◎ Carl Zeiss Jena (カールツァイス・イエナ) Tessar 50mm/f2.8 silver《中期型》(M42)

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今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧東ドイツの
Carl Zeiss Jena製標準レンズ
Tessar 50mm/f2.8 T silver《中期型》(M42)』です。


まず最初に、この場を借りてお礼、及びお詫び申し上げます。

月曜日から毎日1本ずつオーバーホール済でヤフオク! 出品していたのですが、当方のヤフオク! IDで出品できていなかったことをとても多くの方々にメールでご指摘頂き大変助かりました。
ありがとう御座います! そして、同時に申し訳御座いませんでした。

当方のヤフオク! IDで出品状況を確認すると出品されているのですが、娘のIDでチェックしたところ長女も次女も「お父さん、出品されてないョ」との事。

・・へッ?!(汗)

ヤフオク! に問い合わせたところ不具合が発生していたとのことで、今日の 夕方辺りには回復するらしいです。
皆さんに教えて頂かなければいつまでも「ウ〜ン落札されない」と気を揉んでいたかも知れません。
(そのうち値下げしていたかも知れませんョ?!)(笑)

今回オーバーホール済で出品するモデルは、旧東ドイツのCarl Zeiss Jena製標準レンズ『Tessar 50mm/f2.8 T silver《中期型》(M42)』ですが、前回出品したのが2017年なので2年が経ってしまいました。

はい、実は敬遠しているモデルの一つなのです・・(笑)

その理由をこれから (先に) 解説していきますが、その敬遠していた2年間の間にこのモデルが高騰していることを全く知りませんでした(笑) 2年前は2万円台前半辺りで出品しないと落札されなかったのですが、今は後半でも落札されているのですね?!(驚)

ゼブラ柄テッサーが1万円台後半までの価格帯で、黒色鏡胴モデルは1万円前後でしょうか。
テッサーも人気があるものなのですね・・。

たかがテッサー、然れどテッサー・・と言うワケですか、反省です!

  ●                

まず今回このモデルを扱うことを覚悟した事にも理由があり、それは自分の「技術スキル検定試験」のつもりだったのです。このモデルをオーバーホールした時、今まで7〜8回組み直すのが常であり規定の3回で組み上がったことがありません。

それは無限遠位置を確定させる時、適正な無限遠位置を探す際に運が良ければピタリと1回で合致しますが、たいていは前後にズレていて実写確認しないとそもそも鋭いピント面で無限遠合焦したのか否かさえ不明瞭です。

従ってたいていは少なくても3回は組み直しするのが普通なので、当方のオーバーホールでは「3回までの組み直しを規定値」としています (適正な合焦点に対して超過/不足の両方があるので都合3回組み直す必要がある)。

すると今回出品個体は累計で44本目にあたりますが、当方がこのモデルをオーバーホール済でヤフオク! 出品すると、下手すると無限遠が出ていないとクレームが来ます。ところが、今回市場動向を調べてみたところ、ヤフオク! の有名処の出品者の個体が飛ぶように落札されているではありませんか!(驚)

2年間そっぽを向いていたワケですが、余計なことを調べたが為にガックシですね・・(笑)
何故に当方が出品するとクレームになるのか? 技術スキルが低いのは百も承知ですが、それは詰まるところ信用/信頼が無いのだと言うことで納得するしかありませんね。

左写真は既に今回出品個体のオーバーホールが完了している状態を撮影していますが、マウント部を真横から撮影しています。

この時、赤色矢印で指し示したマウント部 (ネジ山も含む) をご覧下さいませ。マウントのネジ山の先がカメラボディ側方向に向かってさらに迫り出ています (突出している)。

実は、ヤフオク! で信用/信頼が高い有名処の出品者が明示しているのは、まさにこの点なのですが、逆に言えば「マウント部の突出しか明示していない」と言うのが当方が一番問題視している点です

マウント部のネジ山の先がさらに突出しているのは二の次の話で、このモデルを入手する際に最も留意する必要があるのは「M42マウントでもフランジバックが異なる旧規格である点」なのです。これが一切蔑ろにされたまま、或いは下手なことを明示して落札されなくなるのを故意に隠蔽するが為に敢えて案内せずに平気で出品しています。

今回当方が意気消沈してしまったのは、それにも拘わらずクレームが付いたり悪い評価になったりせずこのモデルが飛ぶように落札されている点です。当方が出品すると、過去には「対応しないなら悪い評価付けるよ?」とメッセージを頂いたほどにクレームが来ます(笑)

「えッ? これってもしかして脅してるの?」などと勘ぐりましたが、気が小さい当方は「対応します、対応します」と返事している始末で(笑)、何とも情けない限りです・・。

さらにマウント部のネジ山部分を拡大撮影しました。グリーンの矢印で指し示している箇所をご覧下さいませ。そもそもM42マウントのネジ切りスタート位置がご覧のとおり普通一般的なM42マウントのオールドレンズとは違っています。

グリーンの矢印で指し示した箇所のスペースがオールドレンズにより異なっており、特にこの当時のシルバー鏡胴モデルはご覧のような規格で設計されています。

フランジバック
レンズマウント面から撮像面 (フィルムカメラならフィルム面でデジカメ一眼/ミラーレス一眼ならば撮像素子面) までの距離を指しています。

M42マウントのフランジバック
:45.74mm
:45.46mm

つまり、仮にこのマウント部のネジ山の後に飛び出ている部位が問題無くネジ込めて、マウントアダプタ経由撮影したとしても無限遠合焦するハズがないのです。実際は、無限遠位置で少々甘い印象のピント面に至っていると推測できますが、おそらく「古いレンズだからこんなものなのだろう」と良い方向に考えて出品者にはクレームが行かないのでしょう。

相手が当方だとそうは済まされずに具体的なクレームとして返ってきますし、そもそもこのような話をワザワザ案内している整備者が居ないので「自分の整備が悪かったのにウソを書いて言い訳している」とまで語られている始末で、どうにもなりませんね (こうなると笑うしかありません)(笑)

↑当方が所有するM42マウントアダプタのうち、主だったモノを使い今回の出品個体の状況を解説していきます。用意したのは上の3種類です。

Rayqual製M42 → SONY Eマウントアダプタ (日本製)
K&F CONCEPT製M42 → SONY Eマウントアダプタ (中国製)
FOTGA製M42 →SONY Eマウントアダプタ (中国製)

同じM42マウント規格なのだからどれも同じに決まっている」と頑なに言い張る方が居ますが(笑)、そもそも同じ規格のマウントアダプタを複数持っている人自体が少ないので、そのような言い回しに落ち着くのも人情なのでしょう (ひたすら謝るしかない)。

  

するとそれぞれのマウントアダプタを計測した時、以下のような結果になります。M42マウントのオールドレンズのマウント面に飛び出ている「絞り連動ピン」を強制的に最後まで押し込んでしまう「ピン押し底面 (赤色矢印)」の深さを調べています (グリーンのライン)。

ピン押し底面深さ:5.91mm
ピン押し底面深さ:5.14mm
ピン押し底面深さ:無し

同じ「M42マウント」の規格なのにマウント面の絞り連動ピンを押し込む為に用意された「ピン押し底面 (内側に棚状に迫り出ている面)」の深さが違います。この中でのFOTGA製マウントアダプタだけが現在市場で入手可能な「非ピン押しタイプ」のマウントアダプタであり大変貴重です。

そこでM42マウントの規格上のフランジバックが問題になるのだとすると・・、

:45.46mm」=「マウントアダプタ製品全高」+「カメラボディ側フランジバック」

・・の計算式になるので、SONY Eマウントですから「18mm」がカメラボディ側のフランジバックです。つまり答えは「45.46-18=27.46mm」の製品全高で各マウントアダプタが作られているハズですね (下写真ブルーの矢印)(笑) ところが・・、

  

・・何とマウントアダプタ側の製品全高自体まで違っています。この時、実際に今回出品個体をマウントアダプタに装着してみると・・、

  

前述の解説のとおり、マウント部のネジ山の先に飛び出ている「突出部分が突き当たってしまう」ので最後までネジ込めないマウントアダプタが出てきます (赤色矢印)。

これらの与件から、マウントアダプタ全高だけで判断するとのK&F CONCEPT製マウントアダプタが最もフランジバック (ブルーの矢印) の許容範囲内に入るのですが、ところが最後までネジ込めないのでむしろ隙間量が多くなり無限遠合焦しません (大幅なアンダーインフ状態)。

日本製信者が多いRayqual製に至っても僅かに隙間が空いています(笑)

とろこが製品全高で見た時に完璧にフランジバックを超過してしまっている (つまりアンダーインフ状態) であるハズのFOTGA製マウントアダプタがキッチリと最後までネジ込めます。

本来、M42マウントのマウントアダプタとして考えた時に「アンダーインフ状態のどうしようもない製品」なのに、むしろ最後までネジ込める点をメリットとして逆に活用してしまうと言う逆転発想です (但しそのままFOTGA製マウントアダプタに装着してもアンダーインフのまま)。

注意深い人なら、もう気がついているでしょうか・・?
上の写真をよ〜く見ると、最後までネジ込んだ時のオールドレンズ側指標値環の基準「
マーカー位置がチグハグです。

Rayqual製では反対側に行ってしまっていますし、K&F CONCEPT製でも90度以上ズレています。ところがFOTGA製はほぼ近い位置に (つまり真上位置に) 基準マーカー「」が来ています。

当方ではこのような点にも配慮してオーバーホールしているワケですが、信用/信頼が低い為に具体的なクレームが来ます (だからどうしようもない)(笑)

そんなワケで、冒頭からイキナシ長々と解説しましたが、今回のヤフオク! 出品個体はFOTGA製マウントアダプタ装着時にピタリと無限遠合焦するようオールドレンズ内部の調整を施してオーバーホール/組み上げています。つまり使うマウントアダプタの商品全高が多い分を含め、オールドレンズ側フランジバック規格の差異を内部で調整しているワケです。

  ●                

ネットを見ると「鷲の目テッサー」或いは「鷹の目テッサー」と2つ語られていますが、鳥の猛禽類として調べると鷲も鷹も単なる大きさの相違で明確な区分けがそもそも存在しないようです。しかし、そもそも「」を使った理由が違います (認識されていない)。

以前、ギリシャの懇意にしているディーラにこの点に疑問を感じて質問したことがありますが昔も今もヨーロッパでは頂点に立つ存在として「威厳/象徴」など家紋にも使われているのはホーク (鷹) ではなくイーグル (鷲) だと返答を受けました。たまたま日本には鷲が居ないから鷹なのではないかとのことです(笑) 確かに鷹匠は聞きますが鷲匠はあまり聞きません。そしていろいろ調べると当時のテッサー広告にちゃんと「eagle-eye」と鷲が記載されていました。ホーク (鷹) ではありませんね(笑)

テッサーの歴史は相当古く、1902年にCarl Zeiss Jenaに在籍していたPaul Rudolph (ポール・ルドルフ) 氏によって3群3枚トリプレット型の発展系として開発されたのが最初です。それはネット上を見ると3群4枚のUnar型構成からの発展系との解説もありますが、既に当時流行っていた光学系が3群3枚トリプレット型だったので、純粋に時系列的な系譜から推察すればトリプレット型からの発展系と捉えるのが自然なように感じます。また第3群の貼り合わせレンズ (2枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせてひとつにしたレンズ群) 部分 (つまり後群側) は、当時ルドルフが既に開発していた2群4枚のProtar型構成から引用したとの解説が説得力があります。

当初テッサー型は大判サイズ用やシネレンズとして数多く登場していますが、一眼レフ (フィルム) カメラ用としては開放f値「f3.5」のモデルが最初になります。

その後1948年に開放f値「f2.8」として再設計されたモデルが今回出品するタイプの先代と言えます。

【シルバー鏡胴Tessar 50mm/f2.8のモデルバリエーション】
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

初期型:1948年発売
絞り環:ライン有/無一部に混在
レンズ銘板:Tまたは刻印有り
絞り羽根枚数:14枚
最短撮影距離:50cm
絞り動作:手動絞り (実絞り)
製造番号:30xxxxx 〜 39xxxxx

中期型
絞り環:ライン
レンズ銘板:Tのみ有り (王刻印無し)
絞り羽根枚数:12枚
最短撮影距離:50cm
絞り動作:手動絞り (実絞り)
製造番号:37xxxxx 〜 49xxxxx

後期型:(筐体サイズが大型化)
絞り環:プリセット絞り機構なし
レンズ銘板:T刻印無し
絞り羽根枚数:10枚→8枚/一部に混在
最短撮影距離:50cm
絞り動作:半自動絞り
製造番号:47xxxxx 〜 60xxxxx

他にも途中に以下のバリエーションが存在しています。

絞り環:プリセット絞り機構なし
レンズ銘板:T刻印無し
絞り羽根枚数:12
最短撮影距離:60cm
絞り動作:手動絞り (実絞り)
製造番号:60xxxxx〜

絞り環:プリセット絞り機構なし
レンズ銘板:T刻印無し
絞り羽根枚数:8枚
最短撮影距離:50cm
絞り動作:半自動絞り
製造番号:43xxxxx〜

光学系は当然ながら3群4枚のテッサー型ですが、この後に登場してくるゼブラ柄や最後の黒色鏡胴モデルは最短撮影距離が35cmに短縮化されている為に、光学系を再設計しています。

右図は今回バラして清掃時にデジタルノギスで計測しほぼ正確にトレースした構成図です。
(各硝子レンズのサイズ/厚み/凹凸/曲率/間隔など計測)

左写真はその光学系の仕様の相違をシルバー鏡胴 (左) と黒色鏡胴 (右) の光学系を抜き出して並べて撮影しました。

いずれのモデルもモノコーティングですが (この当時のテッサーにマルチコーティングは存在しない)、各光学硝子レンズのサイズ (厚み/曲率など) がビミョ〜に違っているのが分かると思います。


上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して円形ボケへと変わっていく様をピックアップしてみました。ちゃんとテッサーでもシャボン玉ボケを表出できますし、そもそもピント面の鋭さから被写体の材質感や素材感を写し込む質感表現能力に長けているので、ご覧のようにインパクトのある写真になりますね (シャボン玉ボケだけで甘い印象の画にはなりにくい)。

二段目
さらにトロトロボケへと変わっていく様をピックアップしましたが、ネット上の解説で案内されているシルバー鏡胴モデルの「中間調の表現が苦手」と言う話は、当方が見る限りそうとは思いません。確かに黒潰れし易いのは致し方無しとしても、中間調のダイナミックレンジはちゃんと表現できていると考えます。むしろ質感表現能力を褒めるなら、中間域の階調幅が狭ければ質感表現が写真に残りにくいので、上のような写真も撮れないハズです。

今まで数多くテッサーをバラしてきて一つだけ言えるのは、光学系を入れ替えた「ニコイチ/サンコイチ」が市場流通している懸念が非常に強い点です。するとシルバー鏡胴モデルの場合経年数の問題から第3群の貼り合わせレンズにバルサム切れ (貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態) が発生していることが多く、入れ替えられているが為に「甘いピント面」に陥っている個体を何本も見てきました。

今回の出品個体の実写をこのページの一番下に掲載しましたが、ご覧頂ければ一目瞭然でさすが「鷲の目テッサー」と言える鋭いピント面だと当方は思いますが、違いますかね・・(笑)

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。

冒頭でお話した当方自身の「技術スキル検定試験」は、ものの見事に不合格で(笑)、今回も9回の組み直しをしたので2年経っても何ら技術スキルは向上していなかったとガックシです(笑)

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。

左写真は今回の個体に実装する絞り羽根 (12枚) から3枚を並べましたが、ご覧のように絞り羽根の1箇所だけに切削箇所が残っています。
(グリーンの矢印)

つまり製産時点で絞り羽根は「枝豆の房」のようにブラブラとブラ下がったままプレッシング工程を経て、最後にキレイな女子工員さん達がパチンパチンとカットして切り取っていたことが分かります。
(いえ女子工員さん達かどうかは知りませんが)(笑)

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

↑12枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。

↑完成した鏡筒を立てて撮影しましたが、最短撮影距離が50cmなのでご覧のとおり深さのある鏡筒で設計しています。もちろん光学系第1群 (前玉) が奥まった位置に配置されている点も見逃せません。つまりテッサーはフードが無くても手を翳すだけで結構光のコントロールができたりするので助かります。

左写真は真横から鏡筒を写しましたが、グリーンのライン①までの距離 (サイズ) がモデルバリエーションの中でビミョ〜に異なっており、ニコイチ/サンコイチができません。つまり絞り環やプリセット絞り環だけを入れ替えたりすることができないので、逆に言えば絞り環/プリセット絞り環の操作性に問題を感じる個体は入れ替えられている懸念を捨てきれません。

↑絞り環を鏡筒の下から正しい位置までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと正しく絞り環操作できません。絞り環の下部分に刻まれている箇所は「プリセット絞り値キー ()」で、ここにカチカチとプリセット絞り環のキーが入るので設定できる仕組みです (赤色矢印)。

↑プリセット絞り環を組み込んでこれで鏡胴「前部」が完成です。この当時のオールドレンズに対して「プリセット絞り機構の操作」を間違った表現で解説している人が居ますが、正しくは以下になります。

プリセット絞り環側の「」を設定したい絞り値に合わせる作業を「プリセット絞り」と呼びます (マーカーを合わせる作業)。
プリセット絞り環をマウント側方向に引き戻す (ブルーの矢印①)。
そのまま設定絞り値まで回す (上の写真ではf5.6:)
設定絞り値で指を離すとカチンと填る ()
すると開放f値「f2.8〜設定絞り値間で絞り羽根開閉ができる。
 (グリーンの矢印④)

これを変な解説をしていて(笑)、設定絞り値から開放側に回すと絞り羽根が閉じる「逆の動き方をする」と言っている人が居ますが違いますね(笑)

上の写真の時点では絞り羽根は開放状態を維持しています。そこでプリセット絞り環を回して設定絞り値にセットします ()。しかしピント合わせがまだ済んでいませんから、ここで距離環を回して「開放状態のままピント合わせ」します。最後にシャッターボタン押し込み前にプリセット絞り環を回して絞り羽根を閉じると「ちゃんと設定絞り値まで絞り羽根が閉じている」ワケです。

何ら逆の動き方ではなく、至極自然な操作性になっています。これは写真を撮る動作 (行為) が頭の中から離れてしまったまま、単にオールドレンズの動きだけを考えているから、このような変な解説になっています (実はその人はプロの写真家だったりする)(笑)

なお、プリセット絞り値を設定した後に、再び開放f値「f2.8」に戻す時は、必ず先に絞り環を回して「」の位置に開放f値「f2.8」を合わせてからプリセット絞り環 (つまり下側の環/リング/輪っか) をの操作でマウント側に引き戻しながら「」を持ってきて合わせます (指を離すとカチッと填ります)。すると開放f値「f2.8」から動かなくなり、絞り羽根は完全開放したままを維持します。

↑ヘリコイド (オス側) を固定します。

↑こちらはマウント部 (M42マウント) です。

↑距離環 (ヘリコイド:メス側) を無限遠位置のアタリを付けた正しい場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

この後に完成している鏡胴「前部」をセットして無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にレンズ銘板をセットすれば完成です。

修理広告     DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑今回2年ぶりに扱いましたが (累計44本目)、残念なことに当方の技術スキルは2年前から向上しておらず、相変わらず低い技術スキルのままでした(笑)

今回の個体はフィルター枠に打痕修復箇所がありますが、当方の手持ちに⌀ 40.5mm径のフィルターが無いので着脱の確認ができていません (事前告知しているのでクレーム対象としません)。一応、レンズ銘板をネジ込むことができているので問題無いと思いますが、少々装着時にはコツがいるかも知れません (時計と反対方向に回してネジ山が入るのを確認してからネジ込む必要あり)。

↑しかし、シルバー鏡胴モデルとして考えたら「こんなにクリアなのか!」と言うほどに光学系内の状態が良く、もちろんLED光照射してもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。

目立つ気泡の他に極微細な気泡も複数あるので、一見すると「塵/埃」が残っているように見えますが清掃しても除去できません。この当時の光学メーカーは、光学硝子材精製時に一定の時間規定の高温を維持し続けた「」として「気泡」を捉えており「正常品」として出荷していました (写真への影響なし)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑何しろこの貼り合わせレンズである光学系第3群 (つまり後玉) のコーティング層経年劣化に伴う薄クモリやカビ除去痕が多いと一番気になりますが (テッサーで意外に多い)、今回の個体は目立つ微細な当てキズが2点あるものの驚異的な透明度を維持してくれていたのでラッキ〜でした。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(順光目視で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:13点、目立つ点キズ:10点
後群内:19点、目立つ点キズ:13点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内)
・バルサム切れ:無し (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:あり
(後玉に微細な目立つ当てキズ2点あり)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内には「極微細な気泡」が複数ありますがこの当時は正常品として出荷されていましたので写真にも影響ありません(一部塵/埃に見えます)。
光学系内の透明度が非常に高い個体です
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑光学系内の極微細な「気泡」を撮影使用としましたが撮れませんでした。

↑12枚の絞り羽根も油染みが除去できてプリセット絞り環/絞り環共々確実に駆動しています。ワザと故意に絞り環側のトルクを「粘性重め」のグリースを使いトルクを与えています (スカスカ感が無くなるようにしている)。逆にプリセット絞り環側の操作性は軽い操作でバッチリ希望する設定絞り値にカチッと填るように仕上げました。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。光沢クロームの「光沢研磨」も施したので、まるで当時のような艶めかしい眩い光彩が戻っています (触ると指紋の痕が残るので気になるくらい)。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度と軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人によって「重め」に感じ「全域に渡って完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています(一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
・フィルター枠の一部に変形保証箇所があります。
手持ちに⌀40.5mm径のフィルターが無いので着脱確認ができていません。一応レンズ銘板をネジ込む際に時計の針と反対方向に回しながらネジ込み開始位置のアタリ付けをすればちゃんとネジ込めたので問題無いと思いますが少々キツめです(事前告知している為クレーム対応しません)。

↑この当時のシルバー鏡胴が整備済で流れる時たいていは「白色系グリース」が塗布されているので、いわゆる「擦れる感触を伴う無機質なトルク感」なのですが、今回の個体をご落札頂くご落札者様だけにはご納得頂けると思いますが、非常にシットリした操作性で楽にピントの山を掴むことができる扱い易い操作性に仕上がっています。

と言うのも、このシルバー鏡胴テッサーはピントの山がほんの一瞬なので、ピント合焦点の前後で行ったり来たりが無機質なトルク感だと扱いづらく感じます。その時に (おそらく) シットリした操作性の有難味を強く感じられるのではないでしょうか。そんなことも期待しながら (ニマニマしながら) オーバーホールした次第です(笑)

なお、冒頭解説のとおりFOTGA製マウントアダプタに限定して無限遠位置調整しているので他のマウントアダプタの場合にはアンダーインフに陥る懸念があります。ご落札後のメッセージでご請求頂ければ (当方にしてみれば赤字ですが) 別途マウントアダプタをご用意します (500円送料加算願います)。

ご用意できるマウントアダプタは以下の2種類のみです。

M42 →SONY Eマウントアダプタ
M42 →m4/3マウントアダプタ

残念ながら富士フイルム「FX用」マウントアダプタが出回っていないのでご用意できません。また差額分頂ければEOSM用でも構いません。その辺は融通利かせるのでメッセージでご指示下さいませ。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

最後にもう一度ご案内しますが、このモデルはM42マウントの規格自体が違うので、単純に最後までネジ込めるからとFOTGA製マウントアダプタにそのまま装着しても、もともとフランジバックが違うので無限遠合焦しません (甘い描写のまま)。逆に言えば、FOTGA製マウントアダプタに装着すればOKなどと落札後に案内している一部ヤフオク! 出品者が居ますが、このモデルはそのままではアンダーインフ状態なので甘いピント面の無限遠位置なのは変わりません。マウントアダプタ側の問題もありますが、オールドレンズ側にも仕様の相違がある点をシッカリとリスクとして認識するべきです

当方がこのモデルを敬遠している理由は、純粋に調整が面倒くさいからだけです(笑)

↑当レンズによる最短撮影距離50cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります。しかし簡易検査具による光学系の検査を実施しており光軸確認はもちろん偏心まで含め適正/正常です。

開放でこれだけ鋭いピント面が出ていれば、さすがに「鷲の目テッサー」だと感心したのですが、当方の褒めすぎでしょうか(笑)

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。

↑f値「f8」に変わっています。

↑f値「f11」になりました。

↑f値「f16」です。

↑最小絞り値「f22」での撮影です