◎ Carl Zeiss (カールツァイス) Sonnar 85mm/f2.8 Rollei-HFT Made by Rollei(QBM)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

今回完璧なオーバーホールが終わってご案内するモデルは、旧西ドイツ製の
ポートレートレンズ・・・・、
 『Sonnar 85mm/f2.8 Rollei-HFT Made by Rollei (QBM)』です。


オーバーホール/修理ご依頼分ですが当方の記録用として掲載しており、ヤフオク! 出品商品ではありません (当方の判断で無料掲載しています)。
(オーバーホール/修理ご依頼分の当ブログ掲載は有料です)

今回の扱いが初めてになりますが、マウント規格が「QBM (Quick Bayonet Mount)」です。よくこのマウント規格「QBMマウント」をバヨネットマウントとして独立した規格として扱っているサイトが見受けられますが、そのような解釈は誤解を招く懸念が高いので、あまり好ましくないと思います。

実際今回のオーバーホールで一番大変だった (難儀した) のは、まさにその「QBMマウント」であるが故の問題でした。

この規格は、基本的に「M42マウントを単にバヨネット化しただけの (当時の) 規格」として認識するのが正しいと考えています。何故なら、まさにこの「M42マウントであるが故に直面する絞り連動ピンの問題」だからです (CanonやNikonのような一つのマウント規格として単独に扱ってしまうと紛らわしい)。

従って、この規格を単独の独自マウント規格として認識していると「絞り連動ピンの問題だ」といつまでも気が付かずに修理に出してくる方が非常に多いですね。
その「絞り連動ピンの問題」とは・・???

絞り羽根の開閉異常に他なりません。絞り羽根が絞り環操作に追従して正しく開閉動作してくれない問題に直面します。

今回の個体で言えば、オーバーホール/修理ご依頼内容には一切ご指摘がありませんでしたが当方所有マウントアダプタK&F CONCEPT製「Rollei(QBM)→SONY Eマウントアダプタ」に装着すると「絞り値f11〜f16で閉じない (絞り羽根が全く動かない)」つまり「f8で停止 してしまう」と言う不具合が発生します。

要は「マウントアダプタとの相性問題」が顕在する話であり、それに如何に気づくのかで整備内容も変わってきてしまうからです (つまり下手すれば整備者自身が気づかない場合があると言う話)。

今回に関して言えば、これはご依頼者様の問題ではなく「当方所有のマウントアダプタとの 関わりで生じた不具合」と言う認識に至るのが、最終的には正しい判断になりますが、この点については以下のオーバーホール工程の中で解説していきます。

もっと言うなら、フィルムカメラに装着している限りこの問題は発生しないままだったとも 言い替えられます。今ドキのデジカメ一眼/ミラーレス一眼に「マウントアダプタ経由装着するから発生する相性問題」なのだと言う認識ですね。

問題の基点を「何処に持ってくるのか」で全く異なる対処が必要になってくる為、それほど 非常に厄介で難しい内容だからです (ご依頼者様が判断するレベルの話ではないという意味/ 不具合改善の為に整備者が判断するべき内容)・・。

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1970年に旧西ドイツの光学メーカーRollei (ローライ) から発売された一眼レフ (フィルム) カメラ「Rolleiflex SL35」が採用したマウント規格が「QBMマウント」です。

このフィルムカメラは本来旧西ドイツのZeiss Ikonが扱っていた「ICAREX (イカレックス) シリーズ」の最終モデル「SL706」などの製産を旧西ドイツのバーデン=ヴェルテンベルク州Oberkochen (オーバーコッヘン) の工場で行っていた事から複雑な背景になります。

そもそも旧西ドイツの光学メーカーZeiss Ikonが1971年にフィルムカメラ事業から撤退して しまったので、その時の背景がこの当時のフィルムカメラやオールドレンズとの関わりを難しくしています。

【旧西ドイツZeiss Ikonを取り巻く背景】
1756年:オーストリアのウィーンでVOIGTLÄNDERが創業
1849年:戦前ドイツのブラウンシュヴァイクに本社/工場を移転
1889年:戦前ドイツでCarl Zeissを傘下にしたカールツァイス財団発足
1926年:戦前ドイツのDresdenでZeiss Ikonが発足
1932年:Zeiss Ikonがレンジファインダーカメラ「CONTAX I型」発売

ドイツ敗戦時に旧東西ドイツに分断される

1945年:旧西ドイツのシュトゥットガルトを本拠地としてZeiss Ikonが活動開始
1945年:旧東ドイツのドレスデンを本拠地のままZeiss IkonがCarl Zeiss Jenaに吸収
1956年:旧西ドイツでVOIGTLÄNDERとZeiss Ikonがカルテル提携
1969年:旧西ドイツでZeiss IkonがVOIGTLÄNDERを完全合弁化 (吸収合併)
1971年:旧西ドイツのZeiss Ikonがフィルムカメラ市場から撤退
1972年:旧西ドイツでZeiss Ikonがカメラ事業とVOIGTLÄNDERをRolleiに譲渡
1974年:旧西ドイツのCarl Zeissが日本のヤシカと提携し「CONTAX RTS」発売
1974年:旧西ドイツのRolleiが工場をブラウンシュヴァイクからシンガポール工場に移管
1981年:旧西ドイツのRolleiが倒産
1989年:「ベルリンの壁崩壊」事件勃発
1990年:東西ドイツ再統一によりCarl Zeiss JenaがZeissに吸収される

・・このような感じの年表で捉えると分かり易いかも知れません。

すると上の年表で赤色表記の年代部分が工場との関わりになります。当初は旧西ドイツの
oberkochenにあった製産工場は1969年VOIGTLÄNDERブラウンシュヴァイク工場に 移管されます。その後今度は1974年Rolleiに譲渡された為、後にはシンガポール工場へと 引き継がれていきました。

従って最終的にこれらの光学メーカーから登場していたフィルムカメラ製品やオールドレンズなどはシンガポール工場へと移管されていった話になりますね。

今回扱うモデルは中望遠レンズになりますがもモデルのバリエーションとしては「後期型」にあたります。

【モデルバリエーション】
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

1970年発売初期型

供給製産:Carl Zeiss
製産工場:oberkochen工場製
筐体意匠:SL仕様 (銀枠飾り環あり)
コーティング層:モノコーティング
マウント規格:QBMマウントのみ

1971年 (?) 発売前期型

供給製産:Carl Zeiss
製産工場:Braunschweig工場製
筐体意匠:SL仕様 (銀枠飾り環あり)
コーティング層:モノコーティング
マウント規格:QBMマウントのみ

1972年1974年 (?) 発売前期型

供給製産:Carl Zeiss
製産工場:Braunschweig/Singapore工場製
筐体意匠:SL仕様 (銀枠飾り環あり)
コーティング層:マルチコーティング
マウント規格:QBM/M42マウント

1974年 (?) 発売後期型

供給製産:Rollei
製産工場:Singapore工場製
筐体意匠:黒色鏡胴仕様 (銀枠飾り環なし)
コーティング層:マルチコーティング
マウント規格:QBM/M42マウント

この他にフィルムカメラ「VSLシリーズ」向けの日本製Rolleiブランドモデルが存在します。

1974年 (?) 発売:

供給製産:富岡光学
製産工場:ヤシカ工場製
筐体意匠:黒色鏡胴仕様 (銀枠飾り環あり)
コーティング層:マルチコーティング
マウント規格:M42マウント

1974年 (?) 発売:

供給製産:富岡光学
製産工場:ヤシカ工場製
筐体意匠:黒色鏡胴仕様 (銀枠飾り環なし)
コーティング層:マルチコーティング
マウント規格:M42マウント

・・これら富岡光学製のモデルは以前オーバーホールした際に内部構造とその構成パーツを 確認しており、ヤシカ製AUTO YASHINONやYASHICA LENS MLに使われている構成パーツとその構造の一部を確認済です。特に絞り連動レバーと絞りユニット内絞り羽根開閉環との連係構造、及びその設計概念が全く同一である事から、同じ製産メーカーによる開発/設計とみて『富岡光学製』と判定しています。

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上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端から円形ボケが滲んで溶け始めアウトフォーカス部がトロトロにボケていく様をピックアップしています。基本的にピント面のエッジは繊細で細いので、且つアウトフォーカス部がすぐに柔らかく素直に滲み始めていくので円形ボケの輪郭を明確に残す事が苦手なのかも知れません。ちょっと大きめな明確なシャボン玉ボケの実写が見当たらないので何とも評価できていません。

オリジナルの状態でまるでマクロレンズ顔負けに被写体の周囲がすぐにトロトロボケするので、これでマクロヘリコイド装備のマウントアダプタなどで最短撮影距離の短縮を図ったら、どんな写りになるのか興味津々です(笑)

二段目
遠近感を強烈に留められる空気感や距離感を表現した立体的な描写が可能なモデルで、それでいてダイナミックレンジが相当広い事から来る陰影の細かい階調表現も得意で、明暗部がギリギリまで耐え凌ぐので特に撮影スキルにこだわらずともインパクトのある写真が撮れそうです(笑)

三段目
カラーと白黒とで同一の被写体を狙っても、極端にカラーバランスが (256階調に) 変換されすぎないので、違和感なく見ることができます。また驚異的なのは被写体の材質感や素材感を写し込む質感表現能力に非常に優れている為、動物毛の表現性ときたら右に出るモノ無しと言うくらいリアルな表現性です。

これらの描写性能から巷ではCarl ZeissのDistagonをも彷彿させる高画質/高性能で銘玉と揶揄されていますね。

光学系は典型的な4群4枚のエルノスター型構成なので、いったいこの シンプルな構成の何処にこれら高画質化のヒントが隠されているのか、なかなか興味をそそられる光学系です(笑)

右図は今回オーバーホールの際、光学硝子レンズ清掃時に各群を1枚 ずつ当方の手でデジタルノギスで計測してトレースした構成図です。
特に最後の第4群が内側に凸の両凸レンズでしたが、外側の後玉露出面はほぼ平坦に近い曲率です (当方の手によるモノなので信憑性は低いです/参考にもなりません)。

確かに様々なサイトで案内されている情報とは違うかも知れませんが、申し訳御座いませんが、一応ちゃんとデジタルノギスで計測したのでウソを掲載しているつもりは全く御座いません
そのようなご指摘はどうかご容赦下さいませ・・スミマセン。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。

これら当時の「QBMマウント規格品」或いは少し遅れて登場した「M42マウント規格品」含め、内部構造や構成パーツなどはすべて完璧に把握しているので、さすがに目を瞑ったままでは作業できませんが(笑)、それくらい明確にパーツを見ただけで何処のどの位置に (どのような向きで) どのような微調整を施してセットアップすれば良いか一瞬で答えられます。

それだけ内部構造や仕様構成パーツは近似した開発/設計を踏襲し続けて、当初の旧西ドイツBraunschweig工場から最終的にシンガポールのRollei工場まで変遷を辿っていったワケですが (だからこそシンガポール工場製を卑下する理由は一切無いと断言できる) 一つだけ言えるのは「Braunschweig工場の設計は相当難易度が高い微調整を強いられる」ので、本来のこのモデルのシリーズはどのオールドレンズを取っても「高難易度」なのですが、Braunschweig工場製のみは「触りたくないくらい超高難易度」と言えます。

今回のモデルの扱いが初めてだったのですが、マウントの爪に刻印されている「Lens made in West Germany」が何とも誇らしげに見えると共に、当方にとっては「接近警報」にもなっていたりしました (その刻印を目にしただけで身構えたですね)(笑)

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒ですが、冒頭解説のとおり典型的な4群4枚の エルノスター型構成でありながらも、ここまでコンパクトに光学系を設計してしまったところに驚きを隠せません。何故なら、その吐き出す描写性がハンパなく、まさに巷の評価どおりDistagonをも彷彿するからに他なりません。

これがど〜しようもない写真しか撮れないなら(笑)、このコンパクトな深さの鏡筒を見ても 何も感じなかったでしょう。下手すれば標準レンズの鏡筒と同じくらいコンパクトです (実際計測したら寸法はとても近似している)。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑上の写真は絞りユニット内部で使う「開閉環」であり、絞り羽根の角度を可変して開いたり閉じたりしている構成パーツですね。今回のオーバーホール/修理ご依頼内容はたったの一つで「冬になると絞り羽根の油染みのせいで絞り羽根が開かなくなる」とのご指摘でした。

しかし届いた個体でバラす前のチェックを実写まで含めて執り行うと、いろいろと問題点が 出てきました。

【当初バラす前のチェック内容】
 絞り羽根の動きが緩慢 (特に戻りが遅すぎる)。
マウントアダプタに装着すると絞り羽根がf8で停止する。
 絞り環のガタつきが多い。
ピント面がちょっと甘すぎ。

【バラした後に確認できた内容】
白色系グリースの経年劣化進行に伴う「濃いグレー状態」の重いトルク感。
開閉アームと操作爪との連係が故意に曲げられている。
 絞り羽根開閉制御機構のスプリングに不具合あり。
光学系の反射防止塗膜の成分が飛んでいる。

・・とまぁ〜こんな感じです。おそらく10年内のうちに一度整備されていると考えられ、その際に「白色系グリース」を塗布しています。また至る箇所のネジと言うネジ類全て「グリーン色の固着剤」でガッチガチに固められていたので(笑)、もしかすると固着剤の流通から5〜6年内の整備なのかも知れません (10年前後前だと赤色の固着剤が主流のハズ)。

そしてこれら組み立て工程の仕上げ方を見ると、海外の整備者ではなく日本国内の整備者の 手によるモノと推測できます(笑)

さて、上の写真「開閉環」で問題になるのは「開閉アーム」側が僅かに「くの字型に曲げられていた」ことです。製産時点ではこの板状アームは「真っ直ぐ」に伸びていたハズなので、過去のメンテナンス時に曲げることで操作爪のチカラの掛かり方を強制的に変更していた処置だった事がバレバレです(笑)

↑同様「開閉環」をひっくり返して裏側を撮影しましたが、ご覧のとおりグリーンの矢印で指し示したようにこの「開閉アーム/制御アーム」は共に製産時点にプレッシングだけで曲げられて用意しただけのシンプルな設計です。

従って操作爪によって「常時横方向からチカラが及ぶ」為に、付け根のグリーンの矢印で指し示した箇所が弱ってしまい「絞り羽根開閉異常」に至る事がありますから、特にこの「開閉 アーム」を「故意に変形させるなど以ての外」と言わざるを得ません。

何故なら、放っておいても経年でこの「開閉アーム」は付け根が弱っていくので (上の写真のとおり中央辺りにチカラが掛かって摩耗しているのが分かる)、その掛かったチカラ全てが付け根に集中します。

逆に言えば「原理原則」を理解できている整備者なら「故意に曲げるなどゼッタイにしない」と断言できるので (自ら弱らせる事はしないから)(笑)、この過去の整備者は単にバラして組み上げているだけのスキルレベル止まりの整備者だったと言えますね(笑)

↑一応「開閉アーム」側の付け根がだいぶ変色しているので「金属摩耗進行」していると考えられます。今後使っていて絞り環操作でムリなチカラを加えると、アッと言う間に変形して 下手すれば「アームの付け根から破断」しかねません。もちろんその場合は修復不可能なので「製品寿命」に堕ちますね(涙)

6枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを鏡筒最深部にセットします。もちろんこの時点で「開閉アーム」を自分の指で操作してスルスルと無抵抗で動かない限り、組み上げた後ですが「絞り羽根開閉異常」が必ず100%発生します(笑)

ちなみに今回のこの個体で絞り羽根の油染みはそれほど酷くなく、確かに経年の揮発油成分が附着しているものの粘性を帯びる状況になく、おそらくその抵抗/負荷/摩擦に耐えられていない「別の構成パーツが大きく影響」しています。

↑完成した鏡筒をひっくり返して裏側 (つまり後玉側方向) から撮影しました。鏡筒裏側には「開閉アーム/制御アーム」が飛び出てきていますね。

鏡筒側壁には「ヘリコイド (オス側)」のネジ山が切られていますが、当初バラした際は白色系グリースによって「濃いグレー状」に変質していたので、キレイに「磨き研磨」するとご覧のようにシルバーに光り輝いています(笑)

↑上の写真は当初バラした直後に溶剤で洗浄する前に撮った写真です。この鏡筒の裏側に制御系のパーツがセットされるのですが、そこに附随する「スプリング」がご覧のように切れそうになっています。

これは実は過去メンテナンス時に整備者が「原理原則」を理解しておらず、且つ「観察と考察」すらできない低レベルの整備者だった為に(笑)、マイナスドライバーを後玉の格納筒を外した隙間から差し入れて「ネジを緩めて絞り羽根の制御機構の固定位置を微調整しようとした時に誤ってスプリングをドライバーで押しつけてしまった」から、このようにスプリングが途中で切断寸前状態になっています (ちょうど中央近くで切れそうになっている)。

そもそもこのモデルは「絞り羽根開閉制御の微調整」は、面倒くさくても上の状態まで一旦 バラしてからでないと意味がありません。それを過去メンテナンス時の整備者は全く分かっていませんね(笑)

今回のオーバーホール/修理ご依頼で「絞り羽根が冬になると開かない」原因は、もちろん絞り羽根の経年による揮発油成分附着が一因ですが、根本的な原因は「このスプリングを弱めてしまったミス」です。

従って今回のオーバーホールでは、まずはこのスプリングのチカラを適正な状態まで復元させる必要がありますが、切れそうになっている位置でカットしてしまったら「今度はチカラが 強すぎて絞り羽根が常時閉じなくなる」結果に至ります。

つまりたいていのオールドレンズで「絞り羽根を常に開こうとするチカラ」と「常時閉じようとするチカラ」の2つのチカラバランスの中で絞り羽根の開閉制御が行われている設計だからです。

その相反する2つのチカラは「スプリング」を使っているかも知れませんし「捻りバネ」かも知れません。或いは「棒ばね」かも知れませんし、それらの組み合わせかも知れません。スプリングの長さも線径も引張率も全てが開発/設計者の意図の下に必要な構成パーツとして準備された部品ですから、スプリングなら何でも良いワケではありませんね (ちゃんと適切なチカラが決まっています)(笑)

↑工程を進めていきます。上の写真は距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。

↑この基台にヘリコイド (メス側) がネジ込まれるワケですが、解説のとおり特に「距離環用 ネジ山」のほうが微細な細かいネジ山であり、且つネジ山数がハンパなく多いと言えます。

↑ヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みますが、最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

左写真はヘリコイド (メス側) をネジ込んだ後にひっくり返して後玉側方向から撮った写真です。するとご覧のとおりヘリコイド (メス側) が停止する箇所が用意されていないので、このままグルグルとどんどんネジ込んでいくと最後は基台を貫通して (抜けてしまい) 脱落します。

従ってどの位置が無限遠位置なのか (ネジ込みを停止する場所なのか) の判定がこの後の工程で非常に重要な意味を持ってきます。

↑完成している鏡筒 (ヘリコイド:オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルでは全部で17箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

↑さて、いよいよ佳境に入ってきますが鏡筒裏側に「絞り羽根開閉の制御系パーツ」をセットしたところです。このモデルで絞り羽根の開閉が正しく正常に動作する鍵を握っているのが ここの工程ですから、どんだけバッチリ微調整が終わっているかで、この後の組み上げで全てが明確になってきます(笑)

逆に言えば、整備している自分の技術スキルがチェックされている「任用試験」みたいな話
とも言い替えられますね
(笑)

直進キーガイド
直進キーが距離環の回転に伴い行ったり来たりスライドするガイド/溝

開閉アーム
絞り連動ピンとの連係により絞り羽根を設定絞り値まで開閉するチカラを伝達する役目

制御環
絞り環との連係により設定絞り値の絞り羽根開閉角度を決める役目

カム
制御環によって決められた絞り羽根の開閉角度を制御アームに伝達する役目

・・とこんな感じで制御系の構成パーツが組み付けられます。すると「制御環」の途中に用意されている「なだらかなカーブ」に「カム」が突き当たる事で、その時の勾配 (坂) によって絞り羽根の開閉角度が決まる仕組みです。「なだらかなカーブ」の麓部分が最小絞り値側になり坂を登りつめた頂上部分が開放側に当たります (ブルーの矢印)。

上の写真では「カム」が「なだらかなカーブ」の麓に位置しているので、このままマウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」が操作されると絞り羽根は瞬時に最小絞り値までシャコッと閉じてしまいます。

従って最後すべて組み上がった状態で絞り羽根の開閉動作をチェックした時、ちゃんと正しく開閉しなければ再びここの工程まで戻って (バラして) この制御系パーツの必要な箇所を微調整するのが正しい微調整の手法です。

しかしこの個体での過去メンテナンス時の整備者は、それが分からなかったようでムリに処置しようとしたから非常に重要な「スプリング」を痛めてしまいました(泣)

↑制御系パーツの微調整が一段落したらここで絞り環をセットします。この状態ではまだベアリングが入っておらず「単に置いただけ」ですが、実は個々の工程で既に絞り羽根の開閉域が適切にセットできているのかが試されます。

おそらく過去メンテナンス時の整備者はそれに気が付いていないので (知らないので/分からないので) デタラメに置いただけでしょう(笑)

↑こちらはマウント部内部の写真ですが、既に各構成パーツを取り外して当方による「磨き研磨」が終わった状態で撮影しています。当初バラして溶剤で洗浄した後は、例えばティッシュペーパーでこのマウント部内部を拭うとアッと言う間にビリビリに粉々になりますが、上の写真の「磨き研磨」後では、何とティッシュペーパーは破けません(笑)

つまりはちゃんとシッカリ「研磨」されていて面取りに粗が無いからこそティッシュペーパーが破けないのだと言えますね(笑) 要は当時の製産時点に工場の製産ラインでケースにゴロゴロとたくさん入れられて並んでいた時のこのマウント部の仕上がり状態にまで戻ったと言えますね(笑)

それが当方が実施している「DOH」の目的であり、まさに経年劣化を全て除去した状態、イコール「製産時点のパーツの状態」に限りなく近づけた状態と言い替えられますから、当然ながらこのまま組み上げていけば「本来あるべき姿で機能する」よう仕上げられるのが当然の話ですョね (何も特別な処置を講じた話ではなく至極当たり前な成り行きでしかない)?(笑)

それが当方の目的でもあります・・。

↑取り外していた各構成パーツも個別に「磨き研磨」を施し組み付けます。マウント面から 飛び出る「絞り連動ピン」と、それに連係して動く「操作爪機構部」そしてマウントの「」自体です。

すると上の写真を撮った時「絞り連動ピン」にスプリングを差し込んでいないのですが、本来はスプリングが入って「絞り連動ピンが飛び出ようとするチカラが及ぶ」ワケです。だからこそ絞り連動ピンを押し込んだ後に指を離すと元に復帰しますョね (飛び出た状態に戻る)?

↑実際に「絞り連動ピン」にスプリングをギュッと収縮して組み付けてからマウントの爪をセットしたところです。このスプリングのチカラが相当強いので「下手するとロフテッド発射で絞り連動ピンが部屋ン中を飛んで行く」話になります(笑) 実際時々作業していて飛ばしてしまい、部屋ン中をアッチコッチ探す大騒ぎになったりしてますね(笑)

するとマウント面から飛び出た「絞り連動ピン」が押し込まれると (ブルーの矢印①)、その押し込まれた量の分だけ「操作爪」が首振り運動します (ブルーの矢印②)。

ここがポイントで、冒頭で解説した「QBMはM42のバヨネットマウント化」である由縁です。重要なのは一にも二にも「絞り連動ピンが押し込まれた量の分だけしかチカラは伝達されない」と言うM42マウントからず〜ッと継承し続ける大前提です。

これを蔑ろにしては一切「絞り羽根の開閉異常」は何ら改善できません。

従って「操作爪」が首振り運動した量がそのまま「絞り連動ピン」が押し込まれた時の量と 一致しているワケですが、その首振り運動が悪くて絞り羽根が期待する絞り値まで閉じないのか? 或いはそもそも鏡筒裏側にある「制御系」の微調整が拙くて、設定絞り値まで絞り羽根が閉じないのか、そのような「問題の究明」が必ず必要になってきます。

その時、このポイント「押し込まれた時のチカラ」との関係を逐一チェックしていかなければ本当の不具合箇所を発見する事はできませんね。

よくこの当時の単焦点レンズ (オールドレンズ) を整備するのはとても簡単な作業なので誰でもできるとサイトで声高々に解説している人が居ますが、意外とプロレベルの人が多いのですね(笑) 当方などは今回のこの個体でさえも「絞り羽根の開閉異常」を正すのに丸々6時間掛かったくらいですから、まさにそのように仰っている方々の足元にも及びません(笑)

だから当方はプロではないと明言しているのです

↑今度はひっくり返してマウント部内部から見た写真を撮りました。同様マウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」が押し込まれると (ブルーの矢印①)、その押し込まれた量の分だけ「操作爪」が左右に首振り運動します ()。

そしてこの「操作爪」がガシッと常時掴んだまま離さないのが鏡筒の裏側に飛び出てきている「開閉アーム」なのです。従って前述のとおり「開閉アームは横方向からのチカラで常時駆動している」のは間違いない事実ですね (決して当方のウソではありません)。

↑各部位の微調整が適切に終わったのでいよいよ完成したマウント部を被せてセットします。この時に初めて絞り環に「ベアリングスプリング」が組み込まれてカチカチとクリック感を実現します。

上の写真では一気に距離環までセットした状態の写真を撮っていますが、実は一気にここまで進めるしか方法が無いからこそ、そのような写真しか撮れないのです。

【マウント部セット時に完了しているべき微調整】
ヘリコイド (オスメス) のネジ込み位置が適正
絞り羽根の開閉制御の微調整が適正
直進キーとガイドの位置微調整が適正
開閉アームと操作爪の掴み合いが適正
無限遠位置の停止位置が適正
絞り環と制御環との連係が適正
 カムのなだらかなカーブ突き当たり位置が適正
マウント部のセット箇所が1箇所で適合している

・・ザッと挙げただけでもこれだけの微調整箇所の仕上がり状態が全て合致していて (適正になっていて) 初めてこのマウント部を一気に被せて締付ネジで締め付け固定できます。

だから途中経過を撮る事が100%できないワケです(笑)

しかも、最後このマウント部を被せる位置は上記で1箇所と決まっているので、他のまでの微調整に合わせる為に僅かでもズラすことができません。如何ですか?(笑) これだけの微調整をキッチリやれる自信がありますか?(笑)

この当時のオールドレンズ組み立てが簡単などと言う方々が多いのには正直オドロキましたが(笑)、当方などは9年修行を続けていてもいまだにまだ6時間がかりですョ!(笑) 如何に技術 スキルが低いのかを物語っていると言えないでしょうか(笑)

↑フィルムカメラ側に設定絞り値を伝達するキーの機構部を組み付けます。

↑ここでもう一度例の「開閉アーム」の箇所を拡大撮影しました。いったいどんな事になっているのか・・?(笑)

ご覧のように「僅か2mm」程度しかない隙間の中で「開閉アームと操作爪の掴み合い」「絞り連動ピンと操作爪の連係」「スプリングによって常時開くチカラを影響」と言う三つ巴なのが上の写真を見るとご理解頂けるのではないでしょうか?

マウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」が押し込まれレると (ブルーの矢印①) その押し込まれた量の分だけ「操作爪」が首振り運動して (ブルーの矢印②)「スプリングの開こうとするチカラが蓄えられる (ブルーの矢印③)」仕組みです。

だからこそ「絞り連動ピンが解除」されたら途端にアッと言う間に瞬時に絞り羽根が完全開放するワケですね (スプリングが引き戻しているのです/そして絞り連動ピン押し込みによりチカラが蓄えられたのです)。

これが「M42マウント規格」での「絞り羽根開閉動作の原理」であり大前提である事を認識するべきですね(笑) なお上の写真を見れば一目瞭然ですが「開閉アーム」は側壁に擦っていてはダメですね (正しく絞り羽根が開閉しなくなるから)(笑) たったの2mm弱しか無い隙間の中で、擦れることなくフリーを維持したままこの「開閉アーム」が動く必要があるのです

↑光学系後群を組み付けます。すると上の写真のグリーンの矢印のように隙間が空いています。だからこそ「開閉アーム」が自由に動けるワケです。

ところがその隙間と言うのは光学系後群の格納筒との間に用意されている隙間ではなく、上下方向 (直進方向) で用意されている隙間なので、この時ヘリコイド (オスメス) のネジ込み位置、ひいては無限遠位置が適切なのかどうかがポイントになってきます。

不適切なら無限遠位置に到達する前に距離環が停止しますし、或いは最短撮影距離位置まで距離環を回したら絞り羽根が機能しません。

↑さて、ここからは当方所有マウントアダプタに装着した際に発生した「絞り羽根開閉異常」の問題について解説します。当方で使っているのはK&F CONCEPT製「Rollei→SONY Eマウントアダプタ」であり、要はQBM用のマウントアダプタです。

↑するとマウントアダプタの内側奥深くに「ピン押し底面」と言う平板が飛び出ており、オールドレンズを装着する際に「強制的にマウント面から飛び出ている絞り連動ピンを押し込みきってしまう」よう設計されています。

↑上の写真グリーンの矢印のサイズが「ピン押し底面の深さ」になるワケですが、これが今回のモデルのマウント面からの「絞り連動ピンの突出量」に一致していなければ「絞り羽根開閉異常」に至りますョね?

↑上の写真は実は6時間後に撮影しています(笑)

散々調べまくって根本の問題箇所を突きとめて対策を講じる時の写真です。マウントアダプタに装着するとご覧のように「絞り連動ピンの丸頭部分がそっくりそのまま押し込まれていない」のが一目瞭然です。さらにそれはグリーンの矢印の隙間が残っている事からも歴然です。

これが今回の個体を当方所有マウントアダプタに装着すると「f8で停止してしまいf11〜f16に絞り羽根が動かない」原因でした。試しにワザと絞り連動ピンをテーピングで押し込みきった状態に貼ってしまい装着すると「f2.8〜f22」までキレイに絞り羽根が開閉しました(笑)

↑そこで実験としてマウントアダプタ内「ピン押し底面」の絞り連動ピンが当たる箇所に養生テープを3枚重ねて貼りました (赤色矢印)。

↑するとご覧のとおりマウントアダプタに装着したら絞り連動ピンは「最後まで押し込みきられて絞り羽根が正常に開閉動作」した次第です。

実は他の「QBM規格品」のオールドレンズでは問題なく絞り羽根開閉動作しているので、残念ながら「今回の個体に限定した不具合」です。それは取りも直さず前出の「鏡筒裏に附随するスプリングが切れかかっている」事から来るチカラが弱ってしまった影響ですから、残念ながらこれ以上改善が期待できません。

この後は光学系前群を組み付けてから無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホールが完了しました。当方所有のマウントアダプタにテーピングせずにそのまま装着すると「やはりf8で絞り羽根は停止」しますが、オールドレンズ単体で、或いは 前述のようにマウントアダプタにテーピングすると「正常に絞り羽根が開閉」します。

もちろん装着先がフィルムカメラなら問題なく正常使用できます。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。

↑光学系後群側もスカッとクリアでLED光照射で極薄いクモリが皆無です。僅かに光学系内は 薄く微細なヘアラインキズが見る角度によっては視認できますが、これは実際はキズではなくコーティング層の線状ハガレなので、光学系を覗いた時それらヘアラインキズが視認できません (コーティング層なので見えない)。

↑6枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正六角形を維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑オーバーホール/修理ご依頼時のご指示により距離環を回すトルク感は当初バラす前のトルクに同程度に仕上げています。塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」を使い「粘性中程度と軽め」を使い分けて塗っています。少々重めの印象ですが当初のトルク感よりは下手すると僅かに軽めかも知れません。しかし当方ではピント合わせ時のトルク感を重要視するので、これ以上重くしてしまうと影響が出てしまいます。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。当初バラす前のチェック事項がどのように改善されたのか以下にご案内します。

【当初バラす前のチェック内容】
 絞り羽根の動きが緩慢 (特に戻りが遅すぎる)。
マウントアダプタに装着すると絞り羽根がf8で停止する。
 絞り環のガタつきが多い。
ピント面がちょっと甘すぎ。

【バラした後に確認できた内容】
白色系グリースの経年劣化進行に伴う「濃いグレー状態」の重いトルク感。
開閉アームと操作爪との連係が故意に曲げられている。
 絞り羽根開閉制御機構のスプリングに不具合あり。
光学系の反射防止塗膜の成分が飛んでいる。

【オーバーホール完了後の状況】
絞り羽根の動きが僅かに緩慢だった原因は前述のとおり鏡筒裏側にあるスプリングの弱りです。常に絞り羽根を開こうとするチカラが弱っていた為、強くしましたが強すぎると絞り羽根が閉じなくなります。従って強めるには限界があるので改善度合いは「あくまでも絞り羽根が俊敏に動く状態」までとしました。申し訳御座いません・・。

当方所有マウントアダプタ装着時は、どうしてもf8停止します。前述のとおり「絞り連動ピンの先端丸頭分押し込まれない」からです。従ってオールドレンズ単体の状態で絞り連動ピンを最後まで押し込みきったままで絞り環操作した時は「正常に最小絞り値f22迄閉じる」状況を以て改善と判定しました。申し訳御座いません・・。

絞り環の僅かなガタつきは解消できていません。マウント部と基台との間/スペースの問題なので既に摩耗している箇所があるのかも知れませんが確認しようがありません。申し訳御座いません・・。

ピント面の甘過ぎは光学系第3群の締付環が緩んでいた為でした。改善できています (鋭くなっています)。

距離環を回すトルク感はピント合わせ時のみ「軽め」になるようトルクを微調整しました。従ってご指示に従い当初のトルク感に近い状態でトルク調整をやめています。

開閉アームに生じていた故意の曲げは正しました。また操作爪側の角度も適正に戻しています。従って現状オールドレンズ単体では絞り羽根が正常の開閉動作します。

スプリングは切れかかっているままです。これより短く切ってしまうと絞り羽根が一切閉じなくなる為 (スプリングのチカラが強すぎてしまう為) 処置していません。申し訳御座いません・・。

光学系内の硝子レンズ表面に反射防止塗膜のインク成分が飛んで、コーティング層に微かに黒っぽく (実際は紫色成分) 附着していた為、全て除去しました。これは特に光学硝子レンズの締付環に反射防止塗膜を塗って真っ黒に仕上げていた過去メンテナンス時の処置が仇となった結果です。

・・以上、こんな感じです。

特にの光学硝子レンズを締め付けている「締付環」を反射防止塗膜で真っ黒に塗ってしまう処置は、今でも非常に多くのオールドレンズで過去メンテナンス時に施されています。これはおそらく「光学系内を真っ黒に仕上げることで内面反射を防いでいる」つもりなのでしょうがその塗膜のインク成分がコーティング層に経年で飛んでしまい付着している事が意外に多いです。

確かに内面反射を防ぐ事自体は意味がありますが、その為にコーティング層にインク成分が 微かな膜となって附着している事を当方は是と考えていません。

当方の基準は「製産時点はどうだったのか?」なので「締付環」を製産時点の状態に戻して から組み上げています。その結果ピント面が僅かに鋭く改善できていたりします。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑差有による最短撮影距離1m付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります (簡易検査具による光学系検査を実施済で偏心まで含め光軸確認は適正/正常)。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。

↑f値は「f8」に変わっています。

↑f値「f11」での撮影です。

↑f値「f16」です。僅かに「回折現象」の影響が現れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。大変長い期間に渡りお待たせし続けてしまい本当に申し訳御座いませんでした。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。