◎ MINOLTA (ミノルタ) MC TELE ROKKOR-PF 100mm/f2.5《初期型》(SR/MD)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます
※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

オーバーホール/修理ご依頼分ですが、当方の記録用として掲載しており
ヤフオク! 出品商品ではありません (当方の判断で無料掲載しています)。
(オーバーホール/修理ご依頼分の当ブログ掲載は有料です)


今回初めて扱うMINOLTA製望遠レンズ『MC TELE ROKKOR-PF 100mm/f2.5《初期型》(MD/SR)』です。6年前にも一度このMCタイプを扱いましたが、モデルバリエーション上では異なるタイプ (ラバー製ローレットのタイプ) でしたので、純然たる「初期型 (いわゆる総金属製タイプ)」は今回が初めてと言うワケです。

  ●               ● 

1958年に自社初一眼レフ (フィルム) カメラになる「minolta SR2」を発売しますが、採用したバヨネットマウント規格「SRマウント」はまだ設定絞り値のカメラボディ側への伝達を行う機能 (爪) が用意されていませんでした。従ってフィルムカメラ側には「開放測光機能」をまだ装備していません (正式名称としてSRマウントは存在しない)。

当時発売されたセットレンズも含むオプション交換レンズ群のモデルは全て「AUTO ROKKORシリーズ」になりますが、光学系内の光学硝子レンズに蒸着されている「アクロマチックコーティング (AC)」の色合いから、俗に「緑のロッコール」と当時より今現在も含めて呼ばれ続けています。
(左写真はAUTO ROKKOR-PF 58mm/f1.4)

主だったモデルには全てマウント面直前に「プレビューレバー」を 装備しているので、そのレパー操作により撮影前に設定絞り値まで 絞り込む事で確認できるようになっています。


やがて1966年になるとようやく「TTL測光方式」を採用した一眼レフ (フィルム) カメラ「SR-T101」が登場し、この時に再びセットレンズを含む全てのオプション交換レンズ群が「MC ROKKORシリーズ」と一新されました。

この時に登場した「MC ROKKORシリーズ」にはマウント面に「MC爪」なる突出が用意 され「カメラボディ側への設定絞り値伝達」が実現できています。
(左写真はMC ROKKOR-PG 58mm/f1.2)

従ってマウント面の「MC爪」の有無により装着できるカメラボディ側も変わってきます。

さらに1977年になると世界初の「シャッター速度優AE/絞り優先AE/マルチプログラムAE (疑似的自動露出方式)」を採り入れた一眼レフ (フィルム) カメラ「minolta XD」を発売します。

この時に三たびセットレンズを含む全ての オプション交換レンズ群がフルモデルチェンジし「MDシリーズ」として登場します。
(左写真はMD ROKKOR 85mm/f1.7)

従来よりマウント面に突出してきていた「MC爪」の他に新たに「MD爪」が用意されます。

ちなみに「MD」の「D」は「Dual (デュアル)」の頭文字です。
従ってここでもやはり爪の有無によりカメラボディ側との干渉が発生し一部機能に制限が加わったりしていました。

ここまで当時発売された一眼レフ (フィルム) カメラとの関わりからマウント規格が進化してきた流れをみましたが、各時代に登場した (都度一新された) オプション交換レンズ群だけに注目した時「各シリーズで光学硝子レンズの色合い/緑のロッコールの発色度合いが違っている」事に気がつきます。

そもそもこの「緑のロッコール」の光彩は前述のとおり「アクロマチックコーティング (AC) 」を指しますが、このMINOLTAが世界に先駆けて開発した「複層膜コーティング技術」の一つは、実はよく当時の旧東ドイツ (戦前ドイツ) のCarl Zeiss Jenaで開発されたモノコーティングzeissのT」が1939年の登場である事から「世界初ではない」とネット上で解説され 続けていますが、それは違います。

MINOLTAが1958年に開発した「アクロマチックコーティング (AC)」技術は単なる「複層膜のコーティング技術」ではなく、正しくは「薄膜蒸着複層膜コーティング技術」と言い替えられます。つまり確かに本来の「複層膜コーティング技術zeissのT」は、1939年の登場でそれこそが世界初なのですが、MINOLTAが開発したのはされらその複層膜コーティングの上から蒸着する「薄膜蒸着技術」であり、その「複層膜」の意味が全く別モノです。

つまりここがポイントで (この認識を見誤ると当時登場していたMINOLTA製オールドレンズのコーティング層自体を見誤ってしまう)「zeissのT」はそれ自体単独でしか蒸着できませんがMINOLTAの「アクロマチックコーティング (AC)」はモノコーティング/マルチコーティングの別に関係なく、いずれのコーティング層にもさらに新たな蒸着層としてその次に加味させる事が可能な「薄膜蒸着技術」なのです。

簡単なコトバで表現してしまえば「まるで薬味のようにメインディッシュ (主体のコーティング層) に追加で被せられる薄膜蒸着層」と言えば理解し易いでしょうか。

そこで前述の話に戻ると、当初「緑のロッコール」として登場 (AUTO ROKKORシリーズ)
以降は、徐々にその「緑色の光彩の濃さ」が薄くなっていきます。

最後の「new MDシリーズ」が登場した1981年時点ではついに「アクロマチックコーティング (AC) 層の蒸着をやめてしまった」とも言えます。もっと正確に言うなら、当初登場した「AUTO ROKKORシリーズ」では光学系前群/後群両方の構成光学硝子レンズ面に「アクロマチックコーティング (AC)」を「緑色の光彩」として薄膜蒸着していましたが、その後の「MC ROKKORシリーズ」では光学系前群/後群のいずれか、或いは枚数を減じて蒸着しています。さらに「MDシリーズ」となるとほぼ数枚 (例えば光学系前群の第2群裏面のみなど) レベルにまで「アクロマチックコーティング (AC)」蒸着が大幅に減じられています (これらの話は全て当方が今までに数多くの個体をバラして光学硝子レンズを実際に1枚ずつ清掃して確認してきた事実)。

この事実を正しく認識する為に前述の「複層膜コーティング層蒸着の捉え方」が非常に重要になってくるワケです。従ってMINOLTAが当時のカタログなどで謳っていた「世界初の複層膜蒸着技術」と言うのは紛れもない正しい認識なのだと明言できますね。
(右写真は当時のカタログから転載したアクロマチックコーティング (AC) 蒸着専用の釜)

ちなみにそもそもMINOLTA製オールドレンズに与えられている「ROKKOR (ロッコール)」銘は、当時光学硝子溶融工場が六甲山付近に位置していた事から転じて付けられたとの事です。

  ●               ● 



上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左側に2枚円形ボケの写真をピックアップしましたが、焦点距離100mmながらもシャボン玉ボケを含む円形ボケの実写がほとんど見つからないので、そもそも円形ボケ自体が苦手なのか、たまたま実写が少ないだけなのかが分かりません。画周辺域の流れもよく制御されている光学系の設計なのですが口径食の影響もあり円形ボケが苦手なのかも知れません。ピント面のアウトフォーカス部がなめらかに滲んでいくので円形ボケを維持しにくいのかも知れませんし、逆にピント面から外れた領域の背景ボケはその分乱れが少なく均整な印象です。その意味では中望遠レンズとして考えれば非常にまとまりの良いモデルなのですが、旧東ドイツのMeyer-Optik Görlitz製中望遠レンズ100mmで有名な「Trioplanシリーズ」などと競うと、とても円形ボケでは適いそうにありません(笑)

二段目
左側の2枚で慰安婦像部のダイナミックレンジの広さが如実に表れていますが、本当にギリギリまで明暗部が粘り潰れない画を維持してくれるところは、逆にMeyer-Optik Görlitz製Trioplanには歯が立たない領域です (Meyer-Optik Görlitz製オールドレンズは極端にダイナミックレンジが狭いから)。特にカラー写真で比較してしまうとMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズは日本製モデルにほとんど適わない状況です。それこそ近年のSNSなどでのいわゆる「インスタ映えオールドレンズ」として脚光を浴びたが為にMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズを褒め称える人が多いですが、一般的な撮影全般まで含めて比較していくと、意外とそれほどでもありません(笑) 例えばヤフオク! でもプロの写真家が褒めちぎっていますが(笑)、ロシアンレンズなどのように「ハイキ〜なホワイトト〜ンに偏った (コントラストが低めな) 写真」ばかりが「オールドレンズらしさ」みたいな口調で語られてしまうと(笑)、まさにMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズの独壇場とも言えますね。

当方などはそのようなハイキ〜なホワイトト〜ンの写真ばかりが優れているとは感じないので(笑)、コントラストが高めな写真も十分素晴らしいと感じますし、それこそパンフォーカスでも楽しめます。そのような一般撮影の時に大きく影響する要素がやはりダイナミックレンジの広さだと思います。

ダイナミックレンジが十分に広く、且つピント面から滲むアウトフォーカスへの階調が滑らかな光学設計は、その分陰影や濃淡の表現性にも効果が現れるので被写体の材質感や素材感を写し込んだ質感表現能力に大変優れた写真を残します。一番右端の紅葉写真などは決していろ飽和せずにしかし絶妙な発色性を表現できていると見えます。

三段目
MINOLTA製オールドレンズはどのモデルもそつなく動物毛を写してくれるので、特に動物愛好者には最もお勧めできるオールドレンズではないでしょうか。例えば富岡光学製オールドレンズも繊細な表現性は得意なので動物毛も美しく撮れますが、しかし美しさと同時にリアル感まで兼ね備えた動物毛の表現性となると、やはりMINOLTAのほうに軍配が上がると考えます。それほど動物毛の繊細感とふわふわっとした感じをちゃんと写真の中に取り込んで表現できているオールドレンズとなると、実は意外に難しいのではないかと思います。それは人物のポートレート写真でね如実に表れるので、確かに中望遠レンズとなればポートレート撮影がお手の物なのは当たり前ですが、だからと言って必ずしも生々しく人肌感までキッチリ表現しきっているモデルとなると、なかなか難しいと思います。

MINOLTA製オールドレンズの素晴らしさとは、そういう部分なのではないでしょうか。

当方は隠れKONICAファンですが(笑)、オールマイティになんでもこなせる信頼感/安心感まで含めて「この逸本はどれ?」と問われてしまったら、迷わずMINOLTAをお勧めしますね。Carl Zeissでもありませんし (C/Yのほう) 皆さんが大好きなPlanarでもありません。いわゆる「日本人好み」をよ〜く知っている、そしてそれをちゃんと具現化してしまったオールドレンズとして、当方はMINOLTAが大好きですッ!(笑)

実はMINOLTA製オールドレンズは、どのモデルでもバラしていくと他社光学メーカーと一種異なるポリシーが一貫していた事に気づかされます。それはCanonやNikonでさえもそこまでこだわらなかった部分なのですが、一方実は既に同じようなこだわりを貫きつついまだにそれを続けている光学メーカーがあり「Leica」ですね(笑)

そうなんです。MINOLTA製オールドレンズの (MDシリーズ前までのモデル) に一貫して見られるポリシーは、まさに「締め付け方/固定方法/工程手順」など、凡そ光学性能に現れる要素なのかどうかが心配になるほど他社光学メーカーが時代と共に捨て去っていった (利益を食う) 要素とも言い替えられると考えます。「Leica」がそれをいまだに不変のポリシーとして続けている事に、誰しも異議を唱えないでしょう。そのような要素が昔のMINOLTAにはあったのだと当方はいまだに信じています (何故ならバラせばそうだから)。

話が反れましたが、上のピックアップが撮れるMINOLTA製オールドレンズと言うのは、そういうオールドレンズではないかと評価しています。そう言いながら、では何故普段から扱っていないのかと問われれば、答えはたったの一つ「作業対価が回収できないから (つまり赤字)」と言う問題だけです(笑) つまり残念ながらオーバーホールしてまで使いたいと考えない人が圧倒的に多いのか、当方がオーバーホール済でヤフオク! に出品しても二束三文な価格まで値下げしないと落札されません(笑) それが悲しいかな現実なのだと自分に言い聴かせて、扱いを敬遠しています。

ホンネでは扱いたいMINOLTA製オールドレンズは山ほどありますね(笑)

【モデルバリエーション】
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

初期型1968年発売
モデル銘:MC TELE ROKKOR-PF
光学系構成:5群6枚拡張エルノスター型
絞り値伝達:MC爪あり
f値:f2.5〜f22
ローレット (滑り止め):金属製 (アーチ型)
組込式内蔵フード:無し

前期型1973年発売
モデル銘:MC TELE ROKKOR-PF
光学系構成:5群6枚拡張エルノスター型
絞り値伝達:MC爪あり
f値:f2.5〜f22
ローレット (滑り止め):ラバー製 (幾何学模様型)
組込式内蔵フード:無し

中期型1976年発売
モデル銘:MC TELE ROKKOR-X
光学系構成:5群6枚拡張エルノスター型
絞り値伝達:MC爪あり
f値:f2.5〜f22
ローレット (滑り止め):ラバー製 (幾何学模様型)
組込式内蔵フード:無し

中期型1977年発売
モデル銘:MD TELE ROKKOR
光学系構成:5群5枚拡張エルノスター型
絞り値伝達:MC爪あり/MD爪あり/AE機能
f値:f2.5〜f22
ローレット (滑り止め):ラバー製 (幾何学模様型)
組込式内蔵フード:無し

後期型1981年発売
モデル銘:MD
光学系構成:5群5枚拡張エルノスター型
絞り値伝達:MC爪あり/MD爪あり/AE機能
f値:f2.5〜f22
ローレット (滑り止め):ラバー製 (幾何学模様型)
組込式内蔵フード:あり

初期型」の光学系は第2群を貼り合わせレンズとした5群6枚の拡張 エルノスター型構成です。右図は一般的なネット上に掲載されている 構成図からトレースしました。

今回扱うモデルは「初期型」なのでこの構成図が当てはまるのですが、バラして光学硝子レンズを清掃する際にデジタルノギスで1枚ずつ計測 したところ、少々異なる結果に至りました。

右図が今回扱った個体をバラした際に当方がデジタルノギスで計測した実測値に基づきトレースした構成図です。

すると第1群の曲率や厚みからして違っており (僅差に留まらないレベルの実測値)、特に第2群からの光学硝子レンズはその大きさ (外径) がそもそも違っていました。

また右図はその次のモデルバリエーションで言うところの「中期型」です。第2群の貼り合わせレンズが一つの塊に設計変更し5群5枚の拡張エルノスター型構成としました。これは色消し効果を狙い貼り合わせレンズにしていたのを硝子材の精製を変更する事で解決できたのではないでしょうか。

さらに最後の「後期型」になると後玉がさらに小径化され、当然ながら光学系を再設計し一新して終焉を迎えています。

しかし基本的に「初期型」から一貫して拡張エルノスター型の構成を 踏襲し続けています。

この「拡張エルノスター型構成」をみた時、第3群〜第5群までの 部分を「3群3枚のトリプレット型構成」と捉える事ができます。
つまり「トリプレット型構成を基本としたエルノスター型構成」と考えられるので、するといわゆるテレフォト型構成として第1群〜第2群を 配置していますから (中望遠レンズなので)、第2群の貼り合わせレンズで色消し効果を狙っていたのではないかと思います。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。バラしてみると内部は確かにこの当時の「MCタイプ」としての設計に沿った構造です。

例えば冒頭解説で話した「Leica」的な要素としては「光学硝子レンズの押さえ環が存在する」のが一つあります。これは光学硝子レンズの外周部分に環 (リング/輪っか) を挟み込む事でより確実に光路長を確保でき、且つ光学系内への揮発油成分侵入を防ぎ、同時に「気圧差」にも耐性が向上すると言う一石二鳥の効果が狙えます。「Leica」では「紙製環 (厚口)」が使われていますが、MINOLTAでは「ナイロン環」です。

このように光学硝子レンズにいちいち「押さえ環」を附随させるのはOLYMPUSもCanon/Nikonでも一部のモデルでしか採用していませんが、この当時のMINOLTA製モデルは数多く存在します (その他の光学メーカーはなおさら少ない)。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルはヘリコイド (オス側) が独立しており別に存在します。やはりこの鏡筒も「マットな (艶消し) 梨地仕上げのメッキ加工」が施されており、経年の揮発油成分侵入を嫌っている (防いでいる) のが分かります。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑6枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。例えば絞り羽根に打ち込まれている「キー」までMINOLTA製オールドレンズは「梨地仕上げのメッキ加工」ですから、同様に油染みを嫌った設計を徹底していたのは「Leica」ぐらいしか思い付きません (Canon/Nikonは普通の金属製キー)。

↑完成した鏡筒をひっくり返して裏側 (つまり後玉側方向) から撮影しました。「開閉アーム/制御アーム」の2本が飛び出ており「制御環」の途中には「なだらかなカーブ」が用意されていて金属棒が突き当たる事で絞り羽根の開閉角度が決まる仕組みです。「なだらかなカーブ」の麓部分が最小絞り値側になり、勾配 (坂) を登りつめた頂上部分が開放側です (グリーンの矢印)。

この「制御アーム」を絞り環からの連係アームがガッチリ掴んだままなので、絞り環操作で設定絞り値が変更できる原理ですね。

↑距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。

↑真鍮 (黄鋼) 製のヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑アルミ合金材のヘリコイド (オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で13箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

↑マウント部のベース環をセットしますが、締め付け固定する「締付ネジ」が「隠しネジ」になっている凝った設計なので(笑)、ここの工程でセットする必要があります (後から基台にセットできない)。

↑「僅か⌀1mm径」のベアリング+スプリングを組み込んでから絞り環をセットします。絞り環操作はカチカチと小気味良くクリック感を伴いますが、それを実現している「ベアリングスプリング」は極小なので紛失したら最後です (市場流通していない)。

↑こちらはマウント部内部の写真ですが、既に各構成パーツを取り外して当方による「磨き研磨」をお等をせた状態で撮っています。当初バラした直後はこのマウント部内部にも過去メンテナンス時に「白色系グリース」がビッチリ塗られており、既に経年劣化進行に伴い「濃いグレー状」に変質していました (一部パーツに赤サビ発生)。

↑ここの工程で先にマウントの爪を組み付けておきます。やはり「締付ネジ」が「隠しネジ」になっているので後からセットできません。

↑取り外していた各構成パーツも別に「磨き研磨」を施し「当方のオーバーホールでは一切グリースを塗らずに」組み付けます(笑) 当初発生していた「赤サビ」も可能な限り除去したので、平滑性が担保できグリースなど塗る必要がありません。

もっと言うなら、このマウント部内部の構成パーツの動き方次第で「絞り羽根の開閉異常」が発生しますから、特に経年劣化進行に伴う「赤サビ」の発生は附随する「捻りバネ」の経年劣化を促し「製品寿命を早める」結果に繋がり兼ねません。

過去メンテナンス時に当たり前のように「白色系グリース」をこのマウント部内部に塗りますが(笑)、はたして「捻りバネの酸化/腐食/錆び」はどうするつもりなのでしょうかね(笑)

将来的な「絞り羽根開閉異常」の因果関係などお構いなしなのでしょうか(笑) だとすればはたしてそんな整備をしてほしいとお客さんが思っているのかどうかです。「その時さえ問題なく動けばそれで良い」と言う下心が見え隠れしていますね(笑)

と言うのも、今回の個体を当初バラす前にチェックした時、絞り羽根の戻りが緩慢な動きになる事が何回かあったので、このマウント部内部の「捻りバネ」が弱っていると推測した次第です。

↑完成したマウント部をベース環にセットします。

↑距離環を仮止めしてから光学系前後群を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

修理広告DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。オーバーホール/修理ご依頼内容は「距離環のトルクが重すぎ/光学系内のカビ発生」ですが、いずれも改善できています。

確かに今ドキのデジカメ一眼/ミラーレス一眼ならこのような中望遠レンズでの撮影でも手持ちで十分ピント合わせできますが、そうは言ってもやはり距離環を回すトルクが重すぎてはなかなか合焦できません。従ってこのモデルのピントの山が少々掴み辛い事を勘案して「軽め」のトルク感になるよう仕上げました。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体ですが、残念ながら第1群 (前玉) 裏面側の「アクロマチックコーティング (AC) 」は、コーティング層の経年劣化進行に伴い清掃時に「微細な線状ハガレ」が起きてしまい、仕方なく第1群裏面のみ全面を剥がしました (従ってグリーン色の光彩が消えています)。

申し訳御座いません・・。

↑非常に目立つ本格的なカビが2つ繁殖していたのは光学系後群側で第4群になります (絞りユニット直下)。キレイに洗浄し除去できていますが、極微かにコーティング層を浸食しており、LED光照射でジックリ探すと「ほんの微かに薄くクモリを帯びている?」のようなニュアンスでカビ除去痕が残っています (もちろん写真には一切影響なし)。

極微細なヘアラインキズや点キズ、拭きキズ (?) などはそのまま残っています。

↑当初バラす前のチェック時点で何回かに一度緩慢になってしまう絞り羽根の駆動も確実に小気味良く動くように改善できました。絞り環操作も含め完璧な状態です。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正六角形を維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」の「粘性中程度軽め」を使い分けて塗っていますが、距離環を回すトルクは「普通」人により「軽め」に感じ全域に渡り完璧に均一なトルク感です。ピント合わせの際は極軽いチカラだけで微動できるので操作性がだいぶ向上しています。

↑オーバーホール/修理のご依頼内容は改善できましたが、残念ながら前述のとおり光学系第1群 (前玉) 裏面側の「アクロマチックコーティング (AC) 」を剥がしました。申し訳御座いません・・。

この件申し訳御座いませんが「減額申請」にてご納得頂ける分の金額をご請求額より減額下さいませ。減額の最大値は申し訳御座いませんが「ご請求額まで (つまり無償扱い)」とし、当方による弁償などは対応できません。

コーティング層の経年劣化進行度合いにより「アクロマチックコーティング (AC) 」は「無数に微細な線状ハガレ (ヘアラインキズのように見えてしまう)」が起きてしまう事があります。コーティング層の経年劣化の程度は見ただけでは事前に推測できず、実際に清掃してみて初めて分かりますから、その時点で (ヘアラインキズ状になってしまったら) どうにも戻せません。

このブログをご覧の皆様も、是非とも当方の技術スキルはこのように低いので十分ご承知置き下さいませ

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離12m付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります (簡易検査具による光学系検査を実施済で偏心まで含め光軸確認は適正/正常)。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しました。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮っています。

↑f値は「f8」に変わっています。

↑f値「f11」になりました。

↑f値「f16」です。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。「回折現象」の影響が出始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

大変長い期間に渡りお待たせし続けてしまい本当に申し訳御座いませんでした。今回のオーバーホール/修理ご依頼誠にありがとう御座いました。