◎ MINOLTA (ミノルタ) MD W,ROKKOR 35mm/f2.8(MD)

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RO3528(0330)レンズ銘板

Bass-logo-Minolta1978②今回の掲載はヤフオク! 出品用ではなく、オーバーホール/修理ご依頼を承ったオールドレンズの掲載になります (有料にて掲載しています)。ヤフオク! には出品していませんので、ご注意下さいませ。

それまで「MC ROKKOR」のシリーズで展開していたMINOLTAが、1978年にいきなり発売した「MDシリーズ」レンズ群の中のひとつ、広角レンズですが、実際には1977年に最初のMDモデルが登場しているようです。

MDモデルは従前のMCモデルで採用し続けていた「6群7枚レトロフォーカス型」を「5群5枚レトロフォーカス型」に大きく変更しています。しかし、1977年に登場した「初期型」モデルでは「MC W,ROKKOR」と同じ筐体サイズのまま発売していたのかも知れません・・まだ現物を手にしたことがないので詳細は分かりませんが今後の課題です。何が違っているのか興味津々と言ったところです。

今回の個体は1981年に発売されたMDモデルの後期型にあたり、筐体サイズがだいぶ短縮化されています。しかし、他の同時期に発売されたMDシリーズのレンズと比較すると硬質樹脂製パーツの使用は極力避けられているようで、今回バラしてみると絞り環のみが「硬質プラスティック製」で他は全て金属製の構成パーツでした。

RO3528(0330)仕様

RO3528(0330)レンズ銘板

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。

今回の個体は光学系前群の固定環が完全固着されており解体できなかったので、それ以外をバラしての整備になります。

解体したパーツの全景写真です。

RO3528(0330)11ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。上の写真で左手前隅に写っていますが、面白いモノがありました。「シム」と言って薄い銅版の輪っかなのですが「隙間調整用」のようなイメージの役目になります。これが何処に入るのかは後ほど出てきます。

構成パーツの中で「駆動系」や「連動系」のパーツ、或いはそれらのパーツが直接接する部分は、すでに当方にて「磨き研磨」を施しています (上の写真の一部構成パーツが光り輝いているのは「磨き研磨」を施したからです)。「磨き研磨」を施すことにより必用無い「グリースの塗布」を排除でき、同時に将来的な揮発油分による各処への「油染み」を防ぐことにもなります。また各部の連係は最低限の負荷で確実に駆動させることが実現でき、今後も含めて経年使用に於ける「摩耗」の進行も抑制できますね・・。

RO3528(0330)12絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒 (ヘリコイド:オス側) です。MCモデルの頃はヘリコイド (オス側) は完全に独立していて鏡筒とは別に存在していましたが、MDモデルでは他社光学メーカー同様に一体型とし簡素化/合理化が図られています。

RO3528(0330)136枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。絞りユニット自体は一切ネジなどを使って固定されておらず、上の写真のような金属製の「固定環」をネジ止め固定することで絞りユニットを固定し格納させています。直接ネジ止め固定すればもっと簡素化ができたと思うのですが、実際にはこのような仕組みにすることで「絞り羽根の開閉幅」の調整を実現させているワケです。しかし、それさえも鏡筒のネジ止めで調整用のマチ (少々長めの穴) を用意すれば済むような気もしますが・・ちょっと設計の意図が不明な方法です。

RO3528(0330)14鏡筒をひっくり返して撮影しました。このような「円形バネ」のチカラを使って絞り羽根が常に「開放位置」になるよう仕込まれています。従って、マウント面に配置されている「絞り連動ピン」はこの逆の方向にチカラを及ぼし、絞り環で設定した絞り値まで絞り羽根を閉じようとします。マイクロ・スプリングを使わずに、このような「円形バネ」を採用しているのはミノルタ製モデルの特徴でもあります (既に他社光学メーカーではマイクロ・スプリングを使っている時代ですから)。これも何の拘りがあってこのような方法にしているのか興味がありますが、現在のところまだ解明できていません。

RO3528(0330)15こちらは距離環やマウント部を組み付けるための基台です。このモデルの筐体サイズがだいぶ短いのですが、そのワリに豪華な造りをしています。

当方と同じようにバラして整備をしている方ならば既に気がつかれたと思いますが、この基台の下部部分は「ワザと削り出し加工」を施しています。上の写真で「クロームメッキ」の処置がされている下部部分になります。この場所には実は「硬質プラスティック製」の絞り環が配置されます。従って、材質の異なる構成パーツが位置するのでこのように削り出し加工を施しているワケですね・・構成パーツにはそれぞれにちゃんと理由があります。

しかし、同じように硬質プラスティック製絞り環を有する他のMDモデルの基台にはこのような手の込んだ加工は施していません。もしかすると今回の個体は過渡期の生産品なのかも知れません・・硬質プラスティック製絞り環が来ても経年の使用に於いて問題が起きないことが判ったので、後のMDモデルではこの削り出し処置を省いたのかも知れません。

RO3528(0330)16ヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。このモデルには「無限遠位置調整機能」が備わっているのでここでのアタリ付けは大凡で構いません。

今回のモデルでは、距離環の駆動域が「∞〜0.3m」までなのですが、それほどグルグルと回すワケではありません (約210度くらい)。しかし、ヘリコイド (メス側) のネジ込み量が意外にも多く、深い位置までネジ込んでいきます。レトロフォーカス型の光学系仕様であるにも拘わらず「5群5枚」の設計としたため、且つ筐体の全長を抑えて短縮化させていることなどから、鏡筒の繰り出し量を調整する必要があったのかも知れません・・逆に言えば、相応にヘリコイドのネジ山の距離が長いと言うことです。

外観だけでは普通の広角レンズのように見えますが、バラしていくと細かい事柄も見えてきますね・・当時の苦心や苦労、設計や仕様諸元値の根拠などが垣間見え、なかなかオモシロイです(笑)

RO3528(0330)17鏡筒 (ヘリコイド:オス側) をやはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルには全部で9箇所のネジ込み位置があるのでもさすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず)、再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

RO3528(0330)18この状態で基台ごとひっくり返しました。他社光学メーカーが2本の「直進キー」を採用している中で、MINOLTAは「たったの1本」の直進キーだけで制御しています。直進キーとは、距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目のパーツになります。

また「絞り環制限キー」なるモノがありますが、これは絞り環が動く範囲を決めているパーツです。ここにもネジ穴にマチ (隙間) があり微調整ができるように配慮されていますね。

RO3528(0330)19直進キーの箇所を拡大撮影してみました。今回の個体では当初バラした際に「3種類のグリース」が過去に使われていることを確認しました。

当初はもちろん生産時ですからMINOLTA純正のグリースで「淡い緑色グリース」です。次に塗布されたのは「黄褐色系グリース」でだいぶ昔のメンテナンス時に塗られたと思います。そして最後に塗布されたのが恒例の「白色系グリース」です。

従って、生産時〜黄褐色系グリース塗布の時期まで無事に経過してきたヘリコイドのネジ山は、最後の白色系グリース塗布によっていよいよ「摩耗」を強いられてしまいました。ヘリコイドのネジ山には「濃いグレー状」の摩耗粉がグッチャリと付いていました。

さて、ここで直進キーの箇所を拡大撮影したのは別の理由があって撮りました。上の写真をご覧頂くと直進キーが入っている「溝」があります。この溝は直進キー用のガイドで、ヘリコイドの縦方向にず〜ッと刻まれています。距離環を回すとこのガイドを直進キーが上下にスライドするので結果として鏡筒が繰り出されたり、逆に引っ込んだりする仕組みです。

実は、このガイド部分には「白色系グリース」がビッシリと塗られていました (淡い緑色も黄褐色系も塗られていません)。そして、塗布されたグリースは一度も直進キーが接触することもなく、そのままの状態で固形化していました。

ここがポイントです! 大抵の整備ではこの直進キー用ガイドにグリースをタップリ塗っている人が多いのですが (つまりはプロの仕業ではないことが判明します)、実際には上の写真のように直進キーは奥まで刺さっていないのです。ガイドの溝の底との間に「隙間」が存在しており、写真をよ〜く観察して頂くと実際には直進キーも最後まで入るようなカタチをしていないことが判ります。

これは何を意味しているのか・・??? 直進キーの役目はチカラの方向を変える役目でしたが、やっているコトは実際には「きっかけを作っているだけ」なのです。距離環を回すチカラは継続して加わっていますから、直進キーによってその方向を変える切っ掛けさえできれば、その回しているチカラはそのまま鏡筒を繰り出すチカラとして伝達されていきます。これが「距離環を回すトルク感」ひいては「ヘリコイドのトルク」などと言うイメージで指に伝わっているワケで、それを勘違いしているか、或いは原理原則を知らないかのいずれかだと思いますが、この直進キー用ガイドにドップリとグリースを塗ってしまうのです。

塗られた本来必用の無いグリースは、すべて最終的には経年でレンズ内の何処かに揮発油成分を廻してしまう一因となっていきます。ロクなことにはなりません・・実際、今回の個体も光学系の格納筒周囲まで揮発油成分が廻っていましたので、後数年で光学系内にまで入っていたと思われます。

RO3528(0330)20「1mm径のベアリング+マイクロ・スプリング」を組み付けてから硬質プラスティック製の絞り環をセットします。

RO3528(0330)21こちらはマウント部内部の状態を撮影しました。既に当方による「磨き研磨」が終わっている状態です。

RO3528(0330)22簡単な連動系・連係系パーツですが、これらのパーツも磨き研磨が終わっています。当初このマウント部内部にはやはりグリースが塗られていました (それほど多くではありませんでしたが)。

さて、冒頭のパーツ全景写真の中にあった「シム」はここで使います。マウント部の外周部分の縁にひピタリと入る径で用意されており、恐らくは製品として量産化が始まったにも拘わらず、このマウント部をネジ止めして組み付けると、一部の個体で不具合が発生したのだと思われます。その調整用として「シム」を基台とマウント部との間に咬ませて空間をほんの少しだけ多く用意したのでしょう・・つまりは絞り連動ピンが正しく機能してくれなかったのだと推測できます。MINOLTAでもこんなコトをが起きていたのですね・・(笑)

RO3528(0330)23シムを間に挟み込んでからマウント部を固定しました。この後はマウントの「爪」自体をネジ止めします。

RO3528(0330)24光学系前後群を組み付けてから距離環を仮止めして無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認をそれぞれ行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットしたら完成です。

・・とになるハズでしたが、この個体では問題点が1つありました。絞り羽根の動き方が変なのです・・その解説は最後のほうでします。

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ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

RO3528(0330)1今回初めて扱ったMINOLTAの「MD W,ROKKOR 35mm/f2.8《後期型》」です。なかなかコンパクトで好感が持てる筐体です。そしてそれよりもその試写してみてその描写性にオドロキました・・久しぶりに「あぁ〜、ミノルタの写りだ」と感じ入った次第です(笑) ず〜ッとドイツ製レンズや他の日本製レンズなどを整備しているのでMINOLTAのオールドレンズに戻ってくるといつもながらホッと安心します。

RO3528(0330)2光学系は前群が固定環固着のために解体できていませんが、後群のほうに「薄いクモリ」がありましたので、後群は解体してキレイに清掃ができたために光学系内は大変透明度の高い状態でクリアになりました。

RO3528(0330)9光学系後群もキレイになっています。この後群内に「アクロマチックコーティング (AC)」である「緑色のコーティング層」が含まれています (第3群)。

RO3528(0330)3絞り羽根もキレイになり確実に駆動しています。絞り羽根が「おかしい」と申し上げた内容は最後に解説しています。

ここからは鏡胴の写真になります。元々が大変キレイな状態でしたが、今回も当方による「磨き」を筐体に入れているので、落ち着いた美しさに仕上がっています。もちろん指標値や外装の着色などは行っていません (オリジナルのままです)。

RO3528(0330)4

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RO3528(0330)7使用したヘリコイド・グリースは「粘性:中程度」を使いましたが、前述のようにヘリコイド・グリースのネジ山が長い距離で深くネジ込まれるために相応な「重さ」を感じるトルク感になっています。「粘性:軽め」を塗布すれば軽くはできるのですが、広角レンズなので敢えて実施していません。

RO3528(0330)8その他、滞りなくオーバーホールが完了しています。

RO3528(0330)25こちらが絞り羽根が変だと申し上げた写真です。6枚ある絞り羽根のうち3枚が開放位置で顔を出してきます (上の写真は前玉の真正面位置から撮影しています)。

しかし、これには法則があり、レンズを上向きにすると絞り羽根が開放時に3枚顔を出してきますが、下向き気味にすると開放でもこの3枚は顔を出さずにキッチリ開放になっています。何度も絞りユニットをバラしたり、或いは絞り連動ピンとの連係動作を確認したりなど、いろいろとトライしたのですが改善できませんでした・・つまり原因不明なのです。

憶測ですが、絞り羽根のキーの向きがほんの僅かに変形しているのかも知れません。当方には検査設備が無いので確認できません。また、絞りユニット内の絞り羽根を確保している「空間」がほんの少し大きいのかも知れません。冒頭の説明の通り絞りユニットが一切固定されていない仕組みなので、絞り羽根のキーの変形がその空間があることで鋭気を有しているのかも知れません。

いずれにしても当方で散々調べましたがスミマセン、原因が判らないままで諦めました。誠に申し訳御座いません。

RO3528(0330)10当レンズによる最短撮影距離30cm附近での開放実写です。この写真を見てホッとした次第です・・(笑) さすがミノルタ製オールドレンズです。素晴らしい解像感と質感表現能力、そして立体感です。プラスティック製のミニカーの感じがよく出ており、ライターの金属部分との比較でも相違が判ります。素晴らしいですね・・。