◎ LEITZ WETZLAR (ライツ) SUMMICRON-R 50mm/f2《2カム》(LR)

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今回の掲載はオーバーホール/修理ご依頼分のオールドレンズに関する、ご依頼者様へのご案内ですのでヤフオク! に出品している商品ではありません。写真付の解説のほうが分かり易いこともありますが、今回に関しては当方での扱いが初めてのモデルでしたので、当方の記録としての意味合いもあり無料で掲載しています (オーバーホール/修理の全工程の写真掲載/解説は有料です)。オールドレンズの製造番号部分は画像編集ソフトで加工し消しています。

現在のところ、当方ではライカ製オールドレンズの取り扱いをやめています。オーバーホール/修理の「問い合わせフォーム」で告知もしているのですが、そうは言っても年に数本ですが問い合わせしてくる方がいらっしゃいます。通常はお断りしているのですが、中には問い合わせ時に短文で送りつけずに熱き想いをコメントして頂ける方も居り、絆されてしまいます(笑) 今回の個体も、その想いに応えられるよう精一杯のオーバーホールをさせて頂きました。そもそも当方はライカ製オールドレンズのことをよく知りません (高嶺の花だから)。にも拘わらず熱き想いを添えてお問い合わせ頂けるのは、本当に有難いことです。この場を借りてお礼申し上げます。ありがとう御座います!

今回オーバーホール/修理ご依頼を承ったモデルは、鏡胴に「MADE IN GERMANY」刻印があるライツ製標準レンズ『SUMMICRON-R 50mm/f2《2カム》(LR)』です。このモデルのオーバーホール/修理は過去にもあるのですが、今回バラしたところ内部の構造が一部異なっており、組み立て手順や調整も変わってきたために「初めての扱い」としています。 数をこなしていないので詳細は分かりませんが、今回の個体は製造番号から1970年の生産個体で、特に鏡筒〜絞りユニット周りと光学系の格納方法が少々違っていました。

ご依頼内容は・・、

(1) 絞り環のガタつき
(2) 光学系内の清掃

・・ですが、届いた現物をチェックしたところ以下のような問題点も確認できました。

(3) 絞り環のクリック感が非常にガチガチした印象
(4) 距離環を回すトルクが相当「重い」
(5) 距離環操作で回転方向切り替え時の左右方向ガタつきが大きい

・・オーバーホール工程の中で一つずつ改善していきます。

光学系は5群6枚のウルトロン型ですが、バラして光学系を1枚ずつ清掃してる際にスケッチしたのが右の構成図になりますので、各硝子レンズのサイズや曲率などは正確ではありませんが、イメージとしては近いのではないでしょうか・・。

↑上の写真は、当初バラし始めた時の途中の写真です。鏡胴に立てかけているのが真鍮製の「ヘリコイド (オス側)」で、本体側が「ヘリコイド (メス側)」になりますが、接していたネジ山部分は経年劣化に拠る腐食レベルが低いものの他の部分は「濃い茶色」に変色しています。

オールドレンズをバラすと、凡そ真鍮製パーツは経年劣化による酸化が進行して表層面の腐食に拠る「負荷/抵抗/摩擦」が増大してしまいます。当方による「磨き研磨」は、それら真鍮製パーツをキラキラに輝かせるのが目的ではなく(笑)、表層面の「必要外な摩擦」除去が目的であり、生産時本来の平滑性を取り戻すことが最大の目的です。結果、一般的なメンテナンスで行われている「グリースに頼った整備」を排除できることになります。

何でもかんでもグリースを塗ったくって「ストレス無く使える状態」にすれば良いと言う「グリースに頼った整備」は、結果的にオールドレンズ内部に新たな揮発油成分が廻る環境を整えているワケであり、下手すれば (早ければ) 数年でカビの発生や光学硝子レンズ面のコーティング層劣化を促進することに至ります。どうして敢えてそのような環境を用意するでしょうか? 当方のオーバーホールでは可能な限り必要外のグリースを塗布しません。

上の写真をご覧頂くと分かりますが、ヘリコイドのネジ山 (オスメス) には古いグリースがほぼ残っていません。これがバラす前のチェック時に「重いトルク感」に感じていた原因であり「潤滑油」が注入されていました。おそらく後1〜2年でヘリコイドの固着に至り「製品寿命」と言う結末に陥っていたかも知れません (固着したヘリコイドは外せません/外れてもトルクムラが酷くなります)。

↑こちらも解体途中の写真ですが、マウント部内部を撮っています。マウント部の内側には真円の「溝」が用意されていますが、その部分に「サビ (緑青)」がビッチリ生えています。この「溝」部分には「絞り環連係環」と言うパーツが入り、絞り環操作に連動して動いています。「緑青」は真鍮材に経年の揮発油成分が附着して水分を引き寄せ生じてしまったサビですから、これが原因で結果的に「ガチガチした印象の絞り環操作」に至っていたワケです。

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ちょっと話が反れますが、先日お問い合わせ頂いたので良い機会ですから解説します。お問い合わせ頂いたのは「オールドレンズ内部に廻った揮発油成分のせいで金属製パーツが錆びると言うが、揮発油成分は「油」なので金属の腐食/サビを促さないのではないか?」と言う内容です。

仰るとおり古いグリースに拠る揮発油成分は「油成分」なので「水分」ではありませんから、直接揮発油成分が金属を腐食させることはありません。しかし、揮発油成分の周りには「水分」が癒着します (引き寄せられます)。すると、その水分中に含まれている二酸化炭素 (CO2) の溶解により、金属類の腐食 (つまり酸化) が促されるので錆が発生するメカニズムです。

従って、上のマウント部内部の写真でも「溝」部分に接していた真鍮製「絞り環連係環」の腐食が進んで「錆 (緑青)」が発生していたことが説明できます。

↑こちらは絞り羽根を写していますが、一般的に絞り羽根には、真鍮製の「キー」と言う絞り羽根が刺さる位置を決めたり駆動する角度を決めたりしている「金属製の突起棒」が表裏に打ち込まれています。それぞれを指して「位置決めキー」「制御キー」と呼んでいます。

今回の個体は当初バラす前のチェック時には、絞りユニットを眺めても絞り羽根には油染みが無いように見えていました。実際、オーバーホール/修理ご依頼者様からの内容には「油染み」の話は一切ありません。

↑上の写真は、オーバーホール工程の途中で撮影した写真ですが、取り外した絞り羽根を清掃後に撮った写真です。ティッシュペーパーを使って絞り羽根を1枚ずつ拭いた後に撮影したものですが、ご覧のとおり「赤サビ」が出ていました。絞り羽根の清掃ですから溶剤を使っており、経年の揮発油成分はキレイに除去できていますが、同時に赤サビも取れているワケです。

絞り羽根に関して、皆さんがよく気にかけるのは「油染み」が多いと思いますが、実はこのように「錆」が生じていることもあるのです。この錆が絞り羽根表層面に発生すると、どのような問題が出てくるのでしょうか?

錆は金属製である絞り羽根の腐食/酸化ですから、必然的に「必要外の摩擦/抵抗/負荷」が発生していることになります。すると、絞り環を回して設定絞り値を替える際、それら絞り羽根1枚ずつに発生している必要以上の「負荷」は枚数分のチカラとなって「キー」に一極集中してきます。これが「キー」の滑らかな動作に影響し、結果的に絞り羽根の開閉異常、或いはキー脱落などに至ります。もっと端的に言えば、キーが打ち込まれている「穴」部分が最も摩耗するので、揮発油成分が絞り羽根に附着するのを防がなければイケマセン。

今回の個体も、一見すると油染みが無く、何ら問題が無いように見えるのですが、実際に清掃すればご覧のとおりと言うことになりますね。解体せずに必要箇所のみバラしてメンテナンスすることは、よくある整備だと思いますが、はたして如何なものでしょうか。

そもそも「点検整備」や「ストレス無く使える整備」などと言うメンテナンスは、詰まるところ「その場限りのメンテナンス」としか言えないと当方は考えます。その時点では問題が改善されたように見えますが、実は「オールドレンズ内部の近い将来的な問題点は留まったまま」と言わざるを得ません。「点検整備」や「ストレス無く使える状態まで整備」などと謳っている整備を、当方は全く以て信用していません。一般の個人の方が施すメンテナンスならイザ知らず、それを「業」として営んでいる輩は言語道断です (どんなに言い繕っても整備して何某かの利益を恒常的に得ているなら業を営んでいると法的に見なされます)

もちろん、それで良いと考え依頼される方も多いでしょうから、一概にそのようなメンテナンスがダメだとは言えませんが・・(笑)

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オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。今回の個体も、過去に整備した個体同様「固定環の固着が酷く」バラすには相当難儀しましたが完全解体ができました。光学系前後群を外すのにも固着が酷く外れず、ヘリコイドも同様外れませんでした。仕方なく、構成パーツの材質を確認しつつ溶剤を流し込んだり「加熱」してようやく解体できた次第です (通常の倍の時間を要しています)。

上の写真は、既に当方による「磨き研磨」が終わっている状態で撮っていますから、各構成パーツの表層面は生産時にほぼ近い「平滑性を担保できています (真鍮製パーツの一部には研磨が不可能な箇所があり濃い焦茶色のままですが非接触面なので良しとしています)。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。過去にオーバーホールしたモデルでは、この鏡筒自体がエンジニアリング・プラスティック製でしたが (製造番号3xxxxxx代)、今回の個体 (製造番号2xxxxxx代) は金属製でしたので、溶剤の流し込みや加熱に耐えられ完全解体が実現できた次第です (逆に言うと、それほど大変な作業だった)。

↑こちらの写真は、絞りユニット内部の「絞り羽根開閉幅制御環」と言う、絞り羽根の開閉角度をコントロールしている環 (リング/輪っか) を撮っています。ご覧のとおり、実は意外にもアルミ合金材のパーツであり、切削レベルは良くなかったりします(笑)

「ライカ製オールドレンズだから内部の構成パーツは造りもシッカリしている」などと言うお話をネット上のサイトで目にしますが、はたしてその方はご自分の目で実際に内部構成パーツをご覧になったのでしょうか? 少なくとも、当方からすると、この切削面の粗さが残っている切削技術は、当時の日本製オールドレンズと比較してもそれほど良くないと考えますが (1970年代の生産です)。

当時のライカ製オールドレンズで言えることは、内部の構成パーツに於いて真鍮材に関しては相応の切削レベルに到達していましたが、如何せんアルミ合金材パーツの切削レベルはお世辞にも褒められません。もちろん現在流通しているライカ製モデルは一切問題ありませんが、当時のレベルはこの程度と言うことです。然し、ライカ製オールドレンズが素晴らしいのは、何よりも光学設計ですから、勘違いしないで頂きたいですね (内部構造や構成パーツが素晴らしいワケでは決してない)。

↑上の写真は絞りユニットを構成しているパーツを並べています。向かって左側が「絞り羽根制御環」で右側が「絞り羽根位置決め環」です。「制御側」がアルミ合金材のパーツで構成されているのに対して「位置決め側」は真鍮製です。どうして材質を替えてきたのか???

↑その理由が上の写真です。絞りユニット内部にはご覧のように「25個のベアリング」と「5本のアルミ棒」が組み込まれています。このベアリングとアルミ棒が介在する回転方式を採ったが為に、駆動する側である「制御環」のほうをアルミ合金材で用意する必要性があったのです (真鍮材だとグリースが必要になるため)。

ヘリコイドならばグリースを塗るのは当然ですが、光学系前後群に挟まれている「絞りユニット」の内部にグリースを塗るワケにはいきませんね。前述のとおり、絞り羽根には赤サビが出ていましたからベアリングをチェックしたところ、やはり一部に赤サビが出ていました。また弧を描いたアルミ合金材棒も僅かにカタチが適合していないモノもあるのでバラした次第ですが、この絞りユニットの構造が過去のモデルとは異なっていたため、組み上げ手順も違っていました (従って申し訳御座いませんが構造検討料金が加算されます)。

なお、この絞りユニットの「位置決め環」は中空に浮いた状態になるよう組み込む必要がありベアリングで辛うじて引っ掛かっている状態である設計なのでクルクルと大変滑らかに回るようになっていますが、このベアリングとアルミ棒を均等配置しながら隙間に入れ込んでいくのが大変な作業です (ほんの僅かでも加減をミスるとアッと言う間に入れ込んでいる反対側のベアリングが落下します)・・2時間ほどベアリング達と戯れた次第です(笑)

↑完成した絞りユニットを鏡筒にセットします。

↑この状態で鏡筒を立てて撮影しました。鏡筒の側面には「絞り羽根開閉アーム」が飛び出ています。

↑鏡筒の裏側には「棒バネ」が取り付けられており、常に絞り羽根を閉じようとするチカラが及んでいますが、この棒バネのチカラが強すぎても弱すぎても絞り羽根開閉異常に至るので、意外と厄介な調整箇所です (絞りユニットをバラすには棒バネも外さないとイケナイので)。

↑距離環やマウント部を組み付けるための基台です。

↑上の写真の解説の通り「空転ヘリコイド」になっているのがヘリコイド (メス側) になります。必然的に互いに「平滑面処理」が施されているのですが、この部分が「潤滑油の注入」に拠り腐食していたために重いトルクに至っていたようです。キッチリと「磨き研磨」を施しました (ネジ山部分よりも空転ヘリコイド側のほうがトルク感に影響大)。

↑こちらは空転ヘリコイドである「ヘリコイド (メス側)」の反対側方向から撮影しています。メス側のネジ山が内側に切られているワケですが、ご覧頂くと分かるとおり、ネジ山の半分が腐植しています。これは長期間に渡って操作されていなかったことが分かりますね (無限遠位置のまま放置)。

↑空転ヘリコイド (メス側) を組み込んだ状態です。当初バラす際に、この空転ヘリコイドを固定している「固定環」が完全固着していて外れなかったのです。固着剤による固着ではなく、真鍮製固定環の錆び付き (緑青発生) に伴う完全固着でしたので厄介でした。僅か3mmしか無い隙間に入っている固定環ですからカニ目レンチと言えども限界があり、あまりチカラを入れすぎて固定環自体を変形 (薄いので) させてしまったらアウトです。

↑同じく真鍮材のヘリコイド (オス側) を無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルでは全部で17箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

上の写真はヘリコイド (オス側) を無限遠位置まで格納している状態で撮っていますから、この個体はヘリコイド (メス側) の腐食が無限遠位置のままで長年放置されていたことが判明しますね。それゆえメンテナンスしたところヘリコイドのトルクが重いので (或いはムラがあるので) 安易に「潤滑油」を注入してしまったのでしょう。

↑空転ヘリコイドがちゃんと停止するよう停止キー (ストッパー) を取り付けてから距離環を仮止めします。

↑こちらのパーツは真鍮製の「絞り環連係環」で、絞り環と連動して回る環 (リング/輪っか) です。当初バラした際は、この環も濃い茶色に変質していました (内側の磨き研磨ができないネジ山の部分にはそのまま残っています)。酸化して腐食が進行しているにも拘わらず、この上からさらに白色系グリースを塗っていたので、ついに緑青まで発生してしまったワケです (冒頭のマウント部内部の溝に残っている写真)。

↑ここの回転機構にも「ベアリング (25個)」と「アルミ棒 (5本)」が使われていました。必然的にベアリングをチェックしたところ錆が認められたのでバラさざるを得ませんでした。何故ならば、ご依頼内容 (1) 絞り環のガタつきは、ここの部位の摩擦/抵抗/負荷が影響していたからです (ここでもベアリング達と戯れることに・・)。

↑完成した「絞り環連係環」を基台にセットしてカム2個を取り付けます。このカムは生産時に於ける高さ調整が施されていたので、ちゃんと正しい高さで組み上げています。

↑絞り環をセットします。

↑再びマウント部内部の写真ですが、今度は当方による「磨き研磨」が終わった状態で撮影しています。完全ではありませんが当初の錆を除去しています。「絞り値キー」と言うベアリングがカチカチとハマる「穴」が用意されています。ここに「絞り環連係環」に組み付けられているベアリングが填ることで絞り環のクリック感を実現しているワケですが、当初ガチガチした印象だったのは、このマウント部の固定自体がキッチリと最後まで締め付け固定されていませんでした。おそらく過去のメンテナンス時にも既に絞り環操作に違和感を感じていたのだと推察します。

↑錆を除去したマウント部をセットします。この後は光学系前後群を組み付けてから無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (それぞれ解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

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DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホールが完了しました。やはり完全解体ができると各部位のメンテナンスがし易いですね、今回のオーバーホールが4本目にあたりますが、このモデルで最も良い仕上がりになっていると思います。

↑光学系内の全面に渡る薄いクモリは経年の揮発油成分でしたのでキレイに除去できていますが、残念ながら第3群の外周附近に極薄いバルサム切れ (貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態) が生じています。非常に薄いクモリとなって残っていますが、当方ではバルサム切れの処置はできないため申し訳御座いません。

↑光学系後群も透明度が戻りました。各群の経年に於ける拭きキズや微細な点キズなどは、そのまま残っていますが (少々多めの個体ですね)、いずれも写真には影響しません (バルサム切れの進行も影響一切無し)。

↑当初バラす前のチェックでは、絞り羽根が閉じ切れていなかったようですので (f11の半段程度で停止) 適正な位置まで閉じるよう調整しています。

ここからは鏡胴の写真になりますが、当方による筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。

↑塗布したヘリコイド・グリースは「黄褐色系グリース:粘性軽め」を使っています。それでもヘリコイドのネジ山距離が長いのと、大変細かいネジ山であることが影響して相応のトルク感に至っています。ピントの山が掴みにくい一面もあるモデルですので、ワザと軽めには仕上げていませんが、そうは言っても違和感を抱くトルク感ではありません (シットリ感のあるトルク感に仕上がっています)。距離環を回すトルク感は「全域に渡り均一」で普通〜重め程度です。なお、無限遠位置は当初の位置にて組み上げています。

↑冒頭のご依頼内容のうち (1) と (3) の絞り環ガタつきに関しては半減程度です。これ以上ガタつきを低減することは仕様上隙間が用意されているのでできません (おそらく間に紙環が入っていたと推測するのですがこの個体にはありませんでした)。また (4) 〜 (5) の距離環切り替えし時のガタつきも半減程度です (直進キーガイドの経年摩耗がある分削れた金属を元に戻すことはできないのでこれ以上改善できません)。いずれも、もしもご納得頂けないならばご請求額より必要額分を減額下さいませ。申し訳御座いません。

↑当レンズによる最短撮影距離50cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。当初バラす前のチェック (実写) では、このモデルにしては極僅かにピント面の鋭さが足りないような印象でしたが、原因は距離環を回す際のトルクが重すぎたために厳密なピント面になっていなかったようです (光学系格納位置は正常でした)。ピント合わせが楽に操作できるようになったので、鋭いピント面も容易に合わせられるようになりました。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」にセットして撮影した写真です。絞り環操作も当初のガチガチした印象は無くなり、大変小気味良いクリック感を伴って操作できるようになったので楽です (但しガタつきは半減程度です)。

↑さらに絞り環を回してF値「f4」で撮りました。

↑F値「f5.6」になっています。

↑F値「f8」になりました。

↑F値「f11」です。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。