〓 MINOLTA (ミノルタ) MC ROKKOR−PG 58mm/f1.2《後期型》(SR/MD)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、国産は
MINOLTA製標準レンズ・・・・、
MC ROKKOR−PG 58mm/f1.2《後期型》(SR/MD』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた12年前からの累計で当時のMINOLTA製標準レンズ「58mm/f1.2」の括りで捉えると16本目にあたりますが、それらの中で今回扱った個体「後期型」だけでカウントすると僅か8本目になり、2018年以来の扱いです。

決して市場での流通本数が少ないモデルではないので特に珍しかったり希少性が高いオールドレンズではありませんが、当方自身が普段敬遠している為になかなか扱い本数が増えません。但しその描写性としては先日扱ったOLYMPUS同様大好きな光学メーカーの一つで、写り具合だけに限らず特に内部構造面での「サービスレベルへの配慮を尽くした日本人らしい設計」は、正直NikonやCanonすら肩を並べられないほどに素晴らしい設計を採っているオールドレンズ達ばかりです。

具体的にそれを指摘するなら、MINOLTA製オールドレンズのモデルや内部構造を熟知している整備者であれば、現れている症状から何処をどのように解体してどのような処置を講ずれば改善できるのかがすぐに分かる「考え尽くされた構造設計を採っている」からこそ、ハッキリ言って必ずしも完全解体せずとも対処できる構造をしています・・そのようなレベルで構造設計を尽くしているオールドレンズは、国産の中ではMINOLTA以外に思い当たりません。

その意味では大変扱い易いモデルが多いのがMINOLTA製オールドレンズの特徴の一つですが、如何せん当方が敬遠せざるを得ない理由がちゃんと他にあります(泣)

それは俗に巷で「緑のロッコール」と呼ばれる、とても美しい光彩を放つグリーン色の蒸着コーティング層です。特に「初期型」のモデルバリエーションが一番濃い緑色に光り輝き、後の「前期型後期型」に至るまでの変遷の中でグリーン色の光彩はブル〜成分が強くなった色合いに変化していきます。

初期型」の頃がモノコーティング層に対し「前期型後期型」へとマルチコーティング化が進みますが、最後の「MDシリーズ」辺りになると、マルチコーティングにしてもグリーン色の光彩はスッカリ消失してしまい、当時の他社光学メーカー同様パープル成分がより強く増した光彩に落ち着きます。

これはなにもMINOLTAだけに限定した話ではなく、おそらくは当時の風潮としてそのような傾向がもて囃されていたのだと考えられます。

しかしこのMINOLTAの「緑のロッコール」が実は単なるコーティング層が放つ色合いの話ではなく、その蒸着先が問題で・・・・、

シングルコーティング層もモノコーティング層も、或いはマルチコーティング層の上にさえも、まるで薬味の如く好きなように蒸着できる薄膜蒸着技術
あり、当時1958年に世界初として開発された
アクロマチックコーティング (AC)

・・・・を指している点に於いて注目すべき内容なのです。ライカが欲しがったのもその薄膜蒸着技術だったのです。

従って単なるグリーン色のコーティング層とだけ受け取ってしまうと、当時のMINOLTAの技術陣に対して相当失礼な認識でしかないと反省すべき内容を含んでいる事を確実に認知するべきです・・何故なら、当時のライカがその技術提携を申し出てきたほどなので薬味的に自在に既存のコーティング層に薄膜蒸着できる点に於いて「蒸着した色合いを全く別にして」薄膜である点に於いて優れた技術と受け取るべきと当方は考えています。

ネット上を観るとこのアクロマチックコーティング (AC) を単なる複層膜蒸着と解説しているサイトがありますが、確かに複層膜だとしてもその蒸着先対象が「既存の蒸着済コーティング層たる単層〜複層〜多層膜に対して最終的に薄膜蒸着できる技術」なのであって、まるでモノコーティング (複層膜コーティング) の如く扱う事に相当な違和感を感じ、ハッキリ言って当時のMINOLTA技術陣に対して相当失礼な話だと当方は受け取っています。

薄膜の追加蒸着だろうが何だろうが一切関係なく、既存のシングル/モノ/マルチコーティング層の上にさらにプラスして望むコーティング層を蒸着できる事で、各光学系硝子レンズの表層面「片面で4%分の入射光が透過せずに反射される」要素に対してアドバンテージを与えられます。

これは実装されている光学硝子面の片面側で4%失うので、1枚の光学硝子面を入射光が透過した時点で「表裏面で必ず8%分が失われる」のが入射光の透過原理です。

すると今回のモデルで言うなら、5群7枚なので面数は14面にあたり「入射光の消失レベルは56%」にも及びます。つまり完全なるノンコーティングでの光学硝子レンズの状況下では光学系に入射した光のうち「僅か44%分」だけしかフィルムカメラ側フィルム印画紙に到達し記録できない話に至ります。

それを可能な限り入射光の透過率を上げてフィルムカメラ内印画紙まで入射光を到達させる目的だけに開発された技術こそが「コーティングの蒸着」である事をシッカリと認識するべきですね(泣)

シングルコーティング層で単層膜になり、当時の初期段階では「ブル〜の光彩」が主流でした。これは最も波長が短い/細かい紫外線領域に向かう入射光に対しての減衰を可能な限り保持させる目的があります (つまりフィルム印画紙記録レベルでの明るさの確保)。

次に開発された技術革新がモノコーティング層であり、複層膜ですから1939年開発の戦前ドイツCarl Zeiss Jenaによる「Zeissの」の如く「パープルアンバーの光彩」はパープル域にて「ブル〜レッド」帯を保持させ、且つアンバー色で輝度すら増幅させ得る概念が生まれた証とも言い切れます・・何故なら絵の具を使って実験すれば一目瞭然ですが、総ての色の混色は「黒色」です。その反対色が「白色」なので、輝度を増幅したければ「白色を強化してもコントラストだけが低下していくだけの結末」にしか到達し得ません (つまり薄い色合いの低コントラストな画にしかまとまらない)。

だからこそ今現在のデジタル処理技術でも「」の色の4原色を使って「画全体の明るさをキッチリ保持しながらのコントラストを確保しつつ画を追求する技術がまさに4Kや8Kだったりしますョね???(笑) まさにニュートンの話みたいな内容ですが(笑)、光学系内に射し込む入射光は「それこそ光学系の歴史たる1280年代まで遡るなら、いまだに何一つ変わらない入射光を相手に技術革新を進めているのがリアルではありませんか???」と指摘したいですね(笑)

対象がオールドレンズだからと何も考えずに述べたりせずに、ちゃんと最新技術まで含め研究して「どうして当時にシングルコーティングやモノコーティング、或いはマルチコーティング化が進んでいったのだろうか???」と正統的な疑念を抱くべきなのです(笑)

・・それをしないからコトバ遊びだけに始終してしまいます!(笑)

逆に言うならモノコーティング (複層膜コーティング) などは、既に1939年時点で戦前ドイツのCarl Zeiss Jenaですら開発済ですから (Zeissの) その当時の他社光学メーカーの「コーティングや刻印、或いは刻印など」いくらでも流行っていた事実を鑑みれば「ではいったいなんで1958年当時になって世界初を謳えたのか?」との疑念を抱かずに、そのような解説をしている時点で全く以て認識が違っています (だからMINOLTA技術陣に対して失礼すぎると言っている)。

もっと指摘するなら、仮に蒸着されていたアクロマチックコーティング (AC) だけを取り除くと、その下から本来蒸着が済んでいたマルチコーティング層モノコーティング層、或いはシングルコーティング層が現れるので、アクロマチックコーティング (AC) を単なる複層膜蒸着と片付けてしまうと、その下から既存の蒸着コーティング層が現れる時点で辻褄が合いません (話の次元が全く合致していません)(笑)・・これは単なる仮説レベルでの当方の考察ではなく「マジッに現実にアクロマチックコーティング (AC) 層だけが剥離し、消失したその下から当初の基となるべく蒸着コーティング層が現れたのを自ら体験した」からこそ、このように指摘しています(笑) この点に於いて当方自身がシングル/モノ/マルチコーティング層の基層 (基の蒸着層) を数種類/数回体験しているからこそ明言できている事実です (基の蒸着層はモデルバリエーションで言う処の周知の事実だけに頼ります/蒸着層をリアルに物理的に検査した結果に拠る話では決してない/個人レベルの話としても、その基となる蒸着層が放つ光彩を視認すれば自ずと明白になる)。

話を戻して、ではその薄膜蒸着されたアクロマチックコーティング (AC) の存在がどうして当方が扱いを敬遠する理由になるのかと言えば、薄膜であるが故に「経年劣化に伴う剥離/クラックが起き易くなっている」点に於いて、普通に光学系内を清掃しただけでヘアラインキズだらけにしてしまう恐怖感から、扱えずに居るのだと言っているのです (下手すると最悪の場合、清掃した箇所が総て剥がれて消失してしまう)。

つまりは内部構造面では、むしろ扱い安いオールドレンズであるにもかかわらず、光学系の「緑のロッコール」たる要素が在るが故に手を出せずに居るのが正直なところです(泣)・・・それほどハガレ易くなっているので相当コワイ存在なのです(怖) それは清掃する前はちゃんとキレイな「緑のロッコール」だったのに、清掃が終わったら「グリーン色の光彩を一切放っていない」時点で一目瞭然だからです (清掃で拭いただけで総て剥がれてしまったから)(怖)

・・その『恐怖感』からMINOLTA製品はオーバーホール/修理ご依頼をご辞退しています。

当ブログページ最後に「事後談」を追加しました

↑完全解体した時の内部構成パーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はMC ROKKOR−PG 58mm/f1.2《前期型》(SR/MD』のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホール/修理が終わっています。一つ前の解体全景写真を見れば分かりますが、光学系は解体しておらず、前群と後群だけに取り外しています・・これは冒頭解説のとおり「後期型」のモデルバリエーションとしても、相応にアクロマチックコーティング (AC) が処置されており、上の写真のとおり「グリーン色の光彩」を放つからです。

従ってアクロマチックコーティング (AC) の清掃は行わないので、光学系は「前群/後群」の塊として取り外しただけです。但し前玉表面と第2群及び第3群貼り合わせレンズの裏面側、さらに後玉の表裏面だけは清掃済です。

後玉を外して表裏面で清掃を実施した理由は、裏面側がアクロマチックコーティング (AC) でしたが、カビが生じていたのでカビ除去を施しています。現状外周部分にカビ除去痕が残っていますが菌糸はほぼ除去できています。

またアクロマチックコーティング (AC) のヘアラインキズは中央に僅か残ってしまいました
・・申し訳御座いません。「後期型」なので、光学系構成図は右図のようになります。

《当初バラす前のチェック時に気になっていた内容》
距離環を回すと回転のトルクムラを僅かに感じる。
距離環を回した時のトルクが少々重めの印象で擦れ感が多い。
 無限遠位置が1目盛分前で10m辺りにセットされている。
絞り羽根が時々f11〜f16間で全く動かない事が起きる (約50%の確率)。
光学系後群の後玉裏面側に特に白く菌糸状のカビが発生したままになっている。

《バラした後に新たに確認できた内容》
白色系グリースが塗布されており、だいぶ経年劣化が進行している。
絞り羽根の制御系の微調整が間違っている。

↑上の写真はオーバーホール/修理工程の途中で撮影した写真です。鏡筒を組み立てている最中で、ひっくり返して撮影したので、上の写真下側方向が前玉側方向にあたります。

これら鏡筒の裏側を撮影した理由はこのブログページでの解説用になりますが、前述した《当初バラす前のチェック時に気になっていた内容》 絞り羽根が時々f11〜f16間で全く動かない事が起きる (約50%の確率) についてです。

当初バラす前に絞り環操作して絞り羽根の開閉異常をチェックしてみると、50%くらいの確率で「f11〜f16間で絞り羽根が全く動かない」以上が起きていました。そして見た目だけでも間違いなく「閉じすぎ状態」である印象を抱いたので、当方にて簡易検査具でチェックしてみると「最小絞り値f22近く」まで閉じている状況が絞り環の刻印絞り値「f16」でした (つまり既にf11時点でf16を越えています)。

このモデルでのこのような最小絞り値側で絞り羽根が閉じすぎてしまっている現象は、例えば今でもよく見かけますが旧東ドイツのCARL ZEISS JENA DDR製広角レンズ「MC Flektogon 35mm/f2.4」などでも数多く市場流通しています(笑)・・同様最小絞り値側の時に絞り羽根が閉じすぎている設定のまま組み上げており、その出品ページ掲載写真をチェックするとおそらくは「f22を越えている閉じ具合」であり、ほとんど絞り羽根が閉じきってしまっているような印象に見えます(笑)

今回扱ったこのモデルの個体でも、当初バラす前のチェック時点では簡易検査具で調べても「f22近く」まで絞り羽根が閉じきっている状況でしたので、似たような話です(笑)

それを解説するが為にオーバーホール/修理工程の途中で上の写真を撮影しました。

絞り羽根の開閉動作を司る「制御系機構部」は当時の光学メーカー別に或る特定の部位にまとめて配置される事が多いです。例えば当時のOLYMPUS製オールドレンズでは「絞りユニットの内部に階層を分けて3階層で配置」する設計を好んで採っていましたし、当時のMINOLTAも上写真のように「鏡筒裏側に半分の機構部をまとめて配置」しています (残り半分はマウント部側に配置)。当時の富岡光学製オールドレンズ達でも同じですし、他の光学メーカーでも数多く似たような設計手法を採っていました。

いわゆる「自動絞り方式の制御系機構部の配置」ですが、多くの光学メーカーの場合で「なだらかなカーブにカムが突き当たる時の勾配量によって絞り羽根の移動量が決定し開閉角度が伝達される原理」を採っていました。

上の写真のとおり、鏡筒裏側には「制御環」と言う環/リング/輪っかがセットされており、その途中に「制御アーム」と「なだらかなカーブ」が備わります。一方その周囲を囲むように弧を描いたカタチの長い板状アームが附随し、その1つに「開閉アーム」さらに別の1つの板状アームに「カム」が用意されます。

これら附随する2つの板状パーツには引張式スプリングがセットされて鏡筒内部の絞りユニットに配置されている「開閉環」と連結する事で、さらに「位置決め環」側のキーを軸にして絞り羽根の開閉角度を制御する設計です。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

絞り羽根開閉幅
絞り羽根が閉じていく時の開口部の大きさ/広さ/面積を指し、光学系後群側への入射光量を決定づけている

すると上の写真で解説するなら「制御環」の途中に備わる「制御アーム」が絞り環と連結しているので、絞り環操作すると「制御環の途中にあるなだらかなカーブの位置が移動する」仕組みです (オレンジ色矢印)。

その後にマウント面の開閉レバーがフィルムカメラ側より操作されると (つまりシャッターボタンが押し込まれると) 瞬時に「開閉アーム」が操作され (ブルーの矢印❶) 附随する引張式スプリングのチカラに拠り「カム」が移動して「なだらかなカーブ」に突き当たります (ブルーの矢印❷)。

その際の「なだらかなカーブ」の勾配により「カム」が突き当たった時の勾配量から絞り羽根の移動量が確定し、絞り羽根の開閉角度が限定されるので「絞り環で設定してある絞り値まで瞬時に絞り羽根が自動的に閉じて設定絞り値で撮影できる」原理です。

なだらかなカーブ」の勾配で登りきった頂上部分が「開放側」にあたり (ブルーの矢印)、その反対側の麓部分が「最小絞り値側」です (ブルーの矢印)。上の写真では頂上附近のまだ登りきる前の位置で「カム」が突き当て停止しているので、絞り羽根は途中まで閉じている「f4」の開閉状態です。ここからさらに勾配を登りつめると絞り羽根の開閉角度は次第に急角度に変わりつつ「f2.8f2f1.2 (つまり完全開放状態)」へと遷移していきます (反対側の麓方向にカムが突き当て停止すればf4→f5.6→f8→f11→f16へと変化する)。

・・これがこの当時多くのオールドレンズで採用されていた絞り羽根の開閉制御の原理です。

ちなみに今回扱った個体で約50%の確率で「f11〜f16間が停止状態/f22近くまで閉じすぎていた状態」だったのは、過去メンテナンス時に全く検査せずに「感覚だけで絞り羽根開閉制御の微調整を決めていた」から「絞り環操作した時にf11〜f16間で停止してしまっているのに気づかなかった」と指摘できます・・つまりおそらくはこのモデルのヘリコイドグリース入れ替えができる整備者なので相応の規模の整備会社だと考えられますが、そもそも整備者自身が「検査によりちゃんと絞り羽根の開閉角度を絞り環の刻印絞り値に適合させる意識欠如」だった事が露わになります(笑)

皆さんは過去メンテナンス時にキッチリ整備されていると信じている人達が圧倒的多数ですが(笑)、少なくとも今まで12年間で3,000本以上オールドレンズ達を扱ってきた当方自身の経験上では、残念ながら半数以上の個体で「テキト〜に感覚だけで絞り羽根の開閉角度を微調整して仕上げている」のが現実だったりします(笑)

それは実際にバラす前に簡易検査具でチェックしてみれば歴然としている事実なので、当方が自分の手でバラす前の話を述べています (もちろん使用しているのは簡易検査具であり本人がヤフオク! の『転売屋/転売ヤー』と言うクソな立場である事は否めない/信用信頼も信憑性も何も無い)。それこそ自分がヤフオク! で出品しているオールドレンズを、高値で売り捌きたいから煽っている話とネット上で誹謗中傷されているのも仕方ないような話です (一部しか裁判沙汰にしてませんが)(笑)

そのような次第で今回扱った個体も絞り羽根の開閉角度微調整が狂ったまま仕上げられていましたが、それ以前に「制御系パーツの使い方をミスっていた」のが影響して「f11〜f16間で絞り羽根が動かなくなっていた」事が事実として今回の解体作業で判明していますのでご報告しておきます (いくら10年近く前の話とは言え整備会社の仕業なので如何なものでしょうか)。

↑上の写真も今回のオーバーホール/修理工程の途中で撮影しています。基台に「直進キー」を3本の締付ネジを使い締め付け固定したところです (グリーンの矢印)。この当時のMINOLTA製オールドレンズはモデルバリエーション上の「前期型後期型」の別なく、ご覧のように「直進キー」にはその固定位置を微調整する機能がそもそも備わっていません (設計時点で用意されていない)。

ご覧のように「締付ネジ3本でキッチリ締め付け固定してしまう手法」であり、ビミョ〜に固定位置をズラせるようネジ穴にマチ/隙間が備わっていたりしません (つまり微調整機能が存在しない事になる)。

・・何を言いたいのか???

要は「直進キーに微調整機能が備わっていない」ので距離環を回す時のトルク調整がそもそも備わっていない点を述べています。

直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目

それが問題になる根拠が上の用語解説で、距離環を回す回転するチカラを鏡筒が直進動する上下運動に変換する役目なのが「直進キー」だからです。するとヘリコイドオスメスを回した時のトルクの重いや軽いの感覚の違いは「ヘリコイドのネジ山が互いに接している部分の問題も然ることながらこの直進キーが直進動している時の擦れ具合も大きく影響している」点に皆さんは気づきません(笑)

非常に多くの方々がヘリコイドのトルクが重いのでヘリコイドグリースを入れ替えて軽くしてほしいと言ってきますが、距離環を回す時のトルクを決めている要素は「決してヘリコイドグリースの粘性だけではない」事をもっとちゃんと研究して知るべきですね(笑)

・・そうしないとトルクが重い因果関係をいつまで経っても理解できないままになる。

↑上の写真も今回扱った個体のオーバーホール/修理工程の途中を撮影しています。既に「ベース環」に「ヘリコイドメス側 (黄銅製)」及び「ヘリコイドオス側 (アルミ合金製)」の合計3点のパーツを互いにネジ込み終わっています (赤色矢印)。

もちろんヘリコイドのネジ山が互いに接触しあっている状況なので「既にヘリコイドグリースは塗布が済んでいる状態」です(笑)・・ご覧のように塗布したヘリコイドグリースがベチベチャにはみ出して出てきていたりしません(笑)

何故なら当方で塗布しているヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」であり、さらに適量しか塗布していないからです。12年間同じですが、12年前〜8年前までの整備個体 (当方自身が整備した個体) を回収して経年劣化状況をちゃんと確認済です (7年前〜1年前の個体はまだ未回収です/回収検証できていません)。

ちなみにさすがに12年前〜10年前辺りに整備した個体のヘリコイドグリースはそろそろ経年劣化が表れ始めていて液化が進み始めていますが、それでもトルクはちゃんと維持できていました。当然ながら「白色系グリースではないので液化の進行レベルは次元が全く異なる」と指摘できます(笑)

塗布しているヘリコイドグリースが「白色系グリース」の場合は、今回扱った個体のように10年近くも経過すると相応に重いトルク感に変質してしまう事が多いです。おそらくはその前 (5年前〜8年前辺り) には液化の進行に伴いツルツル状態までトルク感が変化していたと推測できますが、液化が進むと油成分が揮発してしまうので、最後はスカスカ状態まで変化していきます。そのスカスカ状態に至るまでの途中でこのように重いトルク感に到達しますから、今暫く使い続けると次第にスカスカになりますね(笑)

なお上の写真で解説しているのはグリーンの矢印で指し示している「直進キーガイドの溝」であり、当初バラした直後にはここにおそらく10年近く前に塗布されたであろう「白色系グリース」が全く使われないままそのままの状態で (もちん白色のままで) 塗布されたまま残っていたので、過去メンテナンス時に塗布したグリースが「白色系グリース」と判定できています。

もちろんヘリコイドのネジ山に塗布されているヘリコイドグリースをチェックすれば「白色系グリース」であるのは間違いありませんが、残念ながら「白色系グリース」はすぐにグレー色に変質してしまうので白色なのを確認できません。現実にはアルミ合金材が微細な粉末状に摩耗して「濃いグレー色」に変質しますが、それに合わせて少しずつ「黄銅製のヘリコイドメス側のネジ山まで摩耗が進んでしまう」為に、今回扱った個体は当初バラした直後は「こちらの当方のDOH解説のような色合い」にまさしく陥っていました (こんな色合いに変質します/解説ページ掲載の4枚目5枚目写真がまさにMINOLTA製オールドレンズのヘリコイド群写真です)(笑)

単なる「濃いグレー状の色合い」ではなく僅かに茶褐色が混じっているように見えているのが「黄銅製ヘリコイドメス側のネジ山摩耗粉」が混じっている理由です(泣)

当然ながらこの状態は相当重めのトルク感に至っていますが、この先は互いのヘリコイドネジ山が摩耗しきってしまいスカスカ状態に陥り「最後はネジ山同士の癒着して完全固着し製品寿命を迎える」次第です。

従って間違いなく「材質の別なく金属同士の回転方向での接触にはグリースが必須要件」と明言できます (金属同士の固着に至るから)。希に「では何故ネジ同士は固着した後でも外せるのか?」と質問が着信しますが(笑)、そもそもネジ切りとヘリコイドのネジ山とではそのネジ山の切削形状も仕上がりも目的も全く異なりますから同列に比較対照になり得ません(笑)・・但しそうは言っても経年でネジが完全固着して一切外せなくなる事が起きるのも決してゼロではありませんね(笑) そもそもそのネジ込みに「トルク感を問題視するか否か」の点に於いて締付ネジとヘリコイドオスメスのネジ山を比較対象に据えること自体にムリがあると当方には受け取れますね(笑)

ちなみに当方のオーバーホール工程での組み上げ時は上の写真のとおり/ご覧のように「直進キーにも直進キーガイドにも一切グリースの類は塗布しない」のでそのまま互いをハメ込んでいるだけです(笑) もっと言うなら「直進キーの原理」を理解していないから、塗布したグリースが一切使われないまま残ってしまうのに、グリースを塗れば距離環を回すトルクが軽くなると信じ込んでいる「整備者の思い込み」と指摘できます(笑)

実際今回扱った個体でも当初バラした直後にはこの「直進キーガイド」の溝部分には真っ白な「白色系グリース」がそのまま残っていましたから (グレー色などに一切変質していない)、使われないのは間違いありません。

そもそもその原理として考えれば歴然の話です(笑) 仮に「直進キー」と「直進キーガイドの溝」との関係性にヘリコイドのネジ山と同じ関係性を当て填めるなら、当然ながらトルク感が発生しますが (距離環を回す時のトルク感を指す)、もしも「直進キー」でトルク感が発生していたらヘリコイドが回転するチカラが直進動するチカラへと変換される「その変換時点でトルクが発生している」話に至ります。

すると同じ回転の方向性で互いのネジ山が接触し合っている「ヘリコイドのオスメスの原理」に対比して「回転するチカラを直進動するチカラに変換している方向性の相違」が必ず介在している「直進キー」は、そのスライド時にトルクが生じた瞬間で固着する事になります (チカラの方向性が異なるから)。

仮にそのように考えるなら「回転するチカラが瞬時に直進動するチカラへと変換されて伝達されていってしまう」からこそ「チカラの変換で方向性が変わる時に生じたトルクはそのまま瞬時に伝達するチカラとしても返還されている」と考えれば「直進キーガイドの溝部分でトルクが発生していない (つまり塗布したグリースがそのまま残っている)」と推定できそうです・・物理が苦手なのでよく分かりませんが(笑)

それが実際にバラした直後に塗布した時の白色のまま「白色系グリース」が残っていた原理の話なのではないでしょうか?・・と当方は受け取っています。

そもそも当方が今まで12年間に扱ってきた3,000本以上のオールドレンズの個体で「直進キーにも直進キーガイドの溝にも一切グリースを塗っていない」ままオーバーホールを仕上げているので、そのような当方自身の受け取り方は決して間違っていないと考えています。それでもヌメヌメッとした軽い操作性で距離環を回す際にシットリ感を伴うトルク感として仕上げられているので、ピントのピークの山の時にその前後微動で違和感を感じ得ないのは説明ができると思っています。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。光学系前群は前玉の表面/露出面と光学系第2群の貼り合わせレンズ裏面側だけを通常清掃しています。

光学系の清掃 (通常執り行っている清掃作業)
光学系を可能な限り単独の光学硝子レンズの状態に取り出した後、専用の薬剤を使いカビ除去を実施、次にやはり専用薬剤により経年の汚れ除去を行い、光学硝子レンズ専用の溶剤で清掃後、最後に仕上げ専用溶剤で微細な埃/塵及び帯電静電気を除去する一連の作業により清掃している (都合4種類の薬剤を使う4工程の作業)

ちなみにこれら当方が実施している光学系の清掃は、以前取材させて頂いた工業用光学硝子レンズ精製会社様でご教授頂いた薬剤を使い、且つ実施する工程手順と内容もご教授頂いた事柄を参考にしつつ当方が決めている工程です (実際の工業用光学硝子精製工程ではもっと多くの薬剤と工程手順が介在するのでこのような簡素な手順と内容ではありません)。

従ってネット上の整備会社の報告や解説などを観ていると、少なくとも当方と同じ4工程での清掃を執っている整備会社はなかなか見つけられませんね (当然ながらカビキラーなどの市販薬など以ての外)(笑)

↑後群側もLED光照射で極薄いクモリが皆無ですが、菌糸状に生じていたカビ除去痕はそのまま残っています (後玉裏面側の外周附近)。また一部中央付近のアクロマチックコーティング (AC) がヘアラインキズ状に剥離してしまいました・・申し訳御座いません。

↑8枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正八角形を維持」したまま閉じていきます。当然ながら「f11f16」間もちゃんと開閉していますから全く以て正常状態に戻っています (簡易検査具確認済)。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」を使い、当方独自のいつもと同じヌメヌメッとしたシットリ感漂う軽めのトルク感に全域に渡り仕上がっています。トルクムラは残っていませんし、当初バラす前の重めのトルク感に比べると遙かに軽い操作性です。

このモデルのピントのピーク/山はスパッと一瞬で鋭く合致するので、それを考慮した軽めのトルク感に仕上げてあります。また当初バラす前のチェック時点で「刻印距離指標値の10mの0部分で無限遠合焦」していたので、少々オーバーインフ量が多く感じられ、現在は距離環刻印距離指標値の「∞」の左側◉位置で無限遠合焦するオーバーインフ量に縮めてあります (そのくらいスパッとピントが合うモデルで本当に素晴らしすぎて溜息モノです)。

↑以上、当初バラす前の状況からは相当レベルで変更してしまったので (後玉裏面側のヘアラインキズも含め)、もしもご納得頂けない場合はご納得頂ける分の金額をご請求額より減額下さいませ・・申し訳御座いません。

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

無限遠位置 (当初バラす前の位置から変更/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離60cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f2.8」で撮りました。

↑f値は「f4」に上がっています。

↑f値「f5.6」になりました。

↑f値「f8」での撮影です。

↑f値「f11」です。もうほとんど絞り羽根が閉じきっている状況ですが、いまだ「回折現象」の影響を視認できません。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。本日ご依頼分の3本全てを梱包の上、発送させて頂きます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

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【 事 後 談 】

オーバーホール/修理ご依頼分の作業が完了しお届けしましたが、ご依頼者様にご確認頂いたところアンダーインフ状態 (無限遠位置でキレイにピント合焦していない状態/無限遠位置のピント面の鋭さが足りていない状態) である旨のご指摘を受け、再整備致しました。

当方ではオーバーホール/修理工程の中でK&F CONCEPT製「MD→SONY Eマウントアダプタ」を使っていましたが、ご依頼者様ご所有マウントアダプタは同じK&F CONCEPT製としても「MD→E Proマウントアダプタ」だったのです。
(ご依頼時、事前に同じK&F CONCEPT製と伺っていたのであまり細かく考えていなかった)

そこで実際にご所有マウントアダプタも同梱頂き (お借りして) 返送頂き、再度整備した次第です。届き次第すぐに無限遠合焦をチェックすると、確かに同梱頂いたK&F CONCEPT製マウントアダプタではアンダーインフ状態に陥っていました。

↑上の写真は、アンダーインフ状態と言う不具合が起きている事が判明し、改めて返送頂いた際に同梱頂いたご依頼者様ご所有マウントアダプタ (右側) です。一方左側は当方所有マウントアダプタで、いずれも確かにK&F CONCEPT製の同じ「MINOLTA SR/MDマウント規格用」のマウントアダプタです。

オールドレンズ側が「MINOLTA SR/MDマウント規格」に対し、デジカメ一眼/ミラーレス一眼側マウントは「SONY Eマウントアダプタ規格」というマウント規格変換のアダプタですね。もちろんオールドレンズ側マウントへのオールドレンズ装着には一切問題がありません(笑)

問題だったのは「当方の無限遠位置の設定が拙かった → ほぼピタリの無限遠合焦で設定して仕上げていた」事実です(泣)

これは、例えば様々なマウントアダプタの製産会社が顕在し、且つ市場流通品たるマウントアダプタも多種多様に出回っている点にちゃんと配慮して「僅かなオーバーインフ状態に気を効かせて設定していれば良かった」のを、同じK&F CONCEPT製マウントアダプタだから同じ仕様だろうと「思い込んでしまった」のがワルイのです・・申し訳御座いません!!・・猛反省しています(泣)

上の写真で解説するなら、当方の所有マウントアダプタ (左側) は「第1世代」のK&F CONCEPT製マウントアダプタです。「第1世代」と呼ぶのはK&F CONCEPT社がそのように呼称しているワケではなく、当方が勝手にそう呼んでいるだけで、一番最初に発売されたタイプのマウントアダプタだからです。

一方、ご依頼者様ご所有マウントアダプタのほうは「第2世代のProバーション」であり、同じK&F CONCEPT製製品としても後のタイミング発売された新しいモデルです。さらに現在はもう1種類「第3世代Proバージョン」すら発売されていますが、今までに手にしたことがないので仕様の変化は確認できていません。

すると「MINOLTA SR/MDマウント規格フランジバック43.5㎜」なので、装着先デジカメ一眼/ミラーレス一眼が「SONY Eマウント規格」となれば、その「フランジバック18㎜」になります。

そこで皆さんが計算すべきサイズは「43.5㎜マイナス18㎜25.5㎜」と言う式になり、手に入れるべきマウントアダプタの仕様として「マウントアダプタのマウント面全高25.5」が適切なフランジバックに於ける許容仕様なのだと事前に分かります。

従って今回の不具合に於いてマウントアダプタの仕様をチェックすると上の写真解説の数値になり「第1世代マウント全高28.28㎜」に対して「第2世代Proバージョン全高25.45㎜」との計測値でその差「+0.17㎜」だったのです(泣)

つまり「+0.17㎜」も狂っている/厚みが多いとなれば必然的に第1世代でほぼピタリの位置で無限遠合焦を設定してしまったのは、当然ながら第2世代Proバージョンでは「明らかにアンダーインフ状態に陥るのは歴然の話」なのです (計算せずとも分かる話)。

・・本当に申し訳御座いません!!!(泣)

ご依頼者様は当方による瑕疵ではないとわざわざ御言葉を添えて頂けるとてもお優しい方です(涙) 然し本来は「同じK&F CONCEPT製なら同じ仕様だろう」と勝手に思い込んでいた当方の配慮/気配りが欠如していたのが拙いのです!(泣)

ご依頼者様は「オールドレンズで愉しむユーザー様」であるのに対し、当方は「そのオールドレンズを完全解体して整備している側の立場」であり、同じ土俵で物事を考えている時点でアウトです!(泣)

今までに12年間も3,000本を越えるオールドレンズの個体を整備してきて、その中で様々な与件を体験してきている立場の人間 (当方のこと) と、単にオールドレンズで愉しんでいるユーザー様とを「並列に捉えた時点で失格」なのです!(泣)

・・申し訳御座いません!!!(泣)

そこで皆様にも最も分かり易い例として「M42マウント規格」での同じK&F CONCEPT製マウントアダプタ (SONY E用の製品) で検証してご案内するので、ご確認下さいませ。

↑上の写真はネット上から拾ってきた同じK&F CONCEPT製「M42→SONY Eマウントアダプタ」の製品写真で、現在これら4種類が市場流通しています。各世代の呼称はK&F CONCEPT社内での呼称ではなく「当方が勝手にそのように呼んでいるだけ」です。

ちなみに「M42マウント規格」とは、正しくは「PRAKTICA (プラクチカ) スクリューマウント規格」になり「フランジバック45.46㎜ (現在)」です。

フランジバック
レンズマウント面から撮像面 (フィルムカメラならフィルム印画紙面でデジカメ一眼/ミラーレス一眼ならば撮像素子面) までの距離

バックフォーカス
光学レンズの後玉端から撮像面 (フィルムカメラならフィルム面でデジカメ一眼/ミラーレス 一眼ならば撮像素子面) までの距離

アンダーインフ
無限遠合焦しない状態を指し、距離環距離指標値の∞位置に到達するまで一度も無限遠合焦せず、且つ∞①でも相変わらず無限遠合焦していない状態を現す。一度も無限遠合焦しないので遠景写真が全てピンボケになる。

オーバーインフ
距離環距離指標値の∞刻印に到達する前の時点で一度無限遠合焦し、その位置から再び∞刻印に向かうにつれてボケ始める状態を指す。一度は無限遠合焦しているのでその位置で撮影すれば遠景のピントがちゃんと合焦している。

但しwikiによると戦後すぐの1948年時点では「フランジバック45.74㎜ (旧)」として扱われていた/製品が造られていたので、現在のフランジバックとは多少ズレが生じているのは歴然です。

さらに指摘するなら、例えば1977年に発売されたコシナ製一眼レフ (フィルム) カメラ「COSINA CSL」の取扱説明書を確認すると、マウント規格が「M42=42⌀ P=1.0 screw mount」と印刷されていて「M42マウント規格」である事が示されていますが、重要なのはそのフランジバックです。

↑上はその英語版取扱説明書の該当ページになりますが「M42マウント規格のフランジバック45.45㎜」と印刷されているのが分かります (Flange back focus distance)。

つまり当時でさえこのように「マウント規格なのに各メーカーが独自の数値で捉えていた」事が見えてきます。

ところが「マウント規格」の「規格」と言うコトバに特に日本人は弱く(笑)、絶対信者が必ず一定の勢力で顕在します。「M42マウント規格のフランジバック45.46㎜」と頑なにひたすら信じ、プラスして日本製マウントアダプタが唯一の精度を誇る工業製品たる認識で捉えている方々です。

仮にその日本製マウントアダプタとして「M42→SONY Eマウントアダプタ」のマウント全高を調べると「27.5㎜」であり、当該製造メーカーのホームページを調べると「M42マウント規格フランジバック45.5㎜」と捉えて製品設計している事が案内されています・・つまり「+0.04㎜」なので、はたして当時のオールドレンズでの光学設計上で「±0.02㎜」の許容誤差と捉えて設計していた光学メーカーが顕在している事柄に思いを馳せると・・どうなのかと思ってしまいます。

当時のフィルムカメラでさえマウント規格が独自数値で捉えられていたのに対し、現在のマウントアダプタ市場流通品でさえ各社独自数値で製品全高を捉えています。もっと言えば「M42マウントの自動絞り方式のマウント面突出絞り連動ピン」の長さ/深さとなればさらにバラバラです。

皆さんが信じてやまない「規格」とは・・いったいどの数値を指していらっしゃるのでしょうか??? 当方には分かりません(涙)

このような現実が罷り通っているワケで、その中でオールドレンズを愉しむユーザーの方々に対する配慮/気配りとすれば「僅かなオーバーインフ状態で仕上げるのがニッポン人たる思い遣り精神ではないのか?!」です(怒)

・・だからこそ今回の一件は、本当にご依頼者様に対し申し訳ないのです!(涙)

よく自分は所有のマウントアダプタにしか装着しないのだからピタリと無限遠位置を仕上げるのが本当ではないのか?!・・とお叱りを頂戴しますが、はたしてそのご所有マウントアダプタとはどのような仕様の製品なのか、残念ながら当方には確証が持てていないのです(涙)

中にはそのように申し上げると「規格なのだから1つしか存在せず、そう言って自らの不始末を認めずに逃げている」とさらなるお叱りを頂戴します(泣)・・返すコトバがありません(涙)

前述のK&F CONCEPT製「M42→SONY Eマウントアダプタ」だけで捉えても、グリーンの文字で示したように第1世代〜第4世代までの間でこのようなマウント全高の違いが現れているのです (当方の手によるデジタルノギスを使って計測した平均値です)。

ちなみに赤色矢印はオールドレンズ側マウント面の「1㎜弱の突出の有無」を指し示しており、これは例えば当時のFUJICA製オールドレンズのマウント面に突出していた「開放測光用の爪」或いはmamiya製オールドレンズのマウント面に突出している「絞り値伝達ピン」などが干渉して最後までネジ込めなくなるのを避ける目的で配慮した設計を採り入れています。

・・以上大変申し訳御座いませんでした。再整備の上、本日発送させて頂きました(泣)

なお、当方ではK&F CONCEPT製マウントアダプタの製品の中で「オレンジ色の帯を備えているProバージョンの製品」はオーバーホール作業の確認用に使っていません (第3世代まではちゃんと所有しています)。その理由は当方が使用する三脚雲台、或いはクイックリリースクランプに干渉してしまい装着使用できないからです (ユーザー様からのご報告では一部デジカメ一眼/ミラーレス一眼のマウントリリース解除ボタンにも干渉するようです)(泣)

従って当方での確認用マウントアダプタはK&F CONCEPT製の「第2世代まで」なので、オーバーインフ状態に設定してオールドレンズを仕上げるしか手立てが無い次第です。

・・このような低俗な技術スキルレベルなので皆様も重々ご承知おき下さいませ!(泣)