキレイなカタチに改善させることが可能なのでしょうか?

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まず最初にご承知置き頂きたいのは「当方の技術スキルの低さ」です。当方は完全解体に拘ったオーバーホールを実施していますが、それは「プロに師事して習得した技術ではない」あくまでも独学に頼った技術スキルである点です。したがって、当方は今後どんなに研鑽を積んでも「プロの域には到達し得ず」それは結果として「職人ではない」と言えます。

何故ならプロや職人が長年血の滲む研鑽を積み伝承し続けた正しい技術を習得していないから

に他なりません。オーバーホール/修理に於いては市場価格から比べても非常に割高な金額をご請求しているにも拘わらず、このような現状であることをまずはこの場を借りて皆様に心からお詫び申し上げたいと思います。

その意味で、是非とも皆様もプロのカメラ店様や修理専門会社様宛にオーバーホール/修理をご依頼される、或いは信用/信頼が高いヤフオク! 出品者からオールドレンズをご落札頂くのが最善であり、何よりも安心であると申し上げたいと思います。

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↑当方が使っているコトバ「絞り羽根の開閉幅」とは上の写真赤色矢印で指し示した部分の「開口部の大きさ/面積」を意味します。そしてこれはそのまま「入射光量/絞り値」であると言えますね。絞り羽根を開放から閉じていくことでボケ具合が変化していきますし、被写界深度も比例して深くなっていきます (遠方まで含めてボケ量が減じられていく)。

皆様から頂くクレームは、この赤色矢印で指し示した開口部のカタチが歪だと言う内容です。上の写真は絞り羽根枚数が5枚のオールドレンズなので、閉じ具合は「正五角形」になるのが適正と言えます。しかし、それが歪なカタチをしているからクレームに至るワケですね。

例えば、これが円形ボケ状に滲んでいる写真なら明確に視認できませんが、角張ったボケ味として写真に写っていれば「この歪なカタチのまま写る」ことになります。オールドレンズの中には絞り羽根の枚数が多くて、このような多角形に閉じていかない「円形絞り」のモデルもあったりしますから、それに拘って「真円に近い円形絞り」を追求する気持ちも湧いてきます。

但しこのカタチでボケのカタチが決まるワケではないので、ネット上の解説や下手すればライター (執筆者) の中にも間違った認識をしている人が居ます。上の写真のモデルは日本製オールドレンズで「フジカ製 (富士フィルム) FUJINON 55mm/f2.2」ですから、開放〜最小絞り値まで絞り羽根が閉じていく際に「正五角形」で閉じていきます (実際はf4〜f16で円形ボケのエッジが角張ってくる)。つまり円形ボケ (シャボン玉ボケ/リングボケ/玉ボケなど) を大変キレイに表出させることができるオールドレンズなので、あくまでも光学系の設計如何で影響されるものと言えます (何故なら今ドキのデジタルなレンズで円形絞りのモデルは大変少ないから)。円形ボケがオールドレンズだけに限って表出しているワケではありませんョね?(笑)

特にこのモデルでの美しい繊細なエッジを伴うシャボン玉ボケは絞り値「f2.2〜f2.8」辺りである特定の条件下で表出させられます。

   
  

↑上の写真は「FUJINON 55mm/f2.2」の絞り環を回して、開放から順に一段ずつ (1クリックずつ) 絞り羽根を閉じていった時の状態を撮影しました。

↑絞り羽根はご覧のように「絞りユニット」と言う部位に納められており「鏡筒」の最深部に位置しています。

後の解説で絞りユニット内部で絞りユニットの内壁が経年で擦れて摩耗していく原理を解説していますが、実はフジカ製オールドレンズをバラしていると絞りユニットと鏡筒との間に「5mm四方くらいのフィルムの欠片 (1枚)」が特定の箇所に挟まっていることがあります。
(そんなことを誰もネット上で指摘していませんが)

薄い金属板ではなく「フィルムをカットした欠片」ですから、フジカが今の富士フィルムである以上、製産時点で (個別検査の結果) 挟み込まれたフィルム片ではないかと推測しています (富士フィルムは世界有数のフィルムメーカーでもあるから)。

これは何の目的でワザワザ挟み込んでいるのでしょうか?

答えは「絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) が歪になったから」です。何故なら、フジカ製オールドレンズはほぼ全てのモデルで絞りユニットは上の写真のように「C型留具」で押さえ込んで固定しているだけで、鏡筒の横方向から一切ネジによる締め付けがされていないからです (鏡筒外壁にヘリコイド:オス側のネジ山が用意されているからネジによる締め付けができない/ネジ締め付け固定の設計であれば締め付け具合で調整ができる)。

そしてその「フィルム片」が挟み込まれている箇所は大抵「開閉アーム」の反対側付近に位置していますから、絞り羽根が閉じていく時に歪なカタチになるヒントは「チカラの伝達経路の問題」であると容易に推測できます (フィルム片を均等配置して挟んでいないから)。

この「絞りユニット」の前に光学系前群がセットされ、また後にも光学系後群が位置しますから光学系構成図を書くと右図のように第1群 (前玉) と第2群の間に「| (縦線)」が入り絞りユニットの位置を示しています (図の左側が前玉側方向)。

↑上の写真は「FUJINON 55mm/f2.2」から取り出した絞り羽根表裏を並べ撮影しています。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

絞り環を回すとことで「制御環」が連動して回り絞り羽根の開閉角度が決まるので、マウント面の「絞り連動ピン」が押し込まれることで絞り羽根の「開閉キー」が瞬時に移動して「位置決めキーを軸にして絞り羽根の角度が変化する (つまり開閉する)」のが絞り羽根開閉の原理です。

また絞り羽根の開閉制御を司る「チカラの伝達」手法として「アーム」が用意されており、
開閉アーム/制御アーム」の2種類により具体的な絞り羽根開閉動作を実現しています。

開閉アーム
マウント面絞り連動ピン (レバー) が押し込まれると連動して動き勢いよく絞り羽根を開閉する
制御アーム
絞り環と連係して設定絞り値 (絞り羽根の開閉角度) を絞りユニットに伝達する役目のアーム

一般的にほとんどのオールドレンズは「f値」を基に設計されている為「位置決め環」側は固定であることが多いですが、中には「t値」の場合もあり「位置決め環/開閉環」の両方が移動してしまう設計もあります (特殊用途向けとしてh値もある)。

f値
焦点距離÷有効口径」式で表される光学硝子レンズの明るさを示す理論上の指標数値。

t値
光学硝子レンズの透過率を基に現実的な明るさを示した理論上の指標数値。

h値
レンコン状にフィルター (グリッド環) を透過させることで具体的な明るさを制御するf値。

↑こちらは「絞りユニット」を分解して内部の構成パーツ (一部) を紹介しています。

まず最初に「絞りユニット」の中に「開閉環」が入り (グリーンの矢印①) 絞り羽根がセットされるとその上から「位置決め環」が刺さります (ブルーの矢印②)。つまりちょうど絞り羽根を「開閉環位置決め環でサンドイッチしている」イメージになりますね。

なお「開閉環」には1箇所「開閉アーム」と言う金属棒が打ち込まれています (オレンジ色矢印) が、このアームが打ち込まれている場所が問題なのです。

皆さんは絞りユニット内部をご覧になったことがありませんから絞り羽根が閉じていく時に歪になる原因が分かりませんが、そもそも「開閉環」と言う円形板の外周附近1箇所にアームが打ち込まれているから、チカラの伝達で (チカラが架かると) 厳密に言えば「全ての絞り羽根に均一にチカラが及んでいない」ことになります。

ところが上の写真「位置決め環」で絞り羽根をサンドイッチしているので、その均一に架からなかったチカラの伝達は「辛うじて均一に近い状況に均されている」と言うのが本質です。これが非常に重要な話であり、絞り羽根が歪なカタチで閉じていく根本原因がここにあります (チカラの伝達が円形板の片側だけに集中している点)。

↑「開閉環」を拡大撮影しました。実際は、絞り羽根は上の写真の裏側に絞り羽根の「開閉キー」側が刺さります。「開閉環」には「開閉キー用の穴」が空いています (グリーンの矢印) が、よ〜く観察すると穴は「丸ではなく楕円状」です。一方絞り羽根の「開閉キー」は円柱です (前出の写真)。

ここがポイントで、絞り羽根の「開閉キーは穴の中を移動/スライドする」ことに気がつかなければイケマセン。従って前述したとおり、絞り羽根は「位置決めキー」を軸にして「開閉キー」のほうが穴の中を移動することで角度を変えている仕組みですね (仮に移動/スライドするマチが用意されていなければ絞り羽根は固まってしまい動かなくなる)。

この原理がご理解頂けるでしょうか?

絞り羽根にある2つの「キー (円柱)」は互いに異なる場所に打ち込まれているので、一見するとそれだけで角度は可変であるように見えてしまいますが、実際は両方とも刺さる先が「単なる穴」だとすれば角度は変わりようがありませんね?

実際の「開閉環」の動き方が上の写真の解説です。「制御キー」が操作される (ブルーの矢印①) ことによって絞り羽根の開閉角度が決まり、同時に「開閉アーム」が動く (移動する) ことで絞り羽根の「開閉キー」は楕円状の穴の中をビミョ〜にスライドしながら絞り羽根が角度を変えていく (ブルーの矢印②) 原理です。

↑では実際に「開閉環」は絞りユニットの中にどのようにセットされるのでしょうか? 絞りユニットには1箇所に開口部が備わっており、そこに「開閉アーム (グリーンの矢印)」が入ります (ブルーの矢印)。この絞りユニットに用意された開口部の幅分だけ「開閉アーム」が移動することが許されています。

ここもポイントです。「開閉アームの移動量は決まっている」ことが大前提の設計なので、この移動量を逸脱するようなチカラが及んだ時、そのチカラはどうすれば良いのでしょうか?

上の写真で言えば、絞りユニットに用意されている開口部の大きさは決まっていますから、その端で「開閉アーム」が突き当たったまま、それでもチカラが架かってしまう状況が「移動量を超越したチカラの伝達」と言えるのがご理解頂けるでしょうか?

この時、その伝達されてしまった許容量を超えてしまったチカラの影響で「開閉アームは撓んでいる」のが絞りユニット内部の状況です。従って例えば旧東ドイツ製オールドレンズの中でPENTACON製やMeyer-Optik Görlitz製モデルなどは、一部に許容値を超えるチカラが「開閉アーム」に及んだ際に変形してしまう設計のモデルがあったりします (結果絞り羽根の開閉異常に至る)。

では、どうして「開閉アーム」の適正な移動量を超えたチカラが及んでしまうのでしょうか?
その答えは後ほど出てきます。

↑さて、ようやく出てきました。この写真が「絞り羽根が歪なカタチで閉じていく」現象の解説になります。

上の写真は「絞りユニット」を前玉側方向の真正面から撮影しています。「開閉環」を既に入れ込んでいる状態を撮っていますが「開閉環」に打ち込まれている「開閉アーム」は真上に位置しています (制御キーは下側)。

すると「制御キー」が操作されて (ブルーの矢印①) 絞り羽根が閉じる角度が決まった状態 (つまり絞り環を回して設定絞り値にセットした状態) で「開閉アーム」が動く (ブルー矢印②) と同時に「開閉環」が回ります。絞り羽根は角度を変えて閉じ始めるワケですが、この時「チカラの伝達方向」を解説しているのが上の写真です。

円形板の「開閉環」の外周附近 (端) 1箇所にだけ「開閉アーム」が打ち込まれているので伝達されたチカラは回転方向に伝わると同時に「絞りユニットの内壁にも伝わる=擦れる」ことに気がつかなければイケマセン (グリーンの矢印)。実際「開閉環」の縁が絞りユニットの内壁に接触しているのが分かるよう撮影したつもりです (下手クソでスミマセン)。

実際はこの「開閉環」の上に絞り羽根が刺さって、さらにその上に「位置決め環」が入り伝達されたチカラは「均一に均される」ワケですが、そうは言っても絞り羽根の「開閉キーは移動/スライドしている」ワケですから (楕円状の穴の中) いくら均一に均されていてもその移動量 (絞り羽根の角度) にはビミョ〜に相違が出てくる懸念も捨てきれません。

その根本原因が絞り羽根に生じてしまった「過去の油染み」なのです。

これが皆様も含めて整備者でさえも気がつかないまま (蔑ろにされたまま) の現実です。何故なら、絞り羽根に生じた油染みにより絞り羽根に打ち込まれている「キー」は経年で酸化/腐食が進んでしまい、且つ絞り羽根に生じた油染みはやがて粘性を帯びてきます。すると絞り羽根が回って角度を変えたいのに (絞り環操作するから) 粘性のある油染みが影響してその抵抗/負荷/摩擦が一極集中します。

絞り羽根の角度を変える為に伝達されたチカラ+油染みの抵抗/負荷/摩擦=キーに集中

この方程式が成り立ってしまうワケですね。結果、絞り羽根の「キー」はその打ち込まれた箇所 (穴) の根元で垂直が維持できなくなり変形 (キーの角度が曲がってしまう) 現象に至ります。何故なら、絞り羽根に生じた油染みが粘性を帯びてくると「癒着現象」と言って互いに絞り羽根がくっつき合う状態に陥ります。すると最小絞り値の方向に絞り環を回した時、絞り羽根は互いに癒着したままどんどん重なっていきますから「絞りユニットの内部で閉じながらも膨れあがる」現象が発生します。この膨れあがってしまうチカラが「油染みで生じた抵抗/負荷/摩擦」になります。

では、本来水平を維持していなければイケナイ絞り羽根が膨れあがったとすると、その時の「キー」の状態はどうなるでしょうか?
そうですね「キーは垂直を維持しなくなる/打ち込まれた穴が緩み始める (穴が広がり始める)」ことをご理解頂けるでしょうか?

これが絞り羽根に打ち込まれた「キー変形」に至る経緯です。垂直を維持しなくなった「キー」は必然的に閉じていく時に「正しい角度で閉じなくなる」ことに思い至らなければイケマセン。

つまり「絞り羽根の油染み放置は本当は恐ろしい事」なのを是非ともご理解下さいませ。

実際は、その時前述のとおり「開閉環」も縁が絞りユニットの内壁を擦っていますから、必然的に開閉環側か絞りユニット内壁側か、或いは両方が経年で擦れて摩耗していくことになります。そうは言ってもたかが摩耗量は「0.1〜0.2mm」程度ですから気にしないと言う人もいらっしゃるでしょう。然し、その影響は確実に間違いなく絞り羽根の開閉角度に出てしまい「開放時に一部の絞り羽根が顔出しする」或いは「絞り羽根が閉じる際に歪なカタチになる」原因に繋がっていきます。

当然ながら、そんな現象が絞りユニット内部で発生しているなどとは誰も想像できませんから「アンタの整備が悪い」と言う具体的なクレームとして当方に返ってきます(笑)

↑完成している絞りユニットをひっくり返して裏側を撮影しました。

絞り環を回すと上の写真「制御環アーム」が動いて「制御環」が回転します (オレンジ色矢印)。「制御環」には「なだらかなカーブ」が用意されていて麓部分が「最小絞り値側」登りつめた頂上側が「開放側」になっています (黄緑色の矢印)。この時「カム」がそのなだらかなカーブに突き当たるので具体的な絞り羽根の開閉角度が決まっています (ブルーの矢印①)。

一方マウント面の「絞り連動ピン」が押し込まれると「その押し込まれた量の分だけ開閉アームが移動」して (ブルーの矢印②) 具体的な設定絞り値まで絞り羽根が閉じる仕組みですね。

↑完成した絞りユニットを鏡筒にセットしてひっくり返して撮影しました。鏡筒から2本のアーム「開閉アーム/制御アーム」が飛び出ています。

制御アーム」は絞り環から飛び出ている「」に掴まれ、一方「開閉アーム」もマウント部内部の「」にやはり掴まれます。絞り環操作することで「制御アーム」が移動して具体的な設定絞り値が決まり (ブルーの矢印①)、「開閉アーム」が動くことで絞り羽根が設定絞り値まで閉じます (ブルーの矢印②)。

↑このモデルはM42マウントなのでネジ込み式ですが、マウント面に「絞り連動ピン」が飛び出ています。このピンを押し込むことで絞り羽根が設定絞り値まで閉じるワケです。

↑マウント部内部には「絞り連動ピン機構部」がセットされますが、そこには上の写真「捻りバネ (2本)」が附随します。この2つの捻りバネの役目は絞り羽根を「常に閉じようとするチカラ」と「常に開こうとするチカラ」の2種類のチカラを及ぼすので、絞り羽根はそのバランスの中で適正な開閉角度を決めていることになります。

ところがこれら2つの「捻りバネ」は線径もカタチも大きさも異なります。特に「開くチカラ (右側捻りバネ)」のほうが細い捻りバネです。

何を言いたいのか?

つまりオールドレンズをフィルムカメラに装着して使うならシャッターボタン押し下げの瞬間だけ一瞬マウント面の「絞り連動ピン」が押し込まれるだけですが、これが「マウントアダプタ装着」となると「絞り連動ピンは常時押し込まれたまま」になります (ピン押し底面のマウントアダプタの場合)。

常に「絞り連動ピン」は最後まで押し込まれていますから「開くチカラの捻りバネ」はどんどん弱っていきます (開く為には絞り連動ピンを戻したいから/戻すチカラが働いたままだから)。

つまり「開くチカラを及ぼしている捻りバネ」の線径が細い設計にしているのは、フィルムカメラでシャッターボタン押し下げ時のみ働くチカラの伝達だからではないかとも言えますね。ところがマウントアダプタに装着してしまうと「常時チカラが及んだまま」なので先に弱っていくのは理に適っています (さらにマウント部内部にまで過去メンテナンス時に塗られてしまったグリースの揮発油成分が影響し捻りバネも酸化/腐食/サビが生じてさらに劣化していく)。

↑さらにマウント部内部を撮影しました。マウント部内部には2つの「」が飛び出ており「制御用爪」と「開閉用爪」で、それぞれ鏡筒から飛び出てくる「制御アーム」と「開閉アーム」をガッチリ掴みます。

マウント面の「絞り連動ピン」が押し込まれると (ブルーの矢印①) 機構部に附随する「絞り連動ピン連係アーム」がその押し込まれた量の分だけ移動して先っぽの「開閉用爪」が移動します (ブルーの矢印②)。この時絞り環操作で設定絞り値をセットしますから、その分だけ「制御用爪」が移動しており、それはそのまま鏡筒内部の絞りユニットに附随する「カムの突き当たり位置を確定している」ことになります。

ところが、マウントアダプタ装着時にはマウント面の「絞り連動ピン」は最後まで押し切ったままになりますから、この「開閉用爪」も移動したままになりますし、もっと言えば許容値を超えた移動量になっていることに気がつかなければイケマセン。
(フィルムカメラ装着時押し込み板のクッションから絞り連動ピンは最後まで押し込まれない)

実際にフィルムカメラに装着してシャッターボタン押し下げ時の絞り連動ピン押し込み状況を見ることができれば分かるのですが、絞り連動ピンはピンの先っぽ「頭一つ分」を残した位置までしか押し込まれていないのです (それ故絞り連動ピンの頭は丸頭になっている)。ところがピン押し底面を有するマウントアダプタに装着すると、絞り連動ピンはその「頭一つ分」までキッチリ押し込まれてしまうので、それが「許容以上のチカラの伝達」になっていることを誰も気がつきません (指摘しません)。それはそうですね、絞り連動ピンの僅か1mm前後だけ飛び出している丸頭が押し込まれることを問題視する人など居ません (なので上手く整備できなかった時の当方の逃げ口上だと言われてしまう)(笑)

ここもポイントです。皆さんはもとより下手すれば整備者さえもこの点に気がつきません。「絞り連動ピンが押し込まれた量の分だけチカラが伝達される」ことを常に留意する必要があります。

絞り連動ピン」の押し込み状況により以下の3点がピックアップされます。

絞り連動ピン押し込み量が足りず絞り羽根が設定絞り値まで閉じない。
絞り連動ピン押し込み量が多すぎ許容値を超えた為に絞り羽根が正しく閉じない (或いは完全開放しない) 。
絞り連動ピン押し込み量が適正なので絞り羽根開閉が正常。

つまりマウントアダプタのピン押し底面の深さが深すぎるとになり、浅すぎるとに至ります。

これらオールドレンズが装着先として前提にしているのはあくまでも当時のフィルムカメラです。フィルムカメラはシャッターボタン押し下げ時 (或いは絞り込み操作時) のみマウント面の「絞り連動ピン」を押し込みません。マウントアダプタ経由装着時のような「常時押し込み状態のまま」になることを一切設計段階で想定していません。

何故なら、仮にフィルムカメラ側の絞り込みボタンを操作して絞り込み操作したとしてもフィルムカメラのマウント内部に用意されている「絞り連動ピン押し込み板」には適度なクッション性が備わっており、必要以上に「絞り連動ピン」を押し込みません。

マウント規格が同一ならば同じように機能するのが当然であり、機能しないのは「アンタの整備が悪い」と言う方程式が暗黙の了承で成り立っています(笑) 従って当方は「規格と言うコトバのもとに翻弄される」しかないのが現実の話です。

それはそうですね、マウントアダプタの製産会社のほうが信用/信頼が高いのは当たり前なので、このページに解説した内容などは当方の「逃げ口上」として解釈されかねません(笑) それ故、ひたすらに謝るしかないのが常だったりします・・。

↑実際にマウント部内部の状況を撮影しました。マウント面の「絞り連動ピン」が押し込まれると (ブルーの矢印①) その押し込み量の分だけ「開閉アーム」が移動します (ブルーの矢印②)。

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絞り羽根が閉じていく際に「歪なカタチで閉じる」原因には幾つもの要素が関係し合うことをご理解頂けたでしょうか? 単なる絞りユニットの調整だけに済まずマウント部内部の「捻りバネ」の状況にも影響を受けますし、最終的には「マウントアダプタとの相性問題」にも至りますからオールドレンズ側だけの問題とも限りません。

絞り羽根の経年に伴う油染み状況
絞り羽根の「キー」変形状況
開閉環/絞りユニット内壁の経年摩耗状況
開閉アーム」の垂直性
マウント部内部「捻りバネ」の状況
絞り連動ピン」の押し込み量

そして最後に一番重要なポイント・・、

絞り連動ピン〜絞り羽根の至るまでのチカラ伝達経路の状況

・・が逐一因果関係を含み複雑に関係し合った結果が「絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量)」であり、カタチが歪だったり正常に絞り羽根が開閉しない、或いは開放時に絞り羽根が顔出ししているなどの具体的な問題点として現れます。

そして、具体的な現象「歪なカタチ/完全開放しない/正常に開閉しない」は、これらまでの因果関係との鬩ぎ合いの中で調整を施し改善していくしか方策が無いので、経年劣化や変形などの要素を改善できるか否かには、自ずと限界があると申し上げるしかありません。

アンタの整備が悪い」と言われれば、プロでもなく職人にもなり得ない当方は自らの低い技術スキルをひたすら詫びるしかありませんし、返金するしか手がありません。その意味で何度もご案内していますが、プロのカメラ店様や修理専門会社様宛オーバーホール/修理をご依頼されるのが最も安心できて最善だとお勧め致します (当方にオーバーホール/修理をご依頼頂く方々は、ほんの一握りの極一部の方々です/だからこそ何度でもバラして納得いくまで調整を試みます)。