◎ FUJI PHOTO FILM CO. (富士フイルム) FUJINON L 5cm/f2《後期型》(L39)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、国産の
富士フイルム標準レンズ・・・・、
FUJINON 5cm/f2《後期型》(L39)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Украине!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体は当方がオーバーホール作業を始めた10年前からの累計で捉えても、オーバーホール/修理ご依頼分も含め今までに扱いが皆無で今回初めての扱いたる1本目と言う状況です。特に敬遠していたワケでもなくいつも狙っていたのですがなかなか光学系の状態が良い個体に巡り逢えず (調達に際し確信を得られず) とうとう10年が経ってしまいました。

それだけ意気込んで今回やっとの事で調達しましたが肝心な光学系は前玉外周部分に経年相応なカビ除去痕に伴う極薄いクモリが残り、さらに後玉は同じカビ除去痕でも「微細な点キズ」様に多く残る状況でなかなか難しいところです。それでも救いだったのはこれらの要素が撮影する写真に影響を及ぼすレベルに至っていなかった点でラッキ〜だったと言うのが正直なところです (しかも繁殖していたカビは全て完全除去できてしまったのがむしろ素晴らしいくらいです)。

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今回扱うFUJINON 5cm/f2《後期型》(L39)』は当時の富士フイルムから発売されたフィルムカメラ向けのセットレンズとして登場せずにどう言うワケか別の光学メーカーが発売したバルナック版ライカコピーモデル「Leotaxシリーズ」向けに供給された存在です。
(右写真はLeotax TVモデルに装着の前期型タイプ)

かつて東京都葛飾区に存在していたカメラメーカー「昭和光学精機 (1939年創設)」が発売していた「Leotaxシリーズ」の中で前述の「Leotax T」が登場した1955年時点にようやく富士フイルムから供給されたモデルがFUJINON 5cm/f2 (L39)』と『FUJINON 5cm/f2.8 (L39)』の2種類です (その前のLeotaxシリーズ発売時点では 富士フイルムからの供給がまだスタートしていない)。

《モデルバリエーション》
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

前期型1955年発売
光学系:5群6枚拡張クセノター型構成
絞り羽根枚数:10枚
最短撮影距離:1m
絞り値:f2〜f22
距離環ツマミ:無し
指標値刻印 (並び順):2、4、8、11、16、22

後期型1957年発売 (?)
光学系:5群6枚拡張クセノター型構成
絞り羽根枚数:10枚
最短撮影距離:1m
絞り値:f2〜f22
距離環ツマミ:あり
指標値刻印 (並び順):25.6111622

ちなみにこのモデルバリエーションたる「前期型/後期型」の判別には距離環のツマミ有無の相違と合わせて「指標値環の刻印状況」もチェックする必要があります。

《前期型/後期型切り替わりのタイミング》
※ネット上でチェックできるサンプル個体数48本でチェック

「前期型」製造番号402807・・ツマミ無し/指標値刻印2,4,8・・
「前期型」
製造番号:403520・・ツマミ無し/指標値刻印2,4,8・・
「後期型」製造番号:403207・・ツマミあり/指標値刻印2,5.6,11・・
「後期型」製造番号:404105・・ツマミあり/指標値刻印2,5.6,11・・

・・とこんな結果に至りました。すると特にのポジショニングで刻印されている製造番号に対して「前期型/後期型」の要素が完璧に反転してしまっている事実を突き止めました。

純粋に考えれば300本近くの出荷に対して「前期型/後期型」要素が反転してしまったとも受け取られかねず「???」です。この事実に関して一つだけ言えるのは「製造番号と指標値刻印とは鏡胴の前後での関係性」である事から下手すると「ニコイチ」の懸念も捨てきれませんが仮にそのように想定したとしても「ワザワザ鏡胴後部の指標値環側/マウント部側まで同時に 転用する気持ちになるのか?」と言う疑いが強いです。

つまりその作業を執り行った整備者が既にこれら「前期型/後期型」の要素に気づいていて認知しており (ツマミの違いだけではない話) 合わせて「前期型/後期型共に内部設計まで異なる」事を知っている必要があります。だからこそ製造番号刻印がある鏡胴「前部」だけをニコイチせずに鏡胴「後部」のマウント側まで含め代替する、要はまるで別モノにニコイチする必要があったと言えます。

するとこのモデルの内部構造を設計面から捉えた時、とても「前期型/後期型」の相違はそう 簡単には見分けがつかず、おそらくヘリコイド (オスメス) の繰り出し量をちゃんと比較して 自らの仮説を基に (要はネジ山数の相違) ちゃんと検証を試みた整備者である前提が必須になります。ネット上にこの話について疑いを抱く整備者の話が一切無いので今のところ答えがまだありません。

少なくとも当方の推察では「前期型/後期型」の相違に内部の設計まで関わっている可能性が高いとみており、すると下手すればそこに光学系の再設計まで採られていた可能性が突如として現れてきました!(驚)

これは鏡胴「後部」側の指標値刻印の長さ (f2f22) が違うにもかかわらず鏡胴「前部」の 絞り環側基準マーカー「」がちゃんと鏡胴「後部」側刻印指標値の向かって右側f22の位置で固定されている事実を基に「要は前期型のほうが僅かに位置がより指標値f2から離れている/右方向に離れている」ワケで、この違いはそっくりそのままヘリコイド (オスメス) のネジ山数の違いに影響するとみています。

つまり鏡胴「後部」側刻印指標値の「前期型2,4,8,11,16,22」に対し「後期型2,8,11,16,
22
」とその刻印の幅に長い/短いがあるにも関わらず同じ右側「f22」辺りで鏡胴「前部」の 絞り環基準「」マーカー位置が固定されている点に於いて絞り羽根の開閉角度が変わるので必然的に内部設計が違うとみた次第です。

然しもしもヘリコイド (オスメス) の勾配角度までイジッたのならネジ山数の増減が事実として顕在していても結果的に同一の結像に至るので光学系は再設計されなかったとも推測できそうです。

・・いずれ「前期型」タイプも扱ってキッチリ答えを見出したいと思います。
・・オールドレンズはロマン多すぎて本当に大好きです (メッチャ愉しい)!

最後に一つだけ・・今回ネット上のサンプル個体数をチェックしたところ「製造番号305099」が最後だったので (先頭は300162) 凡そ5,000本の製産数とも受け取れますが確定要素では決してありません。然しそうだとしても明らかに「 市場流通数が格別に少ないモデル」なのは間違いなさそうです。

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↑上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。

一段目
左端から順にシャボン玉ボケが破綻し溶けていく中で円形ボケ〜リングボケ〜玉ボケ〜そして単なる円形ボケを経てから今度は収差の影響を受け始めて乱れていく様子をなるべく集めて いますが正直実写が少ないです。シャボン玉ボケのエッジが明確に表出でき、且つとても細いエッジが真円で残せているので決して苦手ではないと思うのですが、以外にも円形ボケの実写が少なすぎの印象です。

いわゆる巷で「玉ねぎボケ」と呼ばれる円形ボケの中心部に特に濃い芯のように感じる写り具合 (二重の円形ボケ) には至らないので円形ボケの素性としてはとても素直な部類なのにどうして皆さん撮らないのでしょうか。

最後の右端の実写はある意味このモデルの特徴的な収差ボケの一つでメッキリ二線ボケ

【当方で表現してる円形ボケ】※順に滲んで溶けて消えていく様子です。
 シャボン玉ボケ
真円で明確なエッジが細く繊細なまさにシャボン玉のような美しいボケ方
 リングボケ
ほぼ真円に近い円形状でエッジが明確ながらも太目で輪郭が誇張的なボケ方
 玉ボケ
円形状のボケが均等に中心部まで滲んでしまいノッペリしたボケ方
円形ボケ
その他歪んだりエッジが均一ではない、或いは一部が消えていく途中のボケ方
(円形状ボケの総称の意味もある)

二段目
まずはこの弾の特徴が素晴らしいのです。左端の実写は「赤色の発色性」をチェックする目的でピックアップしていますがその前提になるのが周りに生い茂っている植物の色合いです。相応に鮮やかで高いコントラストと共にシッカリ写っている印象を受けるので、例えば右側の「鮮やかな赤色」だけが写っているならいつもの元気の良いフジノンレンズの発色性としてその特徴のように受け取りがちですが、実は左側に写っている消火栓の渋い赤色を観て始めて唸りました。右側の「鮮やかな赤色」がどれだけ色飽和に近いながらもちゃんとカラーリングを残せているのだと納得できたからです。つまり決していわゆる元気の良いフジノンの発色性ではなく「本当にこんな鮮やかに色合いの被写体」である事を如実に現している実写ではないかと思いました。

さらに2枚目のバイクの実写がまた凄いです。この金属質の違いをキッチリ写真に残せて、しかもちゃんと表現できてしまっている事に凄みを感じました。それは金属質の表現性と共にそのメッキ加工の違いを写し込み、プラスしてその一方でブル〜の色合いをその鈍い光沢感と共に表現してしまう処の凄みなのです。

右側2枚の白黒写真は両方ともやはり被写体の素材感や材質感を写し込む質感表現能力の高さを示す写真との思いからピックアップしています。床材の大理石の光沢感やその一方でガラスで囲った部屋である事の表現性、さらにその横にある水面の輝きなど素晴らしい実写です。右端の金属質の違いをちゃんと写し込んでいる様も素晴らしい印象を受けました。単にノッペリした平面的な光沢感に堕ちずに鈍い金属質の、さらにその反射レベルまでの超せているのが凄いのです。

三段目
そしてこの段の写真を見つけてハッキリ言って当方の琴線に触れる10本のオールドレンズの中にランクインしてしまいました(笑) どうやら当方は「50mm/f2」のオールドレンズに弱いようです。例えばCarl Zeiss製「CONTAREX Planar 50mm/f2 (silver)」や、Schneider-Kreuznach製「Xenon 50mm/f2」に引き続き今回のこのモデル富士フイルム製FUJINON 5cm/f2《後期型》(L39)』なのでそのように受け取らざるを得ません。

これらお気にのオールドレンズ達の中でも特大な第1群 (前玉) を誇るオールドレンズが今回のモデルでそのサイズは「第1群⌀ 34.49mm」と他の2本をダントツに引き離して最大級です。ちなみにCarl Zeiss製「CONTAREX Planar 50mm/f2 (silver):第1群 ⌀29.98mm」で、Schneider-Kreuznach製「Xenon 50mm/f2第1群 ⌀ 26.49mm」、そしてついでに4本目のお気にとしてCarl Zeiss製「凹 Ultron 50mm/f1.8《Oberkochen》(M42)第1群 ⌀ 40.44mm」と言う実測値ですから如何に大きな前玉なのかが分かると思います。

するとマウント規格がネジ込み式の「L39マウント規格」となれば特大の筐体サイズをできるだけ抑える傾向なのがその操作性からも求められるので第1群 (前玉) をここまで大型化してきた場合に相当入射光の屈折に苦心せざるを得ないのがド素人的にも理解できそうです。

そんな事柄も後で構成図をご紹介するのでチェックしてみるのもまた愛着が湧く一つの要素に至るかも知れません。

とにかくこの三段目の実写のせいで心の中にシッカリ焼き付けられてしまいました。

一番左端の部屋の中の雰囲気まで写し込んでしまった午後の柔らかな陽射しのひとときと共に木製ブラインドや布製ソファに置かれているクッション、或いはスタンドのフードなどそれら繊維質の違いを柔らかさと陽射しとの根治の中にここまで雰囲気を漂わせて残せる要素が手放しで当方の琴線に触れまくりです(笑)

電球の実写2枚も然り。金属質やガラス質に中のフィレメントの違和感ない鋭さなど恐れ入ってしまいます。そして最後の右端の1枚が決定打でした。これをここまでグラデーションを残しつつ奥行き感まで示しながら然し上空を飛び回る鳥の動きまで見てしまいそうなリアルさ、そして何よりも水面の表現性に平面的な印象に堕ちない素晴らしさを如実に感じました。

まさにスタンディングオベイション状態です・・(笑)

四段目
人物の表現性と共にカラーバランスとグレースケールとの対比でピックアップしています。3枚目は単に懐かしいからピックアップしただけですが(笑)、香港の九龍サイドから写した香港島のスターフェリー発着桟橋付近の写真です。当方が住んでいた頃にはこんな高層ビルなど1本しか建っていなかったので (貿易センタービル/しかもまだ建設中だった頃) このような風景にはなりませんし、そもそも豪華客船など発着していませんでした(笑) 住んでいたのはこの写真のもっと左側に今もある競馬場のすぐ後です (写真には写らない地域)。九龍サイドは大陸側なのでもちろん今でこそ中国大陸ですが当時は国境線に鉄条網が張り巡らされ中国人民軍の兵士がたむろしていました。何しろ赤茶けた色合いと鮮やかなオレンジ色が混ざる砂利砂でお団子を握ろうにも固まらずすぐにバラバラと落ちてしまうくらいの砂と言うより砂利です。従って香港に地震が起きたら間違いなく全ての高層ビルが倒壊する悲惨な結果になると容易に推測できます (おそらく耐震基準などいい加減)。そもそも中国式の足場ですしド素人が観ていても手抜きが分かるくらいです (コンクリ流し込むのに何でゴミが混ざっているのか???だった)(笑)

・・懐かしい。

光学系は5群6枚の拡張クセノター型で、右構成図は今現在ネット上で確認できる構成図をトレースしたものですが 部分で着色した要素がクセノター型の基本成分になります。

すると前述の特大サイズである第1群 (前玉) からの入射光を屈折させる点を考えると光学知識の無い当方でも何となく薄すぎるように見えますがよく分かりませんでした。

実際に今回のオーバーホールに際し完全解体した光学系の各群を取り出し清掃する時に当方の手でデジタルノギスを使って逐一計測して トレースした構成図が右図です。

するとやはり第1群 (前玉) の厚みが違っており且つどう考えても第2群の貼り合わせレンズは前述の両凸レンズではなく凸平レンズにならないと貼り合わせる次の凹メニスカスに接着できません。しかもこの薄さなのでもしも仮にこの貼り合わせレンズにバルサム切れが起きていた場合 (つまりクモリが生じていた場合) 一旦剥がして再接着するなどおそらく破壊を招く懸念が高く怖くて手を出せません。

やはり基本成分は 部分着色のクセノター型ですがムリなく入射光が料理されて第5群の後玉に集束していく様が納得できます。特に後玉は前述の構成図では凸メニスカス (裏面側が極僅かに凹んでいる中心部の厚みがコバ端よりも大きいメニスカスを指す) ですが現物は平凸レンズだったのでこれでようやく入射光の屈折が納得できた感じです。なお後玉でさえ特大サイズで「第5群⌀ 28.5mm」ですから他の2本のまるで前玉レベルです(笑)

おそらくネット上に載っている前述の構成図はレンジファインダーカメラの固定式タイプから持ってきた構成図ではないかとみています (もしかしたらバックフォーカス短い?) が、もしかすると前述のとおり「前期型/後期型」の相違にヘリコイド (オスメス) のネジ山数の違いまで顕在すれば当然ながら光学系を再設計していた懸念も残るので未だ検証の必要があります!

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。内部構造からみれば至って簡素なレベルで構成パーツ点数も少なく簡単に組み上げられそうに見えますが、実は「空転ヘリコイド」を内包するのでこのモデルの距離環を回すトルク感は相当レベル高いです。さらに当然ながらネジ込み式の「L39マウント規格」なので距離計連動ヘリコイドも存在しヘリコイド駆動の概念をちゃんと知ってる人でないと適切な位置でセットできません。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。至って普通の鏡筒ですが、この後に出て くる真鍮 (黄銅) 製のズッシリ重たいフィルター枠との関係性がちゃんと理解できないと適切な絞り環操作にセットできません。実際今回の個体は当初バラす前の時点でほとんどクリック感を感じない「微かに鋼球ボールが当たっている感触程度」だったので、指でちゃんとクリック感を感じつつ絞り環操作している感じには/印象には程遠いという状況でした。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑当初バラす前の時点でパッと見で絞り羽根に油じみが起きていないように見えましたが実際バラすと別の問題のほうが気になりました。

そもそもどうして「絞り羽根の油染み」を気にするべきなのか問うと、実はとても多くの人が正しい答えを言えません。絞り羽根の油染みにより絞り環操作に支障を来す、或いは絞り羽根が適切に閉じない/完全開放のままなど挙げる人が多いですが、正しい答えは「絞り羽根のキーを守り適切な絞り羽根開閉を維持させる延命処置を施す必要があるから」が正解です。

例えば絞り羽根の油染みがどうして起きるのかと言えばそれはオールドレンズ内部に塗布されているグリースの経年による揮発油成分が鏡筒内部に侵入し絞りユニットに附着しているからこそ絞り羽根が油染みしているワケです。

特に絞り羽根のほぼ99%は金属製なので揮発油成分が附着してヒタヒタ状態だとしてもそれで一体何が起きるのですか???

・・と問うと、これも多くの人が正しく答えられません。

中にはその油じみが進行して/放置しすぎて油成分だけが飛んでしまい「粘性を帯びてくる」のを問題と指摘する人が居ますが、ではどうしてその「粘性」が問題なのですか???

するとその粘性により絞り羽根の開閉が適切でなくなると言いますが、数多くの絞り羽根が 粘性を帯びる事により絞り環操作が重くなるなど変化し「操作性に問題が起きる」との答えに至ります。或いはもしも自動絞り方式のオールドレンズなら最悪「絞り羽根が閉じずに完全 開放のままになる」と言います。

要は粘性を帯びると絞り環の操作性や絞り羽根開閉動作に支障を来すとの認識ですが、実は それらの話は全て「現象を述べているだけ」にすぎす本質を捉えていません。

・・以下に絞り羽根が油染みしていくプロセスを示します。

オールドレンズ内部に塗布されたグリースの経年劣化により揮発油成分が廻り始める。
その一部が鏡筒内に侵入する。
さらに絞りユニットに侵入する。
絞り羽根に油じみが起きる (絞り羽根が濡れているように見える)。
互いの絞り羽根に「界面原理」が生ずる。
オールドレンズ内部に侵入している水分が引き留められる。
水分の影響で酸化/腐食/錆びが絞り羽根に生ずる。
互いの絞り羽根に抵抗/負荷/摩擦が増大し絞り羽根両端にチカラが及ぶ。
絞り羽根の膨張が始まる。
絞り羽根のキーが垂直を維持できなくなり絞り羽根の開閉幅が狂い始める。
キーの周囲に酸化/腐食/錆び集中しキー脱落が起きる。
絞り羽根の開閉が機能しなくなり製品寿命を迎える。

・・こんな感じです。すると皆さんが指摘される「油染みで粘性を帯びる」のは絞り羽根同士が互いにくっついて引き合うのでその時のチカラが「粘性」として感じられ (実際揮発油成分が粘っている場合もある) 指摘する話ですが、この時既に「界面原理」が働いており互いに 引き合うチカラと共に揮発油成分の境界面に空気中の水分が引き留められます。するとそれに反応して金属材である絞り羽根に酸化/腐食/錆びが起きてさらに抵抗/負荷/摩擦が増大して いきます。

結果余計に互いの絞り羽根がくっついて絞り環操作した時にその引き合うチカラから絞り羽根の両端にチカラが集中して「絞り羽根が内部で膨れあがる膨張が起きる」ので本来製産時点に垂直状にプレッシングしていた「絞り羽根のキー」が斜め状に傾きます。

この結果「絞り羽根が閉じる際、歪なカタチに開口部が見える」そのプロセスと原理です。

最終的に絞り羽根に起きた油染みはその結末として「キーの脱落」に至るので油染みが引き起こした酸化/腐食/錆びによりキーが変形して、且つサビがプレッシングの穴の周りに集中するので穴の強度が足りなくなって/広がってしまい「キーが抜けて外れてしまう」次第です。

従って皆さんが指摘される「油染みで粘ってきて操作性が悪くなり適切に閉じない」は途中 経過の現象を述べているに過ぎず、その本質は「製品寿命が短くなる」と言えるのです。

すると多くの絞り羽根が金属材である以上その経年による酸化/腐食/錆びが起きると元の状態に戻せずどんなに絞り羽根を清掃してもその耐用年数は戻りません。

・・だからこそ絞り羽根の油染み放置はダメだと指摘しています。

よくヤフオク! の出品ページを読んでいても「油染みにより操作性に影響はありません」と謳っている事がありますが、全く以て本質を捉えておらず何の弁明にもなっていませんね(笑)

もっと言うなら絞り羽根の擦れ跡の状況を指して「絞り羽根の擦れも少なくキレイ」などと まるでメリットの如く謳っている出品者が居ますがバカ丸出しです!(笑)

従って今回扱った個体に生じていた「絞り羽根の赤サビは徹底的に落とした」次第です。

↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。写真上方向が前玉側になります。すると鏡筒の側面に開口部のスリットがあってそこに「開閉環」が見えています (赤色矢印)。この開閉環と絞り環が連結する事で絞り環操作した時の設定絞り値に従い絞り羽根の開閉動作が伝達される仕組みです。

一方グリーンの矢印で指し示した箇所にイモネジが刺さっていますがその周囲を研磨した痕が残っています。これは研磨後の面取りまで行われていないので過去メンテナンス時に整備者が研磨したのが明白です (つまり製産時点の所為ではない)。

するとここのイモネジがいったい何の目的で使われるのかが大きな問題になってきます。実は当初バラした時、光学系後群のネジ込みネジ山に「1箇所イモネジ用の下穴がちゃんと用意されていて然しもう1箇所そのだいぶ手前の位置に締め付け痕が残っていた」のを確認しています。さらに当初バラす前の実写確認時点でこんなに甘い印象のピントのピークなのかと思いましたがその理由が分かりました。

要は過去メンテナンス時にこのイモネジの位置まで光学系後群をネジ込まずにその手前位置でイモネジを締め付け固定したものの「イモネジが僅かに飛び出ていた」為に鏡筒がフィルター枠の内側に格納できなかったのです。

そこで飛び出ていたイモネジをムリヤリ削って鏡筒が格納できるよう「ごまかした」ワケで、まさにその証拠が上の写真グリーンの矢印で指し示した「研磨痕」だった次第です。

当然ながら光学系前群と後群との互いの光路長がズレて僅かに増大してしまったので結像が 甘くなりピントのピークがそのような画に至ったと容易に推察できます。このようにちゃんと逐一「観察と考察」する事で残っている2箇所のイモネジのネジ込み位置 (1箇所はちゃんと切削された下穴で深くもう1箇所は浅いいわゆるネジ込んだ時に残ったネジ山のキズ痕) に対する「正しい製産時点の下穴を判定できる」ワケで、だからこそ出品に際しちゃんと鋭いピント面に戻ったと断言できているワケです。決してテキト〜に出品に際し謳い文句のように述べている話ではありません!

・・いったいこう言う事柄の何処に当方が批判される要素があるのか???

逆に指摘するならいったいどれだけの整備者が (プロだろうが何だろうが関係なく) ここまで ちゃんと証拠を掲示しつつ、さらにその根拠まで解説して適切なオーバーホール工程を経て いる事を示しているのでしょうか???

たいていの整備者はここまで詳細を示す事を面倒だと考えて簡単に済ませています。超長文で誰も読まない、むしろサクッと説明されているほうが信憑性があるなど、はたしてその信憑性はどこから示されているのかと指摘したいですね(笑) オールドレンズをオーバーホールする時「本来あるべき姿」まで戻して組み上げるとはそういう難しさを伴うのであってただ単にバラしてグリースを入れ替えただけで整備したつもりになっている整備など「当方からみれば整備とはとても表現できない低俗なレベル」なのだとここでハッキリ宣言させて頂きます!

・・そんなのがフツ〜なのです!(笑)

完全解体にこだわって各部位から細かい構成パーツ、ひいてはイモネジや締付ネジまで含め全ての要素について逐一チェックしていく事で過去メンテナンス時の「ごまかしの整備」を洗い出し本来あるべき製産時点の組み立て工程に「可能な限り近づけて仕上げている」のが当方のポリシ〜であり、当然ながら相応の経年を経ている以上製産時点と同一の状態に戻るワケがありません!

・・それについて何人からも批判される謂れは100%ありません!!!
・・侮辱するのもたいがいにしてもらいたいです!!!
・・営業に支障を来した以上刑事罰/民事罰共にキッチリ訴訟で結果を出します!!!

取り敢えず訴訟の対象者は3人居る事を確認済なので警察署への被害届受理と共にその3人に係るIPアドレス請求に際し裁判所命令を執りつつ具体的な訴訟へと臨む次第です。その過程で刑事罰 (営業妨害) のみならず民事罰 (侮辱罪/慰謝料請求など複数) にも視野を広げ相談していく予定です。

左写真はその代表的なタイプのイモネジ写真です。

イモネジ
ネジ頭が存在せずネジ部にいきなりマイスの切り込みが入っているネジ種

↑この時代の富士フイルム製FUJINONモデルとしても当時の多くのオールドレンズとしても特異な設計を採っており真鍮 (黄銅) 製のズッシリと重いフィルター枠に対してどのように鏡筒がセットされるのか「設計者の意図」を汲んでいない整備者がネット上にも居ましたが(笑)、どうしてそんな設計で製品化してきたのかを全く捉えていません。

実際今回の個体も過去メンテナンス時に整備者の手によっておそらくバラす際に切削など処置が施されており、前述の鏡筒側面のイモネジの箇所に施されていた研磨痕含め本来必要のない所為が執られています。

さらに上の写真でグリーンの矢印で指し示したように「平滑面」の処置が必要なのにこの箇所にはグリースを塗ったくって済ませている始末で全く以て「不適切な整備」だったのがバラした直後の状況です。

従ってバラして溶剤で洗浄した後にここの「平滑面」は錆びまくりの状態でした。当方にて「磨き研磨」を施し再び平滑性を取り戻しました。

↑実際に真鍮 (黄銅) 製のフィルター枠内部に鏡筒をセットしたところですが「現状あくまでも仮の状態」です。

そして上の写真で解説しているのがまさに冒頭でさんざん述べてきた「このモデルの前期型/ 後期型でもしかしたら光学設計が違うかも知れない」との根拠を示しています。

赤色矢印で指し示しているのは一つが絞り環用基準「」マーカーです。またこのフィルター枠側面にまで鏡筒と同一位置で「開口部/スリット/切り欠き」が備わりその端部分と「」との距離をグリーンのラインで示しています。

これこそがまさに冒頭の「前期型/後期型で光学系の設計が異なるかも知れない」の根拠で あり、鏡胴「後部」のマウント部直前に刻印されている指標値の中で「右側に位置するf22」の箇所に合わせてこのフィルター枠の基準「」マーカーが来ているとなれば上のグリーンの矢印で指し示した距離が変化している可能性があるのです。

すると自動的に「絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量)」が「前期型/後期型で異なる」可能性が表れてしまいチェックする必要があると冒頭で解説している次第です。

このように「観察と考察」をちゃんと行う事でオールドレンズの隠れた背景などまで見えてくるので意外とこのようなオーバーホール工程での解説は単に内部構造を知るのみに限らず重要だったりしますから、当方が自ら技術スキルに自信がないから人気を得る為にこのようなオーバーホール工程の解説をしているなどとの指摘をしているSNSの批判は本当にどんだけ頭が 悪いヤツなのかと笑ってしまいました(笑)

当方のこのブログに於けるこのようなオーバーホール工程の解説は単に内部構造を知るだけに限らずそのオールドレンズの背景などまで含めいろいろな要素を探っていく一助にもなり得るとの判断から行っていることで、実際今回の個体は上の写真の解説こそがまるで根拠だった 次第です。

なお「侮辱罪」などの法改正が施工されたので2020年から契約しているネット保険を使い現在申請中で選任弁護士からの連絡を待っている状況です。

・・例のSNS上での誹謗中傷をネット保険を使って訴訟まで進めようと申請中です。

昨年まで取り掛かっていた訴訟1件が取り敢えず今年に入ってすぐに勝訴して片付いたので次の訴訟にちょうど良いタイミングです。またその意味で法改正も施行されてありがたい限りです。少なくとも「侮辱罪」だけではなく営業に支障を来した面も含め刑事訴訟に限定せず民事訴訟まで進める事が叶うかも知れません (影響の期間が長いので相応の金額になります)。

前の一件も訴訟まで進む前は威勢の良い事を言ってきていましたが、簡易裁判所から訴状が送達された途端に和解を泣きついてきたらしく意外とそういうパターンが多いらしいです。何でもお金で片付くと思ったら大間違いで、特に当方の精神面でのプレッシャーは2021年以来続いておりその要素だけとっても十分裁判にまで進められるのではないかとみています。

当然ながら以前の訴訟でも同じでしたが、お金が関わる裁判となれば最終的に口座の差押まで進められるので、たいていの場合給与口座だったりして勤務先にバレるとなるとまるで別人のように変わる人が居るので何なのかと思います。何某かの公務員なら処罰だけで逃げられますが一般的な雇用契約者なら懲戒解雇になり次の就職にも大きく影響を来します。

・・匿名のネットなら誹謗中傷してもバレないと高を括っているとバカを見ますね(笑)

↑スプリングと鋼球ボールを組み込んで絞り環をセットしたところです。既にスプリングを短く切られているので (おそらく過去メンテナンス時の所為) クリック感が弱いのですができる限りちゃんと明確なクリック感を感じられるよう処置しました。

だいたい製産時点よりも経年で勝手にスプリングが延びるハズがなく(笑)、どうしてクリック感が強すぎてガチガチするのかの因果関係があるのにそれすら考えようとしません。

逆に言うなら前述のように特異な設計を採っているので「鏡筒の組み込みが最後にできる仕様になっている」事に過去メンテナンス時の整備者は気がついておらず、もっと言えば今現在 ネット上で確認できる整備工程の解説でもそれが理解できていません。

・・このモデルは鏡筒の組み込みを最後にするよう設計されています。
・・合わせてならばどうしてそのような設計にしたのか考える必要があります。

↑取り敢えず鏡胴「前部」は残り光学系前後群の組み込みだけなのでここから鏡胴「後部」の工程に移ります。

すると上の解説のとおりまずヘリコイドメス側が「空転ヘリコイド」である事が一番厄介な 要素です。しかもご覧のとおりのお互いに真鍮 (黄銅) 材同士なのが相当厄介なのです。

前述のフィルター枠と絞り環が接触する箇所が「平滑面」だったのに対しこちらは相手が空転ヘリコイドの話なので「鏡面仕上げ」です (赤色矢印)。

もちろん当初バラした直後は溶剤で洗浄しても過去メンテナンス時に塗られていた「白色系 グリース」のせいで酸化/腐食/錆びが進行していましたが上の写真では既に当方の手により「磨き研磨」が終わりちゃんと「鏡面仕上げ」に処置済です。

ではその「鏡面仕上げ」と断言する根拠はと言えば、グリーンの矢印で指し示した黄銅材に対してその間にブルーの矢印で指し示した非平滑面げが備わる/サンドイッチしているからです。

これらの要素を根拠として「空転ヘリコイド側は鏡面仕上げの必要がある」ワケでこれこそがまるで「観察と考察」であり、確かに当方が好んで使う「黄褐色系グリース」を塗布しているにしても仕上がった出品個体の距離環を回すトルクがどんだけ軽いのかを知れば納得するハズです (ご落札者様1名様のみですが)。

当然ながら「白色系グリース」を塗っても最初のうちは良いですがすぐに揮発油成分が飛び始める (液化が始まる) ので早くて1年、遅くても数年で距離環を回すトルクにぎこちなさを感じ始めやがて重くなってきます。

↑「空転ヘリコイド」をセットしたのでここから今度は「距離計連動ヘリコイド」の組み込み作業に入ります。距離環を回して鏡筒が繰り出されると距離計連動ヘリコイドは逆に収納されて、他方距離環を回して無限遠位置まで鏡筒を収納すると逆に距離計連動ヘリコイド側は突出してきて繰り出される「互いが逆方向の駆動」である点をしっかり認識する必要があります。

↑無限遠位置が合致したので (当初位置) 距離環を仮締めしてから光学系前後群をセットした鏡胴「前部」を組み込んで光路長を正し無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。今回初めての扱いですが設計者の意図を汲む事で過去メンテナンス時に施されてしまった不適切な所為を正した上でキッチリ仕上げてあります。

光路長を正し鋭いピント面を確保した上でもちろん距離環を回すトルク感はこのモデルのピントの山がアッと言う間の一瞬なのでその前後での微動をストレスなく操作して頂く事に配慮すれば「軽いトルク感」がありがたいハズです。

↑残念ながら第1群 (前玉) の外周に経年相応なレベルでカビ除去痕に伴う極薄いクモリが残っています。もちろんその他経年並みな拭きキズやカビ除去痕も複数あります。また光学系内の透明度はとても高くスカッとクリアですが後玉にはやはり経年相応のカビ除去痕が微細な点状に残っており、それらはパッと見で「微細な塵/埃」に見えますが微細な点状のカビ除去痕です (気泡でもありません/気泡がありません)。

気泡
光学硝子材精製時に、適正な高温度帯に一定時間到達し続け維持していたことを示す「」と捉えていたので、当時の光学メーカーは正常品として「気泡」を含む個体を出荷していました (写真に影響なし)。

なおこのモデルは開放f値「f2」の状態でも上の写真のとおり完全開放しない仕様/設計です。この状態で「f2」であるのを簡易検査具で確認済です。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群側もLED光照射で極薄いクモリが皆無なスカッとクリアな状態を維持していますが前述のとおり後玉には微細な点状のカビ除去痕が相当残っています (写真に影響しないレベル)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
後群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
(前後玉に微かな点状カビ除去痕が無数にあり)
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(前後群内に極微細な薄い12mm長数本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:あり
(第5群後玉に僅かな円形状ヘアラインキズあり)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(但し前玉外周にLED光照射で視認できる極薄いクモリがあります)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・特に後玉はとても微細な点状カビ除去痕が無数に残っていますがパッと見で塵/埃のように見えてしまいます。おそらく経年で繁殖したカビによるコーティング層侵食痕とみています。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑10枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に円形絞りを維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が指に伝わります(擦れ感軽め)。
・距離計連動機構部の設定は当初バラす前の位置のまま仕上げています。距離計連動機構の精度を確認できる環境が無い為クレーム対象に含みません。特にライカボディなどに装着時の精度の狂いは対応できません(クレーム対象とせず)。
・その関係で無限遠位置も当初位置のままであり僅かにオーバーインフ状態です(当方所有のマウントアダプタ装着によるチェック)。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
・筐体外装の一部に経年に拠る酸化/腐食/錆が生じメッキが剥がれ赤サビが出ている箇所があります。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
HAKUBA製MCレンズガード (新品)
本体『FUJINON 5cm/f2《後期型》(L39)』
汎用樹脂製ネジ込み式M39後キャップ (新品)
汎用樹脂製スナップ式前キャップ (新品)

距離環を回すトルク感は印象として「軽め」に仕上げてあります。それはこのモデルのピントのピーク/山がアッと言う間で一瞬だからです。

それはそもそも距離環に刻印されている距離指標値を見ただけでも容易に察しが着きます。 無限遠位置〜最短撮影距離1mの間がとても短くほぼ半周程度回しただけで繰り出し/収納が 終わるからです。それだけヘリコイド (オスメス) のネジ山勾配が急である事が伺われピント合わせの際にできるだけ軽いほうが操作し易い事になります。

合わせてどうして「空転ヘリコイド」を配置したのかと言えばマウント規格がネジ込み式の「L39マウント規格」なので距離計連動ヘリコイドが外に露出するとなれば自ずと製品サイズ/筐体外装をできるだけコンパクト化したかった事が伺え、そのようなダブルヘリコイドでコンパクト化したければ一方のヘリコイド (オスメス) を「空転ヘリコイド」で設計するしかあり ません。

・・このように全てに理由があるのでそれを知る事もオールドレンズの背景になります。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離1m附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f4」で撮りました。

↑f値は「f5.6」に上がっています。

↑f値「f8」になりました。

↑f値「f11」です。

↑f値「f16」での撮影です。そろそろ絞り羽根が閉じきってきているので「回折現象」の影響が現れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。