◎ TOKYO KOGAKU (東京光学) RE GN TOPCOR M 50mm/f1.4(RE/exakta)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます
※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません


今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、
東京光学製標準レンズ・・・・、
RE GN TOPCOR M 50mm/f1.4 (RE/exakta)』です。


このモデルの扱い本数は少なく今回の個体が累計で5本目になりますが、オーバーホール済でヤフオク! に出品するのは初めてです (他は全てオーバーホール/修理ご依頼分)。特に敬遠しているワケではないのですが、内部構造の特殊性から好きこのんで扱いたい気持ちにならない のがホンネだったりします(笑)

当時の東京光学製開放f値「f1.4」の標準レンズとして考えると、ピント面のエッジが繊細ながらも非常にインパクトの強い明確な (カリカリな) 鋭さで合焦し、メリハリのある高いコントラストと共に、然しナチュラルな色乗りで違和感や誇張感を感じない独特な表現性を出す非常に魅力的な標準レンズです。

それもそのハズで、当時の東京光学製オールドレンズの中にあって唯一のマルチコーティングモデルであり、解像度の向上と共に優れた収差制御による「個性」を感じ取れる標準レンズ だからです。

そしてこれもまた東京光学で唯一無二の「フラッシュマチック機構」を装備した設計概念により、その独特なピント合焦の瞬間は一度味わうと虜に堕ちてしまうほどに、中毒性のある独特な操作性を実現している点も大きな魅力のひとつです

【調達時のチェック項目】
光学系の特に後玉表面の状態 (コーティング層経年劣化/カビの発生)
距離環を回す時のトルクが異常に重くないかどうか

上の2点は必ず調達時にチェックする必要があるこのモデルの大きな問題点です。

の光学系に関して、同じく東京光学製の「RE,Auto-Topcorシリーズ」同様、焦点距離58mmの標準レンズに於いて「後玉表面の状態」は少しでもコーティング層経年劣化の進行に伴う「クモリ/汚れ」が生じていると、まず清掃しても除去できませんし、同時にカビの発生も致命的なクモリを伴ってしまう懸念が高い為に必ずチェックする必要があります。

何故なら特にこのモデルの場合屈折率の高い光学系を実装している為に、最後の最後「後玉」でコントラスト低下 (或いは解像度低下) を招いてしまう懸念に直結する問題だからです。

そしての距離環を回すトルクは、昨今のメンテナンスで「白色系グリース」が塗られていたりすると、そのグリースの経年劣化進行により重いトルクに至っている場合があります。しかし特に距離環の距離指標値で「3m最短撮影距離40cm」までの繰り出し時は急に繰り出し量が増える設計概念なので、必然的にトルクに対する負荷が大きくさらに重い印象になります。

この2点の問題がある為に、なかなか勇気を出して調達に臨めない難しさが憑き纏うモデルと言えます。

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今回扱うモデルは、最近とみに市場価格が高騰している銘玉と讃えられている東京光学製標準レンズ『RE GN TOPCOR M 50mm/f1.4 (RE/exakta)』です。当時の東京光学製標準レンズの中にあって「唯一のマルチコーティング」モデルであるが故に、モデル銘の中に「M」刻印が含まれています。

従って右写真の下位格モデル (標準レンズ)「RE GN TOPCOR 50mm/
f1.8 (RE/exakta)」はモノコーティングのままです。

当然ながら開放f値が「f1.8」と普及帯の明るさなのですが、この「RE GNシリーズ」だけはそのような捉え方をすると正しく認識できていません。

この「RE GNシリーズ」の最大の特徴は、手に取って操作してみればすぐに「えッ?!」とオドロキを伴って理解できますが、無限遠位置から距離環を回した時に途中からいきなり「ググ〜ッ」と鏡筒が飛び出てくる他のオールドレンズとは異なる繰り出し/収納方式をする点にあります (通常繰り出し/収納は一定量なのが一般的)。
つまり「可変直進式ヘリコイド駆動」なのですが、それは内部構造に「昇降機能」を持たせているからに他なりません。

では何故そのような特異な駆動方式で設計したのかと言えば「フラッシュマチック装備」が最大の目的です。

1973年に東京光学から発売された一眼レフ (フィルム) カメラ「TOPCON SUPER DM」のセットレンズとして登場した標準レンズで、東京光学としては初のマルチコーティング化モデルでした。

この一眼レフ (フィルム) カメラの最大の特徴は、オートワインダー (フィルム自動巻き上げ機構) を初めて装着できるように設計され、且つ標準セット品として発売された点です。さらにセットレンズの標準レンズ (開放f値:f1.4/f1.8の2モデルが用意されていた) にはフラッシュマチック機構を装備した点も当時非常に注目を浴びたようです。

フラッシュマチック機構は、ストロボのガイドナンバー (GN) をセットすると、自動的に適合する (ストロボ照射光が届く) 撮影距離と絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量) が連動してセットされ、且つ絞り環のクリック感まで解除されてシームレスに (実絞り状態のまま) ピント合わせに集中できると言う優れモノです。

このフラッシュマチック機構の使い方はこのブログの最後のほうで解説していますので、興味がある方はご参照下さいませ。

すると確かにフラッシュマチック機構を使わない (フラッシュ撮影をしない) なら意味がありませんが、実はフラッシュマチック機構を装備するが為に「専用の光学設計が必要だった」点が大変重要です。もちろん距離環の駆動方式 (鏡筒の繰り出し/収納) が特異である点も加味されますが、それは何だかんだ言って写真には結果として現れません。

内部にヘリコイド (オスメス) を有せず「昇降機能」によるシームレスな (可変式の) 鏡筒繰り出し/収納方式を採用すると同時に「マルチコーティング化」による解像度の向上と収差改善から、必然的に「屈折率の追求が必須」に至ったと推察します。その結果光学硝子材に「酸化トリウム」を含有した、俗に言う「アトムレンズ (放射線レンズ)」である事を考慮しなければイケマセン。

つまりフラッシュマチック機構採用による独特なピント合わせの操作性と、実際に写し出される写真のやはり独特な表現性が、当時の東京光学製標準レンズの中にあって「独特な個性」を持っていると明言できるほどの特徴を備えている点を認識する必要があります。

当時の東京光学、特に標準レンズ域のオールドレンズの中にあって人気の的は「RE,Auto-
Topcorシリーズ
」に集中していますが、当方はむしろこのモデルのほうが繊細感を合わせ持ちながらもボケ味の引き出しの多さと共に、ナチュラルにもハイコントラストにも自在に撮れる表現性、そして何よりもこのモデルでしか味わえない「ピント合焦の瞬間の醍醐味」が大きな魅力になると極大評価しており、消えゆく東京光学へのまるで郷愁の思いを募らせるが如く(有終の美を飾った) モデルとして、もっと認めてあげてほしいと切に願う次第です。




上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して円形ボケへと変わっていく様をピックアップしています。4群6枚のダブルガウス型光学系を拡張して後群側に1枚追加した5群7枚拡張ダブルガウス型光学系なので、基本的にダブルガウス型光学系の素養が表れますが意外にも円形ボケは繊細で明確なエッジを伴って表出するので、円形ボケのファンの方には堪らないでしょう。特に円形ボケのエッジが際立ちすぎて違和感になりにくい表出の印象が、これはこれで特徴的だと考えます (明確な真円のシャボン玉ボケが好きな方にはちょっと物足りないかも)。

二段目
左端から収差の影響をふんだんに残した背景ボケ/収差ボケをピックアップしましたが、当時こそたいして評価されなかったこれらボケ味が今は逆に「ボケ味の引き出しの多さ」になり写真の演出効果に大きく貢献してくれます。

三段目
ピント面は大変繊細なエッジを伴いながらも非常にカリカリで鋭く明確なインパクトを残す合焦をしますが、決して違和感や誇張感に偏らず自然なニュアンスで写し込むのが素晴らしいです。また巷で「トプコンの赤」と揶揄されるとおり、ご覧のような独特な赤色で発色します。バラのこの色をちゃんと残せるのも凄いですが、さらに右端の写真で赤色が色飽和せずにここまでビビットな印象で (決して違和感を感じずに) まとまってしまうのにオドロキです。被写体の材質感や素材感を写し込む質感表現能力に優れている事が、これら実写を観ただけでも理解できます。

四段目
左端で人物撮影をピックアップしましたが、ピント面が鋭く質感表現能力に優れ、且つその次の2枚の写真のとおり暗部が粘って潰れにくいダイナミックレンジの広さがあるのに、どうして人肌表現にリアルさが足りないのかがちょっと分かりません (納得できません)。単に撮影時のスキルの問題なのか結論を出せない状態です。

光学系は5群7枚の拡張ダブルガウス型構成で、右構成図の中で 部分の第3群〜第4群の光学硝子材に「酸化トリウム」を含有させた、俗に言う「アトムレンズ (放射線レンズ)」です。逆に言えば、その他の群 (第1群
〜第2群と第5群) には「酸化トリウム」は含まれていません。

右図は今回バラして清掃時にデジタルノギスで計測しほぼ正確にトレースした構成図です。
当方が計測したトレース図なので信憑性は低いですから、ネット上で確認できる大多数の構成図のほうが「」です (つまり当方のトレース図は参考程度の価値もありません)。
(各硝子レンズのサイズ/厚み/凹凸/曲率/間隔など計測)

左写真は今回の個体の光学系から取り出した、第3群〜第4群の「酸化トリウム」を硝子材に含有した光学硝子レンズです。ご覧のように経年による「ブラウニング現象」が生じて赤褐色化しています。これを指して一般的には「黄変化」と呼ばれますが、当方が2,000本以上今までオーバーホールしてきたオールドレンズを見ていると「酸化トリウム」含有の場合は単に黄色く変色するだけではなく「赤褐色化」します。

左写真は、取り出した硝子レンズを24時間UV光を照射していわゆる「黄変化」を低減させた状態を撮っています。

すると、それでもなおまだ「黄色っぽく」見えているのですが、これはコーティング層の化学反応で変質してしまった部分で、これ以上UV光の照射を続けても変わりません。

実際は現物の光学硝子レンズを1枚ずつ確認すると「レモンイエロー」にうっすらと色付いているのですが、格納筒の中に全ての群がセットされると「相応に黄変化が残っている状態」に見えます。単に「黄変化」としてしまうと、いわゆる「コーティング焼け」で黄色っぽくなっている場合と区別が付かなくなるので、当方では敢えて「赤褐色化」と呼んでいます (当方の勝手な判断です)。

紫外線の照射で「黄変化」が改善できると言うことは、つまり使われずに保管期間が長くなると再び「黄変化が進行する」と言えます。逆に言えば時々撮影していれば (特に外に持ち出していれば) 入射光が光学系内に入る分、変質しにくい話になると考えます。

ところで、この「酸化トリウム」の光学硝子材への含有は、世界中の光学メーカーで1950年代後半辺りから1960年代に多く採用されましたが、前述の「ブラウニング現象」の問題から代替材として1970年代に入ると日本の光学メーカーも含め「ランタン材」を使うようになりました。

今回のモデルが発売された時期は1973年です。では、どうしてこのタイミングで敢えて「酸化トリウム」を硝子材に含有してきたのでしょうか? ヒントは「酸化トリウム」の含有により「屈折率を20%代まで向上できる」点です (ランタン材は10%代まで向上が期待できる)。
逆に言えば、年代として他社光学メーカーでも挙って「酸化トリウム」含有をやめてきている時期なのに、東京光学では「フラッシュマチック機構」の装備から必然的にシームレスな光学性能が必要になってしまい、結果的に「敢えて酸化トリウムを硝子材に含有した」とも言え、このモデルが「銘玉」と評価され続けているポイントの一つでもあると考えます (何故なら、シームレスな鏡筒の繰り出し/収納の中で酸化トリウムを含有しなければこれだけの鋭くも違和感の無い自然なピント面を構成できなかっただろうから)。

つまりは全てが「フラッシュマチック機構」装備からスタートし、一切の妥協を捨てて (当時の慣習を捨てて) 可能な限り追求し続けた結果のオールドレンズだあったと、当方は評価しています。それゆえ、レンズ銘板の「M」は単なるマルチコーティングだけの意味に留まらず「東京光学の威信を架け」有終の美を飾った気概として捉えるべきとロマンが広がりますね。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。内部構造はそれほど難しい設計概念ではありませんが、前述のとおり「フラッシュマチック機構」装備からその「昇降筒 (内外)」と絞り環の「GNスイッチ」との連係動作、そして絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量) 微調整など、凡そ一筋縄では進まない「大変神経質な微調整」を要求されるモデルです。

ある意味マクロレンズのようなトルク調整が必須なのですが、むしろマクロレンズよりも厄介なのが「GNスイッチ」の存在であり、如何にトルクに影響を及ぼさないように仕上げられるのかが問題になる「高難易度」モデルとも言えます。その意味でこのモデルを最大限にベストな状態に仕上げられる整備者と言うのは、実はそれほど多くないと考えています。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルはヘリコイド (オスメス) を有せず「昇降筒」を使った繰り出し/収納方式なので特殊です。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

鏡筒の最深部には絞りユニットとして左写真の構成パーツが全て組み込まれます。

これら構成パーツの中で特に問題になるのが「開閉環」であり、梨地仕上げのメッキ加工が施されているものの、アルミ合金材の削り出しパーツなので、やはり細く薄い「アーム (2本)」の強度/耐性がネックになってきます。

↑6枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。東京光学の絞り羽根は品質が当時の他社光学メーカーと比べてもあまり良くありません (ちょっとペラペラすぎますね)(笑)

さらに前述の絞りユニット内「開閉環」のアルミ合金材の品質 (軟らかすぎ) も影響して、どうしても絞り羽根に打ち込まれている「キー」との経年による摩耗度合いが影響してきます。真鍮 (黄銅) 製の「キー」も本来軟らかい素材なのですが、それに負けて「開閉環」側の穴が微細に擦り減っていくので堪ったものではありません。

上の写真のとおり絞り羽根が閉じていく際に「歪なカタチ」に陥ってしまう原因がまさにそれで「開閉環」側が摩耗/劣化している「」です (東京光学製オールドレンズの場合)。

一度擦り減ってしまった金属を元通りに復元することは物理的に不可能なのでどうにもなりませんし、そもそも何処がどの程度摩耗しているのかさえ見ただけでは一切分かりません。

↑完成した鏡筒をひっくり返して裏側 (後玉側方向) から撮影しました。絞り羽根の開閉に係る制御系のパーツがビッシリ組み付けられています。

絞り環と「連係アーム」で連係した「制御環」が回ることで (絞り環が操作されることで)「なだらかなカーブ」が移動します。すると「カム」の突き当たる勾配 (坂) の位置が変化するので、その時の勾配によって絞り羽根の開閉角度が決まります。そしてその角度が「制御アーム」を引き戻すチカラとなって伝達され、具体的な絞り羽根の開閉へと繋がる仕組みです。

なだらかなカーブ」の麓部分が最小絞り値側になり勾配 (坂) を登り切った頂上が開放側になります。上の写真では「カム」が麓部分に居るので絞り羽根はご覧のように最小絞り値まで閉じきっています (ブルーの矢印)。

絞り羽根の開閉制御を司る「チカラの伝達」手法として「アーム」が用意されており、
開閉アーム/制御アーム」の2種類により具体的な絞り羽根開閉動作を実現しています。

開閉アーム
マウント面絞り連動ピン (レバー) が押し込まれると連動して動き勢いよく絞り羽根を開閉する

制御アーム
絞り環と連係して設定絞り値 (絞り羽根の開閉角度) を絞りユニットに伝達する役目のアーム

  連係アーム
絞り環と制御環を連係させる役目

カム
なだらかなカーブに突き当たることで絞り羽根の開閉角度を決めている部位

↑今度は鏡筒を別の角度から撮影していますが「開閉環」から飛び出てきている2本のアーム「制御アーム/開閉アーム」があります。また同時にスプリングがそれぞれのアームに附随して働いており「常に絞り羽根を開こうとするチカラ」と「常時閉じようとするチカラ」の2つのチカラバランスの中で絞り羽根が適正な角度で開閉している原理です (ブルーの矢印)。

何を言いたいのか?

つまり前述のとおり品質 (経年の摩耗度/耐性) があまり配慮されていない、軟らかいアルミ合金材の「開閉環」のせいで絞り羽根の開閉角度が影響を受けている上に、プラスしてこれらスプリングのチカラの問題が関わってきます。2つのスプリングのうちいずれか一方、或いは両方が経年で弱ってしまった時「絞り羽根開閉のバランスが狂う」為に「絞り羽根の開閉異常」が起きます。

例えばオールドレンズをバラす前の状態で既に絞り羽根が正しく開閉しない、或いは動きが緩慢などの「絞り羽根の開閉異常」が発生していた場合、その原因が何処にあるのか因果関係を突きとめる必要があります。

開閉環」側にある絞り羽根 (のキー) 用の穴なら改善のしようがありませんが、スプリングなら改善策もあります。ところが今回の個体は過去メンテナンス時に何とこの制御系パーツにまで「白色系グリース」を塗ってくれたので(笑)、当初バラした際は既に経年劣化進行から「濃いグレー状」に変質しており、一方のスプリングのチカラが弱っていました。

このモデルをバラして整備できる整備者となればシロウト整備ではなく「プロの仕業」なのですが(笑)、この程度のスキルです。何故なら、ワザワザ鏡筒に「梨地仕上げメッキ加工」が施されていて、経年で流動する揮発油成分が絞り羽根に附着しないよう配慮されています。

その場所に敢えて「グリースを塗る」愚かな所為をしたワケですから笑ってしまいますね(笑)
しかしその結果、絞り羽根に油染み痕が残ってしまいました (清掃しても除去できません)。

↑もちろん今回のオーバーホールではこの鏡筒にグリースを塗るなど以ての外なので、グリース無しでも問題なく各部位が適切に駆動しています。

完成した鏡筒を立てて撮影しました。この鏡筒の厚み (高さ/長さ) を見て不思議に思いませんか?

このモデルの最短撮影距離は40cmで距離環を回すと相当な繰り出し量を誇っています。当然ながら光学系の厚みも多くなり鏡筒も深くなると想像するのですが、意外にもご覧のように厚みの無い (薄い) 鏡筒です (写真上側に光学系前群が入り下側に後群がセットされる)。

それは光学系の硝子材に「酸化トリウム」を含有してきた事の現れにもなっていますね。

↑距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。

↑真鍮 (黄銅) 製の「昇降筒 (外側)」を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

冒頭解説のとおりヘリコイドのネジ山 (オスメス) がありませんから、ご覧のとおりツルツル状態です。「昇降ガイド」なる切り欠き/スリットが両サイドに用意されており、且つ下部には「GNキー」と言う縦方向の「」もあります。

↑「昇降筒 (内側)」を組み込んだところです。「昇降キー」が両サイドに刺さるので「昇降ガイド (スリット)」を行ったり来たりすることで「昇降筒 (内側)」が繰り出したり/収納したりする原理です。

昇降ガイド (スリット)」の底辺部分が無限遠位置方向にあたり、反対側の登りつめた位置が最短撮影距離位置になります (ブルーの矢印)。

するとこの「昇降ガイド (スリット)」の中を行ったり来たりする「昇降キー」の移動範囲をグリーンの矢印で指し示していますが、全域を使い切っていません。無限遠位置側が突き当たる位置まで到達するのに対し、最短撮影距離位置側はその手前で「昇降キー」は止まってしまいます (最後まで突き当たらない)。

その駆動範囲をグリーンの矢印で指し示しているワケですが、最短撮影距離:40cmの時はグリーンのラインの箇所で止まっていますから、今回のオーバーホールではそこからさらに突き当たる位置 (一番高い位置) まで「昇降キー」が進むよう処置しました (オレンジ色矢印の領域)。

従って今回オーバーホール済で出品するこの個体だけが「最短撮影距離40cmを越えて実測値37cmまで到達」しています。
(オリジナルの状態では距離環の刻印距離指標値40cmのところで停止してしまう)

なお、左写真のとおりこれら昇降筒 (内外) は、互いの接触面が「鏡面仕上げ」である必要がありますが、今回の個体は当初バラした際に過去メンテナンス時に塗布された「白色系グリース」の経年劣化進行により「濃いグレー状」に変質していました。

そのせいで距離環を回すトルクが非常に重い状態に陥っていたので、当方にて再び「鏡面仕上げ」に戻し適切なトルクにしています。

↑基台に絞り環をセットしたところですが、既に「GNスイッチ」を組み込んであります。「GNスイッチ」は解説のとおりマウント方向に引き戻したり (ブルーの矢印①) 前玉側方向に引き上げたり () する事で「ON/OFF」の切り替え動作になります。ブルーの矢印①の時に「OFF」になり「通常の絞り環動作」としてクリック感を伴う駆動になり、ブルーの矢印②の時に絞り環がフリーになり (クリック感が無い) 距離感と連動して動くように操作方法が変わります。

↑こちらはマウント部内部ですが、当初バラした際は過去メンテナンス時に塗られていた「白色系グリース」の経年劣化進行により「濃いグレー状」に陥っていた為、構成パーツを取り外して当方による「磨き研磨」をお等をせた状態で撮影しています。

↑取り外していた各構成パーツも個別に「磨き研磨」を施しセットします。するとご覧のとおり「開閉レバー」が備わるのですが、実はこのレバーがダイレクトに鏡筒内の絞りユニット「開閉環」にグサッと刺さったまま「距離環の繰り出し/収納に連動している」事になります。その為にご覧のように長い板状パーツとして設計されています (つまり鏡筒の繰り出し量の分だけの長さがあるという意味)。

ここですぐにピ〜ンときた整備者なら相応に技術スキルがありますが、何も気がつかなかった整備者なら、そもそも東京光学製オールドレンズの整備はしないほうが無難です(笑)

そうですね「絞り羽根開閉異常」の根本原因になりやすい箇所が、実はこの「開閉レバー」だったりするワケです (開閉環にダイレクトに突き刺さっているから)。そのような因果関係を持つ箇所なので、前の工程でワザワザこの「開閉レバー」まで取り外して「磨き研磨」しているワケですが、実は専用工具が無いと解体できません。

それに気がつかないからグリースを塗ったくって「ごまかしの整備」をしてしまうのも納得ですね(笑)

整備者の技術スキルとは、このような箇所で逐一露呈していってしまうワケです(笑)

↑鏡筒を「昇降筒」の中にストンと落とし込んでから前玉側方向から「締付環」で締め付け固定します (グリーンの矢印の手順)。

↑このような感じで鏡筒が「昇降筒」の中にセットできました。実はこの「締付環」が同じアルミ合金材で切削されているが為に、過去メンテナンス時にムリにネジ込まれている事が、東京光学製オールドレンズには結構あったりします。ちゃんとネジ込む際にネジ山が適合している事を確認しつつネジ込まないと、途中で咬んでしまい最後までネジ込めなくなります。

するとアルミ合金材同士なので、簡単にネジ山が削れてしまいネジ込めなくなるので (つまり鏡筒が浮いたままになってしまうので)、エポキシ系接着剤などで接着してごまかしている過去メンテナンスが何本もありました。外から見えないので平気でそのような処置をしているワケです(笑)

実はこういうところに東京光学が光学メーカーではなかったと当方が言いたくなる要素があったりします (つまりカメラメーカーと言う意味)。根本的に金属材に対する考え方が、どうもNikonやCanon、或いはその他の光学メーカーのような概念とは違うように思えて仕方ありません。特にアルミ合金材に対する切削レベルが、あまりにもこの会社は雑すぎます。それは「RE,Auto-Topcorシリーズ」などを扱っていても強く感じますし、もっと言えばアルミ合金材の長所をメリットとして使い切っていないところに、当方としてはどうしても納得できない部分があったりします

光学メーカーのほうがアルミ合金材の使い方が上手いですね (正直な感想です)(笑)

↑たったの4本の皿ネジを締め付けるだけで固定してしまう設計概念の(笑) マウント部をセットします。他社光学メーカーとは異なり、このマウント部がガチッと確実に填らない設計です。

逆に言うと、他社光学メーカーは必ずマウント部の組み込み位置が確定するよう凹凸をもたせて設計されているのですが、東京光学製オールドレンズはほぼ全てのモデルで「単にマウント部は乗っている」だけで、唯一4本の皿ネジだけで締め付け固定する設計概念です

筐体重量が嵩張らないモデルなら良いですが、望遠レンズなど重量級のオールドレンズだといくらバヨネットマウント式の「exakta」でも相当なチカラが架かると考えられます。しかしその重量を支えているのが「たった4本の皿頭ネジ」と言う設計ですから、はたして当方のような金属ド素人が考えても「いくら何でも強度不足だろう」と疑心暗鬼に陥ってしまいますね(笑)

↑距離環を仮止めしてから光学系前後群を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

修理広告DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わっています。「こんなに軽く滑らかな操作性のトルク感に仕上げられるのか!」と言うくらいに「昇降式」としては信じられないほどに軽い操作性のトルクに仕上げました(笑)

実は一度完成してこのブログ用に写真撮影していたのですが、実写のところでアウトでした(笑)

最短撮影距離40cmまで繰り出して実写しようとした時、ピント合わせしていて「これゃ、とても使えるトルクじゃない!」とそのトルクの重過ぎに唖然としたワケです(笑)

従って、再びバラして「昇降筒」まで取り外し「鏡面仕上げ」をもう一度行い、且つグリースの種別選定をもう一度行った次第です。自分で納得できなければご落札者様さえ納得するハズがありません(笑)

その結果の仕上がり (トルク調整) と言うワケです・・(笑)

なお、ちゃんと見る角度 (光に反射させる角度) が変わると、左写真のように薄いグリーン色の光彩で光り輝きますから美しいです。

メインの光彩は「パープルアンバー」ですが、マルチコーティングなのでグリーンも含まれています。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。極微細なヘアラインキズが数本ありますが、パッと見だとたぶん気づきません (そのくらいのレベルと言う意味)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑問題の光学系後群ですが、こちらもLED光照射で極薄いクモリが皆無です。そして上の写真のとおり「素晴らしい状態を維持した後玉表面」です。ここが一番のネックなので、本当に手元に届くまで分からず、なかなか調達しても難しいですね。

上の写真で写っている「後玉表面」にコーティング層経年劣化に伴う「汚れ」などが残っていると、まず極薄いクモリを伴う事が殆どなのでそのせいでコントラスト低下や、下手すれば解像度不足に陥ります。

ヤフオク! などを見ていると「コーティングダメージ」と言う表現で書かれている事が多いように感じますし、もっと言えば「目視ではクモリがありません」と言う表現自体が「オールドレンズをバカにしている」と当方には受け取れます。

何故なら、オールドレンズの光学系に入ってくる入射光は、必ずしも目視レベルだけで語れるような「」ではないと言いたいですね(笑)

必ずLED光照射でチェックしてどうなのかが問題になると考えます。当方は写真 (撮影) スキルが低いので上手く撮れないのでいちいち出品ページやこのブログに載せていませんが(笑)、それでも必ずオーバーホール工程の中で「LED光照射で光学系の状況を把握」しています。

順光目視だけで済まそうなどと言う考え自体が、そもそも「何とか高く売りたい」と言う言い逃れですから、それはソックリそのまま落札者に対して負の要素を責任転嫁している話になりませんか?・・と当方は思いますね。

従って必ずLED光照射での状態をチェックして、且つその結果を「クモリ/微細な点キズ/カビ除去痕/ヘアラインキズ」などとして出品ページに明記 (告知) している次第です。

当たり前の事を当たり前にやろうとすると、実はどれほど大変な話なのか、少なくとも小売業で培ってきた経験から考えると真面目にやるのもバカらしくなってきますね(笑)

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:17点、目立つ点キズ:10点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:17点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内の透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・光学系内のコーティング層には一部に拭き残しのように見えてしまうコーティング層経年劣化が線状に見る角度により光に反射させると視認する事ができますが拭き残しではありません。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑6枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「ほぼ正六角形を維持」したまま閉じていきます (僅かに歪なカタチ)。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】</B>(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:軽めと超軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人によって「重め」に感じ「全域に渡って完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
距離指標値「3m」過ぎた辺りから最短撮影距離方向に向かう時に距離環を回しているとグッと抵抗(重み)を感じるトルク感ですが、これは構造上「昇降式ヘリコイド駆動」を撮っている為で、設計上仕様なので改善できません(クレーム対象としません)。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。
絞り環のGNスイッチをセットした場合、距離環を回す時に一緒に絞り環まで連動してシームレスに動きます(絞り羽根が自動開閉します)従ってその時のトルク感は絞り環の分の重みまで感じるので重くなりますこれは設計上の仕様なので改善できません(クレーム対象としません)。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

↑ハッキリ言って、このモデルの「昇降機能」として考えたら相当「軽め」の操作性で仕上がっていると思います。特に距離環刻印距離指標値の「3m過ぎ最短撮影距離」に向かっての、ググ〜ッと繰り出し量が増えていく時のトルクの重さは「こんなに軽いのか」と感じられるように、その時のトルクを基準に微調整していますから、むしろ逆に無限遠位置側では「軽め」の印象になります。

それほどこのモデルの場合「昇降筒」のスリット (切り欠き) 部分で「急勾配になる場所」からが問題になります。

そしてさらに「GNスイッチ」をガツンとセットしてONにした時、今度は絞り環の動作まで含めたトルクになるワケですから、相当にヤバい構造だと言わざるを得ません。それをここまで軽めに仕上げられると言うのが当方が拘った要素でもあります(笑)

なお、今回の個体はオーバーホール工程の中で「昇降駆動」の範囲指定を微調整しているので、最短撮影距離が仕様の「40cm」から短縮化された「37cm」まで縮めています (無限遠位置と最短撮影距離位置の両端でカツンカツンと突き当て停止します)。

以下実写をご覧頂ければ一目瞭然ですが、非常に鋭いカリカリのピント面を構成しますし、そもそもこのピントにピタッと合焦する瞬間が、本当に今ドキのデジタルなレンズの如く「一瞬でピタッと来る」のがチョ〜気持ち良いワケで(笑)、この醍醐味を知ってしまうとこのモデルを手放せなくなるほどです。また同時に以下実写のとおり、どう言うワケか「画に艶を感じられる」のが不思議で、ちゃんと実物のミニカーにある光沢感が出ています (この光沢感はなかなか出せない/当方の撮影スキルの低さ故です)。

たった一人のご落札者様だけですが、是非とも味わってみて下さいませ(笑)
感激モノです・・。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑ここからは「フラッシュマチック機構」の解説をしますが、使っている掲載写真は以前オーバーホールした別の個体写真から転用しています。

距離環が無限遠位置「∞」で (グリーンの矢印) 絞り環が開放f値「f1.4」の時 (赤色矢印)、距離環を極僅かに繰り出すと (ブルーの矢印①) 絞り環に附随する「GNスイッチ」がカチンとガイドナンバーの数値部分に填るようになります。

↑上の例ではガイドナンバー「80」の位置 (グリーンの矢印) で「GNスイッチ」を上方向に差し込んでカチッとハメ込みました (ブルーの矢印②)。

↑するとこの時、絞り環の開放f値「f1.4」は無限遠位置「∞」から僅かにズレた位置「40m過ぎ辺り」のところに来ています。

カシオ計算機(株)様の「keisanサイト」でストロボの発光が届く距離を計算できるので有難いです。計算するとガイドナンバー「80」の時の到達距離は開放f値「f1.4」で「57.14m」であり、最小絞り値「f16」では「5m」です。

従って距離環刻印距離指標値がそれを表している事になりますね。

↑距離環をさらに回して突き当て停止する位置まで来ると、今度は絞り環が勝手に回って最小絞り値「f16」でカチンと突き当て停止します。この時の距離環刻印距離指標値は「5m」なのでまさに計算どおりと言うことになりますね。

これがストロボ撮影時に大変有難い「フラッシュマチック機構」だと言えます。
(なお後玉にキズが付くのでマウントアダプタを装着したまま撮影しています)

↑当レンズによる最短撮影距離40cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります (簡易検査具による光学系検査を実施済で偏心まで含め光軸確認は適正/正常)。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f2.8」で撮りました。

↑f値「f4」に変わっています。

↑f値「f5.6」になりました。

↑f値「f8」です。

↑f値「f11」での撮影です。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。極僅かに「回折現象」の影響が出始めていますが、最小絞り値でこのレベルですから相当な光学系のポテンシャルを持っているモデルです。素晴らしいですね!

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。