◎ KONICA (コニカ) HEXANON AR 40mm/f1.8 AE(AR)

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今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、コニカ製
準標準レンズ『HEXANON AR 40mm/f1.8 AE (AR)』です。


筐体の全高がとても薄いことから俗に「パンケーキレンズ」と呼ばれているオールドレンズですが、薄いからこそ実装している光学系が簡素なタイプが多い中で、このKONICA製モデルは当時のNikonやCanon同様に本格的な光学設計を採ってきています。

しかし、さすがに経年劣化の進行で光学系の特にコーティング層経年劣化が酷く、光学系内に極薄いクモリが生じてしまっている個体が多いのが現実です。またパッと見でキレイに見えても、LED光照射で確認すると前後玉に極薄いカビ除去痕が複数浮かび上がる個体が多いのも実情です。

つまりこのモデルは光学系の状態を優先して手に入れようと考えた時、相当にリスキーなモデルと言えます (現物を手に取ってLED光照射でチェックできないから)。

今回扱いが累計で20本目にあたりますが、今までコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが生じていない個体は1本しかありませんでした。今回はラッキ〜なことにコーティング層の経年劣化に伴う極薄いクモリが生じていないのですが、残念ながらカビ除去痕が前後玉 (特に後玉表面) に多く残っています。それでも光学系の状態が良い個体としてカウントすると、当方では5本目ではないかと言うレベルを維持しています

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コニカの歴史は相当古く、何と明治6年 (1873年) に東京麹町で米穀商「小西屋」を営んでいた6代目杉浦六右衛門が、25歳の時に当時の写真館で撮影した写真に感動し写真材料の扱いを始めたのが原点です。その後東京日本橋に写真材料と薬種を扱う「小西本店」を開業したのが創設になります。

それから30年後の明治36年 (1903年) 国産初のブランド付カメラ『チェリー手提用暗函 (6枚の乾板装填式)』国産初の印画紙「さくら白金タイプ紙」を発売しました (左写真)。

その後大正12年 (1923年) 現在の東京工芸大学の前身「小西写真専門学校」を創設し、昭和11年 (1936年) に株式会社小西六本店と社名変更しています (後のコニカ株式会社)。

今回扱うHEXANONシリーズは当初マウントが違うFマウントでしたが1965年12月に発売した世界初のAE方式一眼レフ (フィルム) カメラ「AUTOREX」からARマウントに変わっています。ARマウントの名称は「AutoRex」の頭文字を採っており、前期は「EE (Electric Eye)」後期は「AE (Auto Exposure)」機能を装備しています (セットするとシャッター優先AE機能が働く)。

【コニカ製一眼レフ (フィルム) カメラの変遷】(発売年度別時系列)
AUTOREX (1965年12月発売)
AUTOREX-P (1966年3月発売)
FTA (1968年4月発売)
AUTOREFLEX A (1970年発売:輸出機)
AUTOREFLEX A3 (1973年3月発売:輸出機)
AUTOREFLEX T3 (1973年4月発売)
ACOM-1 (1976年11月発売)
AUTOREFLEX TC (1976年11月発売:輸出機)
AUTOREFLEX T4 (1977年1月発売:輸出機)
FS-1 (1979年4月発売)
FP-1 (1980年8月発売)
FC-1 (1980年10月発売)
FT-1 (1983年4月発売)
AUTOREFLEX TC-X (1985年4月発売)

上の列記で、オレンジ色①は「EE」タイプでグリーン⑤は「AE」タイプです。また「」は今回扱う「パンケーキ」がセットレンズになって販売されており「」はオプションの交換レンズ群一覧に今回のモデルが明記されていることを表します。

時系列で見ると1985年以降一眼レフ (フィルム) カメラの発売がなく、コンパクト (フィルム) カメラである「コニカカメラ」或いは「現場監督」ばかりを発売し、ついに2003年をもってフィルムカメラ事業から撤退してしまいます。

今回扱うモデル『HEXANON AR 40mm/f1.8 AE (AR)』はまさに、今から40年前に発売されたオールドレンズであると言えます (FS-1のセットレンズとして登場した)。

それ故、さすがに年数からすれば光学系のコーティング層経年劣化が進行しているのも仕方ないと言えるのでしょう。





上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して円形ボケへと変わっていく様を集めています。光学系がウルトロン型構成なのですが、意外にも苦手なハズのシャボン玉ボケをギリギリ真円に近い状態で (明確なエッジを伴って) 表出できているところが「パンケーキ」レンズとバカにできないところです。

二段目
この左端の「液体ボケ」と当方が呼んでいる水のような滲み方が一般的なオールドレンズでなかなか出せません。背景ボケはご覧のように収差の影響を受けて、ある時は放射状に、また二線ボケふうに (決して二線ボケではない)、しかもグルグルボケのようなボケ味まで出せてしまうので、意外と懐が広いと言うか引き出しが多いように思います。

三段目
土壁や木質感、或いはガラス質など被写体の材質感や素材感を写し込む質感表現能力に優れているのもたいしたモノです。赤色の発色性も決して誇張感だけに終わらずイヤミがありません。開放撮影時のビミョ〜に (控え目に) ピント面のエッジにハロを伴う様も好感が持てます。

四段目
ネット上では光源が入った時のコマ収差が酷すぎる (醜い) と悪評がたっていますが、それほどクセがある夜景写真になるとは思えません。またとても「パンケーキ」レンズから吐き出されたとは想像できないダイナミックレンジの広さを物語っており、明暗部の潰れも少なくシッカリ階調表現できているところが凄いです。歪み率も良く改善されています。

五段目
左端の2枚の写真を見る限り「空間表現」の素晴らしさも印象として残りますが、それはまさにダイナミックレンジの広さが功を奏しているのではないかと考えるので、決してネット上で批判されているチープ感だけで終わるモデルではなく、むしろよくぞここまで光学系を突き詰めたと評価してあげたい気持ちでいっぱいです。

この薄い筐体サイズ「パンケーキ」レンズながらも、光学系はイッパシに5群6枚のウルトロン型構成です。
と言うのも、実は当時の「パンケーキ」レンズに多く採用されていた光学系が3群4枚のテッサー型だったからです。するとこのモデルの描写性の懐の広さが、この光学系を見ただけで納得できると言うものです。
しかも当時の標準レンズは、下手すれば最短撮影距離50cmが当たり前ですから (当レンズは最短撮影距離45cm)、そこまで汲みすれば「パンケーキ」だからと決してバカにできないのではないでしょうか?

当方はこのモデルを銘玉として充分評価しています・・。

右図は今回バラして清掃時にデジタルノギスで計測しほぼ正確にトレースした構成図です。
(各硝子レンズのサイズ/厚み/凹凸/曲率/間隔など計測)

考えると、このモデルはフィルムカメラ「FS-1」の製品戦略と非常に関わりが強い設計だったのではないかと思います。同じ標準レンズ域のモデルに「50mm/f1.7」が存在しますから、何故に敢えて焦点距離40mmを用意してきたのか?

実は、ここにこのモデルの製品戦略としての性格付けが成されていると考えます。フィルムカメラ「FS-1」が当時世界初の「フィルム自動装填(オートローディング)」および「自動給送機構(オートワインディング)」を装備してきたモデルであり、それは次代の先駆として「新たな標準」をもう一つ手に入れようと意気込んだのではないでしょうか (実際に取扱説明書を見るとこのモデルを標準レンズとして扱っている/交換レンズ群の分類でも標準レンズの中に入っている)?

すると、この「パンケーキ」も焦点距離40mmを追加で投入する「新たな標準レンズ」に仕立て上げたかったのが、コニカのホンネだったのではないでしょうか・・ロマンは止め処なく広がります。

実際、当方は愛用レンズで毎日のように焦点距離40mmのマクロレンズを使っているので、画角として全く違和感を感じないどころか、焦点距離50mmの標準域では「ちょっと足りない」と言う痒いところまで手が届くような感覚がピタリと (心地良く) ハマるのが、この焦点距離40mmの良さです。特にこのモデルはf値「f4」以降からピタッと決まってくる印象がまた堪りません(笑)

それを考えると、何だかコニカの狙っていたことが、いや然し、期待とは裏腹に当時の販路は期待通りに確保できず、ついには次代を逃す結末だったのが何とも哀しい限りです。オールドレンズはロマンまで愉しめて本当にオモシロイですね(笑)

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。パンケーキレンズなので内部構成パーツ点数は極端に少なめです。

まず皆さんに申し上げたいのは、ネット上で「チープなモデル」と評されていますが上の写真総パーツ点数19点中エンジニアリング・プラスティック製は僅か6点だけです。しかも部位で言えば「レンズ銘板と絞り環」そして「光学系前群」だけで5点を占めていますから、このモデルが決してチープ感漂う造りだけではないことを認めてあげるべきだと思いますね。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒 (ヘリコイド:オス側) です。ここから使っていく構成パーツは別途案内するまで全てが金属製です。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑6枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。赤色矢印で指し示している箇所は絞り羽根の「位置決め環」を「固着剤」を使って数箇所とめています (製産時点で接着している)。

位置決め環」とは絞り羽根の表裏に打ち込まれている「キー (金属製突起棒)」のうち「位置決めキー」が刺さる場所で、絞り羽根の位置を確定させている「」になります。絞りユニット裏側にセットされている「開閉環」が絞り環操作に連動して回ることで「位置決めキーを軸として具体的な角度で絞り羽根が開閉」する仕組みですね。

先ず固着剤を使って固定する方法を採るくらい絞りユニットを薄く仕上げたかった (ネジ込み式にするとネジ山数が必要なので厚みが増すから) ことが判ります。これは決してコスト削減の結果ではなく、むしろ固着剤を塗布する工程を考えればコストは (工程数は) 増大している事になりますからコスト計算から来ている設計ではないことが判ります。

つまりこの絞りユニットの設計から「光学系前群の為に最大限のスペース確保」が命題だったことが伺えます。

↑完成した鏡筒 (ヘリコイド:オス側) を立てて撮影しました。如何に薄いのかがお分かり頂けると思います。この薄さの中に5群6枚ものウルトロン型光学系をセットするワケですから、 そのために絞りユニットをギリギリまで薄く設計する必要があったと考えます。

直進キーガイド」は「直進キー」と言う距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目のパーツが行ったり来たりスライドして行く場所になります。

直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目

↑距離環やマウント部を組み付けるための基台 (金属製) ですが、こちらも非常に薄い設計です。

↑ヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑鏡筒 (ヘリコイド:オス側) をやはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で7箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

↑この状態でひっくり返して撮影しました。鏡筒裏側から絞り羽根を開閉する役目の「開閉アーム」が飛び出ています。

この工程で注目するのは「直進キー」と言うパーツがたった1本だけ用意されている点です。距離環を回す際に架かるチカラの伝達はこの1箇所に集中します。トルクムラを防ぐために一般的なオールドレンズでは両サイドに1本ずつ合計2本の直進キーが用意されますが当モデルでは1本で収めています。

つまりその分ヘリコイドネジ山には厳格な切削精度が要求されるため、ここでも単にコストを省く考え方ではないことが判明します (決してチープな設計ではない)。

↑やはり金属製の指標値環を組み付けますが、この部分をアルミ材のシール板による印刷などにしてコストと工程数を減らす工夫をしても良かったと思いますが金属製です。

↑上の写真赤色矢印のとおり総金属製の鏡筒にはそのまま光学系後群の格納筒が用意されているので、ここは金属製のままですが前群側はエンジニアリング・プラスティック製になります。指標値環のコストを下げた分光学系前群側の格納筒を金属製にしたほうが良いのではないかと考えがちですが、その理由は後ほど出てきます。

前の工程までに使われている構成パーツがすべて金属製になり、ここで初めて「エンジニアリング・プラスティック製の絞り環」が出てきます。鏡筒内の絞りユニットから飛び出ている「開閉アーム」を操作するアーム部分まで一体成形でエンジニアリング・プラスティック製にしてしまっています (赤色矢印)。つまり徹底的にコストと工程数を削減しています

パッと見、何だかコスト削減箇所がチグハグのように見えますが、実はこの薄い絞り環に金属製の操作アームなどをネジ止めしようとすると、そのネジ止め箇所の強度 (厚みとカタチ) が必要になってしまい、この薄さでは充分な強度を確保できないと考えますから、必然的に一体成形に落ち着いたのではないかと推測しています (つまりここでも単なるチープな設計ではない)。

↑さて問題のパーツが出てきました。手前に並んでいる3個だけが金属製で後列は全てエンジ ニアリング・プラスティック製です。光学系前群の硝子レンズを格納する「格納筒」と前後玉を締め付け固定する「締付環」までもエンジニアリング・プラスティック製にしてしまいました。つまりエンジニアリング・プラスティック製の格納筒の中にセットされた硝子レンズは 金属製のスリーブをサンドイッチしながら最終的に再びエンジニアリング・プラスティック製の締付環で固定される設計です

絞り環もそうですが、このエンジニアリング・プラスティック材は相当厳格な成分配合が成されているようで金属材並みのシッカリした強度が備わっています。従って「締付環」も相応に締付が可能であり決して手を抜いた設計ではないことが判ります。

どうしてこのような設計/材質の組み合わせになったのでしょうか・・?

先ず光学系内だけの話として考えると、各硝子レンズ (特に第2群〜第3群) の屈折率を高く設計したために厳格なポジショニングで格納する必要性が出てきますから、自ずとサンドイッチするスリーブは「金属製」である必要に至ります (このスリーブの厚みが少しでも変化すると描写性が低下するから)。

では何故重要であるハズの硝子レンズ格納筒や締付環をエンジニアリング・プラスティック製にしてしまったのでしょうか?

この考察が実はこのモデルの製品戦略を表している考え方になります。フィルムカメラ「FS-1」のセットレンズとして用意されたのが当モデルですが、フィルムカメラ自体の格付がそもそもフラグシップモデルではありません。確かに世界初の考え方を採り入れたコニカの意地を見せつけたモデルではありますが、低い格付として捉えれば限られた予算内で製品化せざるを得なかったと考えます。

つまり限られた予算の中で「新たな標準」たる性格を持たせる (期待して) となればコストを集中させる箇所を明確化した設計にならざるを得ません。結果、冒頭の考察のとおり「パンケーキレンズありき」だとすると「光学系の性能と最低限の操作性」だけは犠牲にできず、結果的に絞り環とレンズ銘板、そして光学系前群格納筒と締付環だけがエンジニアリング・プラスティック製に至ったのではないでしょうか。

逆に考えれば、この光学系前群の固定方法を一般的なオールドレンズ同様にネジ山を用意してネジ込む方式に設計すると、自動的にフィルター枠までの全高は嵩んできますからパンケーキ型の筐体サイズはどんどん増えていってしまいます。つまり全高を抑えたいが為にエンジニアリング・プラスティック製の硝子レンズ格納筒にまでして設計したのではないかと踏んでいます。要は最初からコスト計算だけに頼った「チープ」を意識した設計は微塵も存在していないと判断できるワケですね・・。

↑実際に硝子レンズを組み付けて完成させると光学系前群はこんな感じになります。

この光学系前群の格納筒は締付ネジ (3本) で固定されるので単に締付箇所の厚み分だけ考慮すれば良いことになり、前述の「ネジ込み式の固定方法 (一般的なオールドレンズの場合の固定方法)」と比べると格段に余計な寸法を必要としません。ところが逆に懸念材料が発生します。エンジニアリング・プラスティック材を使ってしまったこと、さらに締付ネジによる固定にしてしまったこと、この2点から厳密な光路長確保が保証されなくなる懸念が生じます。

エンジニアリング・プラスティック材ですから金属よりも気温の高低や気圧変化の影響を受け易く、且つ締付ネジ固定のため圧着性にバラツキが生じる懸念まで出てきます。すると結果的に光路長や収差がビミョ〜に増減してしまい適正ではなくなる (つまりピント面が甘くなる)
結果に繋がります。その懸念を可能な限り排除するためにエンジニアリング・プラスティック材の成分/配合が厳格化されたのではないかと推測しています。

もしかしたら当初の設計では内部の光学系前群格納筒や前後玉締付環だけをエンジニアリング
・プラスティック製にするつもりだったのが、コスト計算したら許可が降りず仕方なく絞り環まで替えてしまったのかも知れません (その逆は成り立ちません)。と言うのも筐体外装をエンジニアリング・プラスティック製にするなら絞り環だけではなく距離環まで替えていたハズだからです (当初設計段階から光学系前群格納筒と前後玉締付環が金属製ではなかったと推測するのが自然)。その辺の判断が実は指標値環を金属製にしてきたことから見え隠れしています。指標値環 (或いは基台丸ごと) をエンジニアリング・プラスティック製にしてしまうのか、或いは絞り環と開閉アーム操作板を一体成形でエンジニアリング・プラスティック製にしてしまうのか、その見合わせは、結局は工程数削減 (つまり人件費抑制) や精度や耐久性の問題などから最終的に最も削減率が高いほうを採ったが為に金属製の指標値環に対して絞り環を替えてきたとみています。

つまりここでも製品化した時に「チープだ」と言われるのを極力避けたかったのではないかと思えてなりません (当初から廉価版モデルのつもりで設計していないと言う意味)。それが前述の話のとおり「新たな標準」たる憶測に至るのですが、少なくとも当時焦点距離:40mmを セットレンズとして据えてくることは大きな冒険だったハズであり、何某かの社運を架けた 命題或いは意気込みをコニカ自身が当時このモデルに抱いていたように感じられます。

↑マウント部をセットします。

↑距離環を仮止めして無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

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ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わっています。例えば、マウントアダプタ経由装着するならば、この「パンケーキ」の筐体サイズが最大のメリットになります。マウントアダプタの厚みを足しても全体の大きさはちょっとした標準レンズ並の厚みにしかなりませんから、これは取り回しの良さには相当有難いと言えるハズです。

しかも最短撮影距離45cmとそれなりに寄ることができ、開放f値も「f1.8」と明るければ決してチープ感だけに終わるモデルではないと当方は考えますね。むしろ下手なオールドレンズよりも描写性の表現性はいろいろ愉しめて使い出があると思います。

ネット上ではチープチープと囃し立てられていて可哀想ですが、それは取りも直さず当時のコニカの格付の影響もあるのではないでしょうか? 今ドキのデジカメ一眼/ミラーレス一眼などで使うなら、せめて今現在の評価として再考するくらいの器で、オールドレンズと対峙してほしいものだと常々思います。

このモデル、当方は好きです・・。

↑今回の個体にはいろいろな附属品が揃っています。純正金属製フードが附属しますが、これは「35mm用」のフードです。他に社外品ですが中古のMCフィルターと純正の樹脂製前後キャップがちゃんと附属しています。

↑光学系内の透明度が非常に高い個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。残念ながら第1群 (前玉) と第5群 (つまり後玉) の表面側に経年相応なカビ除去痕が複数残っているので (一部は順光目視できる) LED光照射するとそのカビ除去痕の周囲に極薄いクモリを伴っています。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑パッと見で後玉もご覧のようにキレイに見えるのですが (そう思って調達したのですが)、現物にはLED光照射でカビ除去痕が複数浮かび上がります。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度で確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:20点以上、目立つ点キズ:18点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
・バルサム切れ:無し (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):あり
・後玉は経年相応なカビ除去痕が複数残っておりLED光照射で極薄いクモリを伴い浮かび上がります(前玉外周附近にカビ除去痕1点有り)。
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑6枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「ほぼ正六角形を維持」しています。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度と軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人によって「軽め」に感じ「全域に渡って完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

↑絞り環には「AE解除ボタン」があります。絞り環を回していて「AE」にセットするとカチンとロックされて動かなくなりますが、フィルムカメラで使わない限り意味を成しません。解除ボタンを押せば再び絞り環が操作できるようになります (解除して絞り環操作しない限り最小絞り値f22まで絞り羽根が閉じたままを維持します)。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑附属の純正金属製フードをセットするとこんな感じです (既にMCフィルターも装着済)。オールドレンズの全体が緑色っぽく見えているのはMCフィルターを装着しているからですが、中古フィルターなので相応にキズなどが残っています。附属品は前後キャップに至るまで一応ちゃんと清掃しているので、汚れていたりで気持ち悪くありません(笑)

↑当レンズによる最短撮影距離45cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります (簡易検査具による光学系検査を実施済で偏心まで含め光軸確認は適正/正常)。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮っています。

↑さらに回してf値「f4」で撮りました。

↑f値は「f5.6」に変わっています。

↑f値「f8」になりました。

↑f値「f11」です。

↑f値「f16」での撮影です。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。さすがに最小絞り値では「回折現象」の影響が現れ始めますが、逆に言えば一段前の「f16」でもほとんど影響が無いのがたいしたものです。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。