◎ ASAHI OPT. CO., (旭光学工業) Super-Multi-Coated TAKUMAR 20mm/f4.5(M42)

PENTAX(3)logoヤフオク! などのオークションでは、タクマーのレンズ群の中に於いては、それ程多くは出回らないモデルでしょうか・・元々生産数自体があまり多くなかったようですね。なかなか使い出のある素晴らしい超広角レンズです。

1968年に発売された初代「Super-Takumar 20mm/f4.5」と光学系の仕様は変わらずに、マルチコーティングを施して1971年に最終型モデルとしてリプレイスされたモデルが今回の出品個体です。光学系は10群11枚のレトロフォーカス型ですが、前群の成分にダブレットを配置して後群成分にもダブルガウスの構成に近い設計を施した変形レトロフォーカス型です。

開放f値は「f4.5」と決して明るくはありませんが、それでも相応のボケ味が堪能でき、最短撮影距離20cmと言う寄れる超広角レンズとして、いまだに絶大な人気を誇っているようです。マクロ的な撮影は元より歪曲もよく補正されており、光源などが含まれるシーンでは真円のとてもキレイなリングボケ (玉ボケ) も表出します。諸収差の補正もよく改善されており、周辺域の流れもほとんど無くエッジの太めなキッチリとしたピント面が、その画角と相まってより立体感を惹き立たせます。これはこれでマクロ好きの方でも、また別の世界を愉しめるので線の細いエッジと共にトロトロにボケた画の世界とは対局に位置する描写性として魅力があるモデルだと思います。


オーバーホールのために解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載しています。

すべて解体したパーツの全景写真です。

SMCT2045(1109)11よくもまぁここまでまとめ上げたと感じられるほどに、パーツ点数を抑えたシッカリした構造化が成されたモデルです。

構成パーツの 中で「駆動系」や「連動系」のパーツ、或いはそれらのパーツが直接接する部分は、すでに当方にて「磨き研磨」を施しています (上の写真の一部構成パーツが光り輝いているのは「磨き研磨」を施したからです)。「磨き研磨」を施すことにより必用無い「グリースの塗布」を排除でき、 同時に将来的な揮発油分による各処への「油染み」を防ぐことにもなります。また各部の連係は最低限の負荷で確実に駆動させることが実現でき、今後も含めて 経年使用に於ける「摩耗」の進行も抑制できますね・・。

他社光学メーカーと比べて旭光学工業のこのタクマーシリーズでは「ヘリコイド」のネジ山がだいぶ大雑把でネジ山数が極端に少ない仕様になっています。生産後半世紀以上を経過しても、いまだにスルスルとスムーズで滑らかな駆動を維持しているのはさすがだと思われるかも知れませんが、その仕掛けはこの「ヘリコイド」と「グリース」に秘密があります。これだけネジ山数を省いた設計なので、相当な高精度と耐用年数の自信が無ければ実現できなかった仕様だと思います。しかし、どんなに滑らかな個体でもバラしてみると、既にヘリコイド・グリースの状態は「液化」がだいぶ進行しており、揮発した油成分が光学系に廻りカビが発生していたり、コーティングの劣化を促している個体も多いようです。当然ながらヘリコイドのネジ山摩耗も相応に進んでいるようです・・いつまでも滑らかに感じられるようなグリースを塗布したのは良いとしても、半世紀以上の使用を想定していたのかどうかは疑問です。

今回の個体も純正のグリースのままで、一度も整備されていない個体だったようです・・ついつい滑らかで操作性に支障がないとなるとメンテナンスされないのが常です。そのまま寿命を全うするまで使い切ると言うのも否定はしませんが、これから先さらに半世紀後のことを考えると、オリジナルなオールドレンズの個体数はだいぶ減っているのではないかと危惧してしまいます。

SMCT2045(1109)12絞りユニットや光学系前群を収納する鏡筒 (ヘリコイド:メス側) です。この中に光学系の第1群〜第6群までの6枚のレンズがギッシリと収まっているワケですから、このコンパクトな筐体から考えると相当によく考えられた設計が成されているように感じます。

SMCT2045(1109)13僅かたったの5枚の枚数で、しかも大変小さな絞り羽根であり、ご覧の通り「円形絞り」ではありません。しかし光源を含むシーンではとてもキレイな真円のリングボケ (玉ボケ) が表出するので、何ともオドロキの素晴らしいモデルです。

SMCT2045(1109)14距離環やマウント部を組み付けるための基台です。光学系がレトロフォーカス型であるにも拘わらず「薄め」ですね・・。

SMCT2045(1109)15真鍮製のヘリコイド (オス側) を無限遠位置のアタリを付けた位置までネジ込んでいきます。このモデルは「無限遠位置調整機能」を装備しているので大凡のアタリで構いません。

SMCT2045(1109)16鏡筒 (ヘリコイド:メス側) をやはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルには全部で7箇所しかネジ込み位置がありませんから、アタリは付け易いです。

SMCT2045(1109)17こちらはマウント部内部を撮影しています。各連係パーツを既に外してあり、且つそれらパーツが接する面も含めて「磨き研磨」が完了しています。

「磨き研磨」は極力グリースの類の塗布を少なくして、今後の経年使用に於いても「揮発油成分」が光学系まで回らないよう配慮した処置です。それは既に光学系、特にコーティングの劣化が相応に進行しており、さすがに硝子材だけはいくらメンテナンスと言えども、おいそれと何度も研磨することはできません (せいぜい当初生産時諸元値の1%以下程度までしか研磨できません)。それを考えるとグリースを塗ったくったり、或いは液化の早い滑らかな (粘性が軽めな) グリースばかりを好んで使うのもどうかと思います・・。

自分が使い倒してそれで終わりでいい・・と考えるならば仕方ありませんが、いつの日にかオールドレンズ自体が入手困難な時代もやってくるでしょう。その時には、古いオールドレンズに替わって、最新の技術と設計思想で作られたマニュアルフォーカスの新たなレンズ (復刻版など) が全盛時代になるのでしょうか (オートフォーカスはまた別のお話として)・・しかし、その描写性は如何にも最新の画造りだけの世界にも感じ、古き良き時代の「個性」としての描写性は、オールドレンズのひとつの魅力ではないかとも考えます。

SMCT2045(1109)18各連係パーツや絞り環と絞りユニットとの連係機構などを組み付けてマウント部内部を完成させます。

SMCT2045(1109)19基台にマウント部を組み付けて、絞りユニットとの連係を確認します。

自動/手動スイッチを装備していますが、たま〜に壊してしまう方がいらっしゃるので、ここで注意を話ておきます。タクマーのモデルでは、マウント面に小さな突起 (ピン) が用意されており、マウントに装着しない限り「手動/マニュアル」に切り替えできないようになっています。つまり、レンズ単体の状態では自動/手動スイッチは動かず「「自動/オート」の設定にしかなりません。もしも試してみるならば、後キャップをキッチリ締め込んだ状態で自動/手動スイッチを動かせば「自動」と「手動」の切り替えが可能なのに、後キャップを外してしまうと (つまりレンズ単体) スイッチは「MAN.」の位置に動かないことに気がつくと思います (AUTOのまま)。

SMCT2045(1109)20絞り環をセットします。

SMCT2045(1109)21指標値環を基準マーカーの位置をキッチリ合わせて組み付けます。

SMCT2045(1109)22距離環を仮止めで固定して、次に光学系前後群を組み付けます。

SMCT2045(1109)23まずは光学系前群です。他社光学系メーカーの々クラスのモデルと比較すると、同じレトロフォーカス型だとしても小振りな光学系です。それでこれだけの描写性能を維持しているのですからたいしたものです。

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SMCT2045(1109)26第1群〜第3群までのレンズにカビ除去痕やコーティング劣化に伴う極微細な点キズが集中して見受けられます。

上の写真 (3枚) は、それら極微細な点キズの状態を拡大撮影しました。レンズを固定している固定環の周囲に微細なキズやハガレなどがあるので、1枚目〜2枚目の写真を見ると相当数の点キズがあるように見えてしまいますが、実際には3枚目の写真をご覧頂くと分かるように撮っています。

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SMCT2045(1109)29こちらも光学系前群の状態を写した拡大写真です。1枚目が1cm弱程度の非常に薄い極微細なヘアラインキズ1本を拡大撮影しています。また2枚目も外周附近にあるカビ除去痕 (大きめの円形状のコーティング剥がれ) と当てキズ (小さめの点キズ) に2mm長程度の極微細なヘアラインキズを撮っています。3枚目は第4群〜第6群までの光学系の状態ですが、大きな硝子材の塊が位置しており、LED光照射では薄くクモリ状に見えます (順光目視では視認不可能です)。

【光学系の状態】</B>(順光目視で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
前群内:18点、目立つ点キズ:8点
後群内:5点、目立つ点キズ:2点
コーティング経年劣化:前後群あり
カビ除去痕:あり、カビ:なし
ヘアラインキズ:前玉に薄い極微細な1cm弱が1本と2mm程度が1本、後玉にも薄く極微細な短いのが1本あります。
・その他:バルサム切れ無し。前玉外周附近に微細なコーティングスポットが3点あります。また極微細な当てキズ2点あります。後玉はカビ除去痕が点状 (二重線状) に1点あります。
・光学系内はLED光照射でようやく視認可能レベルの極微細な拭きキズや汚れ、クモリもありますがいずれもすべて写真への影響はありませんでした。

光学系の状態を撮影した写真は、そのキズなどの状態を分かり易くご覧頂くために、すべて光に反射させてワザと誇張的に撮影しています。実際の現物を順光目視すると、これらすべてのキズは容易にはなかなか発見できないレベルです。

こ れらの極微細な点キズは「塵や埃」と言っている方が非常に多いですが、実際にはカビが発生していた箇所の「芯」や「枝」だったり、或いはコーティングの劣 化で浮き上がっているコーティング層の点だったりします。当方の整備では、光学系はLED光照射の下で清掃しているので「塵や埃」の類はそれほど多くは残 留していません (クリーンルームではないので皆無ではありませんが)

光学系内については、何でもかんでも「カビや塵・埃、拭き残しと決めつける方」或いは「LED光照射した状態をクレームしてくる人」は、当方ではなくプロの カメラ店様や修理専門会社様などでオールドレンズのお買い求めをお勧めします。当方のヤフオク! 出品オールドレンズの入札/落札や、オールドレンズ/修理のご依頼などは、御遠慮頂くよう切にお願い申し上げます。
当方には光学系のガラス研磨設備やコーティング再蒸着設備が無く、キズやコーティングの劣化が全く無い状態に整備することは不可能です。

SMCT2045(1109)30光学系後群は良い状態を維持した個体です。

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SMCT2045(1109)33そうは言っても、経年のカビ除去痕やコーティング劣化は否めません。上の写真 (3枚) は光学系後群の拡大撮影です。1枚目は二重の輪っか状にあるカビ除去痕を撮っています。2枚目〜3枚目は極微細な点キズを拡大撮影しています。

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ここからは組み上げが完成した出品商品の写真になります。

SMCT2045(1109)1今回の個体には、あうりがたいことに「純正金属製ステップアップリング」と「純正金属製専用角形フード」が附属していました。もちろん純正の前後キャップも附属しています。

フィルムカメラでの使用時には、そのままレンズのフィルター枠にフードを装着するとケラレ (入射光が影響を受けて画の四隅などが暗くなってしまう) が入ってしまうことを回避するために、77mm径のフィルターを装着できるよう専用のステップアップリングが用意されています。その先に専用フードをネジ込んで使います。

SMCT2045(1109)2光学系前群は極微細な点キズやコーティングスポットがある程度で、ご覧の通りクリアですから、写真への影響は全く御座いません。

SMCT2045(1109)3絞り羽根も絞り羽根開閉幅の調整も完了してキレイになり確実に駆動しています。

ここからは鏡胴の写真になります。経年の使用感がほとんど感じられないとてもキレイな状態を維持した個体です。生産時の焼き付け塗装の成分が異なるのか、経年の紫外線焼けで鏡筒カバーと距離環、それにマウント部と3つの部位の「黒色」の色合いが僅かに違って見えます。スタジオ撮影でライトを浴びているので色調の相違が誇張されていますが、実際の現物を手に取るとこの色合いの違いはまず分かりません (クレームを付ける人が居るので、念のため大袈裟に撮っています)。

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SMCT2045(1109)7【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・距離環や絞り環の操作は大変滑らかになりました。
・距離環のトルク感は滑らかに感じ完璧に均一です。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。

【外観の状態】(整備前後拘わらず経年相応中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。

SMCT2045(1109)8焦点距離20mmと超広角レンズですが、最短撮影距離20cm (実際はさらに短い) まで寄れ、且つこの描写性からくるマクロ的な写りは病み付きになりますね・・。これでエッジが細いピント面でしたら、それほど良い印象を抱かなかったと思いますが、太目のエッジがクッキリ感を誇張しメリハリのある発色性と相まって独特な立体感のある画を残してくれます・・素晴らしい描写性です。

SMCT2045(1109)9絞り連動ピンの駆動も確実になっています。規定の長さになっています (つまり純正のままでいじっていません) ので、ミラーレス一眼にマウントアダプタ経由装着される場合には、ネジ込めないからとムリにネジ込んだりしないようお願い申し上げます。「マウントアダプタとの相性」が存在するのが「M42マウント」になりますから、当方の整備の問題と結論づける方はゼッタイに入札/落札されぬよう切にお願い申し上げます。特に日本製マウントアダプタとの問題で難癖付けてくる人が居ますので、そう言う方は当方の出品オールドレンズは落札しないでください!

SMCT2045(1109)10当レンズによる最短撮影距離20cm附近での開放実写です。

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SMCT2045(1109)35今回の個体に附属している純正の「金属製ステップアップリング」と「金属製専用角形フード」です、僅かに経年の使用感が感じられますが、当方にて着色しています (2セット附属しているのではなく、フードを反対側とで1枚ずつ撮っているだけです)。