◆ aus JENA (アウス・イエナ) Pancolar 50mm/f1.8 (zebra)《初期型》(M42)
(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます
※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。
今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧東ドイツの
aus JENA製標準レンズ・・・・、
『Pancolar 50mm/f1.8 (zebra)《初期型》(M42)』です。
現在ヤフオク! に出品中ですが、いつもお世話になっているファンの方から問い合わせ
頂き、ここでご案内したいと思います。
《問い合わせの内容》
別の人がヤフオク! 出品している同型モデル「初期型」で最小絞り値「f22」に絞り羽根を閉じた時の写真が載っているが、あなたの掲載写真と閉じ具合が
明らかに違う! これについて是非解説をお願いする。
・・と言う内容です。
なかなか適確な・・と言うか通の人向けの非常に厳しい問い合わせ内容でしたが(笑)、当方にすれば想定内の範疇に入ります。
ッて言うか、普段やっているオーバーホール/修理などからしてこのような重箱の隅を突くような非常に厳しい内容の問い合わせが来て、逐一全てに対し明瞭、且つ適確な返答をご案内しています。
もちろんそれは「逃げ口上」に終始せず(笑)、自らの非を認める内容であったりもします(涙)
(いわゆる何十年も前に製産された個体だから仕方ないと言う言いワケを絶対言わない!)
何故なら、そんな言いワケを公然と言っている整備会社などたッくさん存在するワケで(笑)、自らのポリシーに徹している当方が同じ言いワケをするハズがありません!(笑)
すると今回の問い合わせに対する返答は・・! もしかしたらその別の出品者がちゃんと最小絞り値「f22」まで絞り羽根を閉じていないままに撮った写真をアップしているのかも知れないが、それは当方には伺い知れず「間違いなく簡易検査具で各絞り値の実測値を調べている」のが今回ヤフオク! 出品している個体なので・・残念ながら明白な証拠は示す事ができないがただただ信じてもらうしか手がない。
・・こんな感じの返答になりました!(笑)
何とも情けない返答で・・ガックシです!(泣)
逆に言うなら、当方の「整備技術スキル」はこの程度なので(笑)、このブログをご覧になって いらっしゃる皆様も是非とも重々ご承知おき頂きたくお願い申し上げます。
当方に対する過大な期待や信用は仇となる懸念が残っています・・(涙)
それでも何だかんだ言って当方は自らのポリシーを逸脱する気持ちは微塵もありません!!!
全ては近い将来50年後はそれらオールドレンズの大多数が消滅している中・・要はオールドレンズは『絶滅危惧種』と認識し、少しでも生き存えて「さらに先50年見据えて活躍する」べくオーバーホールに臨んでいる次第です。
もちろん当方が助力できるのはせいぜい10年未満 (たかが7〜8年程度) な話ですが、そんな想いだけで日々オーバーホール作業を進めている次第です!(努)
今回の問い合わせを頂いたファンの方はそんな事は百も承知な人なので(笑)、このブログに ひと言載せなさい!・・と暗示してくれたワケで本当にありがたい存在です!!!(涙)
そんなこんなで当方が掲載している最小絞り値「f22」の写真が閉じきっているのは、間違いなく「簡易検査具で調べるとf22の範囲に入っていた」ワケで、これをごまかして写真掲載 する気持ちは当方にはありません(笑)
もちろんそれを信じるのかどうかはご落札者様次第と受け取っています・・(笑)
当方のスタンスとはせいぜいそんなレベルなので(笑)、当然ながらプロのカメラ店様や修理 専門会社様に太刀打ちできる技術レベルには至っていません!!!(笑)
あくまでもそれをご承知の上でご検討頂けるのが良いのではないかと思いますね・・(笑)
ちなみに・・!!!
今この時、オールドレンズを今ドキのデジカメ一眼/ミラーレス一眼にマウントアダプタ経由で使う事が叶っている皆様は「それは一時の話でこれから先数十年もすれば叶わない話になる」ことを覚悟すべきですね!(涙)
・・残念ながら、オールドレンズとはそんなポジショニングなのです。
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このモデルには全部で3種類のモデル・バリエーションがありますが、それら全てを対象にしてカウントすると今回オーバーホール済でヤフオク! に出品する個体が累計で104本目になります。その中でいわゆるゼブラ柄だけに限定してカウントすると34本目にあたり、さらに その中で「初期型」は僅か25本目と言う状況です (Pancolar 50mm/f1.8のほう)。
従って「前期型」のゼブラ柄モデルや最後に登場した黒色鏡胴の「後期型」などはいつでも 市場で見つけられますが、今回の「初期型」だけは検索してもなかなか出回る率が少ないのでヒットしません。それもそのハズで当時「僅か5年間しか製産されなかった」というその頃のCarl Zeiss Jenaにしては珍しいモデルだからです。
《モデル・バリエーション》
※オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。
Flexon 50mm/f2 Gutta Percha:1957年発売
光学系構成:4群6枚ダブルガウス型構成
絞り羽根枚数:6枚
鏡胴意匠:シルバー+エンボス合皮柄
最短撮影距離:50cm
マウント:Praktina/exakta
Pancolar 50mm/f2 Gutta Percha:1959年発売
光学系構成:4群6枚ダブルガウス型構成 (再設計)
絞り羽根枚数:6枚
鏡胴意匠:シルバー+エンボス合皮柄
最短撮影距離:35cm (インジケーター装備)
マウント:M42/exakta/Praktina
Pancolar 50mm/f2 Gutta Percha:1959年発売
光学系構成:4群6枚ダブルガウス型構成 (再設計)
絞り羽根枚数:6枚
鏡胴意匠:ブラック+エンボス合皮柄
最短撮影距離:35cm (インジケーター装備)
マウント:M42/exakta/Praktina
Pancolar 50mm/f2 Gutta Percha:1959年発売
光学系構成:4群6枚ダブルガウス型構成 (再設計)
絞り羽根枚数:6枚
鏡胴意匠:シルバー+突起柄
最短撮影距離:35cm (インジケーター装備)
マウント:M42/exakta/Praktina
Pancolar 50mm/f2 Gutta Percha:1959年発売
光学系構成:4群6枚ダブルガウス型構成 (再設計)
絞り羽根枚数:6枚
鏡胴意匠:ブラック+突起柄
最短撮影距離:35cm (インジケーター装備)
マウント:M42/exakta/Praktina
Pancolar 50mm/f2 zebra:1963年発売 (?)
光学系構成:4群6枚ダブルガウス型構成
絞り羽根枚数:6枚
鏡胴意匠:ゼブラ柄
最短撮影距離:35cm (インジケーター装備)
マウント:exakta/Praktina
Pancolar 50mm/f1.8 zebra《初期型》:1965年発売
光学系構成:4群6枚ダブルガウス型構成 (酸化トリウム含有/再設計)
絞り羽根枚数:8枚
鏡胴意匠:ゼブラ柄
最短撮影距離:35cm (インジケーターなし)
マウント:M42/exakta
Pancolar 50mm/f1.8 zebra《前期型》:1968年発売
光学系構成:5群6枚変形ダブルガウス型構成
(酸化トリウム含有なし/再設計/モノコーティング)
絞り羽根枚数:6枚
鏡胴意匠:ゼブラ柄
最短撮影距離:35cm (インジケーターなし)
マウント:M42/exakta
MC Pancolar 50mm/f1.8《後期型》:1975年発売
光学系構成:5群6枚変形ダブルガウス型構成
(マルチコーティング/再設計)
絞り羽根枚数:6枚
鏡胴意匠:黒色鏡胴
最短撮影距離:35cm (インジケーターなし)
マウント:M42/(exaktaは途中で消滅)
こんな感じで一言に「Pancolar (パンコラー)」と言っても多くのモデル・バリエーションが 顕在しており、その中で今回扱う「50mm/f1.8」のタイプは「 でマーキングした3種類」になります。
そもそも一番最初の開発/製造で出現したのは1957年に遡る「Flexon 50mm/f2」なので、これはちょうど前身たるシルバー鏡胴の「Biotar 58mm/f2」から受け継がれてきた新たな 標準レンズ域のモデルとして設計されたのではないかとみています (従ってBiotarシリーズは シルバー鏡胴を最後に現実として消滅している)。
この一番最初に現れた「Flexon (フレクソン)」のモデル銘由来などまだ分かりませんし、どうしてそのすぐ後に「Pancolar (パンコラー)」銘に変わったのかも知りませんが「Pancolar シリーズ」はその後も継承を続け1990年の旧東西ドイツ再統一まで製産されました (ちなみにドイツ語表記のモデル銘なので発音はパンコラーと認識しています/パンカラーではない)。
光学系は当初一番最初に登場した「Flexon」の時点から既に典型的な4群6枚のダブルガウス型構成で実装されます。
またその後すぐに登場した「Pancolar 50mm/f2」系列も同じく4群6枚のダブルガウス型構成ですが、最短撮影距離が当初の50cmから35cmへと短縮化したので、必然的に光学系の微調整として再設計 したとみています (右構成図はPancolar 50mm/f2)。
残念ながら当方ではいまだに「Flexonモデル」を調達できていないので内部構造も構成パーツも、或いは光学系構成図の実測値トレースも把握できていません。
さらに1965年に登場した今回扱うモデル「Pancolar 50mm/f1.8 zebra《初期型》」登場時点で再び光学系が再設計されますが、これは従前の最短撮影距離35cmを踏襲しながらも光学硝子材の変化から再設計したものと捉えられます。
光学硝子材に「酸化トリウム」を10%〜30%含有させることで 一般的に屈折率を最大で20% (2.22) 向上させる目的で成分配合を 変更しています (このモデルの含有率や到達屈折率は不明)。
さらに「前期型」発売時点で光学系の設計がまた再設計され5群6枚の変形ダブルガウス型構成へと遷移します。
これは最短撮影距離がやはり35cmを踏襲し続けながらも光学硝子材への「酸化トリウム含有」をやめた事に起因し再設計したのではないかとみています (屈折率を稼げず第3群を分離させてコーティング層蒸着面を増やして色収差など含めた収差改善策を講じているがモノ コーティングに戻している)。
後で解説しますが絞り羽根枚数が減じられている事からもそのような背景が伺えます。
最後に登場した「後期型」ではマルチコーティング化が成された為に最短撮影距離35cmを引き継ぎながらも光学系は三度再設計されつつ5群6枚変形ダブルガウス型構成を維持します。
ここでのポイントは今回扱う「初期型」のコーティング層蒸着がその後に登場した「前期型」のモノコーティング層とは異なる点です。
それは前玉側方向からチェックしても後玉側でも同様に「初期型」がほぼ3色の光彩を放っているものの「前期型」ではアンバーパープルの色合いに戻っていることです。
もちろん最後の「後期型」ではマルチコーティング化なので蒸着コーティング層の光彩は再び3色使いに変遷しています。従ってこの辺りに光学系第3群を拡張して (分割させて) 5群6枚へと設計変更してきた因果関係が影響しているような気がしています。
逆に言えば、それ程までに「酸化トリウム含有」は効果が絶大だったのかも知れません。
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気にされる方が多いので今回はオーバーホール済でヤフオク! 出品する個体を仕上げた後に「後玉直下で放射線量を測定」すると計測値は (平均値で)『2.35μSv』でした。
従ってここからは「酸化トリウム含有に伴う放射線の問題」について解説していきます。
ちなみに国産の旭光学工業製「Takumarシリーズ」の標準レンズは一部にやはり「酸化トリ ウム含有モデル」が顕在し、それらは同じく後玉直下で「9.61μSv」前後で計測できるのでさらに放射線量が多い事になります。
↑上の図は日本原子力研究開発機構からの引用です。放射線量を表す単位として「シーベルト (Sv)」を使いますが、上の図のとおり「単位の桁数変化に伴い呼び方が変わる」点が当然な がら一つのチェック項目です。
そもそも「放射能」と「放射線」とは全く異なる意味合いです。「放射線」を放出する物質を「放射性物質」と呼び、その放射線を放出するチカラを指して「放射能」と定義されるので、放射線を放出しながら物質が壊れて放射線量が減じられ、やがて放射線を放出しなくなった 時点を「安定期」と定義しています。
←従って放射線を放出するチカラである「放射能の強さ」と安定期に到達するまでの時間軸で
グラフ化したのが左図になります。
すると一般的に「半減期」と呼称するのは放射線量が当初の半分まで減じられる時間を指し、放射性物質の種類や変異していく内容と共に半減期も変化していきます。
←さらに放射性物質の種類によってその破壊工程の中で放出する放射線は「α (アルファー) 線」「β (ベータ) 線」さらに「γ (ガンマ) 線」とその様態や時間軸と共に放射線の種類も変わります。
今回問題視される「酸化トリウム」は放射性物質「232」のトリウム系列なので、放射線はα線やγ線でありその半減期がとんでもなく長いことが分かります。
またトリウム系列は「自然由来」の放射性物質であり、一方人工的に存在する放射性物質も ある事が分かります。
すると前出の引用を見ると「胃のX線撮影」などでは0.6mSv (ミリシーベルト) と記載されており、今回のモデルの計測値「2.35μSv」は単位を見ればレントゲン撮影よりも遙かに 低いレベルであるのが分かります (μSvはマイクロ・シーベルト)。
もちろん1,000μSvで1mSvに繰り上がりますね(笑)
↑そもそも自宅や会社など、或いは外出時でも「外部被曝」している事が伺えますし、もっと 言えば日々食べている食品にも放射性物質が含まれるので「内部被曝のほうが体内にはより 深刻化する」事が推察できます。もちろん普段呼吸している中で空気中を浮遊する塵/埃などにも放射性物質が附着してる懸念は排除できないので、知らぬ間に体内に取り込んでいるかも 知れません。
そしてその放出する放射線種の相違により被曝箇所と滞留箇所の違いまで現れるので、放射線被曝に気を配るなら相当細かく調べないと把握しきれないと思います。
↑さらに放射線種の違いはそれらを遮蔽する材質も変わるので、例えばα線は紙1枚だけで遮られ、仮にβ線が放射されていてもオールドレンズの場合はアルミ合金材で遮蔽できていることも分かります。しかし今回問題視している「酸化トリウム」はα線とγ線なので、α線のほうの 遮蔽が容易なもののγ線が遮蔽できていない事が分かります。
従ってγ線のほうの放射線量を知りたくなる気持ちも人情として当たり前である事が理に適っていると言えます。その意味で今回のオーバーホール後に仕上がった個体の「後玉直下での計測値:2.35μSv」と言う平均値とその単位からして全く以て脅威には至らずと言えるのでは ないでしょうか。
それでも抵抗があるなら手に入れなければ良いだけの話であって、普段知らぬ間に体内に取り込んでいる放射性物質のほうは自ら何かしら行動を起こさない限り避けようがありません。
要は光学硝子材に「酸化トリウムを含有したオールドレンズ」を俗に「アトムレンズ (放射線 レンズ)」などと呼称するので、あたかも恐ろしい印象だけがピックアップされますが、その 放出する放射線量よりもむしろ「脅威になるのは撮像面での結像残像」と言うノイズのほう ではないかと当方は考えています。
逆に言うならフィルムカメラ時代にフィルム印画紙に記録されていたハズのそれらノイズは、そもそもフィルム印画紙の粒子レベルで混じってしまい視認できないので問題視されませんでしたが、一方今ドキのデジカメ一眼/ミラーレス一眼の撮像素子では「ノイズとして明確に残せる精度にまで到達」したが故にそれを問題視するプロの写真家も居るかも知れませんが、はたして一般的な撮影写真レベルでどんだけの人が「視認判定できるのか」と言えば、やはり気にするべきレベルの話ではないような気がします(笑)
従って当方では基本的に「酸化トリウム含有オールドレンズ」をその放射線量から人体に対する脅威に捉えない
・・と認識しています (せいぜい酒の肴にする程度で抱いて寝ませんから)(笑)
↑上の写真 (2枚) は今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体の光学系を取り出し、第1群 (前玉) 〜第4群 (後玉) までをUV光の照射によって「赤褐色化」をほぼ「無色透明に近い 状態まで改善」させたのを撮っています。
上の写真の左側が当初バラした直後の状況でUV光の照射前になり、右写真が24時間のUV光の照射で無色化させた後の撮影です。
するとその色合いで判定できるのですが、皆さんが何でもかんでも黄ばんでいるオールドレンズの光学系を指して「黄変化」と呼称してしまうので、はたしてそのオールドレンズのモデルが「アトムレンズ (放射線レンズ)」なのか否かとても不明瞭な話になっています。
しかし現実は違います・・!!!
↑上の写真は今回のモデルと同じ「初期型」の光学系内を撮影した写真で、後玉の背後に白紙のコピー用紙を置いて前玉側方向から撮った解説用写真です (過去に扱った個体から転用した写真)。それぞれの個体でいつか使うかも知れないと考え解説用に撮影しておいた写真を流用 しています。
一番左端が「酸化トリウム含有アトムレンズ (放射線レンズ)」でブラウニング現象の影響から「赤褐色化」している状態を指します。
ところが中央のレモンイエローな色合いの場合はどんなに長時間UV光の照射を続けてもほぼ 変化が起きません。
何故なら、これは「酸化トリウムを含有していない」からであり単なる経年劣化に伴う「コーティング焼け」と俗に呼ばれている現象だからです。つまり光学硝子に蒸着したコーティング層が経年劣化に伴い変質してしまっただけなので、これを改善するには一旦コーティング層を剥がしてから再蒸着しない限り無色透明に戻りません。
また一番右端は「初期型」個体を24時間でUV光照射しほぼ無色化できた時点の撮影ですが、やはりコーティング焼けが残っているので僅かにレモンイエローな色合いです。
少々極端な色付き方をしている個体の写真を転用したので濃い色合いで写っていますが、重要なのは「何でもかんでも黄色く変色しているオールドレンズをアトムレンズと呼ばない」ことが肝要ではないかと思います。
逆に言うならコーティング焼けした個体をUV光の照射で改善できると期待して係っても「な〜んにも変化しない!」ので(笑)、単に時間をムダにしただけで終わります。
ちなみにヤフオク! などを見ていても自らオールドレンズを解体して清掃しているプロの写真家が居ますが、このようにブラウニング現象やコーティング焼けで色付きしている場合「カメラボディ側オート・ホワイト・バランス (AWB) で改善できる」と言い切っていますが、それは違います!(笑)
確かにホワイトバランスは自動設定できて真っ白に近くなるでしょうが「肝心な光学系内の 入射光レベルの話が蔑ろのまま」と言う点に於いて「それで本当にプロの写真家なの???」と言いたくなります(笑)
要は光学系内に入ってくる入射光は「光」である以上波長がありますから、カラー成分に対して偏重を来しコントラストの現れ方、或いは解像面での色付き方に変化が起きます。従って オート・ホワイト・バランス (AWB) で真っ白くなったとしても色乗りの良さは (コントラストは) 変化せずそのままなので要注意です(笑)
そもそもカメラボディ側の設定でホワイト・バランスをイジッているだけなのに、どうして入射光の波長まで (そのカラーリングへの振り分けを) イジれるのでしょうか???(笑)
もしもそれが適うならカメラボディ側のオート・ホワイト・バランス設定でオールドレンズ光学系内まで入射光の波長を変化させることができる話になり、どう考えても辻褄が合いません!
・・笑ってしまいます(笑)
意外にもパッと考えただけで思い込みしている人が多い話なのですが(笑)、カラー写真でも 白黒写真でもコントラスト成分に与える影響はブラウニング現象やコーティング焼けで色付きしているオールドレンズのほうが大きくなります。
但し、それを以てして全てに於いて「悪い現象」とダメダメと言うのではなく、むしろその 色付き方の変化が功を奏する今ドキのデジカメ一眼/ミラーレス一眼などでの撮影もあるので (フィルムカメラでは難しいかも)、要はその対象となる「オールドレンズの使いこなしの一環」なのだと言い替えても良い話のレベルです。
例を挙げるならカラー写真ではなくて「白黒写真」でこのような「アトムレンズ (放射線レンズ)」を使うと一度経験した人は知っていますが、特にダイナミックレンジが広いモデルだったりした場合「相当なインパクトを乗せられる写り方」に変わるのが「光/波長を256階調のグレースケール成分に振り分けている白黒写真」で最大のメリットに変わります。
こういう要素で総天然色たるカラー写真ではなくて「たったの256階調しかない白黒写真」で大きな魅力に変わるのだと、モノは考えようみたいな話だと思いますね(笑)
↑上の写真 (2枚) は、左側が今回扱う「初期型」モデルにあたり、右側がその後に登場した「前期型」でその見分け方を解説しています。フィルター枠部分に段差があるかないかの外見だけで簡単に判定できます (グリーンの矢印)。
↑またこの「Pancolarシリーズ」をその製造番号を基に括ると、上の一覧のようにモデル・バリエーションで言う所の「初期型〜前期型〜後期型」がバラバラに混じっているのが分かります (ネット上のサンプル100本で調査)。
旧東ドイツで戦後すぐのCarl Zeiss Jenaは月産能力が僅か5,000台程度だったのが、1990年の東西ドイツ再統一直前には20,000台にまで増産していたので、そのシリアル値の中で混在している説明が「Carl Zeiss Jena本体工場だけ」と固定観念で捉えてしまうと説明できません。
従って当方ではCarl Zeiss Jena本体工場以外にも「複数工場で並行生産」していたとみており且つ「製造番号事前割当制」により各工場の出荷時点で (製造番号を刻印した) レンズ銘板を セットしていたと捉えています (そのように考えないと毎週製産ライン内で新旧モデル・バリ エーションのパーツが混在してしまい非常に効率が悪い)。
↑今回出品の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説は『Pancolar 50mm/f1.8 zebra《初期型》(M42)』のページをご参照下さいませ。
ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。
ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。
↑完璧なオーバーホールが終わりました。レンズ銘板の製造番号は気にされる方がいらっしゃるので当方では必ず掲載写真から消去しています。
レンズ銘板の刻印を見ると「aus JENA (アウス・イエナ)」になっており、Carl Zeiss Jena 表記ではありません。これはドイツ語表記なので「aus 〜」は「〜製」みたいな意味合いに なり、この事から「JENAは使えてもCarl Zeiss表記ができない」状況が見えてきますね。
←そもそもドイツ敗戦時に連合国「アメリカ・ イギリス・旧ソ連・フランス」により東西に分断され占領統治した為に旧ソ連に占領統治された「ドイツ民主共和国 (東ドイツ)」とアメリカ・ イギリス・フランスが分割して占領統治した 「ドイツ連邦共和国 (西ドイツ)」に大きく分かれました。
ところが旧西ドイツ側の首都はボンであり、一方旧東ドイツ側の首都は戦前と同じベルリンだった為に (グリーンの矢印) そのベルリン市も連合国により分断され「東ベルリン/西ベルリン」と分かれていたのです。
従って1989年11月に勃発した「ベルリンの壁崩壊事件」は「ベル リン市の中で西ベルリン側をグルッと囲っていた壁が破壊され崩された事件」であり、東ベルリンが壁に囲われていた話ではありません。
それもそのハズでそもそも旧東ドイツ領内にあるのがベルリン市なので壁で囲うべきは西側のほうだったワケですね(笑)
ちなみに敗戦後旧東西ドイツに分断された時点の1945年〜1960年の15年間は東西ベルリンを遮るのは「壁ではなくて鉄条網」だけでした (グリーンの矢印)。もちろん東西ベルリンを 分断していた境界は数十メートルの立ち入り禁止区域が設けられ、且つ監視所と検問所が備えられていましたが、戦後の経済格差が顕著になり特に旧東ドイツ側から逃亡を図る人口が増大した為に「1961年から壁が敷設された」のを指してベルリンの壁と呼んでいます。
これらの当時の背景を知った上で、今度は旧西ドイツ側Carl Zeiss (Oberkochen市) が旧東 ドイツ側Carl Zeiss Jenaに対して「Carl Zeiss銘の使用禁止」或いは「モデル銘の表記禁止」さらに「複層膜コーティング層蒸着表記の禁止」と絶大なる制約を互いの製品が競合する国や地域に対して課していた問題が表面化してきます。
レンズ銘板などへの「Carl Zeiss」刻印はもちろん「Pancolar→P」「Flektogon→F」「Tessar→T」などモデル銘も頭文字だけの表記しか認められなかった時期があります。それに合わせてモノコーティング (複層膜コーティング層蒸着) を示す「zeissのT」刻印まで禁止され「◇」の菱形で当初は刻印を余儀なくされていました。
これらの制約は旧東ドイツ側Carl Zeiss Jenaが製産した全ての出荷品に適用されたのではなく「あくまでも旧西ドイツ側Carl Zeissの製品と競合する国や地域に限定」した内容でした。
しかしそれでも当時旧東ドイツ側の経済力が大きく下落し経済格差が表面化してきた時期には特に戦後競合する光学メーカーを次々に吸収合併し続けてきた旧東ドイツ側Carl Zeiss Jenaにとってはその従業員規模の問題と共に利益の確保が最優先課題だったようです (1989年時点で従業員数は44,000人を超える超巨大企業になっていた)。
結果ついに耐えられなくなり1953年に旧東西ドイツ内で起きた最も長い裁判と後に評価される「商標権裁判」が提訴され、実にその審理は18年間にも及び1970年にようやく結審し、 翌年1971年に判決が出ました・・旧東ドイツ側Carl Zeiss Jenaの敗訴だったのです。
(裁判判決が出た時点で制約を課したのではなく既に1950年代後半から課されていたのが真実)
この裁判について西側陣営の工作などと揶揄される事がありますが、現実はそうではなくて「あくまでも主要人物の存在と権利証の所有」が決め手だったようで、要は敗戦直前の1945年4月中旬に当時首都ベルリン陥落だけを目指して進軍していた旧ソ連軍に先んじて、アメリカ軍が郊外地域に退避していたCarl Zeiss Jenaの主要人物 (126人) と証書を含む設計図面や資料を接収し「Oberkochen (オーバーコッヘン) 市」に集めていたのが功を奏した話です (そのままOberkochen市でCarl Zeissが戦後すぐに創設)。
そして実際には前述の様々なCarl Zeiss Jenaに課せられていた制約も、根強い交渉によりその厳しさは徐々に緩和され「旧東ドイツ側製品を明示するならCarl Zeiss銘を含んでも良い」とされ、Carl Zeiss Jena DDRの刻印が許されました。「DDR」は「Deutsche Demokratische Republik」の頭文字を採った旧東ドイツを表すドイツ語表記なので、Carl Zeiss Jena銘に「DDR」がくっついたのが納得できます。
ここでこの生産国を示す表記をサラッと見過ごすと、また見えてくるモノを見逃します(笑)
当時の国際輸出管理法 (現在とは一部異なる) に照らすと西欧圏への輸出は英語表記が義務づけられていたので旧東ドイツを表す表記は「GDR」になり「German Democratic Republic」という英語で示されます。従って数多くの旧東ドイツ側陣営のオールドレンズもその鏡胴/レンズ銘板をチェックすると「DDRとGDRの2種類が顕在している」事を知ります。
するとそこから「東欧圏に限定して輸出していた個体なのか西欧圏だったのかが判明する」 ワケで、たかが生産国表記と馬鹿にせず一歩引き下がって考えると、意外なその個体の素性が見えてきたりしますね(笑)
その他モデル銘の省略表記も解消しモノコーティング刻印も使えるようになりましたが、そもそも時代背景として1960年代に入るとモノコーティングは世界規模で当たり前になり「zeissのT」刻印を省くようになってしまったのでレンズ銘板から消えています (刻印をやめただけでコーティング層蒸着種別は変わらない)。
長々と解説してきましたが、このように当時の時代背景を知ることで現在市場流通している様々な個体の因果関係が掴め、あわせて例えば今回出品する個体のレンズ銘板に「zeissのT」刻印が存在しない理由まで明白になりますね(笑)
今回の出品個体は「aus JENAだけでモデル銘を刻印しているので東欧圏に輸出された個体」と推測できるのが理に適います。ちなみに今回の個体はレンズ銘板刻印の製造番号から1969年の年明け辺りに輸出された個体とみています (既にCarl Zeiss Jenaの月産能力が20,000台を超えていた時期なので戦後すぐの5,000台からすれば相当競合光学メーカーの吸収合併が進んでいた時期とも考えられる → 例:Meyer-Optik Görlitz吸収合併は1968年)。
最後までCarl Zeiss Jenaが配下に従えていたPENTACON (ペンタコン) も、ついに経営難から逃れられずに1981年にCarl Zeiss Jenaに吸収合併し、従業員8,000人強が移籍しています。
その母体たるCarl Zeiss Jenaも最終的な従業員数44,000人規模を従えたまま1990年には前年の「ベルリンの壁崩壊事件」が契機になり、旧東西ドイツの再統一へと進み波瀾万丈だった戦後からの歴史に終止符を打ちOberkochen市のCarl Zeissに統合され「長き時を経て再び一つの国に戻れた」と言う感慨深いストーリーが残りました(涙)
その辿ってきた歴史の重さは同時に旧東ドイツ時代に吸収合併していった多くの光学メーカーに携わり、時の使命感や栄光を糧にして熱き想いを燃焼させた人々が辿った道でもあり・・
是非ともこの知識を活用しオールドレンズに対する愛着へと繋げて頂ければ嬉しいですね(笑)
↑さすがに製産されてから様々な人の手に渡りつつも「半世紀 (52年)」を経ているとなればその光学系内の状況は容易に経年劣化の進行が伺えます。実際市場に流通している多くのCarl Zeiss Jena製オールドレンズで光学系のコーティング層蒸着、或いは貼り合わせレンズのバルサム剤が限界値に到達してしまい、オーバーホールや整備ではその修復/改善/除去が難しい 状況に至っています。
◉ 貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤 (バルサム剤) を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す
◉ バルサム切れ
貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態
◉ ニュートンリング/ニュートン環
貼り合わせレンズの接着剤/バルサム剤が完全剥離して浮いてしまい虹色に同心円が視認できる状態
上記の解説を読めば明白ですが、オールドレンズの光学系内を覗き込んだ時、或いは光源に 翳して内部をチェックした時「薄いクモリ」が生じていた場合、その除去は必ずしも清掃だけで消えるとは限らないことを「手に入れる際のリスク」として認識する必要があります。
特に昨今ネット上でのオークション傾向を観ていると、特にオールドレンズに関し「光学系内は視認性が良い」或いは「撮影に影響を来さないレベル」などとこれらの状況を逃げ口上で 売らんが為に「ごまかして出品しているパターン」が非常に多くなっています。
重要なのは光学系内の視認性が良いか否かではなく (それは個人の主観に拠る度合いが非常に大きいから)、例えチェック時の見る角度の違いがあったとしても「極薄いクモリの有無」は 必ず撮影シ〜ンに対し何らかの制限を掛けます。
この「極薄いクモリの存在/有無」まで「個人の主観対象には決して入らない」事を皆さんは 確実に認識するべきです!!!
どんな角度からも光学系内には入射光が必ず透過します。従ってどんな角度で光学系内を覗き込もうと「一部の群のガラスレンズに全面に渡って生じている極薄いクモリの存在」が確認できた時点で、必ずや「フレアの発生率増大」「フレアの増大」或いは最悪の場合には「低コントラストや解像度不足」に陥る懸念も高くなる事を認識すべきです。
◉ フレア
光源からの強い入射光が光学系内に直接透過し画の一部分がボヤけて透けているような結像に至る事を指す
◉ フレア
光源からの強い入射光が光学系内で反射し乱反射に至り画の一部や画全体のコントラストが 全体的に低下し「霧の中での撮影」のように一枚ベールがかったような写り方を指す
従って光学系内の一部の群に生じた「極薄いクモリの存在」は仮に全面に渡るほどの面積を 有していた場合、写真に影響しないワケがありません!(怒)
それを撮影には影響しませんと謳っている事が問題なのであって、その場合は「撮影シ〜ンによっては影響が現れる」と明記するのが正しい表現です。
もっと言うなら「どんなクモリの程度でもクモリが存在するなら明記する必要がある」とも 言い替えられますし、それを「個人の主観」と断言している時点で「クモリの有無」は物理的な事実なのか否かが問われる話であり、主観が及ぶ範疇には入りません!
これらの話は当方が以前簡易裁判所で弁護士を付けて闘った際に裁判長の判定で示された話であって当方には相当な勉強になりました (当方が勝訴)。
例えば光学系内の一部の群だとしても「ほぼ8割方全面に渡り非常に薄くクモリが顕在する 場合」でも中心部分が抜けてクリアならその影響度は多少低くなりますが「中心部を含んで しかし非常に薄いクモリがあった場合」はアウトです。
また光学系内の一部の群の外周部分に相応な幅で中心方向に向かってクモリが生じていても 中心部が抜けているならよほど入射角度が厳しい光源を含んでいた撮影シ〜ンを除いて写真 への影響は低くなります。
さらに光学系内の一部の群に「非常に微細な点キズが特に中心部に集中していた場合」或いは「後玉の中心部に微細な点キズが集中していた場合」(いずれもコーティング層経年劣化やカビ除去痕を含む) は、その密集度合いによっては撮影した写真に影響が現れるので、このようなパターンでは確かに「個人の主観」が関わります。
従って何でもかんでも「個人の主観」と括るのは実際の簡易裁判所の判例を見る限り、必ず しも正しいとは限らない事を知るべきと考えます!
このような話はこのブログ内メインメニューで開示している「見たて依頼受付フォーム」で 実際に当方がご依頼オークションの掲載写真を画像処理してチェックする事で「整備経験者の体験値から大凡の影響度合いを判定できる」事が適うので、オークションの掲載写真を見れば それだけで判断できると思い込んで高を括ると痛い目に遭うかも知れませんね(笑)
しかしそうは言っても当然ながら光学硝子レンズに起きている「極薄いクモリ」が除去できるのか否かはやってみなければ分かりません (経年の揮発油成分なのかコーティング層の変質 なのかは分からない/掴めない)(笑)
話が反れましたが、今回出品する個体は上の掲載写真のとおりスカッとクリアで全く以て信じられないほどです(笑) 当然ながらLED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。
↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
当方の撮影スキルがメチャクチャ低いので(笑)、2枚目の写真には光学系第2群の貼り合わせレンズに蒸着されている「プルシアンブル〜のコーティング層色合い」が含まれませんでしたが、実物は観る角度により視認できると思います (単品で第2群を取り出せば分かる話)。
従って前玉側方向から光に反射させて確認すると本当はその角度によって「パープルアンバーブル〜」の3色の色合いが瞬間的に視認できます。逆に言うならこの当時のモノコーティングに多いオールドレンズは「アンバーパープル」或いは「パープルアンバー」でそれぞれのモデルで放つ光彩の優先が違っていたりします。
↑光学系後群側もスカッとクリアでもちろんLED光照射で極薄いクモリが一切ありません!
せいぜい指摘しても後玉外周附近に多少残っているパッと見で「微細な塵/埃」に見えてしまう非常に微細な点キズが数点あるだけです。
↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:11点、目立つ点キズ:6点
後群内:14点、目立つ点キズ:7点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり
(前後群内に微かな3mm長前後が数本あります)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内の透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
↑8枚の絞り羽根もキレイになり絞り環やプレビューレバー共々確実に駆動しています。
絞り羽根が閉じる際は「完璧に正八角形を維持」したまま閉じていきますが、最後の最小絞り値「f22」の時だけ上の写真のように1枚の絞り羽根だけが閉じる角度がズレます (この因果 関係は開閉レバーの直近の絞り羽根なので一番最初にチカラの影響を受けているからで設計上の仕様です)。
またこのモデルの市場流通品をチェックしていると絞り値「f11〜f22」の間で閉じなくなったり、或いは「f16〜f22」で下に沈み込みが激しい場合がありますが、これらは「沈降現象」で組み立て時の絞りユニットの微調整が適切ではありません (もちろん今回の個体は沈降現象が起きていない)。
なおこの「Pancolarシリーズ」で「8枚の絞り羽根を実装」しているのは後にも先にもこの「初期型」だけです。冒頭解説の「酸化トリウム」を光学硝子材に含有させてしまったが為に入射光制御に6枚の絞り羽根では完結できず8枚に増やしたのが分かります (それだけ厳密な絞り羽根開閉制御が必要になってしまった事の現れ)。
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:重めと超軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人によって「重め」に感じ「全域に渡って完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。
【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
・当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
↑今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。
《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
① marumi製MC-Nフィルター (新品)
② 本体『Pancolar 50mm/f1.8 (zebra)《初期型》(M42)』
③ 汎用樹脂製ネジ込み式M42後キャップ (新品)
④ 純正樹脂製被せ式前キャップ (中古品)
距離環を回すトルクは当方のファンの方々が歓んで頂ける「シットリしたトルク感」で、特にこのモデルのピントの山が「瞬時でアッと言う間!」なので、その前後で確実に違和感なく 軽い操作性で合わせられます。
また絞り環操作は鋼球ボール+スプリングではない設計なので (棒状ピン+板バネ) 僅かにガチガチした印象ですが、特に板バネを弱めると下手すると折れるので敢えて改善していません。
さらにプレビューレバーが鏡胴側面に装備していますが、その挙動とマウント面から飛び出ている絞り連動ピンとの動きは「100%完璧に連動」していますからフィルムカメラにお使い頂いて何ら問題ありません。
当方がお勧めする「M42マウントアダプタ」は中国製ですがK&F CONCEPT製をご案内します。このマウントアダプタだけは「ピン押し底面」の深さを「約0.4ミリ分」だけですが深くしたり浅くしたりの微調整が適うので (ピン押し底面が両面使いの設計) 他のマウントアダプタには無い大きな特徴と共に安心材料でもあります!
取り敢えず今回の個体を装着する側は「ピン押し底面の凹面をオールドレンズ側方向にセット」して0.4ミリ分深くしたほうが無難です (もちろん当方にてチェック済)。
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい。当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません。
↑当レンズによる最短撮影距離35cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。
↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。絞り環のクリック感は半段ずつで最小絞り値「f22」だけ一段なのが仕様です。
↑f値は「f5.6」に上がっています。まだまだピント面のミニカー背景のボケ味が素晴らしいです!
↑f値「f16」になりましたが、もうほとんど絞り羽根が閉じてきているのにご覧のようなコントラスト解像度を維持し続けており、さすが「酸化トリウム含有レンズ」だけあって素晴ら しい写りです。
↑最小絞り値「f22」での撮影ですが、確かにジックリチェックすれば「回折現象」の影響が現れ始めていますが、それでもこれだけの写りを残せるなら当方はぜ〜んぜん気にしません!(笑)
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。
◉ 被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。