◎ Sankyo Kōki Tokyo (三協光機) KOMURA− 80mm/f1.8(M42)
(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます
※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。
今回完璧なオーバーホールが終わってご案内するモデルは、国産の
三協光機製中望遠レンズ・・・・、
『KOMURA- 80mm/f1.8 (M42)』ですが、ヤフオク! への出品ではなく
オーバーホール/修理ご依頼分の解説です。
※当方の記録用として無償掲載しています (本来ご依頼による当ブログへの掲載は有償です)。
ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ! Слава Украине! Героям слава!
上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。
今回の扱いが初めてのオールドレンズなので当方の記録用としてこのブログに無償掲載して います。
このモデルの発売時期やモデルバリエーションを調べたくてネット上の情報を検索しましたが何とも謎の多いオールドレンズです(笑) そして調査が進むに従い今までの当方の三協光機製 オールドレンズに対する時系列的なモデルバリエーションの捉え方について根本的に間違っていたと気づきました。
特にまだ確証が無いので今までこのブログに載せてきた三協光機製オールドレンズのページに対する訂正は今のところ見合わせます。
↑上の写真 (2枚) は、1963年に当時三協光機製オールドレンズのアメリカに於ける代理店契約をしていた貿易商社の一つでニューヨークの「EPOI INTERNATIONAL LTD.」が印刷し頒布していたレンズカタログからの抜粋です。
非常に興味深い矛盾を突きつけられてしまったのがこのカタログの右側写真ページで、中望遠レンズ域に今回扱ったモデルではなくその後に登場した「KOMURA 85mm/f1.4」を載せていますが今回扱うモデルは既にカタログの一覧表からも消えています。
そしてさらに当方にとりまさに衝撃的だったのがその右隣に載っている「KOMURA 105mm
/f2.8」です!(驚) このモデルはライカ版L39マウント規格が主体の製品ですが1958年に発売され1964年まで製産/販売され続けました。
ところがこのモデル (105mm/f2.8) の絞り羽根は従前の1950年代後半に特に採用し続けて いた「プレッシングで羽根を用意しキーとして使う方式」の設計なのです。
↑その「KOMURA 105mm/f2.8」モデルに実装されている絞りユニットから絞り羽根が刺さっている箇所「位置決め環」をピックアップした写真ですが (左写真)、ご覧のように絞り羽根をプレッシングしてカットする際に同時にキーとして使えるよう「十字の切り込みを入れて 即座に反対側に折り曲げる」手法を使い「キーとして代用できる羽根を4枚用意する」設計を採っています (右写真赤色矢印)。
とても効率的で製産時点の工程数を大幅に減らせられるのですがその反面で耐用年数に課題が残り後には他社光学メーカー同様に「小さな金属棒/円柱を打ち込みキーとする方式」の一般的な設計に変更しています (何故なら羽根が1枚折れただけで絞り羽根制御不能に陥るから)。
右側写真のように1枚の絞り羽根には必ず4枚の羽根がキーとして突出しないとその絞り羽根が正しく回転運動をせず下手すれば顔出ししてしまい製品として維持できなくなります。
その一方で右側のカタログに掲載されている中央の「KOMURA 85mm/f1.4」は既に金属製キーを打ち込む一般的なオールドレンズで採用されている方式の設計です。もっと言うなら 今回扱った「KOMURA− 80mm/f1.8」さえも同様に金属製キーを絞り羽根にプレッシング する設計を採っており「羽根を用意する方式ではない」にもかかわらず載せていません。
・・何を言いたいのか???
つまり三協光機では複数の新旧設計のままモデルが混在して生産し続けていた事になり、合わせてその際に筐体外装の意匠までそれこそ極端な話ゼブラ柄まで含め製産していた事になってしまいます。
逆に指摘するならネット上に顕在する幾つかのサイトで解説している、或いは当方自身もその同じ思考回路で考察していた「筐体外装の変遷を基にモデルバリエーションが展開された」と言う根拠が瓦解してしまい説得力を失ったことになります(泣)
・・そんな次第で当方にとり衝撃的な矛盾だったワケです!(笑)
↑上の写真 (8枚) は、ネット上を検索して三協光機製オールドレンズの中から中望遠レンズ「80mm/f1.8」に限定してその一部をピックアップしています。上段左端から順に以下に
なります。
❶ KOMURA− 80mm/f1.8 (towtone) (L39)
❷ KOMURA− 80mm/f1.8 (zebra) (L39)
❸ KOMURA− 80mm/f1.8 (black) (M42)
❹ KOMURA− 80mm/f1.8 (zebra) (exakta)
❺ KOMURA 80mm/f1.8 (zebra) (Nikon S)
❻ KOMURA− 80mm/f1.8 (black) (M42)
❼ KOMURA− 80mm/f1.8 (black) (Nikon S)
❽ KOMURA− 80mm/f1.8 (zebra) (Nikon S)
まずレンズ銘板に刻印されているブランド銘は「KOMURA−/KOMURA」と2種類顕在するのが一目瞭然です (上の写真では確認できずとも他の写真でチェックしているから)。またモデルによって「プリセット絞り機構装備/非装備」も混在しているのが分かります (絞り環部分が 二段はプリセット絞り機構装備の証)。さらにオドロキだったのが「クロームメッキ加工されたフィルター枠の部位の厚みがバラバラ」で厚みを採っている設計があると思いきや短かったり今回初めて見たのは二段のタイプまで顕在しました (❼など)(驚)
そしておそらくこの中には互いに光学設計が異なる個体も存在するのではないかとみていますが、あまりにも種類が多すぎる為とても調達して (ゲットして) 直接確認する気持ちがスッカリ失せてしまいました(笑)
・・ハッキリ言ってよほど銘玉扱いされない限り手を付けたくないですね(笑)
ちなみに上の写真で❶〜❷はレンズ銘板刻印製造番号が「230xxx」で❸が今回扱った個体で「540xxx」さらに❹〜❻までが「355xxxx」と1桁増えており、残り❼〜❽は「455xxxx」のやはり1桁多い製造番号の符番です。
特に❹〜❻までが「355xxxx」になりますが某有名処のサイトで解説している内容の検証になってしまいました。それは「製造番号先頭2桁〜3桁は何かの暗号として付番しているもののマウント種別を現さない」と明言できてしまいました (そのサイトの解説ではマウント種別と判定していたから)。❹〜❻までの「355xxxx」にはマウント種別として「exakta/Nikon S/M42」が混在していました (他の個体も幾つかチェック済)。従って製造番号先頭2桁〜3桁は決してマウント種別を示さず別の意味合いを持たせた暗号符番と当方では結論づけました。
(その暗号の意味は残念ながら全く見当が付かない)
なお前述のとおり掲載したレンズカタログを確認すると既に1963年時点で今回扱ったモデル「80mm/f1.8」は姿を消しており、それは1965年時点の別のレンズカタログを検証しても 同じで掲載がありませんでした (一覧表にも掲載なし)。そこから見えてくるのは今回扱った「80mm/f1.8モデル」はとても短命だった可能性が出てきた次第です。
残念ながらこれらの調査により何しろモデルバリエーション上の前後関係が破綻してしまったので時系列的に発売時期を捉える事がとても難しい話になってしまいましたが、あまりにもその種類が多く筐体外装の相違だけで捉えられず、且つ絞り羽根の設計の違いすらそれら時系列の根拠になり得ないとなればもはや手のつけようがありません(涙)
・・残念ですがこのモデルに関するモデルバリエーションの調査は終了します。
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上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。
◉ 一段目
左端から円形ボケ含め背景ボケの変化をピックアップしていますが一番左端の実写のとおり「真円のとても繊細で明確なエッジを伴うシャボン玉ボケを表出できる」のが分かりますから意外な発見でした。然しながら円形ボケはすぐに破綻していくのでトロトロボケに変わって しまいます。
◉ 二段目
今度は左端から収差ボケの変化を観ていく為にピックアップしました。これがこのモデル「KOMURA− 80mm/f1.8」シリーズの極めつけでとても暴れまくる収差の現れ方がある意味印象的です(笑)・・が然しそれを以てして背景ボケの効果と捉えられるかどうかはハッキリ言って大きく好みが分かれるレベルです(笑)
・・というのも四隅が均等に暴れるならまだ納得できて許せますがいきなりある特定の隅だけがどうしようもなく飛んで行くように暴れる滲み方はなかなか驚異的な収差ボケです(笑)
◉ 三段目
ここでは左側2枚の実写で発色性を観る目的でピックアップしています。3枚目は有名な霊能力者の「宜保愛子」氏です・・いや、それ違うから、似てねぇ〜から!(笑)
しかし人物の表現性と共に右横に写る置物 (?) の素材感/材質感を写し込む質感表現能力の 高さに注目です。
◉ 四段目
左側2枚はダイナミックレンジの広さを物語っており明暗部の耐性が強い印象ですがその反面右側2枚を観るとアッと言う間に白飛びしていたりよく掴めない感じです(笑)
光学系は4群5枚の拡張エルノスター型構成でネット上で案内されている構成図とは各群の実測値がビミョ〜に異なりました。
右構成図は今回のオーバーホールで完全解体した際に光学系清掃時に当方の手により各群の光学硝子レンズを逐一計測しトレースした構成図です。
するとネット上で検索できる構成図とは異なり、例えば第1群は凸平レンズではなく「裏面側の曲率がほぼ平坦に近い両凸レンズ」でしたし、同様に後群側の貼り合わせレンズも平凸レンズではなく「内部側の曲率が少ない両凸レンズ」だったことが判明しました。また貼り合わせレンズながらも互いの光学硝子レンズは外径が異なると言うあまり見ない設計です。
◉ 貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤/バルサム剤を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す
このように当方が指摘するとまた公然とウソを流布しているとSNSで批判の嵐なので本当に いちいち面倒くさいですが「証拠写真」を撮りました(笑)
↑上の写真 (3枚) は今回扱った個体の光学系から取りだした光学硝子レンズを撮りました。
左端が第1群 (前玉) で裏面側がほんの僅かに突出する「両凸レンズ」である事の証拠として 撮っています。また中央と右端は後群側の貼り合わせレンズを表裏でひっくり返しつつ撮影しています。中央は写真上側が後玉側方向にあたり大きな曲率なのが分かりますが、よ〜く観察すると貼り合わせレンズの互いで「光学硝子の外径が異なる」のが分かると思います。また その一方で右端写真はひっくり返して内側に位置する (つまり絞りユニット直下に位置する)
面でもやはり僅かに突出する凸レンズなのが一目瞭然です (従って2枚貼り合わせて両凸レンズの状態)。
そんなワケで各群をトレースすると右の構成図に至ったワケです (ウソではありません)(笑)
オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。
↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。
・・が然し、ハッキリ言ってここまで完全にバラせると思わずにひたすらに挑戦し続けたので自分としてはよくも完全解体したなと自らを褒めちぎっています(笑)
オーバーホール作業が何とか (本当に何とか) 無事に終わって考察するに、残念ながら今回の この個体は「改造レンズ」でおそらくオリジナルでユニークな製品ではないとみています。
もっと正しく指摘するなら鏡胴の前部側が本当はもともとオリジナルでユニークだったのか (然し今回の個体はオリジナルではなくなっている)、鏡胴後部側がもとはオリジナルだったのか (やはり今回の個体はオリジナルを維持していない) いずれも正しくないのか否かもう完全に 不明な状態で構成されている個体です。
・・その根拠を順に解説していきます。
なお、ハッキリ言って当方ではマニュアルフォーカスのオールドレンズで焦点距離:28mm〜200mmくらいまでをターゲットとし扱いますが如何せん「改造レンズ」と「創作レンズ」は基本的に扱いたくありません(涙)
・・と言うのもどんなに「観察と考察」に努めようとも「そもそも原理原則に則っていない」ままに組み上げられ、或いは下手すれば構成パーツすらその信憑性が適わず何一つ確かな事柄を得る事ができないからです。
例えば今回の個体で言うなら「本来は鏡胴前部/後部の二分割方式」なのがこの当時の三協光機の主だったモデルの特徴ですが、今回の個体は全くビクともしません。単に「鏡胴前部」をネジ込んであるだけなので反時計方向で回せば良いだけの話ですが「チカラ任せに思いっきり回すとパンと音が聞こえてきて絞りユニットの開閉アームを折ってしまう懸念が高い」のが 本当に怖いのです!(涙)
反時計方向に回そうとするとその手が掴んでいる部分には「絞り環」が含まれるので回しきったままチカラを入れると「開閉アームが折れる」ワケです (そんな事は整備者なら当然に知っている話)(笑)
仕方ないので極僅かしか露出していないフィルター枠部分を保持しながら思いっきり回しますがたいていの場合で滑って回せません (つまり専用治具が必須になる)(笑)
さらにもう一方の手でガシッと掴んでいる「鏡胴後部」も下手すれば距離環が空転してしまう懸念すらあり要は内部がどのように締付ネジでちゃんと固定されているのか一切その信憑性が伴わないから怖いのです!(怖)
特に今回の個体のオーバーホール/修理ご依頼内容となればまさに「恐怖しかない」内容だったワケです(涙)
《オーバーホール/修理のご依頼内容》
❶ ヘリコイドの回転が重い。
❷ ヘリコイドにガタつきがある。
❸ レンズ外周部の汚れ。
《バラした後に新たに確認できた内容》
❹ もぉ〜挙げきれないほどに問題箇所のオンパレード!!!
・・とまぁ〜こんな感じで解体作業に入った途端に「いや、これ、メッチャヤバい!!!」とご依頼を受けたのを後悔しまくりでした(笑)
↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。至ってフツ〜ないわゆる三協光機製オールドレンズに共通項的な印象の設計で切削されている鏡筒あって何も憶する必要がありませんが(笑)、実はここまでバラすだけで既に丸一日経過しています(笑)
絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。
◉ 位置決めキー
「位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー
◉ 開閉キー
「開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー
◉ 位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)
◉ 開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環
するとご覧のように冒頭解説のとおり「絞り羽根に羽根をプレッシングにより用意していた 設計」から一般的なキー打ち込み方式に変化しています。
↑12枚の絞り羽根もキレイになり確実に機能するようセットされました。絞り羽根は「まだカーボン仕上げの時代」なので経年のすり減りで一部地金が露出しています。
↑完成した鏡筒を立てて撮影しています。写真上部が前玉側方向にあたります。
すると鏡筒外壁には「イモネジ用の下穴」が備わるのですが、それは異なる箇所にネジ穴が用意されていて「貫通している」状況です (赤色矢印)。
実は今回の個体から絞りユニットを取り出そうとしたらこの貫通箇所に刺さっているネジが影響して引っ張り出せず鏡筒を完全にバラさない限りこのネジを外せませんでした。
しかしそんな事は数多くのオールドレンズで当たり前の話なのですが、今回の個体だけは絞り環やプリセット絞り環などが当初バラせなかったのです(泣)
↑完成した鏡筒の外廻りに「絞り環用のベース環 (黄銅製)」をネジ込みます (赤色矢印)。この ベース環のネジ込みを何処で止めるのかでプリセット絞り環の操作性が変化し、且つ絞り環の操作も影響を受ける為テキト〜にネジ込むのは好ましくありません (特に三協光機の場合)(笑)
↑さらにその上に順に「プリセット絞り環用ベース環 (アルミ合金材)」と一番上に「プリセット絞り値キー環 (黄銅製)」をセットします (赤色矢印)。
プリセット絞り環でセットされた設定絞り値をもとに「絞り環の駆動域を限定する (つまり 絞り羽根の開閉を限定する)」目的で上の写真ブルーの矢印の箇所にストッパーがネジ込まれ ますが「通常三協光機製オールドレンズは全てのモデルでシリンダーネジ (円柱ネジ)」です。しかしこの個体は何と普通の「丸頭ネジ」をネジ込んでいました(笑)
このネジの先端部分が前述の貫通していたために絞りユニットを取り出せない理由だったの です(笑)
さらに「プリセット絞り環用ベース環 (アルミ合金材)」には複数の下穴や貫通ネジ穴などが 均等の間隔ではない位置で切削されています (オレンジ色矢印)。そもそもそれらネジ穴の水平位置が各個一致しないのでこれらのネジ穴が「製産時点ではないのが明白」です。
しかもグリーンの矢印のように「プリセット絞り値キー環の固定位置」すら合致していません (グリーンの矢印)。
つまりそもそも一番下に位置する「絞り環用ベース環のネジ込み位置がミスっていた」為に 全てが狂っていました。
・・しかしこんな程度の問題など今回の個体にすればたいした話ではありません(笑)
↑先にプリセット絞り環をセットしたところを撮りました。カチカチとクリック感を伴いつつ回るプリセット絞り環ですが実はグリーンの矢印で指し示している分の「隙間がそのベース環との間に存在する」にもかかわらず「締付ネジ用の穴は一致している」のがブルーの矢印で 指し示した意味です。
・・つまり何とこの個体はプリセット絞り環を接着していた!!!(驚)
ワケです・・(涙) ちゃんと締付用ネジ穴の位置が合致しているのにどうして締付ネジを使わず接着に頼っていたのか「???」ですが (100%当方には分かりません!)、そもそもプリセット絞り環が接着されているオールドレンズなど今まで3,000本扱ってきて1本も顕在しなかったので「バラす際に分かるワケねぇ〜だろぉ〜が!(怒)」と言うお話です(笑)
鏡筒まで解体できなかったその根本原因がこの「プリセット絞り環の接着」だったのでそれでよくもまぁ〜完全解体したものだと自画自讃だったワケです(笑)
しかも絞りユニットから解体したくてもネジが引っかかっていて取り出せず・・何もできないと言う現実にブチ当たった次第です(笑)
↑こんな感じでちゃんと締付ネジ用の穴が合致しているのでグリーンの矢印で指し示した分の隙間が空いてもブルーの矢印の箇所を締め付け固定すれば良いのに「何で接着するかなぁ?」と言う怒りが込み上げてきます(笑)
こんな事柄は事前に知っていれば特に難しい話ではありませんが上の写真の箇所には「絞り環が被さるので外から一切見えない」ワケで(泣)、ならば絞り環を外せば良いのですがそのイモネジがまた外れないのです (イモネジまでもしかしたら接着していた可能性がある/メチャク チャ硬かった)(涙)
整備している人なら知っていますがイモネジは下手すると破断してしまうのでそうなったら 絞り環を外すことができなくなります (破断したイモネジが刺さったままだから)。
↑何とお人好しな事なのか・・当方で適合する締付ネジをあ〜だこ〜だ試しつつ探して反対側含めちゃんと固定しました (これだけで1時間)(笑)
↑当初全く外れなかったイモネジを締め付けて絞り環をセットしたところです。グリーンの矢印で指し示していますがご覧のように均等配置で3箇所あるイモネジは3つ全部研磨されていました。しかもおそらく固着剤を入れていたようでとにかく硬すぎて回せないイモネジです(涙)
従ってこのように「絞り環が外れない」と当然ながらプリセット絞り環の内部は見えず(笑)、まさか接着されていると思わないままひたすらに「加熱処置」し続けていたらとうとう丸一日経ってしまったと言う笑い話です。
ハッキリ言ってこれほどまでに鏡胴「前部」の解体で何もかも普通のオールドレンズに適用できる「原理原則」が通用しなかった経験は今までにありません(涙) 下手に強くチカラを入れすぎてイモネジを破断してしまえば当然ながらバラせませんし、他のどうすればこれら絞り環/プリセット絞り環が外れていくのか「???」と言う状況で本当にさんざん悩みました。
もっと言うなら前述の内側に飛び出ていたネジのせいで実は光学系前群の格納筒も当初外れず要はこの鏡胴「前部」を前にして何一つ解体できないと言う当方にとっては前代未聞の現実にブチ当たりました(笑)
↑鏡胴「前部」は一つ前の工程で残り光学系前後群を組み付けるだけなので一旦離れます。
ここから鏡胴「後部」の工程に移りますが、ここもまた一筋縄でいかず本当に疲れました(涙)
上の写真は距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。グリーンの矢印で指し示しているのがヘリコイド (オスメス) のセットがネジ込まれる為のネジ山で、一方ブルーの矢印がマウ ント部がネジ込まれるネジ山です。
そして赤色矢印で指し示している箇所に「直進キー」がネジ込まれるのですがこのネジ穴の ネジ山がバカになっていた為に「ご依頼内容❷ ヘリコイドにガタつきがある」が起きていた 次第です。
↑鏡胴「後部」は単にヘリコイド (オスメス) とマウント部だけの話なので普通はシンプルなのですがこれがそうは進まないワケです(笑)
一番左端にヘリコイド (オス側) が並べてありますが、そのネジ山の途中に垂直状に「直進キーガイド」と言う溝が備わります (グリーンの矢印)。その溝の底部分を見ると分かりますが既に銀色に削れています。
↑黄銅製のヘリコイド (メス側) です。すると側面にグリーンの矢印で指し示した箇所に「締付ネジ用の下穴」が備わりここに距離環のカバーがセットされると分かります。
その一方でブルーの矢印で指し示している細いネジ山が縦方向に幾つも切削されていますが「そのネジ穴の位置がバラバラなので一部は破断している」始末です(怖)
そしてここの話が今回の個体がオリジナルでユニークな製品ではなかった最大の根拠になりましたがオレンジ色矢印で指し示しているのは「何かのパーツを締め付け固定するネジ穴とそのガイド/溝」です。
↑こちらはヘリコイド (オス側) ですがアルミ合金材です。前述の「直進キーガイド (溝)」を グリーンの矢印指し示しています。
するとオレンジ色矢印の部分は溝の底が坂になって迫り上がっているのでこの範囲は直進キーが動かない (進入できない) のが一目瞭然で、実際に底部分に削れて銀色が見えているのもその範囲から外れています。
つまりその削れている範囲が「直進キーによって鏡筒が繰り出し/収納していた範囲」になるので、どうしてこんなに長い厚みを持つヘリコイド (オス側) が必要だったのか「???」と言うお話です(笑)
↑さらに何とヘリコイド (オス側) のネジ山には赤色矢印で指し示したように至る箇所に削れや摩耗の他擦りキズが散見していました。
要は何かが当たって削れてしまった痕跡と受け取れます。
↑基台にヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けたネジ込んだ状態を撮りました。
今度はブルーの矢印で指し示しましたがそこいら中に縦方向のネジ山が切削されていますが 何しろ均等ではない位置なのです。また前述の意味不明な箇所もオレンジ色矢印で指し示しています (ユニークな製品ではない最大の根拠になる箇所)。
↑ヘリコイド (オス側) をやはり無限遠位置のアタリを付けた場所でネジ込みます。このモデルでは全部で11箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。
実は上の写真はネジ込んだヘリコイド (オス側) が前述の削れや摩耗/キズに影響で噛んでしまい固着した状態を撮っています(泣) 逆に言うなら最後までちゃんとネジ込めるネジ山の箇所は「たったの1箇所」であり、おそらくその位置で当初バラす前はネジ込んであったと推測 できます (そうしないと削れていて噛んでしまうから)。
↑さんざんヘリコイド (オス側) のネジ山を「ひたすらに研磨」し続けて何とか削れや摩耗/キズの箇所を滑らかにして「ティッシュペーパーで一周拭っても一切ティッシュが切れない」スベスベになるまで「磨き研磨」してようやく最後までネジ込んだ写真です。
・・ここの工程でもまた丸っとほぼ一日がかり!(涙) もぉ〜イヤです!(涙)
ブルーの矢印で指し示したようにそこいら中に縦方向のネジ山がバラバラの位置で切削されています。そしてこの個体がユニークではない最大の証拠が「オレンジ色矢印で指し示した両 サイドにある直進キー用の固定箇所」の存在です!!!
つまりこの黄銅製のヘリコイド (メス側) に直進キーがネジ止めされて両サイドから飛び出て いる状態に設計されているのが判明しました。
↑距離環のカバーをセットしたところです。グリーンの矢印で指し示している箇所に固定用の ネジ穴が備わります。
↑その状態のまままたひっくり返して内部を撮影しました。オレンジ色矢印で指し示したように「またも複数のネジ穴がバラバラに用意されている」のが一目瞭然で、しかも何と距離環を3箇所で締め付け固定しています(笑)
↑距離環を締め付け固定したところですが、内側に見えている締付ネジが備わるのに再び側面にも締付ネジで固定する事になっています。
ハッキリ言ってこの「側面の締付ネジ用の穴が製産時点の穴であって内側のネジ穴は過去に 切削して用意された穴」と指摘でき、まさにこの鏡胴「後部」がオリジナルのユニークな構成品ではないことを裏付けています。
そして前述のとおりオレンジ色矢印でさんざん示したようにヘリコイド (メス側) の両サイドに直進キーが締め付け固定される設計なのがそもそもこの個体「KOMURA− 80mm/f1.8」の設計ではないと言い切れます (それら直進キーが存在せずヘリコイドオス側にそのガイドも 無いから)。
これらの事実からこの個体は「鏡胴前部も後部も共にオリジナルでユニークなのかが100%不明」であり、下手すると光学系前後群さえもどのモデルから引っぱってきたのか疑わしい 限りです(涙)
いずれにしても「80mm/f1.8」なのは光学系前後群とプリセット絞り環だけが確実であり、それ以外の信憑性は限りなく不透明な個体です。
この後は完成している鏡胴「前部」に光学系前後群を組み付けてから無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。
ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。
↑やっとのことで仕上がりました・・(涙) ちょっともぉ〜お腹一敗で二度とこの個体を見たくありません(笑) 鏡胴「前部」で一日に鏡胴「後部」で一日、プラスして気にしなければ良いものをピントの山が甘い印象だったので光路長まで調べてしまったからそれも含めて都合3日掛かりで完成です(笑)
↑光学系の透明度が非常に高い状態を維持している個体です。LED光照射でもコーティング層の経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。
「ご依頼内容❸ レンズ外周部の汚れ」が何処を指すのか当方には分かりませんでしたが取り 敢えず「スカッとクリア!」になっています(笑) もしも光学硝子レンズのコバ端のことを指摘されているなら残念ながら処置できません。
↑12枚の絞り羽根もキレイになりプリセット絞り環/絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に円形絞りを維持」しながら閉じていきます。
プリセット絞り環のクリック感を僅かに軽めに仕上げました。その一方で絞り環側には抵抗/負荷/摩擦を与えましたが、なかなかスカスカ感を改善できていません(泣)
何しろ接着されていたプリセット絞り環を外すだけでとんでもない作業量だったのでもぅ既にそれだけでスカスカ感を微調整する気持ちが完璧に失せています(泣)・・スミマセン(涙)
↑可能な限り「ご依頼内容❶ ヘリコイドの回転が重い」と「❷ ヘリコイドにガタつきがある」について改善を試みましたが限界です(涙)
まず当初バカになっていた「直進キー」が黄銅製だった点と当然ながら基台がアルミ合金材なので既にネジ穴のネジ山が摩耗していてどうにもネジ込み不可能な状態です。ガタつきの多くの要因はそれが原因ですが、実は「直進キーの径も合致しておらずヘリコイドオス側ガイドの溝の幅に合っていない」ワケで詰まるところ「当方にて適合しそうな直進キーの代用の特殊 ネジを調達した」ので多少なりとも距離環を回すトルク感が軽めになりガタつきも低減できています。
しかしそうは言っても何しろ特殊ネジなのでいくら代用と言えども発見できる数はたったの 2本しか手持ちが無く (在庫は100本近くあるが) 普通のネジは使えないのでどうにもなり ません。やはり径が適合していないので僅かにガタつきが残ります・・スミマセン(涙)
さんざん削れて摩耗してキズが残っていたヘリコイド (オス側) ネジ山もそれはそれはひたすらにそれぞれの箇所を「磨き研磨」してティッシュで拭っても切れないレベルまで滑らかにしたので「本来ならもっと軽いトルク感に仕上げられる」ものの、前述の「直進キーの径が適合 していない」問題から時々引っかかってしまい「突っ掛かったり抵抗を感じたりと不安定な トルク感」ながらも一応当初よりは大幅に軽めです(涙) もしも急にトルクが重くなった時はムリに回そうとせず僅かに前後動させて微動することで回避できます (また滑らかに回るように戻る)。
↑そんな次第で、ご依頼内容の❶〜❸の総てに於いて完璧に改善まで到達していないので今回のオーバーホール/修理代金としてご請求する金額より「ご納得頂ける分の金額を減額」下さい ませ。減額頂ける金額は最大値MAXを「ご請求金額までの無償扱い」とさせて頂き当方に よる弁償などは対応できません。
・・申し訳御座いません(涙)
↑当レンズによる最短撮影距離1.2m附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。
↑f値は「f4」に上がっています。フードが必須のモデルのようでフレアが現れています。
↑f値「f11」での撮影ですが「回折現象」の影響で解像度の低下が起きています。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。
◉ 被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。
↑最小絞り値「f16」での撮影です。大変長い期間に渡りお待たせし続けてしまい本当に申し訳御座いませんでした。お詫び申し上げます。今回のオーバーホール/修理ご依頼誠にありがとう御座いました。