◆ Carl Zeiss Jena (カールツァイス・イエナ) Biotar 58mm/f2 T silver《前期型ーII》(M42)

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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧東ドイツは
Carl Zeiss Jena製標準レンズ・・・・、
 『Biotar 58mm/f2 T silver《前期型-II》(M42)』です。


このモデルの当方での累計扱い本数は、今回の個体が61本目にあたりその中で「前期型-II」は16本目になります。今回の個体も光学系内の透明度が非常に高い状態を維持していますが残念ながら前玉裏面の外周辺りにコーティング層経年劣化による極薄いクモリが残っています (LED光照射しないと視認できず)。写真には影響がありませんが惜しい限りです。

実はこの「前期型-II」を昨年中に5本調達したのですが、とうとう最後の5本目の出品になるので次回の扱いは全くの未定です。と言うのも今まで海外オークションebayで2万円〜3万円台が市場価格でしたが、つい最近の動向を見ると極端にこの「前期型」の出現が減っており、且つ相場は3万円〜5万円台と高騰しています。

従ってさすがにオーバーホール後に出品するにしても今回の「即決価格49,500円」はもう 次回からはムリなので、お探しの方は是非ご検討下さいませ (次回からは間違いなく値上がりします)。

この旧東ドイツはCarl Zeiss Jena製標準レンズBiotar 58mm/f2 T silver《前期型-II》(M42)』はシルバー鏡胴モデルを最後に消滅していった標準レンズの一つです。それだけに希少価値も確かにあるのですが、おいそれと手を出せない問題があったりします。

↑左端から前期型、中期型、後期型、そして後期型のマウント面の写真です。この中で後期型だけマウント面に「絞り連動ピン」が飛び出ている半自動絞り方式になります。半自動絞り方式なのでいちいちチャージさせて絞り値を決めないと設定絞り値まで絞り羽根が閉じない面倒くささがあります。

また実装されている絞り羽根の枚数も「前期型17枚」から減じられ「後期型10枚」になるので真円の円形絞りを期待するなら「中期型まで」と言う話になります。

そして非常に厄介なのが「中期型」の話で「M42マウント」ながら ネジ部の先にさらに出っ張りがあるので、フィルムカメラで使う場合でも一部でミラー干渉が起きますし、もっと言えば今ドキのデジカメ一眼/ミラーレス一眼にマウントアダプタ経由装着するにも問題が起きます。

マウント面に「絞り連動ピン」の突出が無いのでマウントアダプタに装着して使えると考えがちですが、このネジ部から先の出っ張り部分が問題なのです。

外径38mm4.4mmの高さで飛び出ているので、一部のマウントアダプタで突き当たってしまい最後迄ネジ込めない問題が起きます。

↑マウントアダプタにネジ込んだ時に「最後までネジ込めない/隙間が空いてしまう」マウントアダプタが顕在します (赤色矢印)。

上の写真は左から「Rayqual製 (日本製)」に「K&F CONCEPT製 (中国製)」そして「FOTGA製 (台湾製)」のマウントアダプタ3種類に「中期型」のビオターを装着した時の状況です。 すると「K&F CONCEPT製」だけが最後までネジ込めずにマウント部に隙間が空いてしまい「無限遠合焦しない」トラブルに見舞われます。

従ってヤフオク! でも当方と同業者の『転売屋/転売ヤー』が遙々ドイツから出品していたりしますが「ピン押し底面の無いマウントアダプタを使うよう」勧めています。上の写真で言うところの「FOTGA製」がまさにその「ピン押し底面が存在しない」唯一のマウントアダプタで あり、赤色矢印のとおりちゃんと最後までネジ込めます。

たかが千円前後で手に入るマウントアダプタなので「ピン押し底面が無いタイプ」を一つ持っていても便利かも知れません。

ところが肝心な点を蔑ろにしたまま平気で案内しています(笑) 単に「突き当たらないから 使える/隙間が空かないから使える」と勧めていますが、フランジバック計算していません(笑)

マウント規格が「M42マウント」なのでフランジバックを「45.46mm」と考えた時、例えばSONY Eマウント規格のフランジバックは「18mm」なので、その差「27.46mm」が残りの フランジバック値になります。

つまりマウントアダプタの製品全高 (マウント面から) として「27.46mm以内」であれば無限遠合焦しますが、それ以上だとアンダーインフ状態に陥り下手すれば甘いピント面にしかなりません (無限遠位置の場合)。

↑手元にある「M42マウントアダプタ (SONY Eマウント用)」を検証してみます。

K&F CONCEPT製 (中国製) のピン押し底面タイプ第1世代
K&F CONCEPT製
(中国製) のピン押し底面タイプ第2世代
K&F CONCEPT製
(中国製) のピン押し底面タイプ第3世代
RAYQUAL製
(日本製) のピン押し底面タイプ
FOTGA製 (台湾製) の非ピン押し底面タイプ

何で当方がマウントアダプタの検証をしなければイケナイのかといつも思いますが、信用/信頼が無いので仕方ありません(笑) ヤフオク! の同業者でも信用/信頼が高ければ何の疑念も無いままに落札されています(笑)

まで赤色矢印の箇所にピン押し底面が備わっていますが、最後のだけピン押し底面が無い唯一のマウントアダプタです。

ピン押し底面タイプ
M42マウントのオールドレンズでマウント面の絞り連動ピンを強制的に押し込むタイプ

↑マウントアダプタのマウント面からの「製品全高」をチェックするとこんな感じでバラバラです(笑) 「M42マウント」規格「フランジバック45.46mm」とすると差分「27.46mm」が理想的な製品全高と言う話になります。

すると左端のは相当オーバーインフ量が多くなりだいぶ∞刻印の手前で一度無限遠合焦してしまいます (厚みが薄いから)。たいていの場合でオールドレンズ側の無限遠位置もオーバー インフ状態に設定されていることが多いので、RAYQUAL製でも許容値内になります。

ところが左の「FOTGA製 (台湾製)」だけは「27.84mm」もあるのでアンダーインフ状態に陥り「無限遠合焦しない/甘いピント面」と言う結果になります。

しかしこのマウントアダプタが唯一の「非ピン押し底面タイプ」と勧められているワケで(笑)、他に選択肢が無いのでどうにもなりません。

信用/信頼が高ければ誰も文句言わないのでしょう・・(笑)

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そんなワケで長々とマウントアダプタについて解説してきましたが、当方が「中期型」ではなく「前期型」にこだわって調達している理由がこのマウント面の問題であり、いわゆる「マウントアダプタとの相性問題」の話でもあります。

↑今回出品の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程の解説などは「Biotar 5.8cm/f2 T《前期型-II》(M42)」のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑貴重な「M42マウント」のBiotar 58mm/f2 T silver《前期型-II》(M42)』です。マウントアダプタとの相性を考えて僅かにオーバーインフ状態で仕上げてあります。マウント面のネジ部が一般的なタイプなので「ピン押し底面タイプ」でも何も問題が起きません (それで前期型にこだわって調達している)。

↑残念ながら前玉裏面側の外周部分にコーティング層経年劣化による極薄いクモリが残っていますが、領域が少ないので写真には影響しないレベルです。「気泡」が少々多めに入っています。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

取り敢えずそのまま覗き込んでも前玉裏面側の (外周部分の) 極薄いクモリは視認できません。LED光照射でようやく視認できるレベルです。

↑特にこの後群側にクモリが発生していないのでラッキ〜なのです。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:12点、目立つ点キズ:6点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(極微細で薄い23ミリ長が数本あります)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):あり
特に前玉裏面にコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが残っておりLED光照射で浮き上がります(順光目視できず)。
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内パッと見で微細な塵/埃に見える「気泡」がありますが当時は「正常品」として出荷されていました(写真には影響ありません)。前述点キズにカウントしていますがキズではありせん。
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑17枚もある絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に真円の円形絞りを維持」したまま閉じていきます。絞り環操作が無段階式 (実絞り) 方式なのでそのままではスカスカになる為、敢えてトルクを与えて少々シッカリした重さのあるトルク感に仕上げています。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

↑出品ページの「オーバーホール後の状態」欄にてちゃんと明記していますが「距離環を回した時ヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる」のでご留意下さいませ。気にされる方はご落札頂かぬようお願い申し上げます。

↑MCフィルター (新品) と前後キャップを附属させています。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離90cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありません。またフード未装着なので多少フレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f4」で撮っています。

↑f値は「f5.6」に上がっています。

↑f値「f8」になりました。手を翳すのを忘れた為、僅かにフレアが出ています。

↑f値「f11」での撮影です。

↑f値「f16」になりました。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。「回折現象」の影響が現れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。