〓 Sankyo Kōki (三協光機) KOMURA− 105mm/f3.5 (black)(L39)
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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません
今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、国産の
三協光機製中望遠レンズ・・・・、
『KOMURA− 105mm/f3.5 (black) (L39)』です。
この当時の三協光機製中望遠レンズ「焦点距離:105mm」の中でライカ判ネジ込み式「L39マウント」規格でだけで括ると、もともと1955年一番最初に発売された「105mm/f3.5」の他に、1958年発売の「105mm/f2.8」モデル、1960年「105mm/f2」に1964年に登場の「105mm/f2.5」そして最後に登場した1968年「105mm/f3.5 II」と5モデルに至り、他の焦点距離に比べて圧倒的にバリエーションが多いワケですが、どういうワケか広角レンズ域に焦点距離28mmと35mmの2種類が存在するものの、標準レンズ域だけは1本も発売されなかったという少々不思議な戦略です。
今回扱うのはその中で一番最初に登場したであろう「105mm/f3.5」モデルですが、絞り環の操作にクリック感が伴うものの実絞り方式という、後に登場する「プリセット絞り機構装備」とは異なります。
また鏡筒の繰り出し/収納方式が回転式なので「距離環を回すと絞り環まで一緒に回っていく」操作方法になります。従って距離環でピント合わせした後に絞り環を操作すると途端にピント位置が狂ってしまうので、撮影時の使い方としては一般的な方法の逆になり「絞り値を先に 決めてセットしてからピント合わせする必要がある」使い辛さを伴います。
そのような事情から絞り環には2箇所に絞り値が刻印されています (両サイドに刻印)。
また内部構造としてライカ判ネジ込み式「L39マウント」規格の場合、必ず「距離計連動ヘリコイド」を装備している為ダブルヘリコイド方式を採っており、ヘリコイド (オスメス) の繰り出し/収納に連動して「距離計連動ヘリコイドも繰り出し/収納する」仕組みです。
さらにその構造として特異な設計を採用した結果、特にトルクが重くなり易い連係動作なので市場に流通している個体の多くは、ピント合わせし辛い重さのトルクに堕ちている場合が多いようです。
今回扱う個体が当方では累計で14本目にあたりますが、やはり当初バラす前のチェック時点で相当重いトルクに至っており「ピント合わせしようとするとマウントのネジ部が回ってしまい外れる」と言う状況でした。
「ピント合わせしてからボケ味を調整したい」のが一般的との考えから、本来なら「距離環側のトルクを重めに設定し、絞り環側を軽くする」よう仕上げ、絞り環操作でピント位置がズレないように設定するのが好ましいですが、このモデルは「絞り環操作時にクリック感を伴う」のでとてもそれより重いトルク感に距離環側を調整できません (そのように設定すると結局は重すぎるトルクになり違和感を抱く)。
つまり距離環側のトルクを「軽め」に微調整しており、絞り環側のクリック感は構造上から イジれないので変更せずそのまま組み上げています。従って前述のとおり「絞り値を先に設定してからピント合わせする」使い方でご留意下さいませ。
その代わりこのモデルのピントの山がなだらかでピークを掴み辛い分「大変軽い操作性で距離環を回せるのでピント合わせ時の微動が楽」と言うメリットに繋がっています。
逆に言えば、このモデルをここまで軽い操作性で仕上げられるオーバーホールはなかなか難しいので、ご落札頂く方にはとても意義のある仕上がりに至っていると思います。特に「距離計連動ヘリコイドを引っぱったまま、距離環をズズ〜ッと相当な繰り出し量で回せる軽さ」と いうのが堪らないでしょう (このモデルの距離環を回すトルクが重くなる根本的な理由)(笑)
当方ではあまりこのブログで説明しませんが(笑)、例えば整備のヒントとして「距離計連動 ヘリコイドが必要ない (つまりライカ系マウントで使わない人)」なら、整備する際にこの距離計連動ヘリコイド部分をそっくり取り外してしまえば「とても軽い操作性で距離環を回せる ようになるのは当たり前」なので、要はどんだけの長さを繰り出し/収納させるのかの問題よりも、むしろ (このモデルに限っては) 距離計連動ヘリコイドを必ず引っぱって/連係させて駆動する方式なのがトルクを重くしている根本的な原因なのです。
その意味では、もちろん見てくれは悪いですが (L39マウント規格なのに距離計連動ヘリコイドが飛び出ていないから)、マウントアダプタ経由今ドキのデジカメ一眼/ミラーレス一眼などに装着して撮影される方には、逆にメリットになる話です (モノは考えようという事)(笑)
但し今回の出品個体は正規の状態でちゃんと組み上げたので、まるッきし設計された時の意図通りの動き方に仕上がっています (距離計連動ヘリコイドを装備していながら、ちゃんと軽い トルク感に仕上がったと言う意味)。
つまりは過去メンテナンス時にちゃんと「黄褐色系グリース」を塗ってくれていた分、ヘリコイド (オスメス) のネジ山摩耗が少なかったので「磨き研磨」も最低限で済み、その結果がこの距離環の軽いトルク感に至ったと言う因果関係です。逆に言えば、どんだけ過去メンテナンス時に塗られてしまった「白色系グリース」が厄介で面倒なのかを、まさに物語っているような今回のオーバーホール作業でした (だいたいそもそも製産されていた当時の1955年〜1967年辺りに使われていたグリースは黄褐色系グリースだったハズなので、それを前提にした金属材の成分/配合と設計を採っているのは容易に推察できる話)!(笑)
詳しいことはこのブログで解説している「DOH」掲載写真で、相手がアルミ合金材なら「濃いグレー状に変質」し、或いは相手が真鍮 (黄銅) 材なら「焦茶色に変質」した白色系グリースの経年劣化を見るだけで「ヘリコイドネジ山の摩耗は一目瞭然」と言えないでしょうか?(笑)
↑完全解体した時の内部構成パーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説は「KOMURA− 105mm/f3.5 (M42)」のページをご参照下さいませ。
ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。
ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。
↑完璧なオーバーホールが終わりました。一つ前の完全解体した時の全景写真を見ると「中央の白紙の上に異様なモノが乗っている」のが分かります。
↑その異様なモノを拡大撮影しましたが、絞りユニット内の「16枚の絞り羽根」が広がった状態で撮影しており、当方ではこれを指して「手裏剣」と呼んでいます(笑)
絞り羽根には表裏に「キー」と言う突出があり、その「キー」にそれぞれ役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。
◉ 位置決めキー
「位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー
◉ 開閉キー
「開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー
◉ 位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)
◉ 開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環/リング/輪っか
すると上の左写真赤色矢印をご覧頂くと分かりますが「三角形状に飛び出ている羽根のようなモノが4枚ある」ワケです。
本来この当時の多くの光学メーカーが「金属製の小さな突起棒をプレッシングして絞り羽根に打ち込む」方式を採っていた中、極少数の光学メーカーがこのような「微細な羽根状のキー」を採用して絞り羽根を組み付けていました。
これは絞り羽根に「十字の切り込みを入れ同時にプレッシングして折り曲げる」とこのように4枚の非常に薄い小さな三角形状の羽根が完成します。
この4枚の小さな薄い羽根が空いている穴に引っかかることで「絞り羽根が閉じたり開いたりする動きを実現する」原理なのですが、実は相当貧弱で「少しでも必要以上にチカラを加えると簡単に根元からパリッと折れてしまう」厄介なシロモノです(怖)
特に上の左写真の「キー」は「開閉キー」の役目なので、写真のように「垂直状に立ち上がっているのが正常/好ましい」ワケですが、一方もう一つ前の「手裏剣の写真」は「位置決め環の穴に位置決めキーが刺さって外れないよう羽根を裏側にさらに折り曲げてあるプレスを施してある」から厄介なのです(怖)
ネット上の整備解説など見ると、敢えてこの絞り羽根を触らない整備者が居ますが(笑)、実は先ほど説明したように「非常に薄い羽根状」なので、この絞り羽根が経年劣化により酸化/腐食
/錆びが生じて赤サビや油染みが起きていると「いずれ羽根の根元からパリッと折れて絞り羽根が機能しなくなり顔出ししてしまう製品寿命に至る」から怖いのです!(怖)
要はせっかく整備するならヘリコイド (オスメス) だけではなく、必ずこの絞り羽根の経年劣化に伴う酸化/腐食/錆びもキレイにして、特に油染みなどは完全除去しておかないとヘタに粘性でも帯びたらアウトです!(怖)
とは言っても本当に細心の注意を払って清掃しないとアッと言う間に折れるので、イジッても怖いですし、イジらなくてもいずれ折れるしと全く以て困ったシロモノなのです(泣)
しかも穴に刺さった後に折り曲げられているワケですから (だから一つ前の写真で絞り羽根は外れずに広がって手裏剣のようなカタチになっている)、その折曲げた羽根部分の一部が、経年の開閉動作によって徐々に広がりつつある状況だったりすると、はたしてその羽根をちゃんと押し込んで曲げたほうが良いのか、或いは下手に触らないほうがパリッと折れないのか、その判断がなかなか難しかったりします!(怖)
ちなみに三協光機でさえも、さすがにこの方式の「十字に切り込みを入れて羽根状に折り曲げたキー」は製産時の組み立て工程でも、或いは後の耐用年数面でも不利だと判断したのか、1960年代に入ると順次「金属製の突起棒を打ち込む従来方式に変更」して、他の光学メーカーと同じに変わっています。
↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。極僅かにカビ除去痕が各群の外周附近に残っていますが、写真には全く影響しません (たぶん覗き込んでもどこだかよく分からない)。
↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
↑光学系後群も後玉だけですがスカッとクリアです!当然ながらLED光照射で極薄いクモリがありません。
↑【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:16点、目立つ点キズ:11点
後群内:18点、目立つ点キズ:12点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前群内僅か)
(前群内に極微細な薄い28mm長1本の他、後群内にも非常に薄い17mm長1本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズなし)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:あり
(前玉/中玉に微細な拭きキズ/擦りキズあり)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・光学系内には大小の「気泡」が複数あり、一部は一見すると極微細な塵/埃に見えますが「気泡」です(当時気泡は正常品として出荷されていた為クレーム対象としません)。「気泡」も点キズにカウントしているので本当の点キズは僅かしかありません。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。
↑16枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に円形絞りを維持」したまま閉じていきます。
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・絞り環はクリック式操作で距離環と一緒に回ってしまう回転式繰り出し/収納なので、距離環のほうで先にピント合わせしてから絞り環操作すると、容易にピント位置が外れます。絞り値を先に決めてから距離環でピント合わせする使い方がベストです。
【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
・当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
↑今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。
《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
① HAKUBA製MCプロテクター (新品)
② 本体『KOMURA− 105mm/f3.5 (black) (L39)』
③ 汎用樹脂製ネジ込み式L39後キャップ (新品)
④ 汎用樹脂製スナップ式前キャップ (新品)
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい。当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません。
↑当レンズによる最短撮影距離1.25m附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。
↑f値「f16」です。もうだいぶ絞り羽根が閉じてきているので極僅かに「回折現象」の影響が出始めて解像度が低下しています。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。
◉ 被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。