◎ Carl Zeiss (カールツァイス) Sonnar 85mm/f2(CONTAREX版)
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今回の掲載はオーバーホール/修理ご依頼分のオールドレンズに関する、ご依頼者様へのご案内ですのでヤフオク! に出品している商品ではありません。写真付の解説のほうが分かり易いこともありますが、今回に関しては当方での扱いが初めてのモデルでしたので、当方の記録としての意味合いもあり掲載しています (オーバーホール/修理の全工程の写真掲載/解説は有料です)。オールドレンズの製造番号部分は画像編集ソフトで加工し消しています。
遠路遙々いつもご利用頂いている方からのオーバーホール/修理ご依頼分です・・いつもありがとう御座います。1959年にZeiss Ikonから発売された「Bullseye (ブルズアイ)」・・建物の丸窓を表すコトバですが英単語としては蛇の目のイメージ・・の異名を持つフィルムカメラ「CONTAREX I」のセットレンズとして用意されたポートレートレンズです。CONTAREXのことも、このオールドレンズのことも詳細を知りませんので省きます。
光学系は3群7枚の典型的なゾナー型です。特に目新しい発見はありませんが、今回の個体は驚異的な透明度を誇っています・・LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です。残念ながら前玉には極微細な点キズが複数見られますが後玉はキレイです。
前出の「Carl Zeiss Planar 50mm/f2 (CONTAREX版)」と内部の構造は似ていますが、バラしてみると鏡筒部分だけが独立している考え方が同じなだけ (鏡筒の位置で絞り羽根の開閉幅を調整している) でヘリコイド直進動の機構などは違っていました。
今回の個体は絞り羽根にはキズなども無くとてもキレイな状態を維持しています。
オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。
ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。光学系の後群だけは曲率の関係から直置きができないのでサックに填めたまま撮影しています。
絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。今回バラしたところ内部にはマーキングがあったので過去に1度だけバラしていると推測しますが、ヘリコイド・グリースの入れ替えをしていないので恐らく光学系の清掃をしただけではないでしょうか・・。
9枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。この個体は「絞り羽根開閉アーム」の付け根などが変形していなかったので絞り羽根には何ら影響が出ていません (つまり正常な状態です)。厄介だったのは50mm/f2とは異なり絞りユニットの固定環が存在していたことです。この固定環が完全に締め付けてしまうと絞り羽根が動かなくなる設計なので適度な隙間が必要です。しかし、隙間が空いていたのでは絞り羽根の開閉をしていくうちに徐々に開閉幅 (開口部の大きさ/入射光量) が変わってしまい適正ではなくなります (つまり固定されていないから)。締め付け固定で完全固定なのに最後まで締め付けできないという設計です・・この場合は固着剤で固めるしかありません (接着剤ではありません)。当初バラした時点も固着剤が使われていました。適度な空きスペースを用意しながらも絞り羽根が浮いたりしない程度に絞りユニットを固定する必要があります。
距離環 (ヘリコイド:メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。
ヘリコイド (オス側) をやはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルには全部で10箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。
この部分が50mm/f2の設計とは異なっていました。「直進キー」と言う距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目のパーツを一緒に組み付けなければイケナイのですが、一方ヘリコイド (メス側) には既に「制限キー」と言う距離環が駆動する範囲を限定しているネジ (2本) が入っています。これらのパーツの関係でヘリコイド (オス側) をネジ込んでいけない状況に陥ります。コツがあるので問題なくネジ込みが完了し無限遠位置も適正になりましたが、その作業に少々時間がかかりました。
フィルムカメラのボディ側絞り連動カムとの噛み合わせ部をセットしてからマウント部を組み付けます。この後は完成している鏡筒を入れ込んで無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認をそれぞれ執り行えば完成です。
ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。
光学系内の透明度は驚異的です・・前玉の極微細な点キズが悔やまれますね。
光学系後群には極微細な点キズはたったの1点しかありません (多分見つからないと思います)。LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です。第2群と第3群が3枚の光学硝子レンズによる貼り合わせレンズ (3枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせてひとつにしたレンズ群) ですから本当にラッキーです。経年に拠るコーティング層の劣化すらありません。
ここからは鏡胴の写真になります。経年の使用感が僅かに感じられる個体ですが梨地仕上げの筐体外装にも当方による「磨き」をいれたので極僅かですが微細な引っ掻きキズなどが減っています。
塗布したヘリコイド・グリースは50mm/f2同様に「粘性:軽め+中程度」の組み合わせを使っています。一応念のため各グリースを塗ってから最終的に同一の組み合わせで塗り替えており最もトルク感のシットリした感じが残っている状態の仕上がりにしています。50mm/f2と同様に黒色の指標値刻印が全て褪色してしまったので当方にて着色しています。
実際に試写してみましたが素晴らしい描写性です。装着できるフードが無かったので少々コントラストが低めでしたがソナーの写りを堪能できます。
当レンズによる最短撮影距離80cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に球部分にしか合焦していません。