◎ FUJI PHOTO FILM CO. (富士フィルム) FUJINON 55mm/f2.2《前期型》(M42)

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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、
フジカ製標準レンズ・・・・、
FUJINON 55mm/f2.2《前期型》(M42)』になります。


当方の累計扱い本数は今回が37本目の個体ですが、その中で「LED光照射時も透明でクリアな状態を維持した個体」だと言えるのは、僅か4本しか存在せず今回が5本目です。

【 超 希 少 】
今回の個体が大変貴重な理由はたったの一つ『総金属製』だからです。

正直に言って、今回この個体を扱うまで『総金属製』のタイプがこのモデルに存在することを全く知りませんでした。もちろんネット上を検索してもどこにも『総金属製』のタイプが存在することを指摘しているサイトがありません。確かに掲載写真などでは金属製なのかどうか
まで確定することは難しいです。

このモデルはモデルバリエーションの違いの中で筐体外装の内「距離環/指標値環/絞り環」の3つの部位が必ずエンジニアリング・プラスティック製でした。
左写真はモデルバリエーションで言うと「中期型」にあたりますが、ご覧のように経年劣化の進行に伴い特に距離環のエンジニアリング・プラスティック製に「材の収縮」が生じてしまい、亀裂やヒビ割れ/欠損が起きています (赤色矢印)。

もともとフィルター枠とマウント部だけが金属製なのですが、今回の個体は全てが金属製であり、内部構成パーツさえもエンジニアリング・プラスティック製パーツが一つも存在しません

総金属製』に拘る理由は外見上の品質/チープ感との相違だけではなく、実は最も重要な「光学系第1群 (前玉) の格納方法が締め付け固定だから」とも言い換えられます (左写真は中期型の前玉セット状況)。それは「中期後期型」の設計が、第1群 (前玉) のフィルター枠による押さえ込み固定に変わってしまった事が大きく影響しています (但し中期型の途中まではネジ込み式だった/ハメ込み式に変わったという意味)。

その結果どうなったのか?

結果は歴然で、現在市場に数多く出回っているエンジニアリング・プラスティック製タイプの光学系第1群 (前玉) に経年で生じてしまったコーティング層の劣化、或いはカビの発生の多さがすべてを物語っています。どうしてそう言いきれるのかと言えば、今まで扱ってきた「中期後期型」の個体に於いて「第1群 (前玉) の裏面にビッチリ油染みが残っている状況」だからです (油染みがなかった個体が1個も存在しないのが現実/一部のネジ込み式個体は油染み無し)。

従って今までに前述のような本数を扱ってきましたが、ヤフオク! での出品は「即決価格10,500円29,500円」と幅が広い状況であり、最高値「即決価格29,500円」の個体だけが前述の「僅か4本のスカッとクリアな個体」なのだと言えます (実際は1本は娘にプレゼントしたのでヤフオク! 出品はたったの3本だけ)(笑)

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このモデルの魅力は何と言っても『美しいシャボン玉ボケを表出させられる日本製オールド レンズ』と言う点です。単なる円形ボケやバブルボケは多くのオールドレンズで表出させる事ができるのでたいして珍しい話ではありませんが、真円で且つ明確なエッジを伴う美しいシャボン玉ボケとなると、表出させることができるオールドレンズは意外にも多くありません。

【当方で定義している円形ボケ】
 シャボン玉ボケ
真円で明確なエッジが細く繊細なまさにシャボン玉のような美しいボケ方
 リングボケ
ほぼ真円に近い円形状でエッジが明確ながらも太目で輪郭が誇張的なボケ方
 玉ボケ
円形状のボケが均等に中心部まで滲んでしまいノッペリしたボケ方
円形ボケ
その他歪んだりエッジが均一ではない、或いは一部が消えていく途中のボケ方
(円形状ボケの総称の意味もある)

上の写真はFlickriverで「円形ボケ」の特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

 ボケ方が変化していく様子
左端から順に「シャボン玉ボケ > リングボケ > 玉ボケ > 円形ボケ」とシャボン玉ボケが 破綻して円形ボケへと滲んで溶けていく様をピックアップしています。

これら4種類の中で「リングボケ玉ボケ円形ボケ」の3つに関しては多くのオールドレンズで真円状態で表出が可能ですが (真円ではない円形ボケを除いてもなおも多くのモデルで表出させられますが)、左端の「シャボン玉ボケ」だけはほんの僅かなモデルでしか表出させることができません。

近年この「シャボン玉ボケ」で一躍有名になってしまったのが、旧東ドイツのMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズで、特に3群3枚のトリプレット型光学系を実装している「Trioplanシリーズ」が人気で、中望遠レンズ100mmとなれば現在の海外オークションebayでの相場が「6万円10万円」と、当方がオーバーホールを始めた9年前は僅か1万円台でゴロゴロ出回っていましたから相当な高騰ぶりです(笑)

ではどうしてそれ程までに市場価格が高騰してしまったのでしょうか?

その因果関係には2つの要素が考えられます。1つ目は何と言ってもカメラボディ側の発展で、Meyer-Optik Görlitz製オールドレンズが製産されていた当時は、一眼レフ (フィルム) カメラに装着する前提でしか設計生産されていません (今ドキのデジタルな環境に移行することを誰が予想できたでしょうか)。

ちょうど電球が蛍光灯を経てLED光照明へと発展/進歩していった話に似たような感覚ですね。もっと言えばインターネットも予測できなかったでしょうし、スマホなど驚異の話なのかも 知れません(笑)

すると当時、特にMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズの中で前述の「シャボン玉ボケ」はフィルムカメラにとっての「収差の範疇」でしか捉えられていませんでした。逆に言えば当時いったい誰がフィルムカメラ環境の中で「シャボン玉ボケ」を珍重したのでしょうか。1950年代〜1960年代辺りの評価記事 (テスティングレポート) を読んでも「シャボン玉ボケ」について語っている記事が一つもありません(笑)

もっと言うなら、最も重要なのは誰も「ボケ味」に着目していなかった点です。
そうですね、2つ目の因果関係はこの「ボケ味」の評価ではないでしょうか・・。

カメラボディ側の発展と共にもう一つ写真の捉え方、認識にも変化が起こり、写真に対する「評価の前提」が変わってきたのだと考えています。そこには乾板を使って露光させる撮影を始めた写真撮影の黎明期から、やがてフィルム印画紙による現像に至り、フィルムカメラ全盛時代を経て培われてきた「写真撮影の前提」が大きなヒントになります。

つまり「ピント面に対する評価」だけが写真撮影の前提でしかなかった概念がやがて覆され「ピント面とその背景/滲み方の評価」へと移り変わったのが、特に近年の話なのではないかと考えます。

2014年がカメラ全体の世界規模に於いて「デジカメ一眼/ミラーレス一眼がフィルムカメラを上回った元年」に当たると、その出荷台数ベースで捉えられています。写真の撮影に於いて ピント面の把握が楽になり、フィルムカメラ全盛時代のように現像するまで待たずに撮影現場で確認できる環境が整ったのが飛躍的な進歩に繋がっています (カメラボディ側の進化)。同時に長い歴史の間、特に海外では「如何に鋭くピント面を表現し収差を改善するのか」だけが 追求され続けてきたとも考えられます。

まさにそれこそがオールドレンズ史に於ける「光学系の発展」原動力だったとも言えます。
そして逆に言えば「日本人以外誰もピント面の背景 (滲み方) を気にしなかった」事が問題なのではないでしょうか。つまり「撮影は写真に撮って記録する (残す) 作業」と言う暗黙の了承だけが世界規模で認知され続け、どれだけ緻密により正確にピント面を記録し残していくのかに注力され、ピント面の背景に潜む「芸術性 (滲み方/ボケ味)」に着目しようとしなかった事が 大きく関係していると当方はみています。

その証がまさに「bokeh」と言う英単語に凝縮されているように考えます・・。

1997年にMike Johnston (マイク・ジョンストン) 氏による写真雑誌の掲載記事に「bokeh」と言うコトバが登場したのが、世界で初めての英製和語 (日本語から英単語を生成したコトバ) の登場になります。この時初めて外国人は日本人がアウトフォーカス部に関心を抱く「ボケ味」と言うコトバに突き当たり、その感性と表現性の広さにオドロキを感じたのだと思います (実際記事の中でもちゃんと「bokehaji」と記載され解説されている)。

つまりクラシックレンズ〜白黒写真全盛時代に至るまで、そもそも写真は「記録写真/記念写真」的発想からスタートしたとも考えられます。すると光学硝子レンズの開発/歴史に於いて、収差の改善はその全てが「ピント面の把握」と言う命題の下に「何を活かして何を殺すのか」の選択肢に置き換えられていたとも考えられます。

外国人にとって「ピントが合っているのか合っていないのか」しか問題視していなかったことになりますね(笑)

ワザワザ「bokeh」と言うコトバを辞書登録した理由は、まさに前述の掲載記事で案内されているとおり「滲み方の感性に着目する」点であり、そこに芸術性を見出した感覚こそが「bokeh」登録の目的だったのではないでしょうか。

だとすれば「円形ボケ=bokeh」の方程式は納得できない話になります (Mike Johnstone氏もちゃんと滲み方の違いを指摘していたハズ)。どうしてそのように変わってしまったのか不明ですが、非常に多くの外国人が「円形ボケ=bokeh」と認識し始めていることを当方はとても危惧しています。

ちなみに、日本語のボケを「boke」としなかった理由も記事の中で説明されており、英語としてネイティブが発音すると「ボーク」と発音してしまう為に、より日本語の発音に近づける為に語尾に「h」を附随させたと明記されていますから、まさしく日本語から英語に登録された珍しい例と言えるのではないでしょうか。

なお、これら外国人との「ボケ味」に対する感覚の相違は、実は当時のオールドレンズ開発や商品戦略などにも大きく影響しており、海外勢オールドレンズに比べて当時の日本製オールドレンズの「ボケ味」の相違が明確に見てとれるので、既に1980年代辺りで海外勢と日本勢での違いが製品として現れていたことにもなります。

ところが当時はどちらかと言うと「割安感」と明るさだけで日本製オールドレンズがもて囃されていたようですが (つまりフィルムカメラ時代の話)、昨今のデジカメ一眼/ミラーレス一眼の普及に伴いようやくここに至って外国人にも「bokeh」を楽しむ環境が整ったのだとも言えるのではないでしょうか (そのカメラボディ側を進化させたのも結局はKodakではなくて日本の光学メーカーでしたが/ミラーレス一眼の元年は2014年と言われている)。

オールドレンズ・・いろいろ考察していくと奥が深くてオモシロイですね(笑)

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上の写真はFlickriverで、Meyer-Optik Görlitz製中望遠レンズ「Trioplan 100mm/f2.8」の特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
Trioplan 100mmの特徴的なシャボン玉ボケが玉ボケへと変わっていく様を集めました。

二段目
さらに背景ボケは「火焔ボケ」の要素を現しますがその基本は「円形ボケ」です。

三段目
トロトロに溶けていきますが3群3枚トリプレット型光学系にも拘わらずグルグルボケのようなニュアンスも辛抱強くシ〜ンを構成すれば撮ることができます。





上の写真はFlickriverで、当モデル「FUJINON 55mm/f2.2」の特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
同様シャボン玉ボケから円形ボケへと変わる様をピックアップしています。焦点距離が標準レンズ域ですから、自ずとシャボン玉ボケの大きさには限界がありこぢんまりと表出しますが、本家Trioplanにも匹敵し得る「繊細で真円なシャボン玉ボケ」の表出が可能です。

二段目
背景ボケも独特で様々な収差ボケを上手く活用することで特殊効果を狙えます。また基本的にピント面のエッジが骨太で明確に出てきますが画全体の印象をマイルド/繊細に仕上げるパフォーマンスも得意です。

三段目
コントラストの高い描写も得意ですが決して誇張感だけで終わらずにちゃんと被写体の材質感や素材感を写し込んだ質感表現能力の高さを示しています (黄色い建物の石積み基礎部分と黄色の外壁の日射しが当たっている箇所との質感の相違がちゃんと写し込まれている)。赤色の発色性もビビットで嫌味の無い色再現性です (鮮やかになりすぎない)。

四段目
そして何と言っても当モデルの凄さは「ダイナミックレンジの広さ」と言えます。左側2枚の写真のとおりビミョ〜な空間表現を見事に写し込んでおり、これが廉価版モデルから吐き出された写真だとはとても想像もできない大変リアルな写真です。

五段目
ピーカン写真 (左側2枚) でもこれだけのダイナミックレンジをちゃんと表現できているので (決して白飛び/黒潰れだけで潰れていない) 相当なポテンシャルと評価しています。

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このモデルは当時のフジカ (富士フィルム) から1976年に発売されたフィルムカメラ「ST605シリーズ」用セットレンズとして登場したのが初めてです。しかし当時の同社製フィルムカメラ
・ST701 (1970年)
・ST801 (1972年)
・ST901 (1974年)
※( )は発売年度
の各取扱説明書を見ても、オプション交換レンズ群の一覧にこのモデルの記載がありません。一方海外で発売された「ST601 (日本未発売)」の取扱説明書には左図のとおりセットレンズ銘にこのモデルの記載がありますからST601発売年度である1976年登場と言う結論に達します。

光学系は4群4枚のフジノン型構成で独自の設計でもあります。ネット上の某有名処での解説では「Speedic型」或いは「Unar型」と案内されていますが、当方の考察ではそのいずれの光学系構成にも適合しないと判断し、最終的に「唯一無二のフジノン型構成」と結論しています。

↑上の写真 (4枚) は今回バラした光学系を順に解説している写真ですが、ネット上の某有名処の案内と異なる考察や構成図を掲載しているので、敢えてその証拠として実装されている光学系の光学硝子レンズを1枚ずつ並べて撮影しています。

すると第1群 (前玉) は、ご覧のようにエンジニアリング・プラスティック製のモールド一体成形で造られています (前期型は金属環にカシメ止め)。また第2群〜第3群は互いに積み重ね式で光学硝子レンズ格納筒の中に格納される方式を採っており (個別に締付環で締め付け固定されていない)、且つ互いに接触面を有する設計で用意されています (上の写真右2枚)。

従って第2群〜第3群の間に「空気レンズ」を備えた光学設計であることが一目瞭然です (空気レンズで収差改善を狙っている)。

【モデルバリエーション】
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

前期型:
製造番号:・・現在検証中・・
プラスティック製:なし
金属製:筐体外装/内部構成パーツ全て
距離環指標値:印刷 (アルミプレート板に印刷)
距離環成形材質:金属製
ヘリコイド (オス側):金属製 (鏡筒兼ねる)

中期型:
製造番号:12xxxx、13xxxx〜、34xxxx〜49xxxx
プラスティック製:距離環/指標値環/絞り環
金属製:フィルター枠/マウント部
距離環指標値:印刷 (アルミプレート板に印刷)
距離環成形材質:エンジニアリング・プラスティック材+金属製芯材
ヘリコイド (オス側):金属製 (鏡筒兼ねる)

後期型:
製造番号:5059xxxx、6973xxxx、8194xxxx
プラスティック製:距離環/指標値環/絞り環
金属製:フィルター枠/マウント部
距離環指標値:直接刻印
距離環成形材質:エンジニアリング・プラスティック材のみ
ヘリコイド (オス側):金属製〜途中からエンジニアリング・プラス
ティック製に変更 (鏡筒兼ねる)

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。内部構造の設計概念にこの後に登場するモデルバリエーションとの大きな違いはありませんが、逆に言えば「総金属製であるが故の設計配慮」がちゃんと存在することを突きとめました。

そしてその「金属製に配慮した設計」こそが後のエンジニアリング・プラスティック製へと大きく設計の舵を切り替える理由に至ったとも考えられます。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒 (ヘリコイド:オス側) とその内部にセットされるパーツです。一般的なオールドレンズは鏡筒の最深部に絞りユニットがセットされるだけの設計ですが、このモデルだけは違っていて「光学系第1群 (前玉) 直下に絞りユニットを配置する必要」から、上の写真に並べて写した「絞りユニット底上げ環 (リング/輪っか)」なるパーツが存在します。

逆に言えば、まさにこの構造 (設計) こそが4群4枚のフジノン型構成の要であり、第1群 (前玉) 直下に入射光制御域を持ってきたところが光学系設計のポイントだと当方は踏んでいます。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑鏡筒に絞りユニットをセットしたところです。ご覧のとおり鏡筒開口部ギリギリにまで絞りユニットを迫り出させた設計を採っており、この構造がこのモデルの特徴とも言えます (ここまで前玉直前に上げ底しているオールドレンズが存在しない)。

左写真はその絞りユニットを構成するパーツの一覧です。

ちゃんと絞り羽根を開閉させる為の「開閉環/制御環」が存在し、且つそれに附随して「開閉アーム/制御アーム」が備わり、それらの配置 位置を細かく微調整する機能が附加された設計です。

つまり単にバラして組み上げただけでは、このモデルの絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量) は適正化できません (必ずこの絞りユニットの微調整が必須になる)

↑距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。「制限キー」と言って、距離環が駆動する範囲 (無限遠位置〜最短撮影距離位置) を決めている (限定させている) パーツが刺さるネジ穴が用意されていますが、実は「総金属製」である為に2箇所にネジ穴が用意されています。後に登場する「中期後期型」のエンジニアリング・プラスティック製では他の一般的なオールドレンズ同様1箇所だけに絞られていますね。

↑ヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑鏡筒 (ヘリコイド:オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で5箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

↑完成したヘリコイド (オスメス) をひっくり返して裏側 (つまり後玉側方向) を撮影しました。

絞り羽根の開閉制御を司る「チカラの伝達」手法として「アーム」が用意されており、
開閉アーム/制御アーム」の2種類により具体的な絞り羽根開閉動作を実現しています。

直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目

開閉アーム
マウント面絞り連動ピン (レバー) が押し込まれると連動して動き勢いよく絞り羽根を開閉する

制御アーム
絞り環と連係して設定絞り値 (絞り羽根の開閉角度) を絞りユニットに伝達する役目のアーム

↑こちらはマウント部内部の写真ですが、既に各構成パーツを取り外して当方による「磨き研磨」を終わらせた状態で撮影しています。当初バラした直後はこの内部にまで過去メンテナンス時に塗られた「白色系グリース」がビッチリ残っており、且つ経年劣化進行に伴い「濃いグレー状」に変質していました。各構成パーツの一部にはその影響から (白色系グリースの揮発油成分のせいで) 経年の酸化/腐食/錆びが生じていたワケです。

このマウント部内部にはマウント面から飛び出てくる「絞り連動ピン」に附随する連係機構が存在します。その中で左写真の2本の「捻りバネ」が介在する設計で、2本のうち1本が「常に絞り羽根を閉じようとするチカラ」を及ぼし、もう1本が「常時開こうとするチカラ」を及ぼします。

すると左写真のとおり、当初バラした直後は1本の「捻りバネ」を
過去メンテナンス時に変形させていました (グリーンの矢印の箇所)。

これら「捻りバネ (2本)」本来の正しいカタチに当方が再び戻したのが左写真です。

するとこの2本の「捻りバネ」のうち、どちらが「閉じるチカラ/開くチカラ」を及ぼしているのか知っている過去メンテナンス時の整備者の仕業と言えます (シロウト整備ではない)。

この事からから何が見えてくるのかと言えば、過去メンテナンス時に既に「絞り羽根の開閉異常」が発生していたことになります。具体的にそれは「絞り羽根の動きが緩慢」なのかも知れませんし、或いは「絞り羽根が正しく閉じない」のかも知れません。もっと正直に言えば2本の「捻りバネ」のうちいずれを過去メンテナンス時に故意に曲げたのかを見ただけで「その時どのような不具合が絞り羽根に発生していたのか」まで100%把握できるのですが、ここでは敢えて説明しません。

何故なら、このブログを参考にして整備している整備者がどうやら居るようなので(笑)、整備のヒント (コツ) になるような事は解説しません(笑)

逆に言えば内部の構成パーツをイジればすぐに、どうしてそのように処置したのかまであからさまになるので「ごまかしの整備を隠そうとしてもムダ」なのだとも言えますね(笑)

今回の個体で言えば、過去メンテナンス時に既に発生していた「絞り羽根の開閉異常」を捻りバネのチカラを強めることで解消させていましたが、結果的にそれはもう1本の「捻りバネ」のチカラを弱める話に繋がってしまいます。つまりどんどん経年劣化を進行させていく処置を講じていたことになるワケで「整備してオールドレンズの寿命を却って短くしている」意味不明なメンテナンスだとも言えます。

ごまかしの整備」とはそのように製品寿命をより短くしてしまう話なので、はたしてそれを整備と言って良いのか当方は甚だ疑問に感じますね(笑) いまだにそのような「ごまかしの整備」が罷り通っている始末で遺憾です (何故なら白色系グリースは近年利用されているから)。

↑取り外していた各構成パーツも個別に「磨き研磨」して経年の酸化/腐食/錆びを可能な限り取り除き、今回のオーバーホールでは上の写真のとおり「一切グリースを塗らず」に組み上げていきます。そもそもこのマウント部は隙間だらけの場所なので (後玉の周りに隙間がある)、光学メーカーが製産時点でグリースを塗ったくっているワケがありません (何故なら経年でグリースの揮発油成分が隙間から外へ流れ出るから)(笑)

つまり製産時点では「グリースを塗らずとも各部位がスムーズにチカラを伝達していく」設計概念だったことが明白です。

絞り環からは「制御爪」が飛び出てきており、一方「絞り連動ピン」と連係して駆動している「開閉爪」もあります。これら「制御爪/開閉爪」がそれぞれ鏡筒から飛び出てきている「制御アーム/開閉アーム」をガシッと掴んだまま操作しているワケです。

マウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」が押し込まれると (ブルーの矢印①)、その押し込まれた量の分だけチカラが伝達されて (ブルーの矢印②)「開閉爪」が移動します ()。

さらにこれらの機構部にはグリーンの矢印で指し示した「捻りバネ (2本)」が附随します。すると特に上の写真 (左写真) でも分かるとおり、ブルーの矢印②のチカラで「絞り連動ピンが必要以上に押し込まれる」と内壁に突き当たってしまい、正しくチカラが伝達されないことになります。

従ってグリーンの矢印の「捻りバネ (2本)」のうち1本、或いは両方のカタチをイジった場合に、経年でチカラバランスが崩れていく事に至り、さらに製品寿命を短くさせている原因なのが分かりますね(笑)

全く以て整備と言いながらロクなことをしません・・(笑)

もっと言えば、今回の個体はこのマウント部内部の固定用部品の1つを間違った使い方をしていました。過去メンテナンス者は「原理原則」を理解しておらず、且つ「観察と考察」もできていなかった「いわゆる単にバラして組み上げるだけのグリースに頼った整備」であった事が明白です。

この固定用部品の使い方を間違っているが為に、実は「絞り羽根の開閉異常」に至っていただけの話であり、ちゃんと正しい使い方をしてあげれば何ら問題なく絞り羽根はスムーズに正しい駆動をしています (つまり不具合の原因は自分が作っていた事に一切気がついていない整備者)(笑) それをごまかす為に再びバラして捻りバネを曲げたのだと、まるで走馬燈のように思い浮かびます(笑)

もちろん今回のオーバーホールでは敢えて当方にて正しい「捻りバネ」のカタチに戻し、グリースなど一切塗らずにマウント部内部を組み上げており、これでちゃんと正しく平滑に各部位が機能しています。

過去メンテナンス時の尻ぬぐいまでさせられている始末です(笑)

↑完成したマウント部を基台にセットします。この「絞り環が金属製」なのがこのモデルでは今回が初めてと言う話です (赤色矢印)。

↑指標値環をイモネジ (3本) を使って締め付け固定します。やはりこの「指標値環も金属製」です。

するとご覧のとおり「絞り環の刻印絞り値に2.2がある」事から別のモデルの (金属製の) 絞り環を転用したワケではない事が分かります。同時に「指標値環」もその内径の膨張度がエンジニアリング・プラスティック製パーツとは異なりますから、自ずと他のモデルからの転用ができません。

つまり他のモデルからパーツを転用して「ニコイチ」で組み上げる事がそもそもできないのです。それゆえ「今回が初めての総金属製」と言っているワケです。

ちなみに左写真のとおり「制限キー」が備わっている事で、距離環の駆動域が決まる設計ですが、このモデルだけ (金属製なので) 反対側にもう1本「制限キー」が用意されており、他の同型モデルとは全く
設計概念が違う点を指摘できます

↑やはり「金属製の距離環」を仮止めしてから光学系前後群を格納し無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

修理広告DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。総金属製ともなると、今までに扱ってきたエンジニアリング・プラスティック製タイプとは「品質」に於いて全く別モノに見えてしまうから不思議です(笑) ある意味「廉価版」モデルの格付にしておくのはもったいないくらいですから、コスト削減とは言えエンジニアリング・プラスティック製に変更してしまったのが何とも惜しい限りです。

おそらく海外オークションebayも含め「総金属製」の個体が市場に流れ出る確率は相当低いと考えられるので「オールドレンズ通」の方は是非ご検討下さいませ (ちなみにレンズ銘板だけはプラスティック製のままです)(笑)

↑今回の個体も前回同様「光学系内の透明度が非常に高い状態を維持」しています。残念ながら前後玉にはコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリがLED光照射で微かに視認できますが写真には一切影響しません (ハロの出現率にも影響しません)。

なお、当方のヤフオク! 出品ページで掲示している光学系の状態は、全て「今ドキのデジタルな新品レンズと比較した場合の相違点」として明記している為、オールドレンズの範疇として捉えるとだいぶ大袈裟な誇張表現になっています (例:光学系内の塵/埃に見えてしまう極微細な点キズはオールドレンズなら本当は当たり前の存在)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑後群側も透明度が高い状態を維持していますが、極微細なカビ除去痕が僅かに残っています。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:15点、目立つ点キズ:10点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:19点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズなし)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):あり
(後玉に非常に微細な点キズが多めですが塵/埃に見えてしまいます/4回清掃して除去できず)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・前後玉表面側に経年相応なカビ除去痕が数箇所残っておりLED光照射で微かに浮かび上がります。
・光学系内の透明度が非常に高いレベルです。
(但しLED光照射で一部領域で微かにクモリあり)
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑5枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正五角形を維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度と軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人によって「重め」に感じ「全域に渡って完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。
・マウント面に「開放測光用の爪」が1mm程突出しています。「切削」が必要な方はご落札後の一番最初のメッセージにてご申告下さいませ。
別途「作業料2,000円」を送料欄に加算の上お支払い頂きます。
再度マウント部を解体後に切削し着色後に発送します(発送が数日遅延します)。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

↑結局、バラしてみると「総金属製」であるが故に、他のモデル (例えば開放f値f1.8など) と比較してムダに構成パーツが必要になり (例:制限キー) その分の組み立て工程が嵩み、材料費よりも人件費面でコスト高に至ったのではないかと考えています。

逆に言えば、それほど当時の日本の光学メーカーは深刻なコスト削減意識に直面していたとも言えるワケで、エンジニアリング・プラスティック製パーツの採用による日本国内の製産工場でのコスト削減だけでは間に合わず、ついにカメラ業態から撤退してしまった会社が数多く出てきたのだとも言えます。

今でこそカメラボディも含め中国や台湾などの工場でエンジニアリング・プラスティック製パーツを生産していますが、そこまで海外工場の技術革新と精度が向上するには時間を要したワケであり、まさに時の流れの中で致し方なかったのでしょうが、ロマンを感じずには居られませんね(笑)

このモデルは今まで扱ってきてエンジニアリング・プラスティック製のチープ感がどうしても否めなかったのですが、さすがに総金属製にはその印象は無くむしろ高級感さえ感じるほどです(笑)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑マウント面にこの当時のフジカ製フィルムカメラに装着して機能する「開放測光用の爪」をワザと残したまま仕上げていますから、フィルムカメラでご使用の方にはお勧めですね。

もしもマウントアダプタ (ピン押し底面タイプ) 経由デジカメ一眼/ミラーレス一眼に装着される場合は、マウント面の「開放測光用の爪」を当方にて切削しキレイに着色処理しますので、必ずご落札後の一番最初の取引ナビメッセージにてその旨ご案内下さいませ

再び一旦バラして絞り環だけを取り出し「爪」のみ切削するのでとてもキレイに削れますし、もちろんちゃんと目立たないよう着色します (装着するマウントアダプタ側に擦りキズが付いたりしません)。作業料として別途「2,000円」を申し受けます (発送が数日遅延します/作業料はヤフオク! の送料欄に加算してお支払い下さいませ)

↑当レンズによる最短撮影距離60cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります (簡易検査具による光学系検査を実施済で偏心まで含め光軸確認は適正/正常)。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影していますが、絞り環の刻印は「● (ドット)」です。

↑さらに回してf値「f4」で撮影しました。

↑f値は「f5.6」に変わっています。

↑f値「f8」になりました。

↑f値「f11」です。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。

↑上の写真はデジカメ一眼/ミラーレス一眼などにマウントアダプタ経由装着する場合を想定して「M42SONY Eマウントアダプタ」にセットした場合を撮影しています。マウント面から飛び出ている「開放測光用の爪」が当たらずに、ちゃんと最後までネジ込めている事を撮っています (指標値も真上に来ています)。

↑同様「開放測光用の爪」が当たらずに最後までネジ込めているマウントアダプタで日本製です。

↑チェックしたマウントアダプタで「開放測光用の爪」を切削せずに、そのままちゃんと最後までネジ込めるのは上の写真のマウントアダプタだけになります。

Rayqual製マウントアダプタ (日本製)
K&F CONCEPT製マウントアダプタ (中国製)【新型】
K&F CONCEPT製マウントアダプタ (中国製)【旧型】

特にK&F CONCEPT製マウントアダプタは「新旧モデル」が市場に混在しているので、販売店で確認できない場合は上の写真「グリーンの矢印で指し示した突出の有無」でチェックできます (販売店掲載写真をチェックするという意味)。③のK&F CONCEPT製旧型タイプはマウント面に突出が無いので、途中で突き当たってしまい最後までネジ込めません (他の会社のマウントアダプタでもそのようなモデルが数多く存在します)。