〓 YASHICA (ヤシカ) AUTO YASHINON DS-M 50mm/f1.7《富岡光学製》(M42)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、国産の
ヤシカ製標準レンズ・・・・、
『AUTO YASHINON DS-M 50mm/f1.7《富岡光学製》(M42)です。


当方でのこのモデルの累計扱い数は今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体が21本目にあたりますが、今回初めて光学系内の第4群貼り合わせレンズに『酸化トリウム』を含有していた俗に言う「アトムレンズ (放射線レンズ)」でした。従ってアトムレンズ (放射線レンズ) としてカウントすると今回が1本目と言う話になります。

この『酸化トリウム』を含有している話は今までネット上で指摘されていたので情報を得ていましたが、実際に手にするのは初めてです。そこでさっそくいつものとおり完全解体してバラした際に光学系の 清掃時逐一デジタルノギスを使い当方の手で実測すると「ほぼ同一のサイズ」と判定できそうな計測値でした。

正しくは右に掲載した構成図のとおり前群側は同一としても後群側の第4群貼り合わせレンズ (右図の 部分) 等に極僅かな再設計があったかも知れない印象です。 但しあくまでも計測時の計測誤差の範疇に留まるのかも知れず詳細を確定できていません。

またこのモデルのモデル銘に含む「DS-M」としている要素は既存のモノコーティングタイプだった「DSシリーズ」のマルチコーティングタイプを表しており、且つそのコーティング層蒸着に「グリーン色のマルチコーティング層を蒸着」している点を示しています。

右図は今回出品する個体を前述のとおり完全解体した際、光学系清掃時に逐一当方の手でデジタルノギスを使い計測したトレース図です。

第1群前玉裏面側と第5群後玉裏面側に「グリーン色のマルチコーティング層」が蒸着されている点を表しています。逆に言うなら例えば第2群の表裏はブル〜のコーティング層を蒸着しており、或いは第4

群と後群側に配置される第4群貼り合わせレンズや第5群後玉の表面はパープルアンバー系のワリと濃いめのコーティング層が蒸着されていますから、この「DS-Mシリーズ」に何かしらの商品戦略的な意味合いが込められていたのかも知れません。

しかし実際は『AUTO YASHINON DS-M 50mm/f1.7《富岡光学製》(M42)でも詳しく 解説しているとおり発売した1969年こそセットレンズ化していましたが (取扱説明書自体にちゃんと明記)、どういうワケかその後の登場モデルへのセットレンズとして用意された標準 レンズは事前に登場していたモノコーティングタイプ (DSやDXシリーズなど) ばかりだったので、その点もヤシカ製品の中では特異な経歴を持つモデルと言えそうです。

↑上の写真は当初バラした直後に撮影した光学系後群側の第4群貼り合わせレンズです。ご覧のように経年のブラウニング現象により「茶褐色化」が進行していたのをその証拠として撮っています。

↑一方上の写真は24時間のUV光照射実施後にブラウニング現象をほぼ無色に近い状態まで 改善した時に撮影しています。

『酸化トリウム』を光学硝子材に含有させることで1950年代〜1960年代当時に最大で屈折率を20%代 (2.22%) まで向上させる点を狙い世界規模で流行っていましたが (実数値はモデルの個別で異なる)、その反面経年と共にブラウニング現象の影響から黄変化の一つである「茶褐色化」する事から後の時代1970年代以降多くの光学メーカーで含有をやめています。その代替として後に流行ったのが「ランタン材の含有」だったのでやはり屈折率を最大で10%代まで向上を狙い (1.13%) 採用され続けています (現代でも一部に顕在/同様数値はモデル別にバラバラ)。

『酸化トリウム』含有の場合は経年でのブラウニング現象で生じた「茶褐色化」をUV光の照射によりその改善を期待できますが (必ずしも無色透明まで改善するとは限らない)「ランタン材含有」の場合はどんなにUV光を照射しても黄変化は一切変化しません。またそれら光学硝子材に含有させる材の相違以前に「蒸着コーティング層の経年焼け」等はやはりどんなにUV光照射しても改善は期待できないので、例に挙げるなら「レモンイエロー色のような発色」の黄変化はワリとコーティング層焼けの場合が多いです。

従って「黄変化している事実 (色合いの相違を別として)」のみを抽出してアトムレンズ (放射線レンズ) と大騒ぎするのは正しい認識とは言えないと当方では考察しています。その意味でもしも仮に今回の個体がUV光の照射でも「茶褐色」が改善されなければランタン材の含有ではないかとの考察にも及びます。逆に言うなら『酸化トリウム』含有なら程度の多い少ないはあってもUV光の照射で多少なりとも改善するのでその変化を処置の前後で確認すると良いでしょう。
(材の確定が叶うかも知れない)

ちなみに今回の個体でこの第4群貼り合わせレンズ直下で放射線量を計測すると「6.82μSv」の放射線量をその平均値として残しましたから、間違いなく『酸化トリウム含有』のアトムレンズ (放射線レンズ) と考察できますが、ではその計測値 (平均値) の量はいったい人間のカラダに対してどのくらいの影響/脅威に至るのか調べると意外にも心配するに値しないのが 分かります。

↑上の図は「日本原子力研究開発機構/放射能ってなんだろう?」から抜粋/転載しました。まずそもそも放射線量の単位「μSv (マイクロシーベルト)」をチェックする必要がありますが(笑)、上の図の単位は「mSv (ミリシーベルト)」の違いがあるので、そもそも1桁分単位が繰り上がっている図なのが上の一覧なのだと分かります。

すると例えば胸部X線撮影 (いわゆるレントゲン) 或いは旅行に行ったりなどの際に被曝している外部被曝量たる「0.1mSv」にも満たない話なのが分かりますね(笑) これを以てしても「いや脅威だ!/被曝している!」と大騒ぎするならそもそも屋内でもビルなどコンクリート製の壁などの場合にはそれこそ優に毎日被曝している話になったりします (マンションでも同じ)(笑) はたして撮影時に操作している時間とビルの中に居る時間のどちらが年間被曝量が多いのでしょうか?(笑) そのように考えると当方などは小心者なので森の中に棲みたくなってしまいます・・(笑)

もっと言うならこのような「外部被曝」よりも日々食べている食料品による「内部被曝」の ほうが体内の特に臓器に対する影響度合いは高くなるので、当方などはむしろ食べ物のほうが怖かったりします (何しろ小心者なので)!(笑)

だいたい光学硝子材に『酸化トリウム含有』を当時の日本の光学メーカーの気持ちとして考えれば自ずと自明の理ではないかと考えますが(笑)、それをあたかも脅威の如く語りたいのもきっと人情なのでしょう。もっと言うなら人間のカラダに対する外部被曝として脅威を与えるならそもそも製品化しないでしょうし、はたして海外向けに当時輸出が認可されるのかどうかすら疑問です(笑) さらに当時これらオールドレンズがフィルムカメラに装着して撮影に使われていたと考えるならフィルム印画紙に対する影響はどうなのかさえ気になったりします(笑)

まぁ〜、恐怖感を抱くのは人それぞれ自由ですから尊重致します(笑)

↑今回出品の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説は『AUTO YASHINON DS-M 50mm/f1.7《富岡光学製》(M42)のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑久しぶりにこのモデルを扱いましたがなかなか光学系の状態が良い個体を探すのが厄介です。おそらく当時の「富岡光学製」オールドレンズの多くのモデルで既に光学系の特にコーティング層蒸着に限界が来ていると当方では受け取っています。非常に状態が悪い状況ですね(泣)

残念ながら今回の個体も光学系の状態はそれほど褒められるレベルではありません (このモデルに関しては毎回同じですが)。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体ですが、前述のとおり一部に問題が残り「第1群前玉と第5群後玉にカビ除去痕が残っている」のでパッと見で上の写真のように点状の少々目立つカビ除去痕が残っています (写真向かって右下辺りの白点)。

また合わせてその他にも複数箇所にカビ除去痕が残っており、それに附随してコーティング層がダメージを受けて (コーティング層にまで侵食して) 非常に薄いクモリを伴う箇所があったりします (LED光照射で視認できる/順光目視では不明瞭)。

従ってそれらを加味した「即決価格」で今回は出品しています。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

今まで扱った同型モデルの個体で考えるとコーティング層の蒸着がまだシッカリしていて4回実施する光学硝子レンズの清掃 (4回全て異なる薬剤使用) でもコーティング層に影響が認められませんから、少々褒めたくなる感じです(笑)

↑光学系後群側も内部は透明度が高いですが前述のとおり後玉には経年相応にカビ除去痕が残り、且つ一部はLED光照射で視認できる非常に薄いクモリを伴います。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:20点以上、目立つ点キズ:18点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前群内僅か)
(前後群内極微細な薄い5mm長数本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:あり
(前後玉にカビ除去痕として大きめ数点あり)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):あり
・前後玉にLED光照射で視認可能な非常に薄いカビ除去痕に附随するクモリがあります。
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(但し前後玉カビ除去痕附随の薄いクモリあり)
光源を含むシーンや逆光撮影時にフレアやフレアの出現率が上がる懸念がありますが事前に告知済なのでクレーム対象としません

↑6枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動していますが絞り羽根が閉じる際は「極僅かに歪なカタチ」で閉じていきます (つまり閉じるに従い正五角形に至らない僅かに歪なカタチ/上の写真)。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。また金属材に近い将来的な悪影響を来すことから「無水エタノール/抗菌剤/除菌剤の類」で筐体外装を清掃していません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「重め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
・附属の樹脂製ネジ込み式後キャップはネジ込みの際に極僅かに噛み合わせが一致しません。
(確認しながらまわすとちゃんと入ります)

残念ながら距離環を回すトルク感はこのモデルとしては少々「重め」の印象に仕上がっています。その理由は過去メンテナンス時に (つい数年内) に塗布された「白色系グリース」にその後さらに「潤滑油」が注入されその成分がアルミ合金材に浸透している為、既にアルミ合金材の劣化が進行しているからです。一度浸透してしまった成分は機材が無いので除去できません。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
HAKUBA製MCレンズガード (新品)
本体『AUTO YASHINON DS-M 50mm/f1.7《富岡光学製》(M42)』
汎用樹脂製スナップ式前キャップ (新品)
汎用樹脂製ネジ込み式M42後キャップ (新品)

以下のオーバーホールが終わった後の実写を見て感じましたが、本当に多少のレベルですが確かに『酸化トリウム含有』による効果なのか最小絞り値「f16」でのコントラスト低下と何よりも解像度不足がこのモデルにしては補えているように感じました。とは言ってもあくまでも当方の個人的意見の範疇です(笑)

ご落札頂いた方は・・貴方様は如何様に感じられるでしょうか。ちょっとこのモデルにしては珍しい『酸化トリウム含有』個体をお試しあれ。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離50cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2」で撮影していますが絞り環上の刻印は単なるドット「●」です。

↑さらに回してf値「f2.8」で撮っています。

↑f値は「f4」に上がりました。

↑f値「f5.6」での撮影です。

↑f値「f8」です。

↑f値「f11」になりました。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。極僅かですがそろそろ「回折現象」の影響が現れ始めてコントラストが本当に僅かに影響を受けています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。