◎ Carl Zeiss (カールツァイス) Tessar 50mm/f2.8《Oberkochen》(M42)

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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧西ドイツ
Carl Zeiss製標準レンズ・・・・、
 『Tessar 50mm/f2.8《Oberkochen》(M42)』です。


現ドイツの南部シュトゥットガルト行政区にある水源から導かれたコッハー川周辺の谷間に ある街並みです。戦後アメリカによりCarl Zeiss Jenaから移された人材や産業工業設備などに伴い、戦前人口の2,000人台から8,000人規模まで膨れあがり (1961年時点) 現在に至るドイツ光学製品を語る際に無くてはならない存在の聖地の一つです。

銘玉中の銘玉と揶揄されている「凹Ultron 50mm/f1.8」と同じ意匠の筐体外装を持つ下位格版の標準レンズ『Tessar 50mm/f2.8
《Oberkochen 》
(M42)』ですが、ネット上で誰一人指摘している人が居ないので、全く気がつかずにそのまますぐにバラし始めてしまい後の祭りです(笑)
(右写真は上位格版標準レンズ凹Ultron 50mm/f1.8)

この筐体外装のシリーズ「凹Ultron/Tessar」はマウント規格として2種類「Icarexバヨネットマウント」と今回扱った「M42マウント」があります。

特に「Icarexマウント」はブリーチロック機構 (締付環があり回して締め付け固定する方式) を有するスピゴット式バヨネットマウントなのですが、その事ばかり案内されていて「絞り羽根の回転方向が2種類に分かれている」事を知らなかったワケです。

右写真は「Icarexマウント」タイプの絞り羽根回転方向を表す写真ですが「右回り」です。ところが今回扱う「M42マウント」のタイプは逆方向で「左回り」だったのです。

それに全く気がつかずにすぐにバラしてしまったので、イザオーバーホール工程で組み立てに入ったら「???」(笑)

散々バラし直しては絞り羽根を逆方向に入れようと試みたりしながらほぼ半日に渡ってあ〜だこ〜だイジりまくった次第です (同じように右回りになるよう挑戦を続けたワケです)(笑)

正直、もぅそれだけで疲れましたね・・(笑)

このモデルは筐体外装の意匠が上位格版「凹Ultron」と同一なので、必然的に内部構造や構成パーツの設計も全て100%同じです。するとオーバーホールを考えた時、自ずとその組み立て工程で微調整に係る難易度が上がり「高難易度モデル」に入ってしまうのですが「たかがテッサー如き」にそのような割高な即決価格が設定できません(笑)

つまり組み立てに入った途端に「バカだなぁ〜、どうしてそれに気づかなかったのか!」と 後悔先に立たずです(笑)

逆に言えば、誰もこのモデルをバラしてオーバーホールしようなどと考えなかったのも道理に適う話なのであり (面倒だから)(笑)、その意味では整備済で出回ること自体がそもそも珍しい話になってしまいます。

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1966年に旧西ドイツはCarl Zeiss (Oberkochen) から発売された一眼レフ (フィルム) カメラ「Icarex 35」のセット用標準レンズとして 用意された下位格版のモデルです。

このテッサーの歴史は相当古く、世界で初めて開発されたのが1902年ですから (クラシックレンズの時代) いまだに様々な光学製品に採用され続けている「現役の光学系」として考えたら相当な息の長さです。

特に世界規模でこのテッサー型光学系が注目を浴びたのは、戦前の ドイツで1932年発売のレンジファインダーカメラ「CONTAX」用に登場したCarl Zeiss Jena製標準レンズ「Tessar 5cm/f2.8《沈胴式》(CONTAX C)」でした。

この沈胴式テッサーレンズ銘板には「Zeiss Ikon A-G  Dresden」と誇らしげに刻印されていながらCarl Zeiss Jenaですから、CONTAX用に供給されていた事になります。

当時標準レンズ域の焦点距離50mmクラスとしては開放f値「f3.5」がまだ主流の時代でしたから「f2.8」は相当高速な (明るい) 標準レンズとしての登場だったことも勘案する必要がありますね。

現在の市場はそもそも個体数が激減していることもありこの「沈胴式テッサー」は「Black & Nickel Tessar」とも巷で呼ばれている稀少品の一つです。

戦前ドイツのこれら「CONTAX板オールドレンズ」のオプション交換レンズ群が世界中から注目されたのは、まさに当時のドイツ光学技術が相当ハイレベルな域に到達していたことを物語るのではないでしょうか。特に戦前からソ連がこれら光学系を狙っていた事からも明らかであり、戦後新たな潮流としてロシアンレンズに分岐していくまさに類をみない発展を遂げている脈々と続く歴史にロマンを感じます(笑)

この「沈胴式テッサー」の光学系は当然ながら3群4枚構成なのですが後の時代に登場する光学系と比較すると、だいぶ各群の厚みが薄く「沈胴式」にこだわって設計していた事が窺われます。

その描写性をみてみるとさすが戦前に登場していたオールドレンズの写りだとは全く想像もできないほどにリアルな表現性を持っており、いまだにオドロキを隠せません。

上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

明らかに「Oberkochenモデル」だと分かる実写のみピックアップしたので僅か4枚しか集められませんが (JENA製テッサーばかりヒットする)(笑)、戦後旧ドイツが東西に分離したのと同時に戦前Carl Zeiss Jenaも分割して存在していた為に「テッサーが東西で2つのモデル/別系統として存在する」話になります。

するとその描写性を比較した時「ピント面の鋭さ/先鋭感」では僅かに「JENA製」が上回りますが、初期のシルバー鏡胴時代から後の黒色鏡胴に至るとその鋭さ感が「ギラギラした誇張感」へと変質してしまい、撮影シ〜ンによっては少々違和感を感じる場合もあります。

一方旧東ドイツの「JENA製テッサー」が黒色鏡胴へと進化した頃にちょうど今回扱う「Oberkochenモデル」が登場するワケで、その写りは「ピント面の鋭さよりもダイナミックレンジの広さが特徴」と言えるほど明暗部の耐性が高く、またアウトフォーカス部の滲み方も自然で滑らかなのでピント面の誇張感に余計に繋がらずギラギラ感に至っていません。
(右図構成図が今回バラした際にデジタルノギスで計測したトレース図)

従って「JENA製テッサー」と「Oberkochenモデル」を比較した時、その描写性の相違としてこれらの事柄が挙げられるのではないでしょうか。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。内部構造も使われている各構成パーツも上位格版「凹Ultron 50mm/f1.8」と同一の設計概念ですが、光学系の設計が異なる分内部の構成パーツ使い回しには制限があります。

それよりも今回バラして組み立て工程を経て行くに従い後悔してしまったのは(笑)、やはり「微調整の難しさ」であり、それがそっくりそのまま「高難易度モデル」を決定づける言い方にも繋がっていきます。

↑本来ならば鏡筒と真鍮 (黄鋼) 製でガッチリ作られているフィルター枠部分とは分離しており外れるのですが、上位格版「凹Ultron」同様固着が酷くて外せない個体が多いです (今回も外せていない)。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑例によってこのモデルも絞りユニット内部に「ベアリング (28個)」を包括した回転機構を採用した設計です。ベアリングの転がりにより「開閉環が回り絞り羽根の角度を変更している方式」なので、必然的に「絞り羽根が俊敏に動く=ベアリングの経年劣化状況」と言う方程式に至ります。

と言うのも上位格版「凹Ultron」同様「絞り羽根の動きが緩慢」な個体が意外と多く、今回の個体ももさっとした動き方でした。それはそもそもこのモデルの設計上の配慮不足なのですが非常に線径の細い耐用年数が低いスプリングを使って制御しているからであり、逆に言えばそろそろ耐用年数の限界に到達している嫌いがあります。

↑完成した絞りユニットを前玉側方向から撮影しています。ご覧のとおり「絞り羽根は左回り」であり、当初ほぼ一日がかりでこの絞り羽根の回転方向が逆向きで正解なのが分からずあ〜だこ〜だ作業していた次第です(笑)

↑完成した鏡筒〜フィルター枠までの部位を立てて撮影しました。繰り出し量が多いワリには意外と長さがありません。

↑ひっくり返して撮影しました (今度は後玉側が写真上方向)。上位格版「凹Ultron」と全く100%同一の設計概念ですが、それぞれ赤色矢印で指し示している「開閉キー/制御連係爪/ヘリコイド (オス側)/直進キーガイド」は後のほうの工程で一発でマウント部と噛み合う必要があります。

この「一発で噛み合う」必要性と言うのがこのモデルの組み立て工程で、特に微調整を非常に難しく/高難易度に引き上げている要素とも言い替えられます。

↑距離環やマウント部が組み付けられる基台です。

↑ヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑いえ、もっと正しく表現するなら「ヘリコイド (メス側) をどんどんネジ込んでいくと貫通して外れてしまう」と言ったほうが正確です。上の写真は基台をひっくり返して後玉側方向から撮影していますが、ご覧のようにヘリコイド (メス側) がネジ込めなくなるような停止位置が存在しないので、このままどんどんネジ込んでいくと最後は貫通してしまい外れます。

するとではいったい何処までネジ込めば無限遠位置に適合した位置になるのかの判定が非常に難しいワケですが、当方はもう慣れっこなので一発でネジ込みを確定できます(笑)

ちなみにここの工程をミスるとこの後が全て狂ってくるので偉い目に遇うことになります(笑)

ヘリコイド (メス側) ネジ込み位置が不適切だった場合の不具合
無限遠が合焦しなくなる。
無限遠位置「∞」まで距離環が回らなくなる。
絞り羽根開閉異常が発生する。
完全開放しない/最小絞り値まで閉じない不具合発生。
絞り環操作が重くなる。
自動絞り方式にならない。
マウント面絞り連動ピンの押し込み動作に反応しない。
鏡胴にガタつきが発生する。

ザッと挙げただけでもこれだけ不具合が出てきますから、今現在お手元にある「凹Ultron」 或いは今回と同じ「Oberkochenモデル (テッサー)」で、までのいずれかの不具合が 発生していたらヘリコイドのネジ込み位置ミスの懸念が高くなりますね(笑)

逆に言うと、だからこそ「基台」と当方ではこのパーツを呼んでいるワケで、ちゃんと意味があったりします(笑)

↑後からセットできないのでここで先に距離環を仮止めしておきます。このモデルはちゃんと「無限遠位置微調整機能」を備えている設計なので、最後に無限遠位置をズラす事が可能ですがその方法がちゃんとあります。

↑ヘリコイド (オス側) をやはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルでは全部で13箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

↑前の工程でも解説していますが鏡筒の裏側が現れています。

↑上位格版「凹Ultron」と100%同一の設計概念ですが、ご覧のような「連係板 (三角板)」を間に介在させることで設定絞り値まで瞬時に絞り羽根を閉じさせる駆動方式を採っています。

上の写真で解説すると1本附随するスプリング (グリーンの矢印) は「常に絞り羽根を開こうとするチカラ」を及ぼしています (ブルーの矢印①) が「連係板 (三角板)」が存在する事で反対の方向「絞り羽根を閉じるチカラ」が作用するよう配慮されています ()。

もっと言うなら、実はそもそも冒頭の最初の工程「絞りユニットの組み上げ」時点で気が付く必要があるのですが、このモデルは数多く存在するオールドレンズの中でも難解な「位置決め環/開閉環の両方が互いに回ってしまう設計」を採っています

普通一般的なオールドレンズは「位置決め環」側が固定なので絞り羽根を刺す位置が変わる事がありませんが、両方とも回ってしまう設計の場合絞り羽根がどのような位置の時に「閉じていくのか」の判定が非常に難しくなります。

逆に表現するなら「位置決め環/開閉環」の操作によっては互いにどう動かしても「常時完全開放したまま」になったり「常時最小絞り値まで閉じたまま」と言う状況を作ることができる設計なのです。

普通の一般的なオールドレンズではそのような動作ができませんね。位置決め環側が軸になり固定なので開閉環が回れば必然的に絞り羽根は角度を変えざるを得ないから閉じていく動きしかできない/開閉環が回って閉じている時に反対の開く動き方には絶対にならないワケです。

これがこれらモデルを「超高難易度」にしている要素の一つとも言え「原理原則」を熟知しているか否かが問われる話でもあります。

↑マウント部内部の写真ですが既に各構成パーツを取り外して当方による「磨き研磨」が終わった状態で撮影しています。

↑取り外していた各構成パーツも個別に「磨き研磨」を施し組み付けます。

伝達アーム
マウント面絞り連動ピン押し込み動作のチカラを伝える役目
操作棒
先端のフックが連係板 (三角板) に連結し操作する
直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目
カム
マウント面絞り連動ピンが押し込まれた際のチカラを伝達アームに伝える役目
絞り連動ピン
マウント面から飛び出て押し込まれた量の分だけチカラを及ぼす役目

するとマウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」が押し込まれると (ブルーの矢印①) その押し込まれた量の分だけ「カム」が移動して (ブルーの矢印②) チカラを「伝達アーム」に伝えます。「伝達アーム」が絞り連動ピン押し込み量の分だけ移動すると () そのチカラで「操作棒」が勢い良く振られて (ブルーの矢印④) 連結先の「連係板 (三角板)」が引っ張られるので、絞り羽根が瞬時に設定絞り値まで閉じる仕組みです。

↑上の写真 (2枚) は、その「操作棒」の動き方を絞り連動ピンの押し込み動作と関連づけて撮影しています。マウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」が押し込まれると (ブルーの矢印①) 最終的にその押し込まれた量の分だけ「操作棒」が勢い良く振られて傾きます ()。

まさに「連係板 (三角板)」の長さに相当する分だけ「操作棒」が振られているのが分かると思います。当方ではこの「操作棒」を「旗振り棒」と呼んでいます(笑)

またこの工程で重要なのはスプリングや捻りバネの類が一切存在しない点です。つまりマウント面から飛び出ている「絞り連動ピンが押し込まれる」と言う動作だけで「勢い良く操作棒を振らせる必要がある」点に整備者が気が付いたかどうかが「絞り羽根の動きが緩慢になる」因果関係に繋がります。

この勢い良く動く「旗振り棒」の原理は「テコの原理」を応用した独特な設計なので (バネ類が介在せずとも)、絞り連動ピン押し込みだけでカシャッと勢い良く旗振りしてくれるように微調整する必要があるワケですね(笑) まさにそれこそが「原理原則」を熟知しているか否かを問われているワケで、ここの工程だけで無事に最後まで適切に組み上げられるかどうかが分かってしまいます(笑)

↑完成したマウント部を基台にセットします。この工程がこのモデルに於ける最大の難関でもあります。もちろん上位格版「凹Ultron」と全く同じ難易度とも言えます (この工程をクリアしない限り適切な組み上がりに至らない)。

【マウント部セット時に一発で噛み合わせる内容】
直進キー直進キーガイドに入る。
この時距離環が適切な無限遠位置に既に合致している。
操作棒先端のフックが連係板 (三角板) に連結する。
絞り環と絞りユニット制御爪との連結が適切である。
マウント部のセット位置が適切である。
これらが全て適切に微調整済で初めて一発でセットできる。

このような内容であり、まさにここの工程で全てが決まるとも言い替えられます。上ののどれか一つでも不適切なら必ず間違いなく組み上がった時に不具合が発生します。

さらにこれらの微調整はそれぞれが単独で適正になっていても意味がありません。つまり互いに関係付けされているので、例えばが不適切だった時はの位置がズレてもズレが生じます。逆にが不適切になった場合それまでのがズレてしまいます (つまり最初からヤリ直し)。

実際当方も今回の個体でこの工程をクリアするのに11回組み直ししていますから(笑)、まだまだ技術スキルが低い「」とも言えますね。

↑フィルムカメラへの絞り値伝達機構部を組み込んでマウント部を仕上げます。この後は光学系前後群を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

修理広告DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑今回初めて扱いましたが完璧なオーバーホールが終わりました。

作業してみた感想は、ハッキリ言って「凹Ultron 50mm/f1.8」と全く同じ微調整を各部位で施す必要があり、この安価なTessarでは作業対価分の回収が難しいと結論しました。

従って今回が最初で最後の扱いになるかも知れません・・(笑)

今回このモデルを扱う気持ちになった理由は、確かに市場にはCarl Zeiss Jena製のTessar 50mm/f2.8が溢れているので、特に敢えて旧西ドイツのTessarを扱う意味も無いのではないかと受け取られがちですが、実はその実写を比較していてダイナミックレンジの広さが異なることに気づいてしまい「JENA製Tessarよりもより自然な写り方をする」との印象を得てしまったからです。

逆に言えば、ネット上でも一部で評価されているように「JENA製Tessarはシ〜ンによってはギラギラした/カリカリが強調された (下手すれば違和感にも繋がりそうな) ピント面になる」と言うのが、ある意味このオーバーコッヘンモデルを扱ってみてより明確な感想へと導かれたような気がします。

そもそもこのオーバーコッヘンモデルは「色成分としてシアン寄りが僅かに強め」と言う性質があり、一方「JENA製Tessarはアンバー成分が強めに偏る」傾向なのも手伝い、特に風景写真など植物の色合い表現時に清々しさのレベルが違って見えます。この「シアン成分に偏る傾向」と言うのは、どう言うワケかこの当時の旧西ドイツ製オールドレンズの多くのモデルに共通的に感じる印象でもあるので、同じ傾向を持っているテッサーとも言えます。

その印象もあり、特に市場流通数が極端に少ないオーバーコッヘンモデルの「M42マウント」を気合い入れて今回扱った次第です (Icarexマウントの個体は時々出回ります)。確かに歴史が浅いテッサーだとしても、独特な表現性にむしろ珍重がられて一度手に入れた人がなかなか手放さないので流通数自体が少ないと、以前ギリシャのディーラから聞いたことがあります。

ハッキリ言って絞り環にはクリック感さえ無く (実絞り)、且つ一部が真鍮 (黄鋼) 製のズッシリ重みを感じるだけで、フィルターさえ専用のバヨネット式と言う使い勝手の良くないテッサーなのに、なるほどなと思いましたね・・(笑)

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。光学系後群側に「パッと見で極微細な塵/埃に見えてしまう微細な点キズが多め」です (写真には影響なし)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群側も非常に透明度が高く、LED光照射でも極薄いクモリが皆無です。後玉を見た時に内部に「コーティング層の点状ハガレ」が全面的に見えますが、LED光照射するとその点状剥がれ部分は「極微細な塵/」のように見えます (剥がれているように見えない/クモリにもなっていない)。

従って何回清掃してもこれら「極微細な点キズ」は除去できません。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。パッと見ではクモリが生じているようにも見えてしまいますが、LED光照射すると光学系内はスカッとクリアです

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:11点、目立つ点キズ:6点
後群内:14点、目立つ点キズ:9点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(極微細で薄い2ミリ長が数本あります)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・後群側貼り合わせレンズの絞りユニット側面のコーティング層の経年劣化が進んでいるためにパッと見で微細な塵/埃に見える極微細な点キズ(剥がれ)が多めに視認できますが清掃しても除去できません(写真に影響一切無し)。
・光学系内の透明度が非常に高いレベルです。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑5枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正五角形を維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「重め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

↑ヘリコイド (オスメス) に塗布したヘリコイドグリースは、最初は「軽め」に仕上がるようにしたのですが軽すぎてピント合わせが逆に面倒だったので、敢えてもう一度バラして「粘性中程度」に入れ替えて仕上げました。と言うのもこのモデルのピントの山が掴み辛いので、あまり軽すぎると距離環から指を離すだけでピント位置がズレたりするので逆効果でした。

従って「シッカリしたトルク感」と言う程度の「重め」に感じられるよう (その意味では普通程度のトルク感) 仕上げています。この距離環を回す時の「トルク感」をどのように仕上げるのかが一番悩むところですね (感じ方は人それぞれ千差万別なので)。

オーバーホールしてヘリコイドグリースの粘性を微調整している分どのようにでもトルク調整できるワケですが、それが却って悩ましい部分だったりします(笑)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離45cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります (簡易検査具による光学系検査を実施済で偏心まで含め光軸確認は適正/正常)。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。

↑f値は「f8」に変わっています。

↑f値「f11」です。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。