〓 Kuribayashi (栗林写真工業) C.C. Petri Orikkor 50mm/f2《前期型》(M42)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホール/修理がお終わってご案内するモデルは、国産は
栗林写真工業製標準レンズ・・・・、
C.C. Petri Orikkor 50mm/f2《前期型》(M42)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回完璧なオーバーホール/修理が代わってご案内するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた12年前からの累計で当時の栗林写真工業製標準レンズ「50mm/f2」の括りで捉えると39本目にあたります (M42マウント規格のみでカウントした場合)。

このモデルを一番最初に扱ったのが2017年なので5年が経ちました。扱い始めた当時はネット上でもそれほど知名度が高いモデルではなく、ネット上の記事をみても、画質や収差などの性能面ばかりで酷評を受けていたように記憶しています。2018年頃からポチポチと当ブログに載せながら、特にその収差の表現性についてその素晴らしさの解説に努め、少しずつ知名度が上がっていったように思います。

その意味でなかなか感慨深いモデルの一つですが、考えてみれば5年前の当時はまだ、オールドレンズの評価と言えばその描写性能が検査され、鋭さや収差の少なさばかりがピックアップされていたようにも思います。当時から当方にしてみれば、むしろそれら酷評される収差の影響のほうがオールドレンズの楽しみの一つではないかと、逆に悶々とした日々を送っていたのを覚えています(笑)

従って今回扱ったこのモデルも「収差の楽しさ」こそに絶大な魅力を感じ入り、2017年から扱い続けてきたつもりです。

【モデルバリエーション】
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

前期型:1959年発売
光学系:4群7枚変形ダブルガウス型構成
絞り羽根枚数:10枚
A/Mスイッチ:無
フィルター枠径:⌀ 49mm
マウント種別:M42

後期型:1960年発売
光学系:4群6枚ダブルガウス型構成
絞り羽根枚数:5枚
A/Mスイッチ:
フィルター枠径:⌀ 52mm
マウント種別:Petri

ちなみに上記モデルバリエーションの「後期型」はPetriマウントのスピゴット式ではありますが、その後に登場するPetriマウントとはビミョ〜に爪の仕様などが違うので (絞り連動レバー機構部の設計も全く別モノ) 互換性があるものの、フィルムカメラボディが「Petri PENTA V」以外の場合は少々装着しづらい懸念があります。また一部に4群6枚の新設計された光学系に変更された個体が顕在するようです。

光学系が特徴的で4群7枚の変形ダブルガウス型構成です。後群側に当時としても大変珍しい「3枚貼り合わせレンズ」を配しており特異な光学構成です。

右構成図は今回のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時、当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての群の光学硝子レンズを計測したトレース図です。

後期型」になると光学設計まで変更してきて、典型的な4群6枚ダブルガウス型構成に再設計しています。但し、一部の個体には (A/Mスイッチを装備しながらも)「前期型」の4群7枚構成での光学系のまま実装している個体が顕在するようです。

特に後群側の3枚貼り合わせレンズについては、内部を覗き込んで
見れば、貼り合わせているバルサム剤が「黄色にコバ端部分に視認
できる
」のですぐに確認できます。
(右構成図はPETRI PENTAV2取扱説明書よりトレースした構成図です)

↑完全解体した時の内部構成パーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はC.C. Petri Orikkor 50mm/f2《前期型》(M42)』のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホール/修理が終わっています。しかしオーバーホール/修理ご依頼時の受付内容とは大きくその瑕疵内容が異なっており、ハッキリ言ってこのモデルにしては久しぶりにチョ〜ハードなオーバーホール作業に陥ってしまいました(泣)

《当初バラす前のチェック時に気になっていた内容》
無限遠位置が完璧なアンダーインフ状態で全く合焦しない。
距離環を回した時のトルクがとても重い。
 距離環を回すとトルクムラを感じる箇所がある。
開放時に顔出ししている絞り羽根の顔出し量が多すぎる。

《バラした後に新たに確認できた内容》
全ての部位の締め付け固定が緩んでいる。
黄褐色系グリースが塗られたままになっている。
絞り羽根の向きが完璧に逆で刺さっている。
ヘリコイドオスメスのネジ込み位置が完璧にズレている。
他各部位の微調整が全く適合していない。

・・こんな感じでした。

ご依頼内容は「距離環を回すトルクをできるだけ軽く改善してほしい」との事でしたが、届いた個体の状況は全く別次元の話でした(泣)

残念ながら、この個体は過去に最低でも一度はほぼ完全解体に近い状態までバラされており、且つ光学系の締付環のみならず、光学硝子レンズのコバ端にまで「反射防止黒色塗料」を着色しています。

そしてヘリコイドオスメスのネジ込み位置が全く適合しておらず、必然的に無限遠位置がズレまくりなのでアンダーインフ量は相当なレベルです (距離環を半分近く回す必要があるが∞刻印位置で突き当て停止するのでピンボケ状態)。

さらに致命的だったのが「絞り羽根が逆向きで刺さっていた」瑕疵内容で、このせいで鏡筒内壁の「開閉環との接触箇所が摩耗して削れている状況」だったのが、最終的に距離環を回す時のトルクを重くする因果関係に至っていました (この調査をするのに凡そ4時間かかった)。

これらの状況からの推察ですが、おそらくこの個体はバラしたものの「適切に組み上げられないと諦めてそれらしく組み立てただけ」のように思います。全ての部位で何もかもデタラメに組み込まれているので何一つ微調整位置が合致していません・・従って今回のオーバーホールでは「全ての微調整位置を逐一ゼロから調べていった組み立て方法」になり、相当ハードだった次第です(涙)

↑上の写真は完全解体した後に当方の手による「磨き研磨」を終わらせて組み立て工程に入っている時に撮影しています。鏡筒の最深部に「位置決めキー用の穴」が空いており、ここに絞り羽根の「位置決めキー」の金属棒が刺さります。一方右横に並べて撮影してある「開閉環」の切り欠き/スリット部分が「絞り羽根の開閉キー」が刺さり、この「開閉環」が回る事で絞り羽根の角度が変化して絞り羽根の開閉駆動が実現できる原理です (赤色矢印)。

従って筐体に備わる (M42マウント部直前に配されている) 絞り環とプリセット絞り環との連携により「設定絞り値が伝達される」仕組みですが、その際に使われるパーツがグリーンの矢印で指し示している「開閉キー用のネジ穴」です。

この「開閉環」が鏡筒内部に収まるとグリーンの矢印で指し示した「開閉キー用のネジ穴」がブルーの矢印で指し示している鏡筒側面の切り欠き/スリット部分に現れます。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

絞り羽根開閉幅
絞り羽根が閉じていく時の開口部の大きさ/広さ/面積を指し、光学系後群側への入射光量を決定づけている

上左側の「絞り羽根の表裏にプレッシングされている金属棒/キー」が決まっているのに逆に刺さっていたワケです。

↑同じように当方の手による「磨き研磨」が終わった状態でオーバーホールの組み立て工程を進めているところです。一つ前で解説した「開閉環」が鏡筒最深部に絞り羽根を組み込んでから上に被さっている状態です (赤色矢印)。

ご覧のようにブルーの矢印で指し示した鏡筒側面の切り欠き/スリット部分にグリーンの矢印で指し示している「開閉キー用のネジ穴」が露わになっています。このネジ穴にねじ込まれた「開閉キー」が切り欠き/スリット部分をブルーの矢印の範囲内で移動するので「開閉環が回って絞り羽根の角度が変化し設定絞り値まで閉じる原理」ですね(笑)

このままではひっくり返したら開閉環が外れて脱落し、絞り羽根がバラけてしまうので右横に並べて撮影している「C型環」と言うパーツをセットして絞りユニットを完成させます。

↑「C型環」が開閉環の上にセットされて外れなくなり絞りユニットが鏡筒最深部に組み込まれました。

↑この時、試しにグリーンの矢印で指し示している「開閉キー用のネジ穴」を鏡筒側面のブルーの矢印で指し示している切り欠き/スリット部分を移動させると (ブルーの矢印)、それに連動して開閉環が回って絞り羽根は「位置決めキーが刺さっているので軸になって開閉キー側だけが移動する為に絞り羽根の角度が変化する」からこそ、絞り羽根が閉じているように見えて (実際閉じている) 赤色矢印のように最小絞り値「f22」まで閉じていきます・・このような動き方と概念こそが「絞り羽根を開閉する基本原理」です。

従って、この絞り羽根をセットした時に「絞り羽根の表裏を間違えると絞り羽根が傾く角度が狂う」ので開放時に完全開放しなかったり、逆に最小絞り値が閉じすぎていたりします (今回の個体の状況を指す)。

では、絞り羽根の表裏を記憶しておくのか (写真撮影しておくのか) みたいな話になりますが、実は「原理原則」さえ理解できていれば絞り羽根の表裏にプレッシングされているキーを見ただけで「開閉キーなのか位置決めキーなのかの判別が適う」次第です(笑)

それを何も考えずに記憶したり写真で撮っておいたりするからミスった時に全く気づかずに組み立ててしまいます(泣)

↑こんな感じで鏡筒下部 (光学系後群側のほう) に「制御環」がセットされて、その途中に備わる「連携ガイド」と言う切り欠き/溝に連携キーが刺さって操作されるので、絞り環の設定絞り値が正しく伝達されてグリーンの矢印で指し示した「開閉キーが移動するので鏡筒内部の開閉環が回る」のが原理ですね (ブルーの矢印)(笑)

これが理解できていれば絞り羽根を完全開放した時 (逆に最小絞り値にした時) の絞り羽根の状況をチェックしてすぐに表裏をミスッて組み込んでしまったのが判明します(笑)

↑オーバーホール工程を進めているところです。ヘリコイドオスメスをネジ込み距離環をセットしたところです。

↑解説用にオーバーホール工程の手順とは違う工程で組み上げて写真撮影しています。「M42マウント」部直前に備わる切り欠き/スリット部分に赤色矢印で指し示している突出した小さな板状の「連係キー」が刺さります (グリーンの矢印)。

↑こんな感じで刺さります (赤色矢印)。

↑今度はそのままの状態で前玉側方向から内部を覗き込んで撮影しました。赤色矢印で指し示しているとおり「連係キー」が内側に飛び出てきています。この「連係キー」が前述の「連係ガイドの切り欠き/スリット」に刺さって、鏡筒の繰り出し/収納に連動して行ったり来たり直進動でスライドして行くので、距離環を回して鏡筒が繰り出されていても (或いは無限遠位置で収納していても) 設定絞り値が確実に正しく伝達される原理です。

・・すると何を言いたいのか???

非常に多くの方々が「ヘリコイドグリースを入れ替えて距離環を回すトルクを軽くしてほしい」と必ず言ってきますが、そもそもその考え方が間違っています。距離環を回す時、或いはヘリコイドオスメスが回っている時の「そのトルクを決めているのはヘリコイドグリースだけではない」点に気づくべきなのです。

上の写真で説明するなら、距離環を回してヘリコイドオスメスが回転しつつ内部セットされた (上の写真ではまだセットされていない) 鏡筒を繰り出したり収納したりする時、トルクを決めているのは「塗布したヘリコイドグリースと共に絞り環からの伝達されるチカラ (上の写真で言う処の連係キーを伝わるチカラ)」なのであって、決して塗布したヘリコイドグリースの粘性だけで決まる話ではないのです。

それを全く無視し続けているから、オールドレンズの製品寿命を短くする方向になってしまう「白色系グリース」を平気で塗り続けています。

今回のモデルで言うなら、ヘリコイドグリースに「黄褐色系グリース」を塗っていれば数十年を経てもご覧のように「連係キーは酸化/腐食/錆びで緑青が生じて破断していない」からこそ内側方向に出っ張ってくれるワケです。

これをもしも「白色系グリース」を塗ったくっていれば、おそらく数年で緑青が出てしまい、この小さな薄い板状の「連係キー」はポロッと折れてしまいます・・詰まる処「製品寿命」を迎えるワケです(涙)

↑上の写真はオーバーホール工程を進めてほぼ組み上げが終わる状態に至ってもなお「距離環を回すトルクが重いまま/トルクムラも残ったまま」だったので、再びバラして (完全解体に戻って) 今度は原因調査しながら組み立てている処を写真撮影しました。

鏡筒の下部に位置する「制御環」の途中に備わるグリーンの矢印で指し示している「連係ガイド (切り欠き/スリット)」が変形していたのが判明しました。

前玉側方向たる赤色矢印の位置に対して連係ガイドの終端になるブルーの矢印の箇所のほうが「膨れている」のが分かるでしょうか???

つまり無限遠位置の時に絞り環操作できていたのに鏡筒を繰り出すと絞り環が極度に固くなって重く変わるのです。

当方は絞り羽根をパッと見てすぐに表裏が分かるので、当初バラした時点ですぐに「あッ! 絞り羽根が逆向きに入ってる!」と気づいていますから(笑)、上の写真を撮影している時の絞り羽根の向きは「正しい向きで組み込まれている」状態です。

それでもなお絞り環を回した時に重く変化するのは何か別の原因だとすぐに分かりますね(笑)・・それでその因果関係を調査しているところです。

結局、絞り羽根を逆に組み込んでしまったが為に開放時に絞り羽根が顔出しし、最小絞り値の時に閉じすぎている問題のみならず、距離環を回す時のトルクに大きく影響を来し、それをおそらく過去メンテナンス時にムリに改善させようと上の写真の「制御環」を変形させたのだと思います。

逆に言うなら、ここまで制御環の「連係ガイド」が変形するほどチカラが加われば「連係キーの薄い小さな板状まで変形しているハズ」なのに、変形していなかったと言う事は「過去メンテナンス時の整備者が故意に自分で連係ガイドを変形させた」所為が見えてきます。

実際ラジオペンチ (精密ペンチ) で掴んだ痕が残っていたので見ただけですぐに分かりますが、工場での製産時点では処置されていない事柄をやっている次第です(笑)

↑さらにその「連係ガイド」に纏わる固く重いチカラが影響して、上の写真の「ヘリコイド (メス側)」が本当に極僅かですが撓ってしまい、最終的にトルクムラへと繋がりました(涙)

ご覧のように、このモデルは黄銅材で肉厚を採って作られたヘリコイドオス側に対し、メス側は薄い肉厚のアルミ合金材です (互いの肉厚の違いをグリーンのラインで示している)。

しかも鏡筒の繰り出し量/収納量が多いので (ブルーの矢印) 距離環が締め付け固定されるネジ穴が備わるのはオレンジ色矢印で指し示している「薄いアルミ合金材のヘリコイドのメス側」なので、その加わってしまったチカラにより「アッと言う間に薄い肉厚のアルミ合金材が撓って変形してしまった」からこそトルクムラが発生してしまったのです(涙)

・・全ての因果は絞り羽根を逆向きに組み込んだのが間違いの始まりです!

↑しかも、実は絞り羽根を逆向きに入れてしまったが為に、鏡筒最深部に組み込まれた「開閉環」が鏡筒内壁に擦ってしまい (絞り羽根の向きが逆なので必要以上のチカラが及んでしまったから/開放時の顔出しと最小絞り値の時の閉じすぎ) 抵抗/負荷/摩擦となり絞り環操作にまで影響を来していました (上の写真は冒頭で載せた写真と同じです)。

それを過去メンテナンス時の整備者は全く気づいておらず前述のように「連係ガイドをペンチで変形させて改善しようと試みた」のが判明した次第です。

このように完全解体してしまうと「観察と考察」及び「原理原則」に則れば、どのように所為を施したから現在の不具合に繋がっているのかが100%全て白日の下に曝されます。

その根本には「経年で内部の各構成パーツに酸化/腐食/錆びや変形が生じたから今現在の不具合を招いている」との整備者の思い込みが大きく影響しています。

1959年に発売されていたモデルですから、64年前後の経年だとしても今現在でさえ「ちゃんと経年の酸化/腐食/錆びを除去してあげれば製産時点に近い状態まで戻せる」事をもっと知るべきですね(涙)

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。

但し、残念ながら光学系第1群前玉の、特に表側/露出側には外周附近に経年のカビ除去痕たる芯の部分がLED光照射で視認できるレベルですが薄いクモリを伴って残っています (写真は一切影響しないレベル)。

また光学系第2群の貼り合わせレンズはコバ端含め全てが着色されていましたが、一部に肉厚が増えた塊が残っていたりしたので「格納筒に格納する際に光路長を狂わす一因になる懸念が高い」事から全て剥がして当方により再着色しています。

↑光学系後群側も極薄いクモリが皆無です。但し同様後玉表面/露出側には極薄いクモリを伴うカビ除去痕の芯が僅かに残っています (写真には一切影響しないレベル)。

ここで問題だったのは「過去メンテナンス時に3枚貼り合わせレンズを一旦剥がしてバルサム接着している」ことです!(驚)

この個体は当初バラす前のチェック時点で後群側を覗き込んでも「黄色のバルサム剤はみ出しが視認できなかった」為に、「???」だったのですがバラしてみて第3群を確認して判明しました。

一旦剥がす際に光学硝子材の一部を欠いてしまっています。同様光学系前群側もおそらく第2群の貼り合わせレンズを再接着しており、やはり欠けている箇所が1箇所だけ在ります。

従って貼り合わせレンズを剥がせる技術スキルを有する整備者なので、はたして誰が執り行ったのか不明なところです。

過去メンテナンス時のコバ端着色で不用意な塊が残ってしまい、そのせいで光路長を狂わせていたので当方にて一旦剥がし、全て再着色したので現状は鋭いピント面に戻っています。

↑開放時の顔出しも「開放f値f2」として正しい位置でセットしました・・必然的に最小絞り値「f22」もご覧のように正しい閉じ具合に戻っています (簡易検査具でチェック済)。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」を使い当方独自のヌメヌメッとしたシットリ感漂うトルク感に仕上げてありますが、アルミ合金材のヘリコイド (メス側) が極僅かに撓っていた分、重いトルクなのは大きく改善できていません(泣)・・申し訳御座いません。

当初に比べれば相当なレベルで軽く変わっているものの、当方としてはもう少し軽いほうが撮影し易いかなと思いますが、現状が限界です・・これは肉厚が薄いアルミ合金材のヘリコイドメス側の撓りを正す工程を経て真円に戻しているからですが「真円度を検査する機械設備が無いので確認しようがない」為に、手による感覚だけで戻しているため限界なのです。

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

・・当方の低い技術スキルではこれが限界なので、誠に申し訳御座いません(涙)

↑同様、鏡筒内部の「開閉環が鏡筒内壁を擦っていた為に摩耗してしまい抵抗/負荷/摩擦が増大していた」分の影響が残ってしまい、絞り環やプリセット絞り環の操作性にまで少々重さが残っています・・これも当方の低い技術スキルでは限界です。

・・申し訳御座いません!(涙)

取り敢えず、現状の仕上がり状況は「当方がギリギリ納得できる範疇」止まりであり、願わくばもう少し改善したかったところですから、本当に申し訳ない想いでいっぱいです(涙)

なお、当初は全く以て無限遠位置どころの話ではないレベルでアンダーインフ状態でしたが(笑)、無限遠位置をゼロから逐一調べ上げて正しいネジ込み位置でヘリコイドのオスメスをネジ込んであります。

この状態で軽めのトルク感に仕上げるべく頑張りましたが、前述のとおり少々重めのトルク感で仕上がっています・・申し訳御座いません。

↑当レンズによる最短撮影距離50cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f4」で撮影しました。

↑f値は「f5.6」に上がっています。

↑f値「f8」になりました。

↑f値「f11」です。

↑f値「f16」です。もうだいぶ絞り羽根が閉じてきているので、そろそろ「回折現象」の影響が現れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。また機会がありましたら是非宜しくお願い致します (本日発送済です)。