〓 Carl Zeiss (カールツァイス) Skoparex 35mm/f3.4《oberkochenモデル》(M42)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧西ドイツは
Carl Zeiss製準広角レンズ・・・・、
Skoparex 35mm/f3.4《oberkochenモデル》(M42)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Украине!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体は当方がオーバーホール作業を始めた10年前からの累計で11本目にあたりますが、その中で光学系の状態が素晴らしい個体数だけでカウントすると僅か4本目です。

正直なところ絞り羽根開閉の問題と距離環を回すトルクの問題を抱えたままなのでなかなか 難しい判定でしたが「マウントアダプタへの装着」を前提とするなら全く以て正常駆動なのでそこに着目して出品する事にしました (逆に言うならジャンク箱に転がる運命だった個体とも言える)。

つまりそれほど光学系の状態が素晴らしいので (このモデルでここまでスカッとクリアなのが11本目にして初めてのレベル) ジャンク箱に転がすにはあまりにも惜しい個体・・・そんな想いで悩み続けながら整備して仕上げた個体です (相当にハードだった)。

《当初バラす前のチェック時に気になっていた内容》
絞り連動ピンの押し込みで絞り羽根の動きが不安定。
距離環が重めでトルクムラ酷い。
 距離環の一部はグリース抜けでスカスカ状態。
 アンダーインフ状態で無限遠合焦していない。
光学系内に汚れが多い。

《バラした後に新たに確認できた内容》
白色系グリースが塗布されている
締付ネジ/固定環などが硬締めで外れない。
反射防止黒色塗料厚塗りすぎ。
一部パーツの設計仕様が変わっている
スプリング/操作棒/カムなど強制的に曲げている。

・・とまぁ〜いくら今まで10本扱ってきたとしてもこれだけ羅列されるとさすがにオーバーホールして仕上げる気持ちが既に失せていたと言えるほどに相当落胆しました(泣)

従って実際にオーバーホール工程を進めている時に心の中で念仏のように唱え続けていたのが「これだけクリアな光学系をもったいない」とブツブツ言い続けていたワケで(笑)、こういうのを恍惚に堕ちていると言うのでしょうか。

都合丸っと4日掛かりで臨んだ次第ですが、仕上がった今さすがにこの個体を眺めたい気持ちはスッカリ失せてしまい、どちらかと言うとどんだけ厄介だったのかとまるで憎しみすら感じるほどに睨みつけるような感じです(笑)

・・とは言ってもオールドレンズの個体に罪はありません(涙)

要は「白色系グリース」が塗布されているのでそれほど昔の整備ではなかったにしても過去 メンテナンス時にヘリコイドのネジ込み位置は狂っているし、そのままスプリングは短く切断してしまい操作棒やカムなどはペンチでムリヤリ曲げて、おそらく相当難儀したのだと思います。しかしその為にどんどん悪化してしまい無限遠合焦しないままに組み上げられ絞り羽根の開閉異常も残ったままだったのがある意味納得です。

しかしそれでも締付ネジや締付環などにはほぼ全周に渡り固着剤を塗ったくって、おそらく 充電ドリルを使ったのか人力で外すのが相当大変でした。そもそも微調整がちゃんとできていないのが分かっているハズなのにどうして締付ネジなどに固着剤まで注入して硬締めする必要があるのか当方には理解できません。いわゆる「締付ネジ類には必ず固着剤を入れる」みたいな慣例の如く認識しているバカな整備者が居るので、きっとその類なのでしょう。

いまだに積極的に固着剤を多用し硬締めしながら「反射防止黒色塗料塗りまくり」で相変わらず「白色系グリース」使いの整備会社が居ますから本当に堪ったものではありません!(泣) しかもそれが個人の整備者ならともかくイッパシの大手の整備会社だから何も言えません。

逆に言うなら今までの10年間で3,000本以上扱ってきた中でおよそ「100本中僅か数本」しか当方が認めるような (自分が納得できるような) レベルでの本当の整備をちゃんと施されていた個体数がありませんから、如何に少ないのかご理解頂けるのではないでしょうか? もちろんそのようなちゃんとした整備が施されていた個体は完全解体しても「ごまかしの痕跡を 一切見出せない」からこそ当方も納得できますし、逆に言うならさらに遡ったもっと昔の整備の時点でごまかしていた痕跡すら発見できるので、それら「ごまかしのない整備」を施した整備者の技術スキルが歴然になるとも明言できます (おそらくその整備者もそれら過去のごまかしを正して組み上げていたハズだから)。

以下掲載している写真は全て別の個体からの転用写真で今回の個体を撮影したものではあり ません。

左写真は同じCarl Zeiss製標準レンズの「凹Ultron 50mm/f1.8」の鏡筒を前玉側方向から撮影した絞りユニットの写真です。

実装される絞り羽根は長短で1セットが5セット組み込まれて左のように制御されます。

よ〜く見るとスリット (切り欠き) の中にキーが2本ずつ並んでいますが1枚の絞り羽根に2本のキーをこのように隣接して用意する必要がないので「2つの絞り羽根のキーが見えている状態」なのが自明の理です (物理的に不可能だから)。

するとこの設計が脅威なのは「このスリットの途中からそれまで行儀良く並んで一緒に動いていたキーが互いに離れて別の動き方をする」からこそこの設計を考えた設計者は人知のレベルを超えていると当方には思えてなりません。今ドキのAIでも処理すれば簡単に辿り着けるのでしょうがとても人間業に見えませんね(笑)

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

上の左側写真は今度は今回扱ったモデルの絞り羽根を撮影しています。すると今回のモデルは実装絞り羽根枚数が5枚なので組み合わせが関係ないと思いきや、今度は絞り羽根の窪み箇所に別の絞り羽根のキーが入って複合的に同時進行しているから堪りません(笑)

さらに注意してこの絞り羽根が重なり合った時の動きを観察するとグリーンの矢印で指し示した箇所が極僅かにめくれ上がっていたり、或いは角張って突出していたりが「互いの絞り羽根に影響し合いながら非常に上手く噛み合わないよう配慮した動き方で設計されている」のが 判明してまるで目から鱗だったのです!(驚)

こんな角張った出っ張りがちょこっと1mmにも満たない突出で尖っているだけで隣り合わせの絞り羽根が潜らないようにちゃんと配慮してあり、だからこそ噛み合わないのだと理解できたのです。

そもそも窪みの場所に隣接する絞り羽根のキーが入っているので黙って単純に重ねていけば 必然的に窪みの箇所で2枚の絞り羽根が噛んでしまいます (当然ながらそこで動きは停止)。 その時合わせて別の場所にある微かなめくれ上がりが隣接絞り羽根が噛まないよう仕向けて いる役目なのです。

・・こんな互いに影響し合う制御方法は人間業で設計できません!(驚)

一般的にほとんどのオールドレンズは「f値」を基に設計されている為「位置決め環」側は固定であることが多いですが、中には「t値」の場合もあり「位置決め環/開閉環」の両方が移動してしまう設計もあります (特殊用途向けとしてh値もある)。

f値
焦点距離÷有効口径」式で表される光学硝子レンズの明るさを示す理論上の指標数値。

t値
光学硝子レンズの透過率を基に現実的な明るさを示した理論上の指標数値。

h値
レンコン状にフィルター (グリッド環) を透過させることで具体的な明るさを制御するf値。

すると今回のモデルはまさに「位置決め環/開閉環の動き方はまるでt値そのモノ」なので、いったい「位置決め環」がどの位置にある時に「開閉環」の位置が来ているのか、そしてその時「絞り羽根の傾きと互いの隣接絞り羽根との関係性はどのように影響していくのか」という まさに三つ巴で観察しない限りとても掴めません。

その意味でこのモデルは単に絞り羽根を重ねていくと必ず噛んでしまい絞り羽根をキズ付ける事になります。しかもその関係性となれば前述の「スリット (切り欠き)」のどの位置にキーが来ていた時に互いが重なり合っているのかを「観察と考察」でちゃんと見出せない限りハッキリ言ってバラす事が適わず絞りユニットを丸ごと溶剤漬けして経年の揮発油成分を除去したつもりになっているような「ごまかしの整備」しか執れなくなります(笑)

↑上の写真は絞りユニットの中で絞り羽根を開いたり閉じたりする動きをする「開閉環」を撮っていますが、ご覧のとおりベアリングの転がりを利用して平滑性を担保する設計です。

するとベアリングだからそもそも平滑なのは互いが転がれば必然と考えるのがオチなのですが「原理原則」は違うのです(笑) 過去メンテナンス時の整備者はそれに気づかず硬締めしてこの開閉環を組み込んでしまいました。結果絞り羽根の開閉動作に「設計時の想定以上のチカラが必要になってしまった」が為にここから総てが狂い始めます(泣)

逆に言うならそのような整備者の思い込みが原因して結果的にスプリングをカットして短くする事でより強いチカラが及ぶよう処置したり、或いはその他のパーツをペンチでムリヤリ曲げて「ごまかしの整備」に至ります(笑)

要は詰まるところここのベアリングを利用した転がりの「原理原則」を見逃したからこそ総ての不具合か始まったワケで、当方は逆に今回のオーバーホールに於いて正しくこの「開閉環の機構部」を組み込んだだけに過ぎません。

然しながら残念ながら既に短く切られてしまったスプリングはどうにも戻りません。その他の操作棒やカムはどうにか近しい角度まで戻せますがビミョ〜な角度や向きの相違は現実的な 操作の不具合となって表れてしまいます(泣)

↑鏡筒をひっくり返して撮った写真ですが写真下側が前玉側方向にあたります。すると右横方向に「制御爪」が飛び出ていますが、この爪はスリット (切り欠き) がある「位置決め環」に備わります (赤色矢印)。鏡筒のその場所にも切り欠きがあるのでこれだけの距離を移動しながら スリットの位置が変化していく事を示しています。

その一方左横には「開閉キー」が刺さる箇所が備わり、ここも切り欠きの分の長さだけ移動するので「位置決め環/開閉環互いが動きながら絞り羽根の角度が変化していく仕組み」なのだと言っているのです。

↑上の写真は距離環やマウント部が組み付けられる「基台」に既にアルミ合金材のヘリコイド (メス側) がネジ込まれている状態を撮っています。ご覧のように微細なネジ山なのでフツ〜に「白色系グリース」を塗布すると塗りたての1年〜数年は良くても早ければ2年目から長くても数年で突然重いトルク感に変化してきます。やがてそのまま使い続けるとスカスカ感がでてきて最後はネジ山が噛んでしまい「製品寿命」に堕ちます。

上の写真ではヘリコイド (メス側) はピッカピカにシルバーですが当初バラした直後は真っ黒であり「摩耗したアルミ合金材の粉末がビッチリ状態」でした。どうしてアルミ合金材の摩耗粉だと明言できるのかと言えば、透明な溶剤に落として洗浄した後、その瓶の底にサラサラとアルミ合金材の微細な摩耗分が沈殿しているからです。古い「白色系グリース」を洗浄しただけですからアルミ合金材の微細な摩耗分がこのヘリコイド (メス側) のネジ山から溶剤でとれたのだとしか考えられません。

もっと言うならヘリコイド (オス側) は真鍮 (黄鋼) 製なので仮に摩耗するにしてもシルバーではなく「金色」の摩耗粉のハズなので瓶の底に沈殿していたシルバー色の微細な摩耗粉はアルミ合金材でできているヘリコイド (メス側) のネジ山としか見出せません!(笑)

この論説のいったたい何処にウソが混じっているのか?(笑)

当方が「白色系グリース」を貶すとウソを流布しているとSNSで指摘されるのですが(笑)、ではこの瓶の底に沈殿していた微細なアルミ合金材の粉末がいったい何処から現れたのかちゃんと解説するべきですね(笑)

ちなみに基台側も真鍮 (黄鋼) 製なのでもしも摩耗したと主張するならその摩耗粉は「金色」せめて古いグリースのせいで汚れていても茶色が精一杯で黄鋼材の摩耗粉がシルバー色に変色するなどあり得ません (不可能です)!(笑)

↑マウント部内部の写真ですが別個体からの転載です。マウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」が押し込まれると (ブルーの矢印①) そのチカラで「カム」が持ち上がって (ブルーの矢印②)「伝達アーム」が手前方向に移動します (ブルーの矢印③)。するとその先端に飛び出ている「操作棒」と言う細いアルミ棒が絞り連動ピンが押し込まれた時のチカラの分だけ動きます (ブルーの矢印④)。

従ってこの「操作棒」が常に掴んで離さない「開閉アーム」が操作されるので絞り羽根が瞬時に設定絞り値まで閉じる原理ですが、今回の個体はこのマウント部内部の「カム」と「操作棒」をムリヤリ曲げられ、且つ何と向きまで変えられていました(泣)

↑ちょっと横方向から撮影するとこんな感じになり「操作棒」がマウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」の押し込みにより (ブルーの矢印①)「カム」が操作されて (ブルーの矢印②) 結果最後に「操作棒」が勢い良く動く (ブルーの矢印③) のが分かると思います。

するとこれらの内部構成パーツの微調整機能がちゃんと用意されていて「締付ネジにマチが 備わり左右に約2mmほどズラせる」のをグリーンの矢印で指し示しています。

この微調整機能の締付ネジはマウント部摩周委をグルッと4箇所に渡り備えられていて全ての構成パーツの反応を微調整できます。

従って内部構成パーツたる「直進キー/絞り連動ピン/カム/伝達アーム/操作棒」の全てについてその位置調整と共に合わせて「反応レベルを変更できる」設計であってこの微調整機能が 相当難しいのです。

↑最終的にマウント面から飛び出ている絞り連動ピンが押し込まれると、こんな感じで勢い良く操作棒が瞬時にシャコンと傾くので絞り羽根がアッと言う間に設定絞り値まで閉じます。

するとここで気づいた人は相応の整備技術スキル者ですが「絞り連動ピンの押し込み量数ミリ程度に対して操作棒の振り幅は尋常ではない」点です。つまり押し込まれた絞り連動ピンの チカラがこの操作棒を設計してきた事で増大されて驚異的な振り幅を実現する仕組みを採ったのです。

要は過去メンテナンス時の整備者が「ごまかしの整備」を執る際、この「カムの傾きを変えて操作棒の振り幅まで変更した」その理由をご理解頂けたでしょうか?(笑)

もちろん今回のオーバーホールで当方が処置した内容はこれら「ごまかしの整備」で曲げられてしまったパーツを元のカタチに戻すべく処置しただけです。

↑さらにこの大変厄介な存在である「三角板」と共に附随するスプリングまで短く切られてしまったので、いくら元の状態に戻せば良いだけじゃないかと言われても「既に切られて短くなったスプリングは元に戻せない」のは当たり前で別の手法で微調整していくしかありません。

ちなみに今回の個体はこの「開閉キー」の設計が違っていて初めて見るタイプでした。おそらく製造が1965年と推測できるのでどうしてその時点で設計変更したのか不明です。

何故ならZeiss Ikonのカメラ事業撤退は1971年なので、1965年時点で何か処置する必要性をあまり感じられませんがそもそも上の写真の「開閉キー」さえも一度は再設計されたタイプなので、もしかしたら既にこの時点からこのモデルの絞り羽根制御に関し「組み立て工程で治具を使うにしてもあまりにも難しすぎる」と現場からクレームが入っていたのかも知れません。

すると「どうして三角板が必要なのか?」はその全ての根源が「位置決め環/開閉環両方共動いてしまう仕組みだから」とも指摘でき、さすがにそこから設計変更するにはコストが掛かりすぎていたのかも知れませんね。

その意味であの手この手でいわゆる「より簡素な組み立て工程に見合う設計変更」に努力していた表れなのかも知れませんが、その一方でマウント部内部の各構成パーツは一切イジられずだったので、なかなかロマンを感じますね(笑)

そう捉えるなら既に当時ヨーロッパでも好きなだけ台頭しまくっていたニッポン製オールド レンズ勢の「合理的な設計」を見るにつけ「どうしてもっと簡素化できないんだ?!」と散々上席 (おそらく役員レベル) から言われまくっていた設計陣の立場は、そのまるで人知を超えたが如く絞り羽根制御の素晴らしさとは裏腹に「金食い虫」扱いだったのかも知れないと、ちょっとした感慨深さに苛まれたりします(涙)

しかもとかくドイツ人は古き中世の世から胸にこういう「金属製プレート」を下げたい民族なのだともとれそうな(笑)、この曰く付きの「三角板」の存在も操作棒でカシャカシャやりたいのが詰まるところ大きな理由だったりして (いえそんな事は誰も言ってませんが) とにかく飽きないモデルです。

なおこのモデルの扱いはほぼ1年ぶりですが、来年の引退前にもう一度扱えるかどうかは全く不明です。だいたい今までの10本がほぼ1年に1本レベル (一昨年〜昨年だけ複数集めたが) なのでなかなか悩ましいところです。またオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際し即決価格は今まで「49,500円」でしたが (光学系の状態が良かった個体3本の話) 今回の個体は前述の問題から割り引いて「39,500円」です。マウントアダプタ経由でご使用予定の方、是非ご検討下さいませ。

↑今回出品の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はSkoparex 35mm/f3.4《oberkochenモデル》(M42)』の ページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。調達に際しちょっとヤバそうかしらと察知していたのですが、この光学系に耐えられませんでした(笑)

このモデル含め当時のCarl Zeiss製oberkochenモデルはたいていの市場流通個体でまともに 仕上げられていません。

それはそもそも前述のマウント部を基台にセットする際、それぞれの構成パーツの微調整が っていなければガチッとセットできず、且つ距離環を回すトルク感や絞り羽根の俊敏な動きなど実現できないからです。

そしてまさにこれらoberkochenモデルの光学系設計は秀逸でどのモデルをピックアップしてもその画に感嘆を覚えます。ある意味当時の旧東ドイツの如く国歌に対する従属の利益の流れが顕在していない分、それぞれの光学企業に様々なヤリようの余地が残りその伸びしろが素晴らしい製品を生み出す原動力になったのだと今だからこそ評価できます。

↑一にも二にも何しろこの光学系の状態が秀逸です! もちろんLED光照射でコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。多少後玉のコーティング層に微細な点状ハガレが光の反射加減で視認できますが「光学系内を透過してチェックすると微細な点キズしか見えない」ので秀逸なのです。

このモデルで初めての逸本でしょうか・・そういう話です。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

1枚目と3枚目にスッと円弧のキズのようなのが写っていますが反射なのでキズではありません。とにかくこのコーのレベルは今までの個体にないレベルです!・・あぁ〜素晴らしい!

↑光学系後群側もスカッとクリアでもちろんLED光照射で極薄いクモリが皆無です。多少後玉のコーティング層にカビ除去痕なのですが微細な複数の点キズ状に光の反射で見えてしまいますが内部から透過してチェックすると視認できません。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:16点、目立つ点キズ:10点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:13点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
(前後玉に微かな点状カビ除去痕が数点あり)
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(前後群内に極微細な薄い2mm長数本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射で確認しても極薄いクモリが皆無)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・第1群(前玉)コバ端に浮きが起きているので微細な白点があります。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑5枚の絞り羽根もキレイになり当初生じていた赤サビもキレイに除去できています。絞り環共々確実に駆動していますがこのモデルの絞り環操作は実絞り方式なので無段階式です (クリック感がありません)。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正五角形を維持」したまま閉じていきます。

冒頭解説のとおり残念ながらこのオールドレンズの個体単体だけで、或いはフィルムカメラに装着して使うと絞り連動ピンの押し込みが上手く押し込めなかったり絞り羽根の動きが不安定に至る事が時々起きます。再現性が必ずあるワケではないので距離環を回しているとすぐに正常に戻ってしまいますが、また時々同じ現象が起きたりします (その時も距離環を回すと正常に戻る)。

これらの原因は冒頭解説のとおり「カム」と「操作棒」のカタチを曲げられてしまった為で本来のカタチに戻したものの向きがピタリと適合していないのか傾きが適切ではないのか不明ですが再現性なく症状が現れます。

そもそもこれら問題パーツが内部でどのように動いているのかをチェックする手立てが無いのでこれ以上改善のしようがありません。

また距離環を回していても時々引っかかったり詰まったりして止まってしまう事がありますが、一旦距離環を回して再び無限遠位置方向に進むとちゃんと正常に戻ったりしています。

おそらく「カムの角度が本当に製産時点まで戻っていない」のと合わせて「操作棒の傾きと 向きがやはり製産時点に戻っていない」と分かっているのですが、何しろ前述の「締付ネジ4箇所」の微調整機能でガラッと不具合のレベルが変化していくので現状が最もその影響が低い/少ないレベルで仕上げています。

またおそらく距離環に影響を及ぼしているのはスプリングが短く切られてしまい「三角板が必要以上に傾く」ためにヘリコイドが干渉して詰まったり引っかかったりしているように考えますが、これも内部の状況を視認できないので推察以外方法がありません。

冒頭解説のようにそもそも絞りユニット内の「開閉環の機構部 (ベアリング)」の平滑性を取り戻したら改善するかと期待しましたが、そんな生易しい話ではありませんでした(泣)

従ってここは潔く「単体での操作性やフィルムカメラ装着を諦める」ことで改善の方向性を見つけて実現した次第です。

現状「マウントアダプタへの装着使用」を前提としてほぼ正常使用が適っています。「ほぼ」との表現に至る理由はそもそもこれら不具合の現象に再現性が低く必ず毎回起きないからで、取り敢えず仕上がった後にマウントアダプタに装着した状態で30回チェックの操作を行って現象が現れなかったので大丈夫/正常と判定しています。もしも現象が現れてしまった時は慌てずに、そのまま距離環を回して繰り出し/収納を1〜2回繰り返すと正常に戻るハズです (但しチェック時点ではマウントアダプタ装着状態で起きていませんが)。

要は「カム/操作棒/スプリングと合わせてその影響から三角板の場所が不安定」なのがいろいろな違和感の減少に繋がっているように見えますがちゃんと内部の動きを視認できていないのであくまでも推測の域を出ません。

・・申し訳御座いません。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が指に伝わります(擦れ感軽め)。
内部スプリングの経年劣化、及びパーツの変形など経年劣化に伴う影響で特に∞附近で絞り羽根開閉異常やトルクの問題が起きます。再現性のある現象ではないので正常に戻ることもありますしマウントアダプタ装着時は正常に使えます(事前告知済なのでクレーム対象としません)
(1) 1m〜∞間で引っ掛かりや詰まる事があるが、その時プレビューレバー操作すると正常に戻る。
(2) 絞り連動ピン押し込みできない事があるが、距離環を回していると正常に戻る。
(3) ∞附近で絞り羽根が閉じなかったり完全開放しなかったりする事があるが距離環を回すと正常に戻る。
(4) これら再現性がない現象はマウントアダプタ装着時はほぼ発生しない(単体操作時やフィルムカメラ装着時起きる)。従ってマウントアダプタ装着での使用をお勧めします。
・距離環を回していると内部から微かにキーンという金属音が聞こえる事がありますが内部パーツの擦れ音なのでトラブルに至る事はありません。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
本体『Skoparex 35mm/f3.4《oberkochenモデル》(M42)』
汎用樹脂製ネジ込み式M42後キャップ (新品)
純正樹脂製バヨネット式前キャップ (中古品)

ちなみに純正のバヨネット式樹脂製前キャップは引っ掛かりの爪が両サイドにあるので、装着時は外すのにちゃんと半周回して外れるのを確認して下さい。装着する際もちゃんと爪の位置を簡単に合わせてからチカラをかけずにまわして装着して下さいませ。樹脂材が経年劣化でだいぶ弱っているので爪が折れるとパカパカになります。

取り敢えず「マウントアダプタへの装着が必須」としてご認識頂き、且つできるだけK&F CONCEPT製マウントアダプタで「ピン押し底面」を凹み面にセットしてご使用頂くのがベストです。その他のマウントアダプタでの検証はできていませんし、そもそも絞り連動ピンの頭に「傘があるタイプ」なので詰まってしまいマウントアダプタ装着でもちゃんと使えない懸念があります (これは正常品でも同じ懸念があると言う意味です)。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離30cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。

↑f値は「f8」に上がっています。

↑f値「f11」になりました。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。「回折現象」の影響が現れ始めており解像度が僅かに低下しています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。