〓 Carl Zeiss (カールツァイス) CONTAREX版 Planar 50mm/f2 (silver)《前期型》(CRX)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、旧西ドイツは
Carl Zeiss 制標準レンズ・・・・、
CONTAREX版 Planar 50mm/f2 (silver)《前期型》(CRX)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回完璧なオーバーホールが終わってヤフオク! 出品するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた13年前からの累計で、当時のCarl Zeiss製品の中で「CONTAREX向け」標準レンズ「 Planar 50mm/f2」だけの括りで捉えると25本目にあたりますが、今回扱った個体silverモデルだけでカウントすると11本目です。

ところが実はそれら11本の中で、鏡筒 (光学系前群格納筒を兼ねる) と光学系後群格納筒の両方が「黄銅製で造られている前期型」だけでカウントすると僅か3本目なるものの、不思議なことにそれら黄銅材で用意されている鏡筒を実装した個体の製造番号が、シリアル値を執っていません(汗)

今回扱った個体も含め、今までに扱った「黄銅材の鏡筒 (光学系前後群格納筒)」実装タイプは「製造番号2374xxx 〜」なのに対し、黄銅材ではなくアルミ合金材に変わったタイプの鏡筒を実装していた個体の製造番号帯は「製造番号:〜 2373xxx」なのです(汗)

例えば「製造番号2368xxx」や「2372xxx」などがアルミ合金材なのに、それらよりも後に生産されたのであろうシリアル値をとる「2374xxx」や「2375xxx」或いは今回の個体「2376xxx」が黄銅材の鏡筒で、まるでシリアル値が逆転しています(汗)

普通一般的に、この当時のオールドレンズの多くのモデルは、内部構成パーツの金属材について「真鍮製/ブラス製黄銅製アルミ合金材」との変遷が大多数をとるのですが、このモデルに関しては全くの逆転現象です(汗)

・・説明が付きません!(汗)

  ●               

今回のオーバーホール/修理ご依頼内容は「光学系内の外周に薄いクモリが現れた」とのことで、その因果関係と除去を課題としたオーバーホール/修理です。

ご依頼者様が実際に今回の個体を手に入れられたのが5年前とのことで、その時点ではこのような薄いクモリは外周に現れておらずクリアだったのだと思います・・するとそれを勘案した時「個体の経年劣化進行に伴い、蒸着コーティング層の劣化が僅か5年で一気に加速した」と捉えてしまうには相当なムリが残ります (そんな僅か5年足らずで蒸着コーティング層の変質は進まないから)(汗)

例えばこれが「光学系内にカビが繁殖し始めた」と言うのであれば、それはむしろ5年どころか「1年未満でさえも起こりうる現象」とも考えられ、ご依頼者様が気にされる瑕疵内容が「薄いクモリなのかカビの繁殖なのか???」でその因果関係を考察する「時間軸の捉え方」は変化します(汗)

《当初バラす前のチェック時に気になっていた内容》
光学系内をLED光照射して覗き込むと第2群貼り合わせレンズ外周に白濁を確認。
さらに見る角度を変えると、既に一部領域で剥離し浮いているのを確認。
光学系内に微細な塵/埃/汚れ状がとても多く残っている。
マウント部にあるり絞羽根開閉制御環に明確なトルクムラが起きている。

絞り羽根が開放時に完全開放せず、僅かに顔出ししている
距離環を回すトルクは決して重くないが既にグリースの劣化が分かる状態
無限遠位置は突き当て停止位置ピタリなるも、僅かにアンダーインフの印象。

《バラした後に新たに確認できた内容》
古いヘリコイドグリースは黄褐色系グリースが塗られていた。
絞り羽根開閉制御間の組み立て方が間違っている。
9枚の絞り羽根のうち3枚が膨れて変形している。
ヘリコイドメス側をムリヤリ回して外そうと試みた影響が残っている。
光学系第2群貼り合わせレンズが一度剥がされ、再接着されている。

・・このような状況でした。はたしてこれら までの瑕疵内容が、どこまで改善できるのかが今回のオーバーホール/修理工程での課題になります(汗)

↑今回出品の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はCONTAREX版 Planar 50mm/f2 (silver)《前期型》(CRX)』のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからは一つ前に掲載した、今回扱った個体を完全解体した時の全景写真から解説を順に進め、その中で冒頭の瑕疵内容 について説明を進めます。

まず上の掲載写真「全景写真」で色付き矢印で指し示しているのが「鏡筒光学系前群格納筒 (赤色矢印) と光学系後群格納筒 (グリーン色の矢印)」です。

これら格納筒は共に黄銅材で造られているので、この時代の多くのオールドレンズにみられる「内部構成パーツの金属材の変遷」を見習うなら、冒頭で述べた通り「真鍮製/ブラス製黄銅製アルミ合金材」の流れなので、今回の個体が「鏡筒黄銅製」となれば、その後のタイミングで「アルミ合金材削り出し」へと変遷していくのが一般的な捉え方です。

ところがそれぞれの個体に符番されていた製造番号から辿ると、そのような一般的な流れには従っておらず、一度軽量化が進んだ「アルミ合金材の削り出し」に仕様変更したかと思えば、再び重い黄銅製に戻して「まるで退化させているような話」と、全く以て理に適いません(汗)

従って、例えばネット上の様々なオールドレンズに関する解説の中で「製造番号のシリアル値を基に、当時の製造メーカーが残す出荷済み製品の符番情報」と照らし合わせてあ~だこ~だ述べられますが、はたしてこのような「内部構成パーツの理に適わない使用形態」については
誰一人考察を進めようとしません(汗)

これらオールドレンズや製造メーカーを長年研究していらっしゃる、本当に称賛に値する方々には是非とも、そのような与件にまで考察を進めて、知見を基にした解説をお願いしたいと、強く思ふところで御座いまする(汗)

例えば今回のモデルに関して考察を進めるなら、確かにレンズ銘板をすげ替える/他の個体から転用する事が可能なので、何某かの理由があって製造番号だけが市場流通の中で違えてしまったと言う、穿った憶測も無いとは言い切れません(汗)

但しそれさえも「光学系第1群前玉のカタチの相違」から、純粋にレンズ銘板だけを転用できない事も当方は数多くのブログの中で既に検証済みです (こちらのページで解説しています)(汗)

或いは、計画生産に基づく「製造番号事前割当制」を採用している製造メーカーは、ことカメラ向けレンズ業界の製造メーカーに限っては「今も昔も変わらず採用され続いている概念」である事も確認できています (今現在の光学製品製造メーカーの中にも顕在する)。

するとその時、どうして飛んでいるシリアル値の番号帯で付番して、その当時の内部構成パーツで組み上げられ出荷していたのか、逆に言うなら、その後の時代に (既に内部構成パーツの仕様が変わっている時代に) どうして飛んで欠番になっていたシリアル値に敢えて符番して出荷をしたのか、説得力ある解説を未だ見た記憶がありません(泣)

・・業界の方が居たら、この辺りの根拠などご教授頂けると消化不良がスッキリします!(涙)

細かく考えていくと、本当にキリが無い世界なのだと思い知らされる毎日です(笑)

↑上の写真は、今回の個体から取り出した光学系第1群前玉〜第5群後玉までを順に並べて撮影しています。

この解説を進める際に必ず把握すべき内容があり、右の構成図です。右構成図は以前扱った時のオーバーホールで完全解体した際、光学系の清掃時当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての光学硝子
レンズを計測したトレース図です。

すると光学系第2群の貼り合わせレンズを 色付きで載せていますが
2枚の光学硝子レンズの貼り合わせなので、それを剥がした時、上の
写真のように2つに分割するのを明示しています。

右構成図で言えば、上の写真の「第2群」は、手前が構成2枚目の前玉寄りの光学硝子レンズであり、写真の奥に並べているのが構成3枚目の絞りユニット側方向に位置する光学硝子レンズと言う話です(笑)

つまり冒頭瑕疵内容ので、明確なバルサム切れが起きている事を確認した為、一旦剥がして再接着を試みています。

ところがリアルな現実はそんな甘くなく(汗)、この光学系第2群貼り合わせレンズは当方が執る「加熱処置」実施でも全くビクともしません。最初2回の試みで、高温度によりバルサム剤の浮きまで何とか確認できたものの、それでも完全固着したまま微動すらしません(怖)
(通常バルサム剤が浮いたら剥がせる)

仕方なく加熱温度を300℃以上まで段階的に上げつつ、プラスで都合2回試み、最後の4回目でようやく剥がれた次第です (500℃手前)(汗)・・オールドレンズに使う光学硝子レンズは成分や配合にも拠りますが、凡そ600℃を超えると溶融解の懸念すら高まるので、メッタやたら温度帯を上げられません(怖)
(リアルな現実で言えば850℃を超えたら先ず溶融解するのが普通)(怖)

ネット上を調べると「冷凍温度帯一気に100℃以上に加熱」する急激な温度差に拠る剥離手法を執るサイトもありますが、チョ〜危険です!(怖) 可能な限り高温度帯の範疇で加熱し続けるほうが光学硝子材に与える影響は低減でき「破壊」を防げます(怖)

これは光学硝子レンズの硝子材自体が温度差により破壊が進行するのではなく、バルサム剤による引張力の加減から硝子材に「せん断力」が働いてしまい、その影響で「硝子破壊」が起きています(怖)

またオーブントースタやオーブンを使って加熱する手法を勧めているサイトもありますが、被対象の光学硝子レンズがちゃんと耐熱物の上に載っているなら問題ありません。オーブントースターやオーブンの受皿や網に載せたまま加熱しては、下手すると金属材と接触している硝子材に影響が現れます(怖)

・・ちゃんと熱伝導率の問題をチェックして処置を講じるのが良いでしょう(汗)

今回の個体は、ご依頼者様からの事前情報があり「5年前に入手した」とのことなので、僅か5年でバルサム切れが進行してしまい、光学系第2群の貼り合わせレンズ外周部分が白濁しました (もしかしたらもっと前の話かもしれませんが)(涙)

・・僅か5年しか耐用年数がないバルサム剤など、信じられません!(汗)

例えばネット上や一部ヤフオク!出品者でも使用している出品者が居ますが「光学硝子レンズ用の樹脂系接着剤」として、最近よく見かけるタイプがあるものの、実はその諸元データを
取り寄せると「安全性諸元」の欄で「65℃以上で重合反応あり」と明記されていました(怖)

これを考えた時、日本の冬なら問題ありませんが、夏場の盛夏時に車のダッシュボードや座席に放置されていた状況を想定すると「車内温度の最大値79℃」を勘案すれば、とても無視できる重合反応の限界温度ではありません (JAF検証データより)(怖)

当然ながら「重合反応」で白濁する懸念は相当高いので (組成まで影響を来たす化学変化が起きてしまう)、そのような接着剤を使い、UV光照射でサクッと再接着するのも如何なものかと思ったりします(笑)

もッと言うなら、当方で先日オーバーホール/修理を賜ったオールドレンズで「北極圏で1ヶ月使われていた」与件が影響して、蒸着コーティング層の変質が進行してしまった個体さえ現れています(涙)・・単に光学硝子材だけを考慮するのではなく、その先に蒸着されている「反射防止コーティング層」の存在も、光学設計者自らが意図的に設計しているハズなので、決して蔑ろにするような考え方や所為はイケナイと・・当方自身の未熟な概念を猛省したほどです

・・北極圏となれば零下40℃まで到達するのは歴然で、その想定が無い当方が悪い!

要は、問題なのは「蒸着コーティング層の耐用温度帯」をちゃんと把握する必要があるものの
ではリアルな現実に被対象オールドレンズの光学硝子レンズに「どの温度帯の蒸着コーティング層が被せられているのか???」など、分かるハズもなく(笑)、全く以てお手上げです(涙)

そんな次第で、今回扱った個体の光学系第2群に使われていた「バルサム剤」は、剥がす際の様態から、剥離後の接着剤確認に至るまで勘案し「二液性レジン硬化剤」とみています(汗)

先ず以て「二液性レジン硬化剤」を使われてしまうと、剥離する際にせん断力に頼らざるを得ず、光学硝子レンズに対し相当な脅威です!(怖)

これは、例えば昔使われていた「CANADA BALSAM」なら、剥離の際に樹脂自体が溶融解するので横方向でのズレが勝手に生じます。横方向にズラしながら剥離工程を進めれば良いだけなので「せん断力に拠る硝子破壊」に対する恐怖感は最低レベルに控えられます (樹脂材が溶けるので勝手にはみ出してきて横方向にズレるから容易に剥がせる/張り合わせている硝子材の重さだけで、溶けた樹脂が自然に流れ出てくる/数多くの個体で既に検証済の現象)(怖)

さらに指摘するなら、僅か5年で白濁が始まってしまうような「二液性レジン硬化剤」と言うのは、要は単なる強力なレジン液でしかなく、決して光学硝子レンズ向けの専用接着剤ではありません(笑)

最近、こういうレジン液を公然と平気で使う整備会社がだいぶ増えてきているので、堪ったものではありません!(怖)

今回のオーバーホール/修理工程では、運良く「硝子破壊」には至りませんでしたが、4回の「加熱処置」の間、心が休まる暇がありませんでした(涙)・・現状、当方で所有する光学硝子レンズ専用接着剤により再接着しています (安全性諸元値に重合反応明示無し)。

↑ここからは過去に扱った同型品の掲載写真を流用して転載し解説していきます (今回扱った
個体の撮影写真ではありません
)。

今回のモデル内部には上の写真で示す「基台制御環」が使われており、その「制御環」に
後からマウント部で「斜め状にせり上がったカタチの板バネ状連携環」が取り付けられ、その「連携環」が、本来はフィルムカメラ側マウント部の爪に噛み合い「フィルムカメラのボディ側から絞り環操作する」制御方法を採る一眼 (レフ) フィルムカメラ「CONTAREXシリーズ」です。

するとご覧のとおり「基台制御環」の間には「小径褐色の鋼球ボール48個」と「大径銀色鋼球ボール24個」の合計72個の鋼球ボールが順番にセットされる事で「平滑な回転が実現」される原理です (グリーン色の矢印)。

ところが5年前のいつかのタイミングで整備した整備者は「締付環を最後まで締め付けてしまった」ために、絞り羽根の開閉動作に異常を来し「絞り羽根の変形を促してしまった」と言う次第です(涙)

↑上の写真は実装する9枚の絞り羽根から3枚を取り出し、表裏面でヒックリ返して撮影した写真です。それぞれに「開閉キー位置決めキー」と言う円柱状の金属棒が製産時点にプレッシングされている造りです。

従ってここで重要なのは「経年の中でもこれらキーは互いに反対方向に向けて垂直状を常に維持し続けるのが必須」ですが、今回の個体は一つ前の解説のとおり「制御環の駆動に異常を来していた (伝達されるチカラが想定よりも強すぎた)」結果、経年の中で生じた一時期の「絞り羽根の油染み」が原因で、上の写真グリーン色の矢印の箇所が膨れ上がり、9枚の実装絞り羽根のうち「3枚が変形しへの字型に膨れている状態」でした(汗)

結果、互いが干渉するので絞り羽根の開閉動作にトルクムラが起きていたようです(泣)

↑こんな感じで鏡筒内には「開閉環」が絞り羽根の上に被さり (リアルな現実は絞り羽根の下位置になるが)、マウント面からのチカラ伝達により閉じたり/開いたりする仕組みです。セットされている絞り羽根が、オールドレンズ筐体がどんな角度に保持されようともバラけないよう「光学系後群格納筒で抑え込む配慮を施した設計」です(笑)

従って、みなさんがよく放置プレイされる事が多い「絞り羽根の油染み放置」は、実はこの
ようなプレッシングされている「キーが垂直状態を維持できなくなる因果」に至る懸念が相当に高いので、可能な限り気づいた時点で整備するのが安心なのです(泣)

今回のオーバーホール/修理では冒頭瑕疵内容のについて、前述の因果から影響が既に現れていた次第ですが、僅かにトルクムラを感じるものの、フィルムカメラ側ボディの絞り値操作時には、それらの抵抗/負荷/摩擦は伝わりません。

↑上の写真はヘリコイドオスメスと制御環との位置関係を示していますが、当方が今までに扱った今回のモデルの累計台数25本中、上の写真のように「距離環を外せた個体」は・・僅か2本だけです(涙)

残念ながら今回の個体も距離環を外せていませんし、もっと最悪だったのは「過去メンテナンス時の整備者が距離環を外したいが為にヘリコイドメス側の締付環をムリヤリチカラを加えて回そうと試みた」事実が判明しています(涙)

原理としては、ヘリコイドメス側が距離環に締め付け固定されるので、距離環を回すことで
直進動に変換され「ヘリコイドオス側が繰り出し/収納動作する」仕組みですね(笑)

従って、距離環に刻印されている「∞刻印位置を変更したい/ズラしたい」と考えたら、必ず
距離環を取り外して適切な位置に変更し締め付け固定する作業が必須になりますが、このモデルは「アルミ合金材削り出しの締付環なのでカニ目レンチ如きでは外せない」くらいにガッチガチに締め付け固定されており、下手にそれを処置すると「今回の個体のようにヘリコイド
メス側だけが僅かに回ってしまう
」次第です(泣)

実際、今回の個体は「凡そ8㎜分ヘリコイドメス側が回ってしまいズレてしまっている」為に
その影響が後の工程で現れます(涙)

↑写真で示すと「距離環」に対して、グリーン色の矢印で指し示した位置に (内側に) 距離環をヘリコイドメス側に締め付け固定する「締付環」がネジ込まれていますが、アルミ合金材削り出し同士なので、製産時点に機械締されているのかビクともしません(汗)

それをムリヤリ回そうと試みると、今回の個体のように単にズレただけで外せない運命を辿ります(涙)・・それが冒頭瑕疵内容のの因果です(涙)

↑ここからはオーバーホール/修理が終わった状態についてご報告していきます。完璧なオーバーホール/修理が終わりました。

↑光学系内の透明度が非常に高い除ゥ体を維持した個体ですが、冒頭瑕疵内容のとおり「極微細な点キズがだいぶ多目の印象」です(汗)・・これはおそらく過去メンテナンス時に処置されたカビ除去痕がほとんどだと判定しています (微細な点キズ状)。

また光学系第2群の貼り合わせレンズは、前述解説のとおり一旦剥がしてから当方にて再接着し、外周の白濁を解消しています。合わせて光学系内各群の格納位置をキッチリ合わせたので「無限遠位置が極僅かに短縮化され適切な位置に戻った」為に、先程説明した「無限遠位置のズレ」が距離環側に起こっていたのが判明したワケです(笑)

・・このように過去メンテナンス時の「ごまかしの整備」は総て白日の下に晒されます(笑)

↑光学系後群側のスカッとクリアに戻っています。こちらの後群側で各群の格納位置が僅かにズレていたので、最終的な無限遠位置がズレていて当初バラす前の実写確認時点で「如何にもピタリと無限遠位置が合致しているかのように仕上げてある」ものの、実は極々僅かにアンダーインフ状態でした(笑)

ご依頼者様からのご案内では「無限遠位置は正常」とのことでしたが、当方で簡易検査具で検査すると極々僅かにアンダーインフでした(汗)・・もちろん現状は改善済です。

↑当初バラす前のチェック時点で瑕疵内容の絞り羽根顔出しも、閉じすぎていたので適切に合わせて仕上げてあります(笑)

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

もっと言うなら「光沢剤/研磨剤/化学反応」の類も一切利用しないので、金属材表層面に影響を及ぼしてしまう処置は何一つ講じていません(笑) 特にヘリコイドのネジ山などを研磨剤にて処置すると、塗布するヘリコイドグリースの成分/配合によってはそれらの浸透を促してしまうので、ザリザリ感やスレ感が数年で増大し製品寿命の短命化を促す結果に到達しますから要注意です(泣)・・当方独自のヌメヌメ感を感じるシットリしたトルク感は、それら「光沢剤/研磨剤/化学反応」の類を一切利用しない磨き研磨により実現している特異なトルク感であり、巷で流行る「分解整備済」とは全く異なる完全解体を前提とした製品寿命の延命化が最終目的です(笑)

もちろんそれらの根拠として「当時製産時点に使っていたであろう成分/配合の分類に可能な限り近い黄褐色系グリースだけを使う」事をその前提と据えており、今ドキ流行っているシリコーン系「白色系グリースの何♯ (番)」などを謳って整備するのは以ての外で(泣)、そのような整備は「製品の延命処置」からはまさに逆行した所為と指摘せざるを得ません(涙)

実際それらシリコーン系「白色系グリース」が塗布されている個体を数多く確認していますが
距離環を回した時のトルク感は「ツルツルした感触」しか感じず、合わせてピントのピーク/山の前後微動に於いて、意識せずとも微動してしまう使いづらささえその印象として残るので、はたしてそれで撮影に没頭できる操作環境を真に提供できているのかとの疑念さえも湧いて
きます(笑)

その意味でも整備で塗布するグリースの問題は、製産時点/設計概念に配慮した内容だけに留まらず、組み上げられたオールドレンズの使用感にまで気配りした概念がそこには介在し、結果的に「製品寿命の延命化」に到達できていれば、なおさらに最高ではないかとのポリシ~が
根底にあったりするのが当方が施すDOHそのものなのです(笑)

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」を使い、当方独自のヌメヌメッとしたシットリ感漂う軽めのトルク感で、掴んでいる指の腹に極僅かにチカラを伝えるだけでピント面の前後微動が適うトルクに仕上げられており、抜群の操作性を実現しています(笑)

ご依頼者様からのご指示内容では「現状と同程度のトルク感ご希望」とのご要望でしたが、このモデルのピント面のピーク/山の迎え方は「突然急に立ち上がるものの、そのピーク/山を超えるには少し前後動が必要」と、決してピント面の範囲が浅い話ではないので (被写界深度の話ではない)、それを勘案して多少のピーク/山で前後動が発生するとの想定から、敢えて距離環を回すトルクを「僅かに軽めに仕上げています」・・申し訳ございません。

・・もしもご納得頂けないようであれば減額下さいませ。スミマセン(汗)

↑ここの解説が前述の無限遠位置のズレ分を当方のオーバーホール/修理工程内で相殺した内容の説明です。グリーン色の矢印で指し示す基準「」マーカーに対して、本来ならば距離環側で「∞刻印」が上の写真のとおりピタリと合致していて、且つちゃんと無限遠の合焦ができているのが適切ですが、今回の個体は「光学系を正しく格納したらオーバーインフが激しく仕上がった」ワケで(汗)、実際に一度組み上げてから (その時点で既に4回組み直してますが)、実写確認すると赤色矢印の位置で鋭いピント面で無限遠合焦しました (凡そ距離環の刻印距離指標値で10.8m辺り)。

当然ながら当初バラす前の実写確認時の無限遠合焦に比較して、明らかに鋭いピント面に変わっています(笑)

するとその赤色矢印で指し示したオーバーインフの位置と、基準「」マーカーとの位置のズレ幅が「ブルー色の矢印で囲っいる領域の長さ約8㎜」であり、要はこの分だけ前の工程で解説した「ヘリコイドメス側が回ってしまいズレた量約8㎜」と言う話であり、当然ながらズレた量の実測値は一致します (誤差は最大でも1㎜弱の範囲)。

従って、距離環を取り外せない以上 (締付環が外れないから)、そのままの状況下で「然し∞刻印位置はちゃんとに合致させたい」のが人情なので(笑)、その処置を今回のオーバーホール/修理工程の中で実施しました。

現状、ちゃんとカツンと音が聞こえて停止した位置に「」が合致し、当然ながらその位置で実写確認の無限遠合焦も鋭いピント面で確認できています (当たり前の話ですが)。

つまり当初赤色矢印の位置で無限遠合焦していたのが、オーバーホール/修理が完了して仕上がった現状は「ちゃんと位置の∞刻印で合焦している」次第です(笑)

当初バラす前の実写確認時は、無限遠位置の合焦時にカメラのピーキングにチラチラと反応する程度でしたが、現状は確実にピーキングで合焦位置を明示できており「それはイコールピント面の鋭さ感が増した結果」と判定しました (コントラスト差が増大したから)(汗)

被写界深度から捉えた時のこのモデルの無限遠位置を計算すると「焦点距離50㎜開放F値f2.0被写体までの距離49m許容錯乱円径0.026㎜」とした時、その計算結果は「前方被写界深度24m後方被写界深度∞m被写界深度∞m」の為、30m辺りの被写体にピント合わせしつつ、以降後方の∞の状況 (特に計算値想定被写体の50m付近) をチェックしながら微調整し仕上げています。

・・一言に無限遠位置と述べてもいったいどの距離で検査したのかが不明瞭です(笑)

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

↑当レンズによる最短撮影距離30cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。付属のフード装着状態で撮影しています

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f4」で撮りました。

↑f値は「f5.6」に上がっています。

↑f値「f8」の撮影です。

↑f値「f11」になりました。

↑f値「f16」です。

↑仕様上の最小絞り値「f22」での撮影ですが、もうほとんど絞り羽根が閉じきっている状況なので「回折現象」の影響が極僅かに現れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

↑仕様を超えた「f32」での撮影です。今回のオーバーホール/修理ご依頼、真にありがとう御座いました。本日キッチリ梱包の上、クロネコヤマト宅急便でご返送申し上げます。どうぞよろしくお願い申し上げます。