〓 Tokyo Kogaku (東京光学) Topcor−S 5cm/f2《前期型》(L39)
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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません
今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、国産の
東京光学製標準レンズ・・・・、
『Topcor−S 5cm/f2《前期型》(L39)』です。
このモデルの扱い数は今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体が累計で5本目にあたりますが、実は今までは全てオーバーホール/修理ご依頼分の作業で扱っていただけなので、純粋にヤフオク! に出品するのは今回が初めてです。
当時東京都葛飾区に存在したフィルムカメラメーカー「レオタックスカメラ」から1954に発売されたバルナック型ライカコピーモデルの「レオタックスF」セット用レンズとして、東京光学が供給していた標準レンズの一つです (右写真はレオタックスF)。
次のモデルとして登場した絞り環と距離環の距離指標値が黒塗りに変わったモデルが「中期型」になり1956年の発売なので、今回扱う「前期型」が発売された時期は1954年〜1955年なのでしょうか。
【モデルバリエーション】
↑上の写真の3本はいずれも光学系が4群6枚のダブルガウス型構成で設計されているタイプで左端から「前期型/中期型/後期型」になりますが、最後の「後期型」だけ光学系が再設計されているとの事です。またレンズ銘板のモデル銘に「−S」が附随しない「初期型」が存在し、光学系の設計が異なり後群側の第3群を分離させたままの5群6枚拡張ダブルガウス型構成 モデルがあるようです。
特にピント面の鋭さとコントラストの高さだけで見ると「前期型〜中期型」までがインパクトのある写りになり「後期型」ではどちらかと言うと整った印象の描写性に変わっているように感じます。また「初期型」は逆に収差の制御にまだ課題が残っている印象なので、それぞれのモデルバリエーションを集めて撮り比べするのもまた楽しいかも知れませんね(笑)
↑上の写真は今回扱った個体をバラした直後に「溶剤で洗浄する前」にそのまま並べて撮影しました。左端から「距離計連動ヘリコイド」に「ヘリコイド外筒 (メス側)」と「ヘリコイド 内筒 (オス側)」ですが、ヘリコイド (オス側) はそのままマウント部になっています (グリーンの矢印)。
いずれも材が真鍮 (黄銅) 製なので、この部分だけでもズッシリと重みを感じますが、問題なのはご覧のとおり既に経年で酸化/腐食/錆びが生じている点です。
また過去メンテナンス時に塗られてしまったのが「白色系グリース」なので、真鍮 (黄銅) 材の摩耗粉が混じって「焦茶色」に変質しています。
今回の個体は既に揮発油成分が飛んでしまい、当初バラす前のチェック時点で距離環を回した時のトルク感が「スカスカの印象」でした。
ライカ判ネジ込み式マウント規格「L39」の為「距離計連動機構」を装備していますが、一般的に多く採用されているダブルヘリコイド方式を採らずに、東京光学のこのモデルでは「距離計連動ヘリコイド部分を直進筒で設計してしまった」特異な構造です。
つまり距離環を回すとヘリコイド外筒のオスネジとメスネジが噛み合いながら回転していく際それに連動して「距離計連動ヘリコイド (筒)」を引っ張り上げたり降ろしたりして駆動させる概念です。
従って上の写真の赤色矢印部分は本来なら「鏡面仕上げ」すべきところを、そのままグリースを塗って「ごまかし整備」で仕上げてしまったのが過去メンテナンス時の整備状況です(笑)
赤色矢印の箇所をよ〜く観察すると経年で擦れてしまい「縦方向/直進方向の擦りキズ」がとても多く残ってしまいました。このような擦りキズが残るのはそもそも真鍮 (黄銅) 材がそれほど硬くない軟らかな材だからでもありますが、金属材を知っている人なら承知しているモノを「グリースに頼った整備」をしているからこのような結末に至ります(涙)
逆に言うなら、今回のオーバーホールで当方は「鏡面仕上げに戻す手間がかかる」ワケで全く以てありがた迷惑な話です(泣) 何故なら、元来鏡面仕上げで互いが接触し合う箇所は「金属材の種別により必要とされる適切な隙間がある」のですが、今回のオーバーホールで鏡面仕上げの処置を施すと「多めに隙間が生じる懸念が高くなる」のがトラブルの元なのです(泣)
つまり正しい製産時点の状態に戻そうと処置したのに、結末はトルクムラや重いトルクに堕ちるなど全く以て本意ではない仕上がりに至る懸念が高いワケです。その意味で「何でもかん でも白色系グリースでごまかす」のは本当にやめてほしいです!!!(怒)
↑完全解体した時の内部構成パーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説は「Topcor-S 5cm/f2《前期型》(L39)」のページをご参照下さいませ。
ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。
ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。
↑完璧なオーバーホールが終わりました。ちょうどレンズ銘板の「−S」箇所が光ってしまい ましたが「前期型」モデルになります。
↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体ですが、実は第3群の貼り合わせレンズ「外周附近の一部にコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリ」があります。おそらくLED光照射で前玉側方向から覗き込んでも発見できないと思います(笑) 後玉側方向からLED光照射で覗き込んで「必ず薄クモリが存在する!」と気合いを入れて探すと何とか発見できるレベルと言えば伝わるでしょうか?(笑)
従って出品ページも判定シートも全て「薄いクモリあり」と明記していますが、実際のブツを見てもそう簡単には発見できません(笑)
確かに当方は『転売屋/転売ヤー』ですが、何でもかんでも売り捌く輩とは異なり(笑)、一応 目視して順光だろうがLED光照射だろうが「見えたモノは見えると明記」するのが筋と言う スタンスです。従って今回出品個体はそのような内容を事前に知った上でご落札をご検討願えればと言う想いで出品しています。
それを「個人の主観」と言う逃げ口上で済ませているヤフオク! の出品者などが横行しているのが現実ですが、当方は異なり「可能な限り客観的な事実を明記する」のが良心と言う考え方なので、出品ページは必ず「返品可」の設定になっており、あくまでも「出品ページ記載内容との相違」を以て返品キャンセルと全額返金を執っています。
↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
↑この後群側の貼り合わせレンズの外周附近に2cm長程度の範囲で細く薄曇のコーティング層経年劣化が残っていますが、パッと見でコバ端の写り込みのようにも見えてしまいます(笑) おそらく言われなければそのままいつまでも使っているかも知りません (上の写真で白っぽく写っているのは撮影時の反射なので違います)(笑)
↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:13点、目立つ点キズ:9点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(極微細で薄い2mm長ヘアラインキズ1本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):あり
(第3群貼り合わせレンズ外周に微かな薄クモリがLED光照射で視認できる程度であります)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内の透明度が非常に高いレベルです。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。
↑9枚ある絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。経年の油染みで粘性を 帯びていた時期が相応にあり、9枚の絞り羽根のうち「3枚が噛んでいた」為に2枚にその時の亀裂 (1mm長) が入っています。今回のオーバーホールでなるべく平坦に戻していますが、一部に折れていた箇所が残っています。事前告知済なのでクレーム対象としません。
ハッキリ言ってこのモデルの絞り羽根は異常に薄くてペランペランなので、
油染みの放置は絞り羽根が噛む因果関係に繋がり易く「致命的」です。
なお絞り羽根が閉じていく際は「完璧に円形絞りを維持」したまま閉じていきますが、当然ながら途中は角張っています。
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:軽めと超軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人によって「軽め」に感じ「全域に渡って完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。
【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
・当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
↑今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。
《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
① HAKUBA製MCレンズガード (新品)
② 本体『Topcor−S 5cm/f2《前期型》(L39)』
③ 汎用樹脂製ネジ込み式L39後キャップ (新品)
④ 汎用金属製被せ式前キャップ (中古品)
↑ネット上の解説やヤフオク! 、或いは海外オークションebayなどをチェックしても、ほとんどの個体で上の写真のように「同一直線状に基準マーカーが並んでいない」と言えます (基準 マーカーの指標値でf16やf11の辺りに来ている事が多い)。
ご覧のとおり今回の個体をK&F CONCEPT製「L39 → SONY Eマウントアダプタ」にネジ込むと、ちゃんと真上の位置に指標値基準「▲」マーカーが来ます。すると「人情として真っ直ぐ直線状に絞り値基準「●」マーカーも来るのが当たり前」と考えるので、今回のオーバーホール工程で上の写真のように仕上げました。
ちゃんとグリーンのラインのように一直線上に二つの基準マーカー「▲と●」が並びます (赤色矢印)。また絞り環のクリック感が当初バラす前のチェック時点では「ガチガチで硬め」だったので、程良いクリック感に軽めに設定しました。
もちろん距離環を回すトルク感は「軽め」に仕上げ、且つトルクムラもなく「完璧に全域に渡り均一」ですから、本当に気持ちよくお使い頂けると思います。それもこれも全ては『DOH』によるオーバーホール工程を経たからであり、ちゃんと「距離計連動ヘリコイド筒を鏡面仕上げにした」から軽いトルク感に仕上がっている次第です(笑)
・・たったそれだけの話です!(笑)
なおこの個体は当初バラした直後にチェックすると光学系内の「全ての締付環/格納筒内壁」が過去メンテナンス時に厚塗りされた反射防止黒色塗料が盛られていたので、全て溶剤で溶かして剥がしました。
結果・・とても鋭いピント面に戻ったので本来のインパクトのある描写性をお愉しみ頂けます (もちろんこのモデルのピントの山は瞬時でアッと言う間なので距離環を回すトルク感が軽いのもきっとありがたいでしょう!)(笑)
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい。当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません。
↑当レンズによる最短撮影距離1m附近手の開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。
↑f値「f11」です。もうだいぶ絞り羽根が閉じてきているのでピント面の解像度が低下し始める「回折現象」の影響が現れ始めています。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。
◉ 被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。