◎ Steinheil München (シュタインハイル・ミュンヘン) Cassar 45mm/f2.8 VL《Paxette版の初期型》(M39)

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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧西ドイツは
Steinheil München製標準レンズ・・・・、
 『Cassar 45mm/f2.8 VL《Paxette版の初期型》(M39)』てす。


現在ヤフオク! 出品中の「即決価格」を値下げしました・・(涙)

ハッキリ言って「作業分対価のタダ働き」で、単に調達時の資金回収みたいな話です(涙)

オモシロイと考えて頑張ったのですが、スッカリ当てが外れてしまいましたね(笑)

情けないのなんのッて・・(涙)

・・てなワケで、この企画Paxette版オールドレンズを使った『なんちゃってマクロ』『疑似 マクロ化』は今回が最初で最後と言う運命になりました(涙)

至極残念・・全く以て残念・・無念極まりなし!(涙)

このモデルの扱いは今回が初めてになりますが、別件で同一ポリシーのもとオーバーホール済でヤフオク! に複数出品している『なんちゃってマクロ』『疑似マクロ化』に続く今回の出品になります。

人気が無いので何ヶ月も残ったままでいまだに出品し続けていますが(笑)、当の本人が虜に 堕ちてしまいハマってしまったのでどうにもなりません!(笑)

そもそもこの旧西ドイツはSteinheil München (シュタインハイル・ミュンヘン) と言う光学 メーカー製オールドレンズが放つ表現性に大きな魅力を感じるのでどうしようもありません(笑)

しかしそうは言ってもSteinheil Münchenの創設が戦前ドイツのバイエルン州で1855年だとしても、1962年時点で自社株の80%をアメリカのElgeet Optical Company (エルギート) 社に取得され、その2年後にはアメリカの航空HDにあたるLear Siegler (リア-シーグラー) 社に売却され航空産業関係の製品造りに特化してしまったようです。

末路は哀しい最期を迎えます・・1995年には事業部別にさらに細分化した状態で様々な会社に小間切れ状態で売却されついに消滅してしまいました (まるで牛肉の小間切れパック状態)(涙)

創設者自身が物理学者でもあり天文学者でもある工学者、数学者たるCarl August von Steinheil (カール・アウグスト・フォン・シュタインハイル) なので、様々な光学系の開発にも 当初から余念がありませんでした。

今回扱うモデル銘「Cassar (カッサー)」は後の時代には3群4枚のテッサー型光学系を実装したモデルに対して附加されますが、当初は3群3枚のトリプレット型光学系に対して命名されたモデル銘だったようです。後に3枚玉トリプレットを実装したオールドレンズはそのモデル銘を「Cassarit (カッサリート)」へと変遷します (ドイツ語なので語尾は英語のリットのような発音ではなくリートになる/僅かに延ばし気味の発音)。

《既に疑似マクロ化附属品をお持ちの方》
当方から既に『疑似マクロ化附属品』含むオールをご落札頂いた方は、現在
ヤフオク! 出品中のセットを追加でご落札頂いた場合、同じ『疑似マクロ化
附属品』が重複する為『一律5,000円返金』にて対応します。

ご落札後最初のメッセージにてご申告頂ければ、ご指定銀行お口座宛当方より取引完了後に「5,000円」をご返金します。
その場合当然ながら『疑似マクロ化』を実現する附属品の一部はお届け
しません
(他の前後キャップやフィルター/フランジ環などはそのまま附属)
※振込手数料当方負担します。

要はご落札者様にとって一番お得感を感じられる対応をしますので是非
ご遠慮なくお申し付け下さいませ。
少しでも写真ライフを楽しめるドキドキ感をまた味わって頂きたく願う
ばかりです!


・・などとのたうち回っていますが(笑)、詰まるところ当方は単なる『転売屋/転売ヤー
なので、その点は何卒ご留意下さいませ(笑)

  ●               

戦前ドイツで1915年にバイエルン州ニュルンベルグでKarl Braunによって 創設された会社で、戦後の1948年にはCarl Braun Camera Factoryとして レンジファインダーカメラ「Paxette (original)」を開発/発売しました。
(旧西ドイツ側に属する)

当初は目測式のフィルムカメラだったので、そもそも価格も安く庶民派向けの企画だったのかも知れませんが、固定式レンズにはまさに「Cassar 45mm/f2.8 VL」がセットされています。右写真はその中から1950年発売の「Gloriete (グロリエッテ)」です。

他にも例えば旧西ドイツのBarden-Württemberg (バーデン・ヴュルテンベルグ) 州のKing家によって創設されたRegula-Werk King & Bauser GmbH社から発売されたやはり目測式のフィルムカメラ「Regula-KING」シリーズ (レグラ) にも固定式ですが「Cassar 45mm/f2.8」がセットされていたりします。
(右写真は1963年発売REGULA olymatic I)

そこでちょっといろいろ調べると同じ「Cassar 45mm/f2.8」でも 実装光学系は幾つか種類が在りフィルムカメラ別に都度設計していたのかも知れません。

3群3枚のトリプレット型光学系と言うと右構成図が様々なサイトに掲載されていますが、この光学構成図は実はクィックリターンミラーボックスを装備してきた一眼レフ (フィルム) カメラ向けの3枚玉構成図のように見えて仕方ありません(笑)

有名な旧東ドイツはMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズの「Trioplan 50mm/f2.9 V」の光学系も確かに同じ3枚玉トリプレット型ですが、正しい構成図は (実際にバラしてデジタルノギスで計測すると) 近似していたりします (クリックするとページ中腹辺りに構成図が載っている)(笑)

何を言いたいのか?(笑)

トリオプランの構成図をチェックすれば一目瞭然なのですが、やはりバックフォーカスを長く採った設計なので構成図自体が近似したカタチなのが分かるのです (納得できるのです)。つまりバックフォーカスが必要となればそれは一眼レフ (フィルム) カメラの話なのでクィックリターンミラーボックスを越えてフィルム印画紙に結像する距離が必要な光学設計の構成図になりますね。

要は今回バラす光学系は間違いなくレンジファインダーカメラ向けの光学系なので、上の構成図とは全く別モノのカタチになると推測したワケです(笑) 何故ならレンジファインダーカメラの特に今回のモデルに関しては「Paxette向け」ですからリーフシャッター (PRONTOR-S/
SVS) を介しての結像なのでバックフォーカスを稼ぐ必要がないからです。逆に言うとこの当時は標準レンズの光学系を使って広角域まで延伸させて設計していた時代でもあります (広角域 専用の光学設計を必要としなかった時代)。

何を隠そう右図が今回のモデルをバラした際に、光学系の清掃時に 逐一当方の手によってデジタルノギスで各群を計測してトレースした構成図です。

確かに3枚玉トリプレットの構成図ではありますが、とても前出の構成図とは似ても似つきません。それ故多くのサイトに掲載されているトリプレット型構成図が一眼レフ (フィルム) カメラ用のモノだと当方が勝手に推測している次第です(笑)

ではどうして同じ3枚玉トリプレット型構成なのに、その相違にこだわるのか???(笑)

カタチが違うことを指摘したいのではなくて、カタチが違うことから導き出される「描写性の違い」を言いたいのです。後の時代、特にクィックリターンミラーボックスを装備した一眼レフ (フィルム) カメラが主流になってしまった時代に登場してきた3枚玉トリプレットの「端正な制御され尽くした3枚玉とは違うのがたのしい!」ワケです(笑)

詰まるところ「まだ制御できていない時代の残ってしまった収差の影響を受けた描写性に魅力を感じる」からこそ、実は冒頭にお話した『なんちゃってマクロ』『疑似マクロ化』にこだわってオーバーホールを続けているのが根本的な理由なのです。

Steinheil München製オールドレンズの表現性の癖に気持ちがググ〜ッと傾いてしまい(笑)、且つ残っている収差の影響を受けて吐き出される写真に唸ってしまいながらも、実は『なん ちゃってマクロ』や『疑似マクロ化』でさらに近接撮影して「おぉ〜ッ!」と唸りから雄叫びへと変わっていく様が、また愉しくて仕方ないのが「あくまでも当方独りがこだわっている 世界観」なのです(笑)

特にマクロ撮影が好きなワケでもないのですが、何もマクロレンズだけにその特権を与えて ワザワザ高価なデジタルなレンズを買い求めるのも癪に障ります(笑)

そこでエクステンションを介してしまえば、持っている全ての「M39」或いは「L39やLM」 までが『なんちゃってマクロ』や『疑似マクロ化』で同じように雄叫びを吠えることができる!(笑)

これを一度味わってしまったらもうダメだッたワケです・・(笑)

考えに考え尽くされて設計されたであろう当時の光学設計を「敢えて逸脱させた写り方にイチイチ大騒ぎしているオッサン (いえジジイ)」と言う構図が出来上がってしまいました(笑)

例えて言えば、オールドレンズ沼の深みにハマッて首までドップリ浸かってしまった次に来たのは、やはり (当然ながら) 溺れるだけしか残されていない「終末の世界」を覗いてしまった ワケで、そこは本当は深い深い沼地のハズなのに「心地良くせせらぐ小川」にヒタヒタと浸かって気持ちが良くて「キレイなお花畑が見える!」とちょっとヤバい感じがしているところ なのです (もっと近寄ってマクロ撮影したいぞ!) (笑)

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上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で あり転載ではありません。

一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して単なる円形ボケへと変化していく様をピックアップしていますが、左端写真のような「繊細で明確なエッジを伴うキレイな真円のシャボン玉ボケ表出」ができるオールドレンズと言うのは、実はそれほど多くなく旧東ドイツはMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズの中には数多くのモデルが顕在しますが、それ以外になると途端に 少なくなります。

これが例えば単なるリングボケや玉ボケのレベルならどんなオールドレンズでも条件さえ整えば表出が可能ですが、問題となるのは「エッジの明確さと真円度」が特にシャボン玉ボケに 対する評価の分かれ目ではないかと当方は考えています。

【当方で表現してる円形ボケ】
 シャボン玉ボケ
真円で明確なエッジが細く繊細なまさにシャボン玉のような美しいボケ方
 リングボケ
ほぼ真円に近い円形状でエッジが明確ながらも太目で輪郭が誇張的なボケ方
 玉ボケ
円形状のボケが均等に中心部まで滲んでしまいノッペリしたボケ方
円形ボケ
その他歪んだりエッジが均一ではない、或いは一部が消えていく途中のボケ方
(円形状ボケの総称の意味もある)

左端の写真では写真中央付近にその真円なシャボン玉ボケが表出していますが、左端のほうのシャボン玉ボケは歪んでしまって歪なカタチをしています。しかし共に明確な細いエッジを伴うので (エッジが崩れていないので) これは光学性能の結果ではないかとみています。

また2枚目の写真になるとパッと見でグルグルボケのようにも見えそうな収差ボケの一種ですが、3枚玉トリプレット型光学系でまるでダブルガウス型光学系のようなグルグルボケも楽しめます。また滲んでいくのが進むと同時になだらかなグラデーションで溶けていくので右端の写真のように背景が単なる円形ボケに変わってしまっても決して煩く残らずに、むしろ背景 効果的にピント面の被写体のインパクトを強調してくれるありがたさです。

二段目
ここではさらに収差の影響を受けて汚く滲んでいく様をピックアップしようとしましたが、どれも素直に (自然に) なだらかなグラデーションで溶けていってしまうので収差ボケとハッキリ指摘できるような印象になっていません。それはそれである意味光学系の素性の良さが現れているのかも知れないと (意外と高性能な光学設計の3枚玉?) 当方ではむしろ評価しています。

三段目
この段が今回のモデルの実写で「ほぅ〜!」と唸ってしまった印象の写真を集めています。まず一番左端の写真ですが、設計生産が1950年〜1952年辺りのレンジファインダーカメラ向け光学系ですから、いくら3枚玉トリプレットとしてもこれだけピント面の鋭さ (鋭く見えて いるだけ) と一番印象として感心してしまったのはコントラストの高さです。

得てしてこの当時のオールドレンズとなると低コントラストで撮影現場の賑やかさや艶やかさをとどめられないモデルが多かったりしますが、たった3枚の硝子レンズでこれだけシッカリした臨場感を写真に残せればたいしたものだと感心してしまったのです。

そして一番驚いたのが2枚目の写真で、戸建て住宅の建築中写真ですが、足場の金属質と木材の素材感や材質感をシッカリ写し込んだ質感表現能力の高さにオドロキです(笑) それにプラスして影になっている場所の陰影の違いなどもちゃんと残しているので、グラデーションの 滑らかさがこの写真を見ただけでも凄いと感心した次第です (あくまでも3枚玉トリプレットの範疇としての話)。

次の3枚目や右端写真はいずれもフィルム撮影なので本来の写り具合をとどめていませんが、それでもこれだけのダイナミックレンジの広さと例えピ〜カン状態 (炎天下で露出オーバー気味の状態) でもしっかり階調を留めて残している様にやはりオドロキしかありません。

四段目
左端の人物撮影では背景の外窓の影響で露出オーバーにもかかわらず、ちゃんと女性の髪の毛の繊細感や肌の感じを写し込んでいるのがさすがだと感心しましたし、3枚目の被写界深度の狭さは開放f値「f2.8」と決してメチャクチャに明るいオールドレンズでもないのに意外にも 狭い被写界深度に、やはり光学設計の素晴らしさを汲み取っている感じです。

従ってこれらピックアップ写真を眺めると、単なる3枚玉トリプレットだからと決してバカにできない存在だと個人的にも感心してしまったモデルの一つです。特に後にご紹介する後玉の大きさをご覧頂ければ、これだけ小っちゃなサイズながらも吐き出す写真の質が高いことに「後玉の大きさだけではないんだ・・!」と今さらながらに (当方は未熟なので) 改めて新鮮な気持ちになった次第です。

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ここで2点ほど特徴的な解説を加えたいと思います。一つ目は左写真ですが、既にオーバーホールが終わって出品する個体の前玉を撮影した写真です。

すると光が反射して前玉のコーティング層の光彩が写っていますが「3色ある」事が確認できます。「パープルアンバーブル〜の3色」ですね。

実はレンズ銘板に刻印されている「VL」はドイツ語の「Verhinderung Lichtreflexion」の頭文字を採った略語で、日本語訳すれば「光反射防止」と訳せるコーティング層蒸着の種別を表しています。ドイツ語なので発音がややっこしいですが(笑)「」はラテン語/英語で言うところの「」にあたるのでブイではありませんね(笑) つまりラテン語/英語で捉えるなら「FL」コーティングみたいな話で、例えば当時のロシアンレンズの中に数多く存在する「Π」コーティングもロシアキリル文字の「просветления」のコーティング蒸着を表す反射防止の 役目なので同じ話になります。

こちらのロシアキリル文字ではラテン語/英語の「」にあたるので「ピーコーティング」などと呼ばれることもあります(笑) 従ってネット上でチェックする際に特に注意が必要なのが「何語で訳して解釈している話なのか?」と言う問題が憑き纏います。

次に皆さんが最も理解し易い旧ドイツはCarl Zeiss Jenaについてこのコーティングに関する話を取りあげるなら、以下のようになります。

【Carl Zeiss Jenaのコーティング技術 (戦前〜戦後)】
〜1934年:ノンコーティング (反射防止塗膜の蒸着無し)

1935年〜:シングルコーティング (反射防止単層膜塗膜の蒸着特許)
1939年〜:モノコーティング (反射防止複層膜塗膜の蒸着特許:Jenaの)
1972年〜:マルチコーティング (反射防止多層膜塗膜蒸着特許:zeissのT*)
※ 世界初の複層膜蒸着技術 (世界初の薄膜複層膜蒸着技術開発は1958年のMINOLTAによるアクロマチックコーティングACがある)

・・とこんな感じで戦前ドイツからのコーティング層蒸着技術の発展を (登録特許申請から)
捉えることができますが、例えば戦前ドイツで1936年にナチス政権下で開催された第11回 国際オリンピックの時には幾つかのCarl Zeiss Jena製オールドレンズがオリンピック開催までに間に合うよう政府の圧力がかかり、まさにドイツ威信を賭けたオリンピック記録映画作成に関わったと言えますが、この時にどうしても必要だったのが「シングルコーティング (単層膜蒸着) 技術の完成」だったらしいです。

最終的に目標とするのは当時は「Carl Zeiss Jenaの」ですね。戦前なので旧東ドイツになってからの話ではありません。単層膜コーティング層蒸着技術なので当然ながら当時オールドレンズの光学硝子レンズを光に反射させると上の写真のような「3色の光彩」になるハズが ありませんね(笑)

実際当時のオールドレンズが放つ光彩で多いのは「ブルシアンブル〜」だったりしますから、シングルコーティングなので納得です。

ところがCarl Zeiss Jena製オールドレンズの例えば「Tessar 50mm/f2.8 silver」と言うシルバ〜鏡胴の標準レンズがあったりしますが、ネット上ではこのレンズ銘板に刻印されている「」を指してミスタイプなどと真しやかに語られています(笑) もちろんレンズ銘板となればドイツ語ですからその途中に漢字の「」が鎮座しているハズがありません(笑)

この「」の正しい意味は「自然光の三原色をキッチリ一点で合焦させる色ズレを極力排除したアポクロマートレンズ」の意味なのです。「」の縦線が光学硝子レンズを意味し、そこを入射光 (自然光) の三原色が透過することを指した「アポクロマートのロゴ」だったのです。

いわゆるシルバ〜鏡胴のテッサーで絞り羽根が14枚も実装していた時代の「初期型」でもありますが、実はこの「」刻印が附随する個体の製造番号を逐一チェックしていくと一つの 結論に到達します。それは製造番号「36xxxxx」しか存在しないことです。

この製造番号から導き出される製産時期は「1952年」ですから、おそらく1万台くらいしか 製産されなかったのではないかと推測しています。そしてこのモデルだけが光学硝子レンズを光に反射させると確かに「パープルアンバーブル〜」と3色の光彩を放ち、他の製造番号 (36番以外のスタート) には「」刻印しか顕在せず、二度と「」刻印モデルは登場しません
でした。

翻って今回のモデルに話を戻すと、図らずも同じ「1952年の製産品個体」ですから何かの因果なのでしょうか(笑) はたしてこの「VL」刻印が当時のSteinheil Münchenに於けるアポクロマート技術を指すのか否かについては、残念ながら誰も気づいておらず解説が見つかりません (しかし現実として3色の光彩を放っているのはどう説明すれば良いのか)。逆に言うとよくこの光彩が3つあるのを指してマルチコーティング (多層膜蒸着技術) と断言している場合が ありますが、残念ながらマルチコーティング技術の特許自体が1972年が最初ですから辻褄が 合いませんね (そもそも光学硝子レンズ単体を1枚ずつチェックすれば自ずと判明するが)(笑)

一つ目のお話がとても長くなりましたが、この3色の光彩を放つ一点だけで当方のオドロキは相当なものでした(笑)

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↑2つ目のお話が上の写真です。既にオーバーホールが終わって仕上がっている状態の出品個体を撮った写真です。

するとマウント面は製品として当然ながら「M39マウント規格」なのですが、よ〜く観察すると「フランジ環」と当方が呼称している環 (リング/輪っか) との間に「隙間約0.8㍉」が見えます。

オールドレンズの活用方法と言えば、当時のフィルムカメラに装着して使う方よりも、今ドキのデジカメ一眼/ミラーレス一眼にマウントアダプタ経由装着されるパターンのほうがダントツに多いと考えられます。

従ってオールドレンズを扱う時必ず注意するべき問題が「フランジバック」です。

フランジバック
レンズマウント面から撮像面 (フィルムカメラならフィルム印画紙でデジカメ等なら撮像素子面) までの距離であり、規格値なので「一つの数値」で表される。

例えば今回の出品個体は附属品として「SONY Eマウント用の製品を複数セット」していますから、そのフランジバック計算は「SONY Eマウント規格18㍉」が基本になります。

↑上の写真は今回の解説用に作った合成写真なので、現実的な縮尺が正確ではありません。

SONYのα7IIにK&F CONCEPT製最新モデルのマウントアダプタを介在させてオールドレンズを装着した時の「フランジバック解説」合成図になります (オールドレンズのモデルは別モノ)。

すると入射光が入ってきた時に図に示したの3つの距離/数値が問題になるのがフランジバックの話です。

① SONY Eマウント規格のフランジバック18㍉
② オールドレンズのマウント面からのフランジバック:44㍉ (Paxetteの規格値)
③ マウントアダプタの有効全高 (マウント面 vs マウント面):26㍉

こんな感じで3種類の数値が出てきました。それぞれの数値は「フランジバックに関係する 数値」なので一つの数値しか導き出されません (規格値の話なので)。

ここで言う処の「マウントアダプタの有効全高」とは解説の通りマウントアダプタのオールドレンズ側マウント面からカメラ側マウント面までの製品寸法を指します。要は単純計算で・・
マイナス」であれば正しくピント合焦してくれるハズですね(笑)

そこで今回のヤフオク! 出品に際しセットする附属品類は「全て装着した合計値/厚みが26㍉である必要がある」と言う結論に達します。一部にSONY Eマウント用のエクステンション「10㍉」を介在させているので、残されている厚みは「僅か16㍉」と言う話です。この僅か16㍉の中にマクロヘリコイド付マウントアダプタや「M39ネジ込み部」まで用意する必要が あるワケですね(笑)

これがオールドレンズに関わる時に必ず憑き纏う「フランジバック (値の計算)」というお話です。ところが現実としてこれら附属品類を全て装着していったら「ピントが合わない」いわ ゆる霧の中状態と言う全く合焦していない状況に陥りました(笑)

そこでデジタルノギスで計測したら「何と26㍉を超過していた」ワケです(笑) しかし各附属品の製品全高 (つまり厚み) は逐一確認済であり、当然ながら合計値でもちゃんと「26㍉に ピッタリ」状態です。

どうして超過してしまったのでしょうか・・?

答は簡単で、実は「ネジ部のスタート位置のずれ分が加算されて厚みが増えていった」ワケ です(笑) 話がとても長くなってしまいましたが、この解説を理解できないとピントが合わない時に何の対処もできなくなってしまいます (特に無限遠合焦の場合)。

そこで最初の写真に話が戻りますが(笑)、要はオールドレンズの内部でヘリコイド (オスメス) のネジ込み位置を敢えて当初バラした時の位置からズラして、別のネジ込み位置で組み上げてあるのです。

逆の言い方をするなら、当初写真の通り「M39マウント面にはマウント部のネジ切りスタート位置が必ずモデル別に決まっている」ので、当方が呼称している「フランジ環」との間の隙間は必ず生じてしまうのです。

つまりこれが「マウント規格の落とし穴」なのです(笑)

Paxette版M39のフランジバック44㍉」というのは、実はフィルムカメラ側マウント部のネジ切りスタート位置との相殺で考えられるべき数値が「44㍉」なのに、今ドキのマウント アダプタではそんなところまでお構いなしなワケですョ(笑)

従って個別の製品全高をキッチリ調べ上げて合算させてちゃんと「26㍉」にピタリと適合化させたのに、現実的には超過してしまった次第です。それを相殺させるのはもはや「オールド レンズ内部での微調整しか残っていない」ので、ヘリコイド (オスメス) のネジ込み位置をワザと故意に変更した次第です。

そしてここからが本当に言いたかった話なのですが「附属品のマウントアダプタ側一式は他のオールドレンズモデルにも転用できる」ので、ライカ判「L39マウント規格」オールドレンズも「LMマウント規格」も、そしてもちろん「M39規格」も全てで共通的に使用が可能です。但ししつこいですが(笑)、Paxette版だけはおそらく無限遠合焦しません (内部で微調整が必要なハズ/今回の出品個体も内部で微調整が済んでいる)。

まだ全てのPaxette向けモデルでチェックしていない為何とも結論が出ませんが、どのオールドレンズでも同じだと考えます。またヘリコイド式マウントアダプタに装着した時のようにその都度無限遠位置を調べる必要は一切ありません。既に無限遠位置を適合化させてあるのでその心配は必要ないから「直感的に撮影に臨める」簡単さが一番重要なのです(笑) そうすることで実は撮影の機会が増えて (ちゃんと持ち出すから) お気にの写真を残せるというモノです(笑)

その意味でこれら附属品の有用性は本当は非常に高いハズなのですが・・人気なし!(笑)
渡る世間は鬼ばかり・・みたいな話です(笑)

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。内部構造が簡素で構成パーツ点数まで質素です(笑) が然し、実際に組み上げようとすると「鏡筒の固定位置の確定工程が必須」なので「高難度モデル」とも言えます。

実際当初バラす前のピント面は少々甘い印象の結像でしたが、オーバーホールが終わって仕上がった実写 (このページの最後のほう) をご覧頂ければ、前述のピックアップ写真の如くカリッカリの鋭さにちゃんと仕上がっています(笑)

だからこそ「3枚玉トリプレットだからと馬鹿にすんなョ!」と言っているワケです(笑)

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。鏡筒外周がビッシリとネジ山で切削されているので「必然的に鏡筒の固定位置確定が必要になる」話です。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑製造番号から製産時期が「1952年」なので、このモデルで言う処の「初期型」にあたります。従ってモデル銘も後の時代に当たり前になってしまった「Cassarit (カッサリート)」ではなく3枚玉トリプレットなのに「Cassar (カッサー)」なのですね。

そして上の写真を見ると知っている人にはすぐに分かりますが「絞り羽根はカーボン仕上げ」であり、当初バラした直後は赤サビで真っ赤っかでした (要は今回のオーバーホールでサビ 落とし工程を経ている)(笑)

よくヤフオク! の出品者の中で「絞り羽根の経年での擦れ状態」を気にしている出品者が居ますが、そんな擦れるのは「擦れる駆動方式で設計している」のだから何十年も使っていれば 当たり前の話です(笑)

にもかかわらず絞り羽根の擦れが少ないとか多いとか文句垂れてますが(笑)、そんな事よりももっと重要なのは「錆を落としたのかどうか」なのではないでしょうか?(笑)

赤サビが残ったまま組み上げたら、また錆びるじゃないですか?!(泣)・・と思わないのですかね。と言うワケで基本的に当方は絞り羽根の汚れ (擦れ) などを一切気にかけないので(笑)、それが重要な方は是非ともそれをちゃんと明記しているヤフオク! の出品者のオールドレンズをご落札下さいませ (当方が出品するオールドレンズは基本的に汚く擦れたままです)。

なお構造的に (設計の仕様上) 下手すればスカスカの絞り環操作に堕ちてしまうので、敢えて トルクを与えてあります。

↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。写真上部が前玉側方向にあたります。この工程を見ていて「絞り環がもう入っている」と気がついた方もいらっしゃるかも知れません。実はここがポイントで、このモデルを当初ちゃんと完全解体できるか否かがこの絞り環の存在、或いは 組み付け方法を知っているかどうかで決まります。

逆に言うと絞り環を単独でセットすることができない設計なのです。こういう話が「観察と 考察」によって組み立て工程の手順が明確になる理由であり、それと同時にその判定に於いては「原理原則」を熟知しているか否かが問われる話でもあります(笑)

そうは言っても当方はプロの職人に師事して「正統な技術の伝授」を一切受けていない全くの独学輩なので(笑)、必然的に当方はプロとは自らを表現してはイケマセンね (それは血も滲む ほどの下積みを乗り越えられたモノホンの匠に大変失礼な話だから)(笑)

ちゃんとした「」が在籍するプロのカメラ店様や修理専門会社様が幾つか在りますから・・そちらからオールドレンズを手に入れるのがまず以て間違いありません!(笑)

↑このモデルは鏡胴が「前部/後部」の二分割方式なので、鏡胴「前部」が完成した為ここからは鏡胴「後部」の組み立て工程に移ります。とは言ってもそんな大袈裟な話でなくヘリコイド (オスメス) しか存在しないと言う簡素な話です(笑)

基準「」マーカー近くに経年の錆が出てしまっていますが、大変珍しいことにこのマウント部が真鍮 (黄銅) 製です。普通「Cassar」モデルはアルミ合金材ばかりなので、今までに真鍮 (黄銅) 製の個体を見た記憶がまだありません!(驚) アルミ合金材ならキレイな「磨きいれ」で錆部分も目立たなくできるのですが、相手が真鍮 (黄銅) となるとメッキが薄いので何も処置できません(泣)

↑散々今までお話しした通り「ヘリコイドのネジ込み位置を変更して微調整済」なのが上の 写真です。微調整するには実写して確認するしか方法がないので(笑)、距離環は既にセット済と言うお話になります。要は距離環刻印指標値の「∞」の辺りで無限遠合焦できているのかどうかと言う話です (実際は僅かにオーバーインフに設定してある)。

そして前述のとおりカリッカリのピント面に至るには「鏡筒の固定位置が重要」になるので、この時「同時進行で鏡筒の固定位置まで決まった」後という事になります (それで実写が必要になる)。つまり無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行えば完成です。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。当初バラす前の非常に重い印象のトルク感から比べるとまるで天と地の差の如く気持ちの良いトルク感に仕上がっています(笑) 本来ならば距離環を回すトルクのほうを多少重めに設定して、絞り環側の操作性を軽めに仕上げられればピント合わせした後にボケ味をイジれるワケですが、残念ながらこのモデルの設計上 (仕様上) それが適いません(泣)

つまりこのモデルは絞り値を先に決めてからピント合わせをする撮影方法になるので、ご留意下さいませ。ピント合わせした後に絞り環を回すと「アッと言う間に距離環が動いてピントの位置がズレる」ので逆の使い方になります。

↑製造番号から「1952年」の製産個体なのですが、何と嬉しいことに光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。しかし残念ながら前玉表面側には経年並みの「拭きキズ」が相当残っています (写真には影響しないレベル)。そしてもちろんこの当時のオールドレンズに多い「気泡」も複数 光学硝子レンズ内に入っています。

気泡
この当時の光学メーカーは、光学硝子材精製時に一定の時間規定の高温を維持し続けた「」として「気泡」を捉えており「正常品」として出荷していました (写真への影響なし)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑冒頭解説の通り「フランジ環」がセットされているので、この部位を回したり外そうとしたりしないで下さいませ。ここをイジると無限遠位置がズレたりカリッカリの鋭いピント面が 甘くなったりして改善不能に陥ります (当方での再調整が必要になってしまう/もちろん有償 です)。このまま装着するようにご使用下さいませ。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
後群内:18点、目立つ点キズ:14点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(極微細で薄い20ミリ長が複数本あります)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズなし)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
(前玉表面側に経年並み拭きキズ複数あり)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・光学系内には大小の「気泡」が複数あり、一部は一見すると極微細な塵/埃に見えますが「気泡」です(当時気泡は正常品として出荷されていた為クレーム対象としません)。「気泡」も点キズにカウントしているので本当の点キズは数点しかありません
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑12枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に円形絞り維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります
・構造上絞り環操作で距離環まで動くので絞り値をセットしてからピント合わせするのが望ましい使い方です(絞り環操作で距離環が微動するから)。
このモデルのフィルター枠は⌀ 28.5mm径と特殊径の為に市販品がありません今回附属品としてセットしているMCフィルターは⌀ 28mm径を使い代用としています(最後までネジ込めません/填まっているだけの状態)。ご留意下さいませ。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
・附属品のエクステンションはエンジニアリング・プラスティック製の製品です。

↑今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
HAKUBA製MCレンズガード (新品/代用品)
本体『Cassar 45mm/f2.8 VL《Paxette版の初期型》(M39)』
フランジ環 (M39マウント) (新品)
汎用樹脂製ネジ込み式M39後キャップ (新品)
汎用樹脂製ネジ込み式SONY E前キャップ (新品)
SONY E用エクステンション (16mm:新品)
汎用樹脂製SONY Eマウント後キャップ (新品)
汎用樹脂製ネジ込み式M39前キャップ (新品)
L39→LM変換リング (5075:新品)
マクロヘリコイド付マウントアダプタ (新品)
SONY E用エクステンション (10mm:新品)
汎用樹脂製SONY Eマウント後キャップ (新品)

前述のとおり今回のモデルはフィルター枠が特殊径なので「附属のフィルターはあくまでも代用品」としてご認識下さいませ。例えばフィルター部分を摘まんだまま持ち上げようとすると外れます (キッチリネジ込まれていないから)。

特に絞り環操作時はフィルターが外れないようご留意頂く必要があります

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

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ここからは今回出品個体に附属する『なんちゃってマクロ』『疑似マクロ化』マウントアダプタ類の使用方法を解説します。

↑頻繁によく使うのは上の写真でおそらく赤色矢印で指し示している附属品 (既にある程度ネジ込んだりして準備してある状態でお届けします) で「エクステンション10㍉」だと考えますが、組み合わせはもちろんご落札者様の自由です。

それぞれの附属品に前後キャップをちゃんと用意していますが、残念ながらオールドレンズ側の前キャップだけは特殊径で手に入りませんでした。特にフィルター枠部分の外形は「⌀ 33.8㍉」なので、絞り環まで含めてスッポリ被せるような前キャップが見つかれば一番良いかも知れません (MCフィルターのほうに被せるとそのまま外れます/特殊径なので存在せず代用品であり本当にネジ込まれていません)。

↑こんな感じでネジ込んである前後キャップを回して外します。するとオールドレンズ側マウント面には「フランジ環」が備わっており (絶対に回したりして外さない)、一方マウントアダプタ側にも「変換リング装着済」なのでやはりネジ山が来ています。

従って上の写真グリーンの矢印のとおりそのまま互いをネジ込めば装着完了です。

↑実際にオールドレンズをセットするとこんな状態になります。最後まできっちりネジ込んでください (特に強く締めつけてネジ込む必要なし)。もうこれ以上ネジ込めないと言うところまでネジ込めば良いだけですから、強くネジ込みすぎると今度は外れなくなったりしますからご留意下さいませ。

さて、使い方を簡単に説明します。「マクロヘリコイド (グリーンの矢印)」のローレット (滑り止め) を「解除ボタン」方向に回すことで (ブルーの矢印①) オールドレンズ全体がグリグリと「最大で5㍉分繰り出される (ブルーの矢印②)」ワケです。

従って最近接撮影したければ「解除ボタン」にカチンと突き当たって停止するまでローレット (滑り止め) を回しきって (ブルーの矢印①) しまえば良い話です。

逆に言うとそれほど近接撮影で拡大したくなければ別に最後までローレット (滑り止め) を回しきる必要はありませんが、重要なのは (難しく考えずに)「直感的な操作で使えるよう仕上げてある点」です。

このポリシーのもとオーバーホール済でヤフオク! 出品していますから、たいていの場合カチンと停止するまでローレット (滑り止め) を回しきったまま「普通は距離環の操作でピント合わせをする」ハズですョね?(笑)

要はローレット (滑り止め) は回しきったまま使えば良いと言うお話です。

↑するとこんな感じで「解除ボタン」の位置までローレット (滑り止め) を回しきってカチンと突き当て停止した状態を撮影しました。ご覧のとおりオールドレンズ全体が「5㍉分繰り出し状態」になっています。

ブルーの矢印③のようにローレット (滑り止め) を逆方向に回せばオールドレンズ全体が収納し始めて下がってきます (ブルーの矢印④)。また距離環はご自由に回してピント合わせする普通の使い方です (赤色矢印)。

すると最終的にどのような使い方になるのかと言うと、このオールドレンズのオリジナルな仕様上の撮影「最短撮影距離1m」のままで使うなら「ローレット (滑り止め) を回さない/繰り出さない」であれば何も変わりません。

例えば撮影中にこの被写体はマクロ撮影したいと思ったら (そのまま直感的に) ローレット (滑り止め) を「解除ボタン」にカチンと突き当たるまで回しきってしまえば良いのです。

このローレット (滑り止め) を回して繰り出す、回して収納する (ブルーの矢印③) と言う動作だけで『なんちゃってマクロ』『疑似マクロ化』になるよう考えて仕上げてありますから、深く考える必要がありません(笑)

当然ながら普通のオールドレンズと同じ使い方なので「距離環を回してピント合わせする」のはそのままですね(笑)

↑今度はエクステンションを「16㍉」に付け替えました (グリーンの矢印)。使い方は全く同一なのでより近接撮影が叶うと言うお話しです。

↑さらに究極の「エクステンションダブル使い」の状態を撮りました (グリーンの矢印)(笑) もうこれ以上近づけないと言う距離まで被写体に寄って撮ることが叶います!(笑)

《近接撮影の状況》※マクロヘリコイドの5mm分繰り出しで疑似マクロ化
エクステンション (10mm) +マクロヘリコイド回さず → 仕様1mのまま
エクステンション (10mm) +マクロヘリコイド (5mm) →43cmまで近接
エクステンション (16mm) +マクロヘリコイド (5mm) →28cmまで近接

エクステンション (10/16mm) +マクロヘリコイド (5mm) →21cm近接

如何でしょうか?(笑) このように繰り出し量を増やすと実はボケ量もどんどん増えて、且つ 明るさも増大するのでそれを以てして「疑似マクロ化」と当方では呼んでいますが、あくまでもこれらは「本来の仕様を逸脱した写り方」である点をご留意下さいませ。この写り方が優れている云々を勧めているワケではありません (当方は等倍チェックなどしないタチなのであくまでも愉しむ範疇です)(笑)

なお、このモデルの仕様上の最短撮影距離:1mは、実測すると97cmくらいの位置でした。
また疑似マクロ化で近接撮影の実測距離自体が短縮化されるので (つまり被写体により近づく事になるので) ピント面から外れるアウトフォーカス部のボケ量が増えて、且つ明るさが増す のも光学硝子レンズのより中心付近に特化して入射光量が増大するからではないかと考えて います。その結果絞り値をあげていくと (つまり絞り環を回して絞り羽根を閉じていくと) 余計に入射光量が減っていくので「回折現象の影響は逆に大きくなる」とも言い替えられますからご留意下さいませ。

つまり疑似マクロ化で近接撮影するのはボケ量が増えてより明るさが増しますが、絞り羽根を閉じすぎると (絞り値を上げすぎると) 写真中心部のコントラストは逆に (回折現象から) どんどん低下してフレアの影響を受け易くなってきます。すると逆光や光源を含む撮影時にフードの使用頻度がより高くなるとも考えられますから、まさにマクロレンズ撮影時と同じ 前提条件になりますね(笑)

そもそもマクロレンズは光学系の第1群 (つまり前玉) が奥まった位置に配置されているのも、そういう意味では納得できますね!(笑)

なお、近接撮影の距離は装着するオールドレンズのモデル別に千差万別ですから、必ず上記 一覧の数値になる話ではありません。逆に言えば、だからこそ既に手持ちのオールドレンズ達の活躍の場がこれでまた一変すると言うお話しなのです(笑)

↑当レンズによる最短撮影距離1m附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

1枚目の写真がオリジナル状態で仕様上の最短撮影距離:1mでの実写です。2枚目の写真はマクロヘリコイド付マウントアダプタのローレット (滑り止め) を回して繰り出した時の近接撮影時で「最短撮影距離43cm」になります。

また3枚目の写真ではエクステンションを「16㍉」のタイプに付け替えて、同様ローレット (滑り止め) を回して繰り出した近接撮影状態で「最短撮影距離28cm」まで近寄って撮っています。最後の4枚目がエクステンションを2つとも装着して「最短撮影距離21cm」での写真です。

本来ならどんなに近寄って撮りたいと思っても1mまでしか対応できなかったこのモデルの使い方が、エクステンションの2個使いにすれば最大で21cmまで寄って撮ることが実現できます! これはもぉ〜マクロ撮影好きには堪らない話ですね!(笑)

そしてこのセットの醍醐味は、他のオールドレンズも全て「近接撮影できる」ワケで、それで『なんちゃってマクロ』『疑似マクロ化』の為の附属品に仕上げてある次第です。お手持ちのオールドレンズの愉しみ方がまた一段と広がって、是非とも現下のコロナ禍が収束した暁にはそこいら中に撮影に行きまくって下さいませ!(笑)

↑さらに絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。同様に1枚目がオリジナルの使用状態で最短撮影距離:1mでの撮影です。2枚目がローレット (滑り止め) を回しきって5㍉分繰り出した状態の「最短撮影距離43cm」近接撮影になり、3枚目がエクステンションを16㍉に付け替えた「最短撮影距離28cm」最後4枚目がエクステンション2個使いで「最短撮影距離21cm」での撮影です。

↑f値は「f5.6」に上がっています。1枚目オリジナルで2枚目が43cm近接撮影、3枚目が28cmで最後4枚目が21cmです。コントラストが下がったり明るくなったりはその都度カメラボディ側で調整すれば良いので、全く以て普通の撮影方法そのままです!(笑)

↑f値は「f8」に上がっています。

↑f値「f11」です。もう絞り羽根がだいぶ閉じきってきているのですが、最後の4枚目実写などまだまだボケまくっていて十分使える写真です(笑)

↑最小絞り値「f16」での撮影です。さすがにここまで絞り羽根が閉じてくると「回折現象」の影響が現れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。