◎ Schneider – Kreuznach Xenon 50mm/f1.9 ▽ silver(exakta)

オーバーホールのために解体した後、組み立てていく工程を掲載しています。

今回はすべてのパーツに解体できなかったため、一部を解体しての作業になりました。

当レンズは大きく4つの部位に分かれます (既に組み上げた状態の写真です)。

実はこのモデルを解体する際に、絞り環を附随させている指標値環 (下の写真で手前右側) を鏡胴から外す方法が最初は判りませんでした (この部分を外さないと鏡筒を抜くことができず作業が先に進みません)。非常に手の込んだ仕組みで組み付けてありました。そもそもシュナイダー製のレンズにはこのようなギミックな構造が採り入れられていることが非常に多いのでいつも困ります。ネジを外す順番を間違えて解体すると・・アッと言う間にバラけてしまうモデルもありました。そのような場合には組み付けの順番も判りません。ひたすらに構造解析に取り組むしかないのです・・もっとメンテナンス性の高い構造にして欲しかったですね・・。

XE5019s(0122)11絞り羽根を鏡筒に組み付けて絞りユニットを完成させます。

絞り羽根は18枚もあり完全な円形絞りになっています。

XE5019s(0122)12次の写真は基台に鏡筒を組み付け絞り連動ユニットをセットしているところです。

XE5019s(0122)13大きなV字型のバネがあります。このV字型のバネが縮んだり開いたりして絞り羽根が閉じたり開いたりの動きになっています。

バネの右側が絞り羽根の1枚に直接刺さっているのがご覧頂けます。このモデルは絞り羽根の1枚に絞り連動機構の仕組みを担わせているワケですね。このような方法はシュナイダーのこの当時のモデルでは多いようですが、絞り羽根に負荷が掛かるのであまり好ましい方法とは言えませんね。

XE5019s(0122)14実際、当レンズの場合は解体した際にこのバネが僅かに変形しており、絞り羽根が大きく曲がりかけていました。この1枚の絞り羽根が曲がったり切れたりしたらもう修復の方法がありません。上の写真のように曲がっていたバネの部分を垂直に戻して絞り羽根が水平を維持できるようにしました。とても微妙な機構部です。

次の写真は光学系前群を組み上げた状態です。

XE5019s(0122)15前玉はキレイなのですが前群の2枚目は劣化しており、コーティングの劣化とコーティングスポットも2点確認できました。

XE5019s(0122)16こちらは光学系後群です。中央に微かな点キズが数点視認できます。

XE5019s(0122)17さらに後群も2枚目はコーティングの劣化が進んでおります。

XE5019s(0122)18

 このような状況なので光学系の状態はあまり良い状態とは言えません。開放での撮影時にはフレアが生じる可能性が高いです。

ここからは組み上げが完成した出品商品の写真になります。

製造番号から1953年の生産個体と推測でき、相当な年数を経ていますがまだまだシッカリとしています。

このモデルからシングルコーティングが施されレンズ銘板にそれを示す「」が誇らしげに刻印されています。

なかなか市場でも出まわらないモデルですね。

XE5019s(0122)1光学系前群2枚目と後群2枚目のコーティングに劣化が目視できコーティングスポットも数点確認できますが、見る角度によっては次の写真のように確認できません。

XE5019s(0122)218枚の絞り羽根もキレイになり確実に機能しています。とてもキレイな円形絞りです。

XE5019s(0122)3ここからは鏡胴の写真です。経年の使用感をほとんど感じさせないとてもキレイな状態を維持している個体です。

XE5019s(0122)4 XE5019s(0122)5 XE5019s(0122)6 XE5019s(0122)7写真の左側に飛び出ているのがシャッターボタンです。そのボタンの回りにリング状に附随しているのが「自動/手動」切り替えの環になります。

押し下げながら回すと「手動」になり絞り羽根の開閉を伴う絞り値の設定が可能になります。もう一度反対方向に回すと解除されて「自動」になってシャッターボタンを押した時だけ同時に設定の絞り値で絞り羽根が閉じるようになっています。

XE5019s(0122)8鏡胴の裏側です。「Made in Germany」が刻印されていますね。

その下のレバーが絞り環になり絞り羽根に閉じる際のチカラを蓄えるチャージレバーを兼ねています。

XE5019s(0122)19光学系後群です。マウントが「exakta」ですから、カメラに装着時は丁度このくらいの位置になります。

XE5019s(0122)9次の写真は当レンズによる最短撮影距離70cm附近での絞り値「F2.8」での実写です。ピントも芯のある端正な写りになり光学系の状態を考慮してもその影響は少ないでしょうか。

XE5019s(0122)10下の写真はワザと開放F値「1.9」で撮影しています。画全体にフレアが発生して甘くなっています。1枚ベールが掛かったような描写に見えているのが光学系の状態が影響しています。

XE5019s(0122)20