〓 FUJI PHOTO FILM CO. (富士フイルム) FUJINON 55mm/f2.2《後期型》(M42)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます
※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、国産の
フジカ製標準レンズ・・・・、
FUJINON 55mm/f2.2《後期型》(M42)』です。


このコロナ禍にあって、先月再び緊急入院してしまい体調が優れない日々が
続いています。皆様も同様大変な毎日を送っていらっしゃることとお察し
します

然しながら厳しさが募り悠長な事は言っておられず、今回に限り断腸の思い
でやむなくオーバーホール作業分の対価を省いた価格で出品します

是非とも皆様のお力添えでお助け下さいませ・・
(ちなみに作業対価分の金額がバラバラなのは微調整など難度の違いです)

今回扱うモデル「FUJINON 55mm/f2.2」シリーズ中の「M42マウント規格」品になると、当方での扱い数は累計で55本目にあたりますが、その中で「後期型」タイプになると今回が11本目です。さらに光学系内がスカッとクリアで透明度が高い個体数ともなれば僅か12本目 (55本中) ですから、このモデルの中で如何にクモリが無くてクリアな光学系を維持した 個体が少ないのかご理解頂けると思います (2割の率なのが現状)。

しかもその当方での扱い数に於ける「2割」と言う確率は、あくまでも当方が調達した「光学系に注意を払って手に入れた個体数の中での確率」と言えるので、この確率をそのまま市場流通数に当てはまるともっと痛い目を見るハメに遭います(笑)

実際当ブログのメインメニュー内「見たて依頼受付フォーム」を使って既に2本このモデルについてヤフオク! 出品個体に対する当方の見たて依頼を受け付けており、もちろんあくまでもヤフオク! 出品ページ掲載写真による事前確認ながらも、光学系の状態をチェックして当方の経験値から「写真撮影に支障を来さないレベルなのか否か」などの判定が役に立っているようです(笑)

その辺の判定と言うのが、なかなか掲載写真だけで判断できない、或いは掲載写真を見た限りではクリアに見えるなどのご指摘も依頼時にありましたが、当方がチェックすればもっと具体的に調べる事が適い判定を付けることができています (2件のうち1件は実際にご落札頂いて届いた現物でも当方の判定が確認できた)。

その意味で、当方も国内のヤフオク! のみならず海外オークションebayなど含め数多くの掲載写真で自ら判定し調達しているので「掲載写真と現物との整合性/乖離性」について少なからず経験値からアドバイスできるのが好評を得ています(笑)

今回扱うモデルFUJINON 55mm/f2.2 (M42)』のモデルバリエーションで捉えると「前期型/後期型」に大きく分かれますが、その「前期型」の中には一部に「総金属製」が非常に少ない台数で流通しています。

本来このモデルは「廉価版」としてそもそも発売当初から位置付けされていたので、筐体外装はエンジニアリング・プラスティック製なのが仕様です。しかしその設計は大きく違えて「前期型/後期型」でまるで別モノになっているのが現実であり、それはパッと見でなかなか判定できない要素でもありますが、逆に考察するなら「ここまで設計諸元をガラッと変えてしまったのはある意味設計ミスに抵触する」くらいの大問題だったのではないでしょうか。結果おそらくは当時の富士フイルムではコスト面でたいして旨味にならなかったモデルではないかと推察しています (それほどガラッと設計変更したモデルは珍しいから)。

例えばこれが超人気モデルで、市場評価を得て何年も売れ続けていたモデルなら理解できますが、1976年の登場から数年の期間しか製産されなかった現実を考えると、結果的に利益を食うだけ食って終わってしまった失敗作だったのかも知れません。もちろん「M42マウント規格」以外に後には「AXマウント規格」たるバヨネットマウントで登場させてまで廉価版の位置付けをキープさせようと試みたようですが、そもそもフィルムカメラ自体の衰退と言う時代の大きな潮流の中にあって、小手先だけでどうにかなる話でもなかったのでしょう。

1982年を以て富士フイルムはフィルムカメラも含め光学事業そのものから撤退してしまいますから、最後の断末魔だったのかも知れません。

ちなみに一部ネット上で「総金属製が初期に存在した」と紹介されていますが、それは間違いです。

《モデルバリエーション》
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

前期型:1976年発売
製造番号:12xxxx、13xxxx〜、34xxxx〜49xxxx
プラスティック製:距離環/指標値環/絞り環
金属製:フィルター枠/マウント部
距離環指標値:印刷 (アルミプレート板に印刷)
距離環成形材質:エンジニアリング・プラスティック材+金属製芯材
ヘリコイド (オス側):金属製 (鏡筒兼ねる)

後期型:
製造番号:5059xxxx、6973xxxx、8194xxxx
プラスティック製:距離環/指標値環/絞り環
金属製:フィルター枠/マウント部
距離環指標値:直接刻印
距離環成形材質:エンジニアリング・プラスティック材のみ
ヘリコイド (オス側):金属製〜途中からエンジニアリング・プラス
ティック製に変更 (鏡筒兼ねる)

上のモデルバリエーションで言うと「総金属製」の流通は「前期型」が製産されていた期間内に存在しますが、決して最初ではありません。また「後期型」も鏡筒が金属製からエンジニアリング・プラスティック製に大きく設計変更したタイミングもやはり途中からなので「前期型/後期型」はそれぞれある時期にスパッと一斉にチェンジしたのではないと考えています。
(それは物理的な各構成パーツの仕様の変遷と製造番号との整合性から捉えているから分かる)

従って例えば「後期型」の最初の時期にはまだ金属製のヘリコイド (オスメス) が存在しますし距離環の距離指標値も「途中まではアルミ板への印刷」であり、途中から従前の刻印方式に 再び戻っているワケです。

逆に言うなら「廉価版」の位置付けにこだわり大幅にコスト削減を試みたものの、大失敗して従前の設計に戻すしか手がなかったとも考えられます。もちろんその「大失敗」はエンジニアリング・プラスティック材の成分配合ミスと考えられますね(笑)

なお、このモデルの筐体外装材質面から解説しましたが、実は「後期型」で今回扱う個体と同じようにエンジニアリング・プラスティック製のヘリコイド (オス側) に代わり、結果的にヘリコイドグリースの粘性と成分に注意を払わないと距離環を回すトルクが1年で急に軽くなります (実際軽くなりすぎる)。

最も分かり易い例が「白色系グリース」を使った場合で、エンジニアリング・プラスティック材のヘリコイド (オス側) に設計した分、トルク調整はグリースの性質に大きく頼る結果に至っています (これは実際にオス側のネジ山数と勾配の変化をチェックすれば最も容易に理解できる)。

また光学系第1群 (前玉) の固定方法が「フィルター枠による押さえ込み式」に変わった為に、ヘリコイドグリースに「白色系グリース」を使った場合は「僅か1年で再び光学系内に揮発油成分が侵入する」状況に至ります。

特に最近はヤフオク! でもこのモデルを整備している出品者が増えましたが(笑)、もしも仮に「白色系グリース」を使っているのなら、ことこのモデルに関しては「1年で内部はすぐに ヒタヒタ状態に陥る」から覚悟が必要です (ヒタヒタの成分は白色系グリースの揮発油成分)。

もしもウソだと言うなら、実際にお手元の「白色系グリース」の容器内部を見てみると分かります。保管している状態だけなのに既に「透明な揮発油成分が滲み出てきている」のが分かるので、どうしてオールドレンズ内部なら大丈夫だと断言できるのか具体的にエビデンスを掲示して説明してもらいたいです(笑)

何でもかんでもトルクを軽く仕上げられるからと「白色系グリース」を使うと、このように 何の為に整備したのか本末転倒と言うハメに陥りますね(笑) それを分かってそのように整備しているのなら「確信犯」であり、知らぬまま整備しているなら「シロウト整備はやめろ!」と言うお話です(笑)

まッ。タダでさえ前後玉のコーティング層が劣化に弱いので「白色系グリース」のせいで余計に促進しているような話になってしまいます(笑) 同じ「白色系グリース」を使うにももう少しちゃんと考えて使ったらどうなんでしょうかね?(笑)

↑今回出品の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説は「FUJINON 55mm/f22 《後期型》(M42)」のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。モデルバリエーションでいうところの「後期型」にあたり、且つ距離環の距離指標値は刻印です。そして「後期型」なので距離環と指標値環のエンジニアリング・プラスティック材は強度が増しており「ヒビ割れがおきにくいタイプ」なので安心して使えます。

それはそもそも今回の個体の鏡筒 (ヘリコイド:オス側) 自体が同じエンジニアリング・プラスティック製なので「ネジの締め付けが効く」事からも自明の理です。その意味で「前期型」のエンジニアリング・プラスティック材は成分配合をミスッたのだと当方では考えている次第です。

今回は同じ「後期型」でも距離環の距離指標値が印刷アルミ板ではない刻印方式のタイプをチョイスしました。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群側もLED光照射で極薄いクモリが皆無です。後群内は3回清掃しましたが除去できない極微細な点キズが少々多めです。従ってパッと見で「微細な塵/」に見えてしまいますが、清掃で除去できません。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:16点、目立つ点キズ:10点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズなし)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑5枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正五角形を維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「重め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。またマウントアダプタなど装着時に繰り出し/収納操作すると内部からカリカリ音が聞こえてきますが、これはアームが爪に掴まれたまま直進動する際の擦れ音であり仕様上改善できません(クレーム対象としません)。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
マウント面から突出している「開放測光用の爪」を残してあります。恐れ入りますが切削が必要な場合はご落札者ご自身で作業お願い申し上げます
(当方では切削しません)

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
marumi製MC-Nレンズガード (新品)
本体『FUJINON 55mm/f2.2《後期型》(M42)』
汎用樹脂製ネジ込み式M42後キャップ (新品)
汎用樹脂製スナップ式前キャップ (新品)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑上の写真解説のとおり「開放測光用の爪」がマウント面から飛び出ています (グリーンの矢印)。当時のFUJICA製フィルムカメラ「ST-801/901/AZ/1」などに装着すると開放測光機能がご使用頂けます。

もしもマウントアダプタ (ピン押し底面タイプ) 経由デジカメ一眼/ミラーレス一眼に装着される場合は、ご使用になられるマウントアダプタによってはマウント面の「開放測光用の爪」が当たって擦れるので/最後までネジ込めないので切削する必要があります

申し訳御座いませんが切削にはご落札者様自身で行って下さいませ (当方では切削しません)。

↑当方所有のK&F CONCEPT製M42 → SONY Eマウントアダプタに装着した状態を撮影しました。マウントアダプタのオールドレンズ側マウント面に「1㍉弱」の突出があるので、ご覧のように隙間が空きますが、同時に「開放測光用の爪」が当たらないので最後までネジ込めます。

このK&F CONCEPT製マウントアダプタのマウント面の突出はこれら「FUJICA製M42マウントの開放測光用の爪を避ける目的」で突出しているのでありがたいです。同様mamiya製mamiya/sekorなど「SXシリーズ」もマウント面から飛び出ている金属製の棒状ピンを避けられるのでご使用頂けます。

この時の絞り羽根の閉じ具合を撮影しました。絞り環を回して最小絞り値「f16」まで回した時の、絞り羽根の閉じ具合です。

ちゃんと最小絞り値まで閉じて、もちろん正五角形を維持したまま閉じています。

↑同じように今度は日本製のRayqual製品に装着したところを撮りました。同様マウントアダプタのオールドレンズ側マウント面に「1㍉強」の突出があるのでご覧のような隙間が空きますが、前述のとおり「開放測光用の爪」を避けられるのでちゃんと最後までネジ込めます。

この時絞り環を回して最小絞り値まで絞り羽根を閉じた時の状態を撮影しました。やはりキッチリ最小絞り値「f16」まで正しく閉じています。

もちろん絞り羽根は「完璧に正五角形を維持」したまま閉じていくので安心です。

↑当レンズによる最短撮影距離60cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影していますが。絞り環の刻印は「●」の単なるドット表示です。

↑さらに回してf値「f4」で撮影しました。

↑f値は「f5.6」に上がっています。

↑f値「f8」になりました。

↑f値「f11」です。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。そろそろ極僅かですが「回折現象」の影響が現れ始めているでしょうか。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。