◎ KMZ (クラスノゴルスク機械工廠) ЮПИТЕР-8 (JUPITER-) 5cm/f2 Π silver《初期型》(L39)

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今回はオーバーホール/修理ご依頼分に関するご依頼者様や一般の方々へのご案内です (ヤフオク! 出品商品ではありません)。
写真付解説のほうが分かり易い事もありますが、ご存知ない方向けも踏まえ今回無料掲載しています (オーバーホール/修理の行程写真掲載/解説は有料です)。
オールドレンズの製造番号部分は画像編集ソフトで加工し消しています。


ロシアンレンズを初めてご覧になる方のために基本的な前提を話しておきます。

当方では「ロシアンレンズ」と呼んでいますが、第二次世界大戦後の旧ソビエト連邦 (ソ連) 時代から現在に至るまでに生産されていたオールドレンズの総称として使っています。

ソ連 (現ロシア) は社会主義体制国家でしたから、戦後1949年のCOMECONを基に旧東ドイツを初めとする東欧圏の技術と市場を手に入れ、中央集権型の計画経済 (統制型経済体制) を推し進めていました。私企業の概念を廃した国営企業 (旧東ドイツでは人民所有企業/VEB) の体系として、5カ年計画に則り全ての産業工業を国家管理していたようです。

従ってオールドレンズに於いては、ひとつのモデルを複数工場で並行生産しており、どの工場で生産されたモデルなのかを表すためにレンズ銘板に「生産工場を表すロゴマーク」を刻印しています。実際には光学系の設計だけが同一で、それ以外は各工場の設計に任されていたようなので、同じモデル銘でも異なるカタチのタイプが混在していますし、マウント別に違う工場で生産している場合もあるようです。

今回のモデル『ЮПИТЕР-8 (JUPITER-8) 5cm/f2 Π silver (L39)』は、KMZ (クラスノゴルスク機械工廠) での生産がメインなのですが、一部に旧レニングラード (現サンクトペテルブルク) にあるGOMZ (Gosudarstvennyi Optiko Mekhanicheskii Zavod) 工場 (右のロゴ) で、ベルギーのブリュッセル万国博覧会でグランプリを受賞した記念モデルを生産していた時期があります (1958年のみ)。

ちなみにレンズ銘板の「ЮПИТЕР-8」はロシア語のキリル文字なのでラテン語/英語表記すると「JUPITER-8」になりますが、キリル文字 (ロシア人) の発音は「ユピテル-ヴォーシィミ」になるので市場流通品の中にはユピテル銘で呼ばれている場合もあります。

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【モデルバリエーション】
オレンジ色文字部分は初めて変わった仕様の要素を示しています。

初期型1951年
生産工場:KMZ
距離環レバー (指掛け):有り
レンズ銘板:5cm表記
筐体色:シルバークロームメッキ


中期型1957年
生産工場:KMZ (一部にGOMZ)
距離環レバー (指掛け):無し
レンズ銘板:5cm表記、50mm表記
筐体色:シルバークロームメッキ


後期型1968年
生産工場:KMZ
距離環レバー (指掛け):無し
レンズ銘板:50mm表記
筐体色:シルバークロームメッキ

バリエーションは細かく見ていくとさらに細分化したバリエーションが存在します。
この後は筐体が黒色鏡胴に変わり終焉を迎えますが、最も近年に生産された個体としてはKMZ製で2002年の製造番号を刻印した個体が市場に流れていますから相当な息の長さです。

今回扱う個体はモデルバリエーションの中で見ると距離環に指掛けを備えた「初期型」のタイプになります

レンズ銘板には「Π」刻印がありモノコーティングを表しますが、キリル文字の「Πокрытие (バークレィチア)」の頭文字を採っているだけで、ラテン語/英語表記では「P」になり「Pコーティング」とも呼ばれます (英語のcoatingをロシア語変換するとヒットします)。

そもそもこのモデルは戦前旧ドイツで1932年に登場したレンジファインダー式フィルムカメラ「CONTAX I」或いは1936年の「CONTAX II」用に用意されたCarl Zeiss Jena製交換レンズ群の一つ「Sonnar 5cm/f2」の光学系設計を当時のソ連 (ソビエト連邦) が狙っており、大戦後Carl Zeiss Jenaから接収した工場設備や資材、設計諸元書、或いは設計技師などからの情報をもとに、1948年にGOI光学研究所 (Gosudarstvennij Opticheskij Institut) で再設計したのがロシアンレンズとしてのスタート地点になります。

GOIのプロトタイプは「まんまコピー」でSonnar 5cm/f2と近似した筐体デザインでしたが、そのまま正式採用が決まり量産向けの設計見直し後KMZに引き継がれ「ЗК 5cm/f2 Π ЗОРКИЙ (M39)」として1948年から製産が始まります。このモデル銘はラテン語/英語表記にすると「ZK 5cm/f2 Π ZORKI (M39)」になります。従って市場には極少数の「ZKモデル (M39)」が流れています。

1948年時点の光学系はコピー元Carl Zeiss Jena製Sonnar 5cm/f2と同じ3群6枚のゾナー型構成でしたが (右図)、翌年1949年にはSonnarとは異なる鏡胴デザインに一新し、ついに1951年から「ЮПИТЕР-8 5cm/f2 Π (M39)」としてJUPITER銘を使い始めました (この初期型は1960年まで製産が続きます)。今回の個体「初期型」も光学系構成は右図を踏襲しているので貴重です。

そしてその後1968年に第1群 (前玉) の曲率や厚みなども含め3群全てに渡り光学系の再設計が行われて右図のように変わっています。

なおマウント種別は当初の「M39:Zorki版」の他「L39:Leica版」も追加されていますが、マウントのネジ部規格上は「ネジ外径:39mm x ピッチ:1mm」と同じですが、それぞれフランジバックが異なるので注意が必要です。

右図はLeica版L39マウントのGOI諸元書から引用しましたが、フランジバックが「28.8mm±0.02」と表記されています (JUPITER-8)。

一方左図も同じGOI諸元書からの引用ですが、別モデルのマウント種別「M39:Zorki版」でフランジバックは「45.2mm±0.02」です。

つまりマウントのネジ種が同一ながらもフランジバックが違うので、そのまま互いに付け替えて装着しても規格が違えばピンボケのまま合焦しないので注意が必要なのです。特にこの「M39/L39」を混同して表記しているサイトやオークション出品などが非常に多いですね。

   
   

上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端からシャボン玉ボケが円形ボケを経て背景ボケへと変わっていく様を集めてみました。特に収差がそれほど改善されていない光学系の設計なので円形ボケはその影響をモロに受けますし口径食も出ていますが、条件が揃えばキレイな真円のシャボン玉ボケも表出できます。

二段目
このモデルでネット上の解説を見ていると、ピント面のエッジが繊細だと案内されている場合と骨太と言われる場合があります。何を以てしてピント面のエッジが細いのか太いのかの判断に係りますが、本家Carl Zeiss Jena製Sonnar 5cm/f2の描写性を比較するとさらに繊細感を強く感じるピント面の表出なので、当方では基本的にこのモデルのピント面は「骨太のエッジ」表現と捉えていますし、強いて言えばロシアンレンズの特性として多くのモデルで骨太なエッジを伴うピント面だったりします。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。鏡胴が「前部/
後部」に二分割する構造を執っていますが、内部構成パーツ点数は少なく簡素なレベルです。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。ロシアでは国土に氷点下40度以下に及ぶ極寒地帯を含むので、オールドレンズの金属凍結を防ぐ目的から鏡筒内部 (特に絞りユニット) にまでグリースが塗布されています。理由は金属凍結により絞り環を回そうとチカラを入れた時、その掛かったチカラは最終的に絞り羽根の「キー」に集中してしまう為、キーの破断を防ぐ意味から凍結しにくいグリースを塗布しています。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

 位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

 開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

↑9枚のカーボン仕上げの絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させますが、日本なので金属凍結に及ぶ状況はごく限られた条件ですから、鏡筒や絞りユニット内部にはグリースを塗布しません。逆に言えばロシアンレンズで油染みが生じるのは鏡筒内部/絞りユニットにグリースを塗布している以上「必然」とも言えますね。そのまま油染みを放置プレイするといずれ「キー脱落」に至り、それはそのまま「製品寿命」と言う結末を迎えます (脱落したキーは二度と打ち込めません)。

↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。光学系がゾナー型ですから3群しか無いのでたいして深くありません。

↑絞り環用のベース環をネジ込みます。当初バラす前のチェック時点で絞り環を回すと「引っ掛かり」を感じる箇所が数箇所ありました。ザラザラしたトルク感の印象もありましたが、バラしてみると過去メンテナンス時に塗られた「白色系グリース」が既に揮発してしまいスカスカ状態で、且つ何かの微細な金属片がネジ山に数多く入っていました (砂ではない)。バラしながら調べていくとフィルター枠を締め付け固定しているイモネジ (ネジ頭が無くネジ部にいきなりマイナスの切り込みを入れたネジ種) 2本のうち1本が外れて絞り環用ベース環の中に落ちてしまったようで、ネジ山の中で擦れて粉々に砕けてしまったようです。

ロシアンレンズで使われているイモネジは筐体構成パーツと同じ「アルミ合金材」なので非常に軟らかく簡単に破断してしまいます。また内部のベース環や筐体外装に至るまでとても薄い肉厚のアルミ材削り出しですから、下手にイモネジを締め付け過ぎると膨張してしまい不具合を生じます (もちろん締め付けが緩くてもダメ)。

今回のオーバーホールでは仕方ないのでイモネジを1本調達しましたが、非常に微細なのでなかなか手に入りません (胡麻粒の1/5くらいの大きさ)。

↑光学系は後群側には締め付け環が存在しキッチリ締め付け固定できますが、前群側は2つの群 (第1群前玉と第2群の貼り合わせレンズ) をバラバラと落とし込んで最後にレンズ銘板を兼ねるフィルター枠を締め付けてやっと固定されます。この時イモネジ用の下穴が用意されている場所までフィルター枠をキッチリネジ込まなければ光学系前群側の光路長がズレてしまい「甘いピント面」に堕ちる原因に至ります。

↑絞り環をイモネジ3本で締め付け固定します。絞り環用ベース環のネジ山が前述のとおり微細な金属片で削れていたりするのでグリースを塗りましたが、基本的に手動絞り (実絞り) の設計なので (つまりクリック感が無いので) たいして重くできません。スカスカとまではいきませんが、かと言って適度なトルク感を確保しているワケでもありません。設計上の問題なのでご留意下さいませ。

↑こちらはヘリコイド (オス側) になりますが、よ〜く観察するとネジ山部だけが無垢のアルミ材削り出しで露出しており、それ以外の部分は「梨地塗装」されています (上の写真ダークグレー色部分)。梨地塗装は微細な凹凸を伴う塗装ですからグリースの経年揮発油成分が他の箇所に廻らないよう設計段階で既に配慮されていることが判ります (微細な凹凸を用意することで油成分が垂れて広がりにくいよう処置している)。

何を言いたいのか?

つまりヘリコイドのネジ山にグリースをドップリ塗ってしまうのは、設計諸元とは逆の所為である点に気がつかなければイケマセン。オールドレンズは単にバラすだけではなく、バラしながらもそれぞれの構成パーツを注意深く「観察と考察」することで本来の目的/注意がシッカリ見えてきますからオモシロイですね(笑)

逆に言えば「梨地塗装」していないヘリコイドだったらグリースの塗布量を多くしても良いと考えて設計していることになります。或いはこれはソックリそのままグリースの粘性」の相違にも繋がる話なのでグリース種別の他、粘性にも留意して工程を進めなければイケマセン

↑指標値環をセットします。

↑完成している鏡筒「前部」を組み込むとこんな感じになります。

↑こちらはヘリコイド (メス側) になります。ヘリコイド (オス側) のネジ山部長さに比して短いのがメス側なので、自ずと鏡筒の繰り出し量が多いことが判ります。例えばこれが逆だったら、距離環を回す時のチカラが少なくて済むことになりますね。ヘリコイド (オスメス) をチェックしただけで距離環を回す時のトルク調整、ひいては使うべきグリースの種別と粘性まで決まってくる次第です

↑距離環用ベース環をセットします。

↑マウント部を組み付けた状態です。この時点で既に「直進キー」と言うパーツが組み込まれているのでヘリコイド (オスメス) が駆動する際のトルクが決まっています。直進キーとは距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目のパーツなので、用意されている「」を直進キーが行ったり来たりとスライドすることで回すチカラが直進動へと変換されそのまま伝達される仕組みです。

ところが一般的なオールドレンズでは「直進キー」は両サイドの1本ずつ合計2本を使いますが、このモデルは1本だけです。つまりその1本だけの「直進キー」が経年の使用で擦れ減ってしまうと即「ヘリコイドのガタつき」或いは下手すれば「トルクムラ」に繋がってしまいます (両サイドに1本ずつ用意することでそれらの問題を互いに相殺させることができるから一般的に2本備わることが多い)。

これがロシアンレンズの「結果オーライ」の世界なのですが(笑)、設計段階から経年による摩耗のことなど一切考慮していないのが判ります。

例えば製造番号の先頭2桁「00xxxxx」で始まる製産個体は、当時の共産党幹部への頒布用だったので相当気合いを入れて製産していたハズですから、市場でゲットするなら製造番号をチェックするのも一手ですね(笑) ちなみに製造番号「0xxxxx」はまさに2000年からの個体に付番されていた製造番号ですから意味が違います (単なるシリアル値)。

この後は距離環をセットして無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行えば完成です。

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ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑ライカ判「L39」マウントの『ЮПИТЕР-8 (JUPITER-8) 5cm/f2 Π (l39)』です。この個体は、レンズ銘板がロシア語のキリル文字のまま刻印ですから、自国内も含め東欧圏への輸出分だったかも知れません (西欧圏への輸出品はラテン語/英語表記でJUPITER銘になっていた)。

なお、ロシアンレンズはほとんどのモデルで製造番号先頭2桁が製産年度を表しています (一部モデルは違います)。今回の個体は1954年の製産品でした。

情報ではロシアのモスクワから少々内陸側に入ったペルミ地方からサンクト・ペテルブルグ (旧レーニングラード) まで航空便で1,500kmを移動し、そこからさらに日本までやはり航空貨物で7,400kmを旅したので、凡そ1万キロに近い距離を移動したことになります。

なお左写真は当初バラす前の状態です (入手された際の掲載写真) から、はたしてどのくらいキレイに変わったのでしょうか?(笑)

↑このモデルの光学系はコーティング層が経年劣化でクモリが生じていたり、或いはコーティング剥がれなどが生じている固体が多く、今回の個体も第3群側 (絞りユニット側) のΠコーティングに一部ハガレが生じています。もちろん第1群前玉も経年相応に擦りキズやヘアラインキズがありますが、むしろ良い状態を維持している個体です。逆にコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリはLED光照射でも皆無ですからラッキ〜でした。

↑第3群の絞りユニット側のΠコーティングに一部ハガレが生じているので、一見するとキズのように見えますがLED光照射で内部をチェックするとこれらのキズ状に見える部分は一切視認できません。つまりコーティング層のハガレ部分だと言えます (実際清掃時に確認しているのでコーティング層ハガレなのは間違いないのですが)。

オーバーホール/修理を承っていると (ヤフオク! でも) 何でもかんでも目で見た時にキズに見える部分に対してクレームしてくる人が居ますが、光学硝子面にある物理的なキズはLED光照射でも必ず視認できます。逆に言えばLED光照射で見えなくなってしまった、或いは見る角度によって見えたり見えなくなったりするのは「コーティング層のハガレ」です (硝子面のキズではない)。

ではこのコーティング層のハガレが写真に影響するのかと言えば、相当に領域 (面積) が剥がれていない限り入射光はそのまま透過するので影響を視認することはまずできません。コーティング層が点状に複数剥がれている箇所を透過してきた入射光がはたしてどの程度反射や収差、或いはハレに影響して出てきているのか具体的に写真を見て判断できる方はそれほど多くないと思います。逆に言えば、光学設計上の収差やハレ切りとの相違を明確に指摘できる方はいらっしゃらないでしょう。つまりあくまでも目で見た時の受け取り方の問題しか残らない話なのですが、意外とこのクレームが多かったりします(笑)

今回の個体の第3群Πコーティング層のハガレは写真には一切影響しません (第2群側のΠコーティング層にはハガレ皆無)。

↑9枚のカーボン仕上げの絞り羽根は当初バラした時点では相応の油染みが生じていましたし、一部には赤サビも発生していました。油染みは一切残りませんが赤サビは可能な限り除去するしかできません (可能な限りカーボンを残したままにする為)。

それよりも重要なのは絞り羽根のカタチであり、絞り羽根の表裏に打ち込まれている「キーの垂直度」だったりしますから、そちらの調整如何で絞り羽根が閉じていく際のカタチが歪になったりします。基本的に「キー」をイジるのは危険なので (将来的な脱落の原因を作りかねないから) 触れませんが、絞り羽根のカタチはチェックできます (水平かどうかなど)。その調整を1枚ずつ施すと上の写真のようにほぼキレイな円形絞りに戻ります。

従って、希に「絞り羽根の汚れ」を指摘される方がいらっしゃいますが、それは年数を経ている以上改善のしようがありません (酸化/腐食を元に戻すことはできないから)。それが気になる方は残念ながら心の健康には悪いのでオールドレンズは使わないほうが良いと思いますね(笑)

↑塗布したヘリコイドグリースは黄褐色系グリースの「粘性軽め」を塗りましたが、前述のとおり「直進キー」の経年摩耗が進行している為に僅かな「トルクムラ」が生じており、その影響から距離環を回すトルクが「重め」です。一番軽い粘性のグリースを塗っていますが、そうは言ってもロシアンレンズに使えるグリース種別は限られるので当方ではこれ以上改善できません。申し訳御座いません・・。

従って距離環に用意されている「指掛け (ツマミ)」を保持して、ツマミだけで回そうとするとチカラの伝達時に「直進キー」の問題で影響が出てしまい余計に重いトルクに至ってしまいます。むしろ距離環のローレット (滑り止めジャギー/ギザギザ) 部分を保持して普通のオールドレンズ同様に操作頂くほうが軽いチカラだけでピント合わせできます。

一応、当初バラす前のチェックでガタつきが発生していたヘリコイド (オスメス) の問題は「直進キー」を調整したので最低レベルまで減っていますが、そもそも「経年で直進キーが摩耗してしまった」のが根本原因なのでこれ以上ガタつきも低減できません (半分程度まで低減しています)。申し訳御座いません・・。

↑第3群のΠコーティング層のハガレがあるものの、光学系の状態がとても良い個体なので (透明度が非常に高い) 良かったと思います。欲を言えば「直進キー」の状態が残念でしたが (もう少し軽いトルク感に仕上げたかった) 当方の技術スキルの低さ故と受け取りご勘弁下さいませ。申し訳御座いません・・。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。また一応「距離計連動」の調整も当初位置で合致させているのでほぼ正確です。

絞り環の操作性は改善されています (引っ掛かり無し)。筐体外装は洗浄時に刻印指標値が全て褪色してしまったので当方にて視認性アップの為に「着色」しています。また一部イモネジがバカになっていたので調達して代用しました (フィルター枠固定用1本と絞り環1本/距離環1本の計3本)。

まだグリースを塗ったばかりなので、馴染んでくればもう少し軽い操作性になると思います。

当初バラす前の状態と比べるとどうでしょうか? 少しはキレイになって操作性も向上したでしょうかね・・。

↑この個体にはエクステンションのセットが附属していました。ライカ判「L39」マウントのエクステンションは初めてでした(笑) それぞれ「8mm/15mm/26mm」の3種類があるので6通りで光路長を延伸できますから、接写撮影時に威力発揮です! 特にこのモデルは最短撮影距離が1mなのでエクステンションは有難い附属品かも知れませんね (一応エクステンションも清掃済でしかも磨きいれ済なのでキレイで気持ち悪くないです)。

他に金属製 (シルバー) の被せ式前キャップと汎用樹脂製後キャップが附属しています。

↑当レンズによる最短撮影距離1m付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f4」で撮りました。

↑f値は「f5.6」に変わっています。

↑f値「f8」です。

↑f値「f11」になりました。

↑f値「f16」です。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。長い期間に渡りお待たせしてしまい大変申し訳御座いませんでした。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。