◎ CARL ZEISS JENA DDR PANCOLAR auto 80mm/f1.8 MC(M42)
オーバーホールのために解体した後、組み立てていく工程を掲載しています。
すべて解体したパーツの全景写真です。
ここからは解体したパーツを実際に組み上げていく組立工程写真になります。
まずは絞りユニットと光学系前群を収納する鏡筒です。
この当時、CARL ZEISS JENA DDRでは他に「MC Sonnar 135mm/f3.5」と言う中望遠単焦点レンズを発売していましたから、この鏡筒はSonnar 135mmとの共通パーツにもなっています。
以前お届けしました「MC FLEKTOGON 35mm/f2.4」とほぼ同一の仕組みなのですが、どう言うワケかこの「PANCOLAR auto 80mm/f1.8 MC」に於ける絞りユニットの『精度』は甘く、個体差によるバラツキが顕在しています。
今回ご予約に際し「ハズレ個体」を1本目に引いてしまいましたので、別件にてヤフオク!で出品しています。
今回のこの個体は急きょ調達した2本目の個体になり、問題が御座いません。
次の写真は鏡筒カバーでフィルター枠まで含めた部分の基台です。
実際に正しいポジションにて距離環(ヘリコイド:メス側)をネジ込み、無限遠域の当たりをつけておきます。
写真のマイクロバネが接続されている黒色の樹脂製 (プラスティック製) パーツの経年劣化による変形や摩耗が多く、Flektogon 同様に最近のネックになっている箇所です。その下にももう1つ樹脂製パーツがあり、直接絞り羽根の開閉を制御しています。
この2つのパーツの経年劣化は、絞り羽根の開閉異常を来し、修理をしても改善の可能性は50%程度です。
鏡筒を組み込んだ状態です。この鏡筒の先に光学系前群がネジ込まれます。
光学系後群を先にネジ込みます。モデルとしては「中望遠域」に入る焦点距離ですので、このように光学系後群は大きな『ガラスの塊』になっています。
光学系前群を組み付けて写しました。状態の良い光学系前群です。
マウント部の基台です。この当時のCARL ZEISS JENA DDRでは、既に「MC FLEKTOGON 35mm/f2.4」と「PANCOLAR auto 50mm/f1.8 MC」との共通パーツの仕様を採用しており、筐体は前部と中間部・後部の3つに容易に分離できる構造化が成されていました。結果、メンテナンスが非常に良くなりましたが、さすがに半世紀近くの時間を経た今となってはそれらメンテナンスのためのパーツを入手することはできません。不具合が発生しても改善できるか否か修理にかけるしかありませんね。
後はこれに完成している鏡胴を組み付けて無限遠調整と光軸確認をすれば完成間近です。
正直「PANCOLAR auto 80mm/f1.8 MC」は、状態の良い個体を入手するのが非常に困難になっており、今回も1本目は不具合品を掴まされてしまいました (ヤフオク!に出品する予定です)。
光学系の状態が大変良く、前玉の第2群に極僅かな拭きキズが目視できる程度です。LED光照射では極微細な拭きキズや汚れなどが浮かび上がりますが、いずれも写真への影響はまったくありません。
絞り羽根もキレイになり確実に駆動している個体です。別件の1本目はここがダメでした。
ここからは鏡胴の写真です。経年の使用感をあまり感じられないキレイに状態を維持した個体ですね。
渾身のオーバーホールによりとても状態の良い個体をお届けできる準備が整いました。
距離環や絞り環の駆動も大変な滑らかさで、ピント合わせも軽くて楽にご使用頂けます。距離環を大幅に動かす際は少々重みを感じながらも、ピント合わせ時にはほんの僅かなチカラだけで駆動できる、当方独自の少々「ヌメッ」とした感触のヘリコイドグリスです。
この感触が病み付きになっているご落札者様も多く、現在もオーバーホールのご依頼が絶えません(笑)
後玉も極微細な拭きキズやコーティングスポットがある程度でとても良い状態です。
当レンズによる最短撮影距離83cm附近での開放による実写です。この描写性能はやはりさすがですね。一度入手すると手放さないので市場に出回らず個体数が少ないのも頷けます。ピントはミニカーのヘットライト辺りに合わせています。極端ではない柔らかで階調豊かなトロトロのボケ味ですから立体感もありますね。FLEKTOGONと相通ずる描写性能でしょうか。