◆ PENTACON (ペンタコン) PENTACON auto 50mm/f1.8 MULTI COATING《後期型−I》(M42)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧東ドイツは
PENTACON製標準レンズ・・・・、
PENTACON auto 50mm/f1.8 MULTI COATING《後期型−I》(M42)』
です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Украине!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体は当方がオーバーホール作業を始めた10年前からの累計でカウントすると58本目にあたりますが、このモデルで一番多い経年劣化たる 絞りユニット内の「開閉アームに起因する絞り羽根開閉異常」含めマウント部内部の設計の 拙さなどから起きる絞り羽根制御の問題まで含めると「正常駆動に仕上げられた個体数」は 凡そ22本目です(笑)

ネット上を観ているとこれら旧東ドイツ時代に造られていたオールドレンズに対して「切削が甘い」とか「加工技術が低い」など様々にレッテルを貼られ、まるで当時のロシアンレンズと同格の如く貶されつつ特にオークション市場で流通していますが(笑)、それら多くの言い回しは「出品者の思い込み」でありひいては「トラブル回避の逃げ口上」の一種とも言えます。

まるでそのようなイメージを植え付けるが如く印象操作し多少のトラブルはあたかもクレームに値しないよう仕向けているだけの話です。

それは完全解体して各構成パーツを逐一チェックしていけば自ずと「切削加工技術/レベルは 決して低くない」と指摘でき、それこそ当時の旧ソ連邦時代にコンピューター制御のNC旋盤が大量に普及する前の加工の拙さなどに比較したらやはりさすがドイツと頷ける加工精度を ちゃんと保っています。

ではどうしてそれらトラブルが顕在するのかと言えば一言「設計の拙さ」しかないと指摘できます。つまり製産時点の切削加工技術/レベルが低いのではなく設計時点の「効率アップ/利潤追求」だけが命題だった点に於いて旧東ドイツ側で製産されていたオールドレンズの位置付けはその後の市場の中で受け取り方も変わっていったと認識しています。

それはこのモデルの当時の時代背景を詳細に解説した参照ページ (後で明示します) をお読み 頂ければそもそも戦後の1961年時点で既に旧東西ドイツでの経済格差が致命的に至り、旧東 ドイツ側からの逃亡者が後を絶たなかった経緯から「ベルリンの壁」が敷設されたと歴史上のワンシ〜ンとして語られています (それまでは単なる鉄条網だった)。

ちなみにこのモデルのバリエーションで言うところの「前期型」が登場したのは1969年ですしそもそもPENTACON自体がその経営難から1981年にはCarl Zeiss Jenaに吸収されています。

もっと言うなら今回のこのモデルの始祖は「Meyer-Optik Görlitz製標準レンズのOreston 50mm/f1.8」であり、そもそもの設計思想 そのモノが実はPENTACONから産まれたのではなく1968年に吸収して消滅してしまったMeyer-Optik Görlitzからの継承品 (ある意味当時的に考えればまるで戦利品) だったワケで、当時の旧東ドイツはハッキリ言って何処も彼処も火の車だったことが伺えます(涙)

話を元に戻すと「絞りユニット内開閉アームから起因する絞り羽根開閉異常」の他にもう一つ致命的な要素が顕在します。

始祖たるMeyer-Optik Görlitz製標準レンズ「Oreston 50mm/f1.8 zebra」から受け継いでしまった設計思想の一つとして「光学系後群の固定方法の拙さ」と言う問題が残っています。

↑上の写真は今回の個体ではなく以前扱った個体からの転載写真ですが、その「光学系後群の固定方法」を解説しています。光学系後群用の光学硝子レンズ格納筒を何とイモネジ3本を 使って締め付け固定する手法を採っているのです。

イモネジとは左写真のようにネジ頭が存在せずネジ部にいきなりマイナスの切り込みが入っているネジ種なので、ネジの先端部が尖って いるタイプのイモネジを使い締め付け固定します。

さらにこの後群格納筒をセットする箇所にはマチ幅が備わり「凡そ 0.5mm前後で後群格納筒が前後左右に微動するマチ幅がある」のが問題なのです。

・・何を言いたいのか???

つまりこのモデルの致命的な要素は「ピント面が甘い個体が流通している」と声を大にして 指摘できます。

実際今回扱った個体も当初バラす前の実写チェック時点で既にピント面が甘い印象でピントの山のピークが不明瞭でした。要は「光軸が合っていない」のです!(笑)

そんな事があるのかと疑うでしょうが、均等配置されている3本のイモネジを単に順番に締め付け固定すれば良いと過去メンテナンス時の整備者が考えていたからこそ「光軸ズレ」が起きているのです。

逆に言うなら前後左右で「凡そ0.5mm」ものマチ幅 (微調整用の隙間) があるのにちゃんと 光軸確認しながら組み付けしないから仕上がったらズレていたと言うレベルのお話しです(笑)

例えば同じようにこのモデルを整備済でヤフオク! 出品している出品者が以前居ましたが(笑)「光学系後群は外さない」と出品ページに明記していました。要は過去メンテナンス時の固定箇所のまま触らないとの言い訳ですが、はたして過去メンテナンス時にちゃんと光軸確認済なのかの確証などあり得ません(笑)

自分が整備する時にちゃんと光軸確認すれば良いだけの話なのにあたかも触っていないから 問題が無いみたいな話で逃げているだけに過ぎません(笑) よくSNSで当方に対する批判で他人の事ばかり貶して自信過剰と言いますが、少なくとも当方はちゃんと光軸確認しながら仕上げているのでそれら光学系の検査 (とは言え簡易検査具ですが) を踏まえ出品しているのでそれを批判される謂れはありません(笑)

今回の個体も明らかに当初バラす前と比較してピント面のピークがより明確に掴めるように 変わったので「光軸ズレと言えば色ズレ」と決めつけているほうがおかしいと逆に指摘したいですね(笑)

また合わせて既にMeyer-Optik Görlitz時代からしてこの後群側の締め付け固定にコツがあるので、それを以てしてキッチリ仕上げなければなかなか鋭いピント面で組み上がりません。

以上ここまで解説してきた事柄をキッチリ処置して納得できる仕上がりでヤフオク! 出品しようと努めると、実はこのモデルの市場流通価格からして「オーバーホール対価を回収できないモデルの一つ」との認識から普段敬遠し続けているのが正直なところです(笑)

・・それは前回の扱いが2019年だった事からも明白な話です。

来年夏の引退/撤退を鑑みて今回久しぶりに扱いましたがやはりオーバーホール作業対価を回収する事はできそうもありません(涙)・・という事で今回の扱いを以ておそらくこのモデルは最終になります。特にこのモデルは最近は光学系の状態も良くないのでなかなか調達時は ハイリスクだったりします。

↑今回出品の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はPENTACON auto 50mm/f1.8 MULTI COATING《後期型−I》(M42)』のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。当初バラす前のチェック時点で「明らかに白色系 グリースを使ったトルク感」なのが分かるまるでツルツルの印象の距離環操作性だったので「黄褐色系グリース」を塗布してむしろ確実なトルク感を指で感じられるよう (ピント合わせ時の醍醐味を実感できるよう) トルク調整して仕上げてあります(笑)

・・その意味で何でもかんでも軽ければ良いという思考回路は当方にはありません(笑)

また同様に絞り環の操作性もクリック感がとても軽い印象でしたが少し確実に感じられるようやはり抵抗/負荷/摩擦を与えて仕上げています。

その一方でA/M切替スイッチ部は既に経年摩耗が酷くツマミが摩耗しているので改善できて いません・・従って少々硬めの印象のままです。

そして何よりも光学系を光に反射させるとまるでそこいら中にヘアラインキズだらけに見えてしまいますが(笑)、その多くは「コーティング層の線状ハガレ」なのでLED光照射で光学系内をチェックすると物理的に光学硝子面を削っているヘアラインキズではない事が分かります。

しかしシロウト的に指摘するならパッと見でどうしてもヘアラインキズに見えてしまうので そのようなカウントとして出品ページでもちゃんと明記しています。

従って総じてオーバーホール対価は全く以て回収できずタダタダひたすらに赤字なだけで今回も終わりです(涙)

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。

但し後玉外周附近にコーティング層経年劣化ではなくてカビ除去痕の一部にて「菌糸状に極 薄いクモリを伴う箇所 (1箇所)」があるので指摘しておきますがLED光照射で確認しない限り見えませんし、もちろん写真への影響には全く至りません。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

ご覧のように欠く写真で明確に視認できていますがまるで複数のヘアラインキズがあるように写ってしまいます(笑) ヘアラインキズと受け取られるだろうとの認識でカウントしている為クレーム対象になりません。

↑光学系後群側もLED光照射で極薄いクモリが皆無ですが前述のカビ除去痕に伴う極薄いクモリは外周に1箇所残っています。

また同様にまるで多くのベアリングが残っているように写りますが本当のヘアラインキズは 後玉中心部の微細な細線数本だけです (3mm長)。

冒頭解説のとおりキッチリ光軸をチェック済なのでピント面も鋭く戻って本来の描写特性に 至っています。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:15点、目立つ点キズ:9点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:18点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
(前後玉に微かなカビ除去痕が計10箇所あり)
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(前後群内に極微細な薄い20mm長数本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:あり
(前後群内に少々目立つ点キズが数点残っています)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):あり
(後玉外周に薄いクモリを伴う菌糸状のカビ除去痕が1箇所あります)
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内を光に反射させると容易に光学系内のヘアラインキズが視認できますが、実はこれら多くのヘアラインキズは「コーティング層の線状ハガレ」で物理的な光学硝子レンズのキズではありません。それはLED光照射で内部をチェックするとそれらヘアラインキズに見えていた箇所の多くが視認できなくなる事で納得できます。しかしパッと見でヘアラインキズに見えてしまうのでヘアラインキズとしてカウントを行いマイナス要素としてこの出品ページでは明示しています(事前告知済なのでクレーム対象としません)。また多くの撮影シ〜ンの場合で入射光が透過してしまうのでこれらコーティング層の線状ハガレは写真に影響を来しません。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑6枚の絞り羽根もキレイになりA/M切替スイッチや絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正六角形を維持」したまま閉じていきます。

当初バラす前のチェック時点では開放時に完全開放せず「絞り羽根の一部が顔出ししていた」のですがちゃんと改善させています(笑)

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります
・A/M切替スイッチのツマミが経年劣化しており極僅かに硬めの操作性です。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
marumi製MC-Nフィルター (新品)
本体『PENTACON auto 50mm/f1.8 MULTI COATING《後期型−I》(M42)』
汎用樹脂製ネジ込み式M42後キャップ (新品)
汎用樹脂製スナップ式前キャップ (新品)

冒頭解説のとおり本当は光学系内の物理的なヘアラインキズも少なく透明度が高いのですが、当方の信用/信頼が皆無なのでそのようにご認識頂けないと見越して(笑)、最初から低い即決価格に設定しました。

そのような言い回しをご理解頂ける方にとってはむしろこの上なくシックリ来る操作性に仕上げてあるので (A/M切替スイッチだけが惜しいですが) 却って当方の出品にしては低価格で狙い目かも知れませんね・・とモノは言いようです!(笑)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離33cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f4」で撮影しました。

↑f値は「f5.6」に上がっています。

↑f値「f8」になりました。

↑f値「f11」です。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。極僅かですが絞り羽根が閉じてきているので「回折現象」の影響が表れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。