◎ Asahi Opt. Co., (旭光学工業) Auto-Takumar 35mm/f3.5(M42)

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オーバーホール/修理ご依頼分ですが、当方の記録用として掲載しており
ヤフオク! 出品商品ではありません (当方の判断で無料掲載しています)。
(オーバーホール/修理ご依頼分の当ブログ掲載は有料です)


今回オーバーホール/修理を承ったモデルは、旭光学工業製準広角レンズ『Auto-Takumar 35mm/f3.5 (M42)』です。ご依頼頂いた際にはモデル銘が不明だった為、概算見積に「構造検討料金」が入っていません。申し訳御座いませんが、今回のモデルは当方での扱いが初めてなのでご請求時に追加させて頂きます。

プリズムをデザインしつつも「Asahi Opt. Co.,」の頭文字を配ったメーカーロゴが非常にセンスよく、何とも誇らしげに見えてしまいます (当時の日本の光学メーカーロゴの中で一番好きです)。

旭光学工業が自社初の一眼レフ (フィルム) カメラとして発売したのは1952年「Asahiflex」になりますが、その時のマウント種別は「M37 (内径:⌀37mm x ピッチ:1mm)」であり、時代としてまだ手動絞り方式を採っていた時期です (右写真)。

その後1957年になるとようやくマウント種別「M42 (プラクチカ・スクリュー)」方式を採用した一眼レフ (フィルム) カメラ「ASAHI PENTAX (通称AP)」を発売します (右写真)。

この時の取扱説明書に記載されているオプション交換レンズ群をチェックすると、手動絞り方式がまだメインの時代です。

その翌年1958年に発売された「ASAHI PENTAX K」の登場によって半自動絞り方式の「Auto-Takumar」がメインになっています。
(右写真)

実際に取扱説明書を見ても多くのオプション交換レンズ群で半自動絞り方式のモデルが載っています。

その後フィルムカメラのモデルは「S2/S3/S1」とモデルチェンジを繰り返しますが、オプション交換レンズ群やセットレンズは「Super-Takumar」銘のモデルへと変遷すると同時に、ついに自動絞り方式を採り入れました。

今回扱うモデルは半自動絞り方式のタイプなので、発売時期は「ASAHI PENTAX K」登場のタイミングになります。
(つまり1958年の発売)

それは当時の取扱説明書をチェックすると、ちゃんとオプション交換レンズ群一覧の中に今回のモデル『Auto-Takumar 35mm/f3.5 (M42)』が入っています。

ちなみに絞り制御方式が従来の「手動絞り」から「半自動絞り方式」へと変わっていますが、絞り環操作すると絞り羽根は閉じていきます。撮影前にチャージレバーを都度操作することで開放状態にセットしてピント合わせを行います。シャッターボタンが押し込まれるとマウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」が押し込まれるので、そのタイミングで瞬時に絞り羽根が設定絞り値まで絞り込まれます。

つまりチャージレバーをいちいち操作して開放状態にセットする作業が撮影の都度発生するのが「半自動絞り方式」です。

光学系は4群5枚のレトロフォーカス型構成ですが、第2群〜第4群まで (右構成図の 部分) は3群4枚のテッサー型構成を基本としています。

つまりテッサー型構成の直前にバックフォーカスを稼ぐ目的で1枚光学硝子レンズを追加した設計概念が「レトロフォーカス型」と言えます。

よくネット上の案内や評価として、この当時のレトロフォーカス型光学系を採用したオールドレンズを指し「オールドレンズらしい甘い描写」と評価されることが多いですが、レトロフォーカスの名称から来る連想から「レトロ (古めかしい)」的な感覚で受け取ってしまうことが
あります。

しかし正しくは「RETRO (後退させる) FOCUS (焦点)」なので古めかしい印象を抱く「レトロ調」とは異なりますね(笑) 従ってまさにバックフォーカスを稼ぐ為に開発された光学系と言えるワケで、実際右構成図を見てもそのとおりの光学設計になっています。

すると今回のモデルに関して言えば、光学系の基本成分にテッサー型が使われているとなればその描写性は自ずと鋭いピント面を期待できる話にもなりますが、実際には直前に配置されている第1群 (前玉) の影響から残存収差の問題もより多く発生するので手放しで期待するワケにもいきません。

実際の光学設計ではそれら残存収差の問題をどのように改善したのかが、以下の実写を見ると分かるような気がします。


上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左側2枚の実写は背景の円形ボケをチェックする為にピックアップしましたが、光学系の基本成分にテッサー型構成を含有しつつもシャボン玉ボケや円形ボケのエッジを維持させるのが難しいようです。被写体の材質感や素材感を写し込む質感表現能力に優れ、且つ空気感や距離感などの表現性にも優れていますが、特に魅力的に見えるのはテッサー型のギラギラした鋭いピント面に終わらずマイルドに収めているのが素晴らしいです。

二段目
左端の実写のとおりダイナミックレンジが相当広いので明暗部の階調表現も滑らかです。驚いたことに標準レンズでもないのに準広角レンズでこれだけの人物撮影をこなしてしまうのがたいしたものです。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。そもそも筐体サイズが大変コンパクトなので、内部構成パーツ点数は少なめですが「半自動絞り方式」を採用している分、内部構造は少々複雑です。

当初バラす前のチェック時点でご依頼内容でもあるカビの発生を光学系内に確認しています。また絞り羽根の戻り、或いはチャージレバーの戻りが共に少々緩慢なように感じます。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルはヘリコイド (オス側) が独立しており別に存在します。

↑上の写真は絞りユニット内で使う「開閉環」ですが、絞り羽根の「開閉キー」が刺さる為の孔 (スリット) が備わっているものの「スプリング用のガイド」まで用意されています。

つまりこの「開閉環」の周囲にスプリングが巻かれて「チャージレバー」を操作することでスプリングが伸びてシャッターボタンが押し込まれた際、マウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」が押し込まれると、そのチャージされたスプリングの (戻る) チカラを利用して絞り羽根が一気に (瞬時に) 設定絞り値まで閉じます。

すると前述のとおり、当初バラす前のチェック時点で絞り羽根の戻りが緩慢だった原因の一つに、この「開閉環の回転/スプリング」が影響していることが予想されます。

ところが、過去メンテナンス時はマウント部内部にグリースや潤滑油を塗ってチャージレバー機構部に対する処置しか施されていませんでした。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑5枚の絞り羽根を組み込んで絞りユニットを完成させます。

左写真は組み込んだ絞りユニットの「開閉環」とその周囲に巻かれている「スプリング」を拡大撮影しています。

ご覧のようにスプリングが内蔵されるので、チャージレバーを操作するとスプリングが伸びきってチカラを蓄えていることになります。

つまり「開閉環の回転」が滑らかでなければ、どんなにマウント部内部に潤滑油を注入しても意味が無いことになります(笑) 過去メンテナンス者はそれに全く気がついていませんね・・。

ちなみに、どうしてこのようにスプリングを絞りユニットの内部に内蔵させる設計を採ってきたのかは、筐体サイズを大型化したくなかったことが最も大きな理由ではないかと推測しています。

それは例えば標準レンズの「Auto-Takumar 55mm/f1.8 zebra (M42)」などは、チャージレバー用のスプリングは鏡筒の外回りにグルッと巻かれる設計を採っていますから、今回の準広角レンズでは光学系がレトロフォーカス型構成で奥行きが必要になる為に、スプリングを絞りユニット内に内蔵させるしか方法が無かったように考えられます。

逆に言えば筐体サイズを大型化しても良ければ、絞りユニット内部にスプリングを内蔵させる必要性も発生しなかったと考えられます。従ってこのような部分にも旭光学工業の設計時の戦略 (製品戦略) が垣間見え (コンパクトな筐体サイズで製品化したかったという拘り)、なかなかロマンを感じてしまいます。

オールドレンズ・・奥が深くてオモシロイですね(笑)

↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。上の写真上側が後玉側方向になり下側が前玉側です。鏡筒からは「開閉アーム/操作アーム」がそれぞれ飛び出ています。これらのアームがマウント部内部で連係することで「チャージレバー」によるスプリングのチカラ活用が行われます。

ちなみに、この「アームの長さ」がそっくりそのまま鏡筒の繰り出し量にもイコールの話です。このモデルは距離環を回すとたいして回らないうちに最短撮影距離:45cmに到達するのですが、ヘリコイドのネジ山が急勾配で切削されている関係から、これだけの鏡筒繰り出し量を備えているとも言えます。

↑鏡筒にヘリコイド (オス側) をセットします。

↑距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。

↑真鍮 (黄銅) 製のヘリコイド (メス側) を、無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑やはりヘリコイド (オス側) を無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で5箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

このヘリコイド (オスメス) の制御方法がこのモデルのメンテナンスではハードルになります。つまり一般的なオールドレンズのヘリコイド (オスメス) 制御方法とは逆で「ヘリコイドが繰り出されると鏡筒は格納されている状態になる」点です。従って「原理原則」を理解していなければ、ヘリコイドが最も繰り出されている状態の「どの位置が無限遠位置なのか」が分かりません。逆に言えば、ヘリコイドが収納状態にある時、いったいどの位置が最短撮影距離なのかも問題になります。

左写真はひっくり返して反対側 (後玉側) を撮影しましたが「直進キー」が両サイドにセットされることで、距離環を回したチカラが伝達されて鏡筒の繰り出し操作に繋がる仕組みです。

直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目

↑こちらはマウント部内部の写真ですが、既に当方による「磨き研磨」が終わった状態で撮影しています。当初バラした直後はこの内部にまで過去メンテナンス時に「白色系グリース」或いは「潤滑油」が注入されていたようで、一部構成パーツに「赤サビ」が生じていました。

必然的にそれら構成パーツは酸化/腐食/錆びが進行しているので抵抗/負荷/摩擦の増大に至っており、それらが影響して最終的な絞り羽根の戻りが緩慢な状況に陥っていました。

↑取り外していた各構成パーツも個別に「磨き研磨」を施しセットします。「チャージレバー」を操作すると鏡筒から飛び出ている「操作アーム」が上の写真の「ロックカム」に引っ掛かりロックされるので「開放状態を維持」できる仕組みです。

マウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」が押し込まれると「ロックカム」が解除されるので、鏡筒から飛び出ている「開閉アーム」が勢い良く戻って瞬時に設定絞り値まで絞り羽根が閉じます。

従って、このマウント部内部にグリースや潤滑油を注入しても、そもそも鏡筒内絞りユニットの「開閉環」が経年の酸化/腐食/錆びの影響で抵抗/負荷/摩擦が増大していたとすれば意味が無いことになります。

つまり「観察と考察」により不具合が生じている現象の根本的な因果関係を見極めて、対策を講じることで初めて適切な処置に至ります。

ちなみに「絞り連動ピン」の箇所をご覧頂くと分かりますが「板バネ」で押さえ込んでいる方式の反発力です。カメラのシャッターボタン押し込みでこの「絞り連動ピン」が押し込まれた後、再びマウント面から飛び出るチカラを与えているのが「板バネ」と言う意味です。

この「板バネ」による反発力で「絞り連動ピン」を押し出す考え方は、他の全ての「Auto-Takumarシリーズ」で共通の設計概念です。

しかし問題になるのはこの「板バネ」の話ではなく、最近の「マウントアダプタ経由の装着時」にマウントアダプタとの相性問題を引き起こす話のほうが重要です。

左写真は既にオーバーホールが終わった状態の今回の個体を撮影していますが、マウント面の「絞り連動ピン」を拡大撮影しています。

するとM42マウントのネジ込み部を含めた「絞り連動ピン」の突出量は、実測ですが「6.61mm」になります (グリーンの矢印)。

この時マウントアダプタ側の「ピン押し底面の深さが問題になる」ことを「マウントアダプタとの相性問題」として捉えている話をしています。

この点について、いったいどれだけの方々が気がついていらっしゃるでしょうか?

左写真は、今回一緒に同梱頂いたK&F CONCEPT製マウントアダプタ (中国製) の「旧型モデル」です。

オールドレンズ側のマウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」を、オールドレンズをネジ込んで装着していった時に強制的に押し込んでしまう「ピン押し底面」をネジ部の内側に備えています。

この「ピン押し底面の深さ」が問題になるワケですね。実測すると「6.01mm」になるので、単純計算で今回のオールドレンズを装着した時「+0.6mm」分余計に押し込まれることになります。

するとその「+0.6mm」分余計に押し込まれてしまった「絞り連動ピン」の頭部分が内部で突き当たる場所があります。

それを指し示したのが左写真です。そうですね、ヘリコイド (オス側) の縁部分にちょうど「絞り連動ピンの頭 (板バネで押されている箇所)」が突き当たることを意味します (グリーンの矢印)。

何を言いたいのか?

今までに数多く「Auto-Takumarシリーズ」をオーバーホールしてきましたが、誰一人この問題について気がついていらっしゃる方がいらっしゃいませんでした。
(オールドレンズ単体なら無限遠位置まで同じトルクで回せるのにマウントアダプタに装着するとトルクムラが出る等々・・)

もっと言うなら、ネット上のメンテナンス解説サイトでこの点について触れている整備者が
一人も居ません
(笑)

今回のモデル『Auto-Takumar 35mm/f3.5 (M42)』は問題になりませんでしたが、例えば標準レンズの「Auto-Takumar 55mm/f1.8 zebra」或いはメーカーが異なりますがYASHICA製「AUTO YASHINON 5cm/f2 (M42)」など、凡そこの当時の半自動絞り方式のモデルで同様の問題が発生します。

最悪の場合、最後までネジ込めないマウントアダプタがありますし (ピン押し底面の深さが6mm以下のタイプ)、もっと言えば距離環を回した時、無限遠位置付近で急に重いトルクに
至ったりすることがあります (オールドレンズ内部でヘリコイドの縁に絞り連動ピンの頭が
突き当たってしまうから重くなる)。

但し、これはあくまでも「マウントアダプタとの相性問題」であり、フィルムカメラに装着して使う場合には問題にはなりません。

当方はオーバーホールする工程をこのようにブログ解説していますが、単なる整備の自慢話としてこのブログに載せているのではなく (そのようなサイトが非常に多いですが)(笑)、肝心なそのオールドレンズを使う際の問題点や、今回のような「マウントアダプタとの相性問題」を知らしめることこそ、本当は重要なのではないでしょうか?

オールドレンズ単体で問題が無いのにマウントアダプタ経由装着すると不具合が発生するのは何かしら因果関係があるハズと考えないのが逆にオカシイ、と当方は考えますね・・。

↑完成したマウント部を基台にセットします。もちろんこの時に鏡筒から飛び出ている「アーム」との連係も行います。

↑ひっくり返して「絞り環」をセットします。

↑指標値環をセットします。

↑距離環を本締めで固定します。このモデルには「無限遠位置微調整機能」が設計されていないので、ヘリコイド (オスメス) の組み込み位置をミスると無限遠合焦しません (つまり後から無限遠位置を微調整することが一切できない)。

この後は光学系前後群を組み込んでから無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

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ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑今回初めてこのモデル『Auto-Takumar 35mm/f3.5 (M42)』を扱いましたが、筐体サイズがとてもコンパクトである分、同じ「Auto-Takumarシリーズ」の中でもさらに内部構造が複雑で、特に「チャージレバー機構部」の操作性改善に難儀しました。逆に言うと、過去に施されてしまったグリースに頼った整備のせいで、余計に経年劣化が進行し酸化/腐食/錆びによって抵抗/負荷/摩擦が増大する一因に至っていたワケです。

観察と考察」もできていなければ「原理原則」すら全く理解できていないワケですが、しかしこのモデルを一度バラして組み上げられるだけの技術スキルを有するのでシロウト整備ではないとも考えられます。

何とも悩ましい話です・・(笑)

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。

↑光学系後群 (つまり後玉) 側も透明度が高くLED光照射でも極薄いクモリが皆無です。ご依頼内容であった「カビ」は完全除去できていますが、一部はカビではなく点キズでしたので、経年によるCO2溶解に伴う微細な点状キズです (パッと見で微細な塵/埃に見えてしまう)。

↑5枚の絞り羽根もキレイになり「チャージレバー」や絞り環共々確実な操作性に仕上がっています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正五角形を維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」の「粘性中程度軽め」を使い分けて塗っています。距離環を回すトルクは「普通」人により「重め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」なトルク感として仕上がっています。

特にこのモデルは「ピントの山が分かり辛い」のでピント合わせ時の微動には神経を遣い軽い操作性だけで確実に楽にピント合わせできるよう仕上げています。

↑完璧なオーバーホールが終わっています。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離45cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります (簡易検査具による光学系検査を実施済で偏心まで含め光軸確認は適正/正常)。

↑絞り環を回して設定絞り値「f5.6」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f8」で撮りました。

↑f値は「f11」に変わっています。

↑f値「f16」になりました。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。「回折現象」の影響が現れています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

大変長い期間に渡りお待たせし続けてしまい本当に申し訳御座いません。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。