◎ Ernst Leitz Wetzlar (ライカ) Hektor 13.5cm/f4.5 black(L39)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます

今回の掲載はオーバーホール/修理ご依頼分のオールドレンズに関する、ご依頼者様や一般の方々へのご案内ですのでヤフオク! に出品している商品ではありません。

写真付の解説のほうが分かり易いこともありますが、今回に関しては当方での扱いが初めてのモデルでしたので、当方の記録としての意味合いもあり無料で掲載しています。
(オーバーホール/修理の全行程の写真掲載/解説は有料です)
オールドレンズの製造番号部分は画像編集ソフトで加工し消しています。


当方にとってライカ製オールドレンズはどんなモデルも高嶺の花ばかりなので、ほとんど知識がありません(笑)
このモデルは6年程前に一度オーバーホールしているのですが、今回届いた個体はまた違う 内部構造をしておりバラすのに四苦八苦・・(笑)
さらにオーバーホール工程の途中では自らの思い込みから単純な工程でハマってしまい2時間かけてクリアすると言う醜態を演じ、つくづく「どうしてこんなにスキルが低いんだろ・・」と落胆してしまいました。オーバーホールを始めてからもう7年も経っているのに・・です(笑)

今回のオーバーホール/修理では「光学系内にカビ/キズ/クモリあり」「ヘリコイドが重い」と言うご依頼でした。

【当初バラす前のチェック内容】
 距離環を回すトルクが非常に重くピント合わせできないほど。
光学系内に全面に渡るクモリやカビの発生を確認。
 バラす前の実写確認でコントラストが低下しているもののピント面も甘い印象。

【バラした後に確認できた内容】
附属のフィルターがフィルター枠から外れず一緒に回ってしまう。
鏡胴「前部/後部」すべてが完全固着しておりバラせない。
絞り羽根のサビ発生/絞りユニットの酸化により絞り羽根が外れない。

   
   

上の写真はFlickriverで、このモデルの実写を検索した中から特徴的なものをピックアップしてみました。
上段左端から「玉ボケ・円形ボケ①・円形ボケ②・背景ボケ」で、下段左端に移って「空気感・暗部・動物毛・逆光」です。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)

シャボン玉ボケの表出は苦手のようですがキレイな円形ボケや玉ボケは得意みたいです。また下段左端1枚目の写真でオドロキましたが「空気感」の表現性にビックリです。カメラボディがSONYのNEXですから、それでこれだけ表現できるのは光学系の素性の良さではないでしょうか・・。

光学系は3群4枚のヘクター型です。このモデルの解説や光学系の描写性についてはネット上に優れた解説がたくさんあるのでそちらをご参照下さいませ。

今回の個体は・・、

① 第1群:表裏に薄いクモリ/カビ発生
② 第2群:表裏にカビの発生
③ 第3群:表裏に全面に渡り薄いクモリ/カビ発生

・・とほとんど光学系は致命的な状態でした。特にバラす前の実写確認ではコントラスト低下を招いているだけではなくピント面の鋭さもライカ製オールドレンズにしてはどうかと感じてしまうほどに甘い印象でした。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。バラしてみれば (上の写真だけ見れば) 内部構造は簡単な部類に入るように見えますが、当方にとっては完全 解体するのに普段より時間がかかったほど難解でした (恥ずかしい・・)。

ッて言うか、その程度の技術スキルなのだと今回も思い知らされたワケです。

↑上の写真は第3群 (後玉側) を当方による「硝子研磨」で磨いている最中を撮影しました。

実は上の写真は「鏡筒」なのです (後玉側方向から撮影している)。このモデルは鏡胴「前部」と「後部」に二分割方式なので鏡胴「前部」は単に回せば簡単に外れます。そこまではOK。 ところがそこから先がアウトでした・・(笑)

光学系第1群〜第3群までを外すのが何をしてもビクともしない。そもそもライカ製オールド レンズの場合は光学系の締め付けが非常に硬いことが多いのですが、今回の個体は専用工具
(2種類あり) を使っても全く歯が立たない・・。

1時間ほどあ〜だこ〜だ挑戦した後に諦めて「加熱処置」を施しました。第1群〜第3群全てを外すたびに「加熱処置」が必要と言う相当な固着です。この「加熱処置」の優先順位が最後になるには理由があります。

加熱しているワケですからチンチンに熱くなっており素手で触れば火傷します。専用工具を 併用しつつ締め付け環を回して外すワケですが、溶剤を何回も流し込みながら「これでもか」と言わんばかりに目一杯チカラを込めて回します。ちょうど両手をグーの状態にしてくっつけて思いっきり互いにチカラを入れて押し合うような感じです。

当方は過去に両肩を痛めており、この締め付け環を思い切りチカラ任せで回して外す作業が 怖いワケで再び痛みが生じると数日間作業になりません。今回は鈍い痛みが残る程度で激痛の数歩手前辺りで3つの群をバラすことができました (良かった・・)。

話が反れましたが、バラした各群のカビを除去しますがカビ除去痕と薄いクモリがどうにも なりません。このままでは恐怖感と闘いながらせっかくバラしたのに意味がありません。仕方なく「硝子研磨」の工程に入ったワケです (今回のご依頼者様は本会員様なので執るべき処置は全て実施します)。

硝子研磨」なので今度は専用具を使って思いっきり擦るワケです・・(笑)
再び3つの群をチカラいっぱい作業しました(笑)

↑今度は鏡筒を前玉側方向から撮影しています。鏡筒最深部に絞りユニットの「位置決め環」があり、その背後に光学系第3群 (つまり後玉) が位置しています。

当初バラした時に15枚の絞り羽根のうち半分近くが外れません・・注意深く1枚ずつ外していくと最後に4枚だけがどうしても外れません。絞り羽根には経年の赤サビが生じていますが、上の写真赤色矢印の「位置決めキーが入る穴」まで何と錆びついていました(驚)

絞り羽根は表裏に「キー」と言う金属製の突起棒が打ち込まれており一方が「位置決めキー」で絞り羽根が刺さるキーになり、もう一方が「開閉キー」で位置決めキーを軸にして絞り羽根の角度が変化して開いたり閉じたりする際のキーです。

上の写真はその「位置決めキー」が入る穴なので、ここがキツイと近い将来キーが脱落して「製品寿命」に至ります。仕方ないのでこの穴の内側も「磨き研磨」しました (滅多にやりませんが)(笑)

↑無事に15枚の絞り羽根がスムーズに開閉動作をするように改善できました。絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成したところを撮影していますが赤色矢印の1枚だけ色が違います。表裏を間違えたかとチェックしましたが正しく組み付けられています。どうしてこの1枚だけ色が違うのか不明です。

↑完成した鏡筒に絞り環を組み付けます。同時に絞り値が刻印されている指標値環もセット しますが、指標値環を固定する位置はネジが1本存在するので決まっています (赤色矢印)。
それに対して絞り環のラインがピタリと各絞り値の場所に一致しなければイケマセン。

↑絞り環には両サイドにネジが1本ずつ入り絞りユニットと連結しています (赤色矢印)。上の 写真では手前のネジの他に反対側にもう1本ネジがあります (赤色矢印)。

ここで2時間もハマったのです(笑) 何のことはない難しくもない工程なのに・・です。

絞り指標値の「f4.5」に絞り環を合わせると最小絞り値側の「f36」の位置が合致しません。逆に最小絞り値側「f36」に合わせると今度は開放側の位置が合いません (絞り羽根が完全開放してくれない)。

当初バラす前の時点では正常に絞り羽根は駆動していましたし開放〜最小絞り値までピタリと一致していました。

「???」

絞り値が刻印されている指標値は1本のネジで締め付け個体なので正しいハズです。もう一度絞り羽根を外して絞りユニットの組付けをやり直したり、絞り環の停止位置を変更したり・・あ〜だこ〜だ2時間やって閃きました!(笑)

何と絞り環に刺さっている両サイドのネジは「直径上に位置していなかった」のです(笑)

普通一般的にオールドレンズで両サイドにネジが刺さる場合、直径上に位置するので互いに180度反対の場所になります。ところが今回の個体はほんの僅かに位置がズレていたのです。つまり絞り環の停止位置をミスっていたワケであり、そもそも反対側にネジがあると思い込んでいたのが間違いでした・・。

こんな初歩的なミスで2時間もガチャガチャこね回していたとは・・何と恥ずかしいことか!
あぁ〜、まだまだスキル低すぎ・・(泣)

↑スッカリ元気が無くなってしまったものの鏡胴「前部」は無事に完成しました(笑)

上の写真赤色矢印はフィルター枠なのですが、附属品のフィルターがキツく締め付け過ぎていたようで外れませんでした。フィルターとフィルター枠とが一緒に回ってしまい外れてしまいました。専用工具を使ってフィルターを取り外しましたので、今度はフィルター装着時は軽めに締め付けて下さいませ。フィルターもフィルター枠も互いに薄いので一旦咬み合ってしまうとなかなか外せません。

↑第1群〜第3群までの「硝子研磨」の甲斐あって光学系内の透明度が高い状態に戻りました。

↑前玉も第2群側にもカビ除去痕が僅かに残っておりコーティング層を浸食しています。点状のカビ除去痕で写真に影響することは無いので光学系内の透明度を最優先としてコーティング層は敢えて剥がさずにそのまま残しています (つまりクモリだけ除去できています)。

↑こちらは第3群 (後玉) です。ご覧のとおり光を反射させるとポツポツとコーティング層を浸食したカビ除去痕が浮かび上がりますが、透明度は高くなっているので (クモリは除去できているので) 写真には一切影響が出ません。

↑なお第2群の貼り合わせレンズ (2枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせてひとつにしたレンズ群) のみ外周附近に除去しきれなかった薄いクモリが極僅かに残っています (赤色矢印)。「硝子研磨」の際に磨ききれない場所だったので当方ではこれ以上除去できません。
申し訳御座いません・・。

↑鏡胴「前部」が完成したので鏡胴「後部」の工程に入るのですが、上の写真赤色矢印のイモネジ (ネジ頭が無くネジ部にいきなりマイナスの切り込みを入れたネジ種) が完全固着していて全く外れませんでした。

実は距離環側 (ヘリコイド:オス側) も当初全く外れず、共に「加熱処置」を再び施しました。ヘリコイド (オス側) だけ外せたので指標値環だけは諦めました (この筒の内部にヘリコイド:メス側が位置しています)。指標値環だけの話なのでムリにバラす必用もないと考えトルクが 重い問題の改善に進みました。

修理広告 DOHヘッダー 

ここからはオーバーホールゑが完了したオールドレンズの写真になります。

↑予想に反してちょっと難儀してしまい (内部構造が違っていた)、固着が酷く数箇所で「加熱処置」が必要でした (肩の痛みがこれから出るかな?)。若い頃は筋肉痛が翌日出てましたが 歳とると数日後ですョね?(笑)

↑光学系内の透明度が高い状態に改善できた写真は前出をご覧下さいませ。15枚の絞り羽根も真円に近い「キレイな円形絞り」で確実に駆動しています。もちろん絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) も簡易検査具でバッチリです。

↑塗布したヘリコイドグリースは黄褐色系グリース粘性:中程度」を使い、距離環の全域に渡り完璧に均一なトルク感で「普通」或いは人によっては「重め」程度まで改善できました。当初のピント合わせし辛いトルクに比べたら画期的です。無限遠位置は当初位置のまま組み 上げたので距離計連動も問題ありません。

↑実は距離環 (ヘリコイド:オス側) を解体する際に固着が激しかった為に写真のようなキズを鏡胴に付けてしまいました。

申し訳御座いません・・。

↑ご依頼内容の「トルクが重い」問題はフツ〜にピント合わせできる程度まで改善でき、多少重めのトルク感だとしてもストレスには感じないレベルだと思います。また光学系の「カビ/クモリ」もほぼ除去でき透明度が戻りました。

しかし、以下の問題点がありますのでご納得頂けない要素についてご請求額より必要額分減額下さいませ。申し訳御座いません・・。
大変お手数ですが「減額申請フォーム」にてご申告下さいませ。

距離環を回すトルク感は「普通」人によって「重め」なので重いと感じるかも知れません。
軽めの粘性にするとスリップ現象 (ピント合わせ時にククッと微動してしまう現象) が出て却って使い辛くなるのでこれ以上軽くできません (既に一度軽めを塗布してチェック済です)。

光学系内の透明度は高くなったが一部クモリが残ってしまった。
光学系第2群 (貼り合わせレンズ) の外周附近に極薄いクモリが除去できずに残っています。
(写真には影響しません)

鏡胴にキズを付けてしまった。

↑当レンズによる最短撮影距離1.5m付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定OFF。

↑絞り環を回して設定絞り値「f6.3」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f9」で撮りました。

↑f値は「f12.5」になっています。

↑f値「f18」になりました。

↑f値「f25」です。

↑最小絞り値「f36」での撮影です。長きに渡りお待たせしてしまい申し訳御座いませんでした。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。