◎ Steinheil München (シュタインハイル・ミュンヘン) Auto-D-Quinon 55mm/f1.9 zebra(M42)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます
※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

オーバーホール/修理ご依頼分ですが、当方の記録用として掲載しており
ヤフオク! 出品商品ではありません (当方の判断で無料掲載しています)。
(オーバーホール/修理ご依頼分の当ブログ掲載は有料です)


今回扱うオールドレンズは、旧西ドイツの老舗光学メーカーSteinheil München製標準レンズ『Auto-D-Quinon 55mm/f1.9 zebra (M42)』です。前回オーバーホールしたのが2016年だったので、いつの間にか4年も経過してしまいました。ッて言うか実は非常に厄介な微調整を強いられる為に普段から敬遠しているオールドレンズだったりします(笑)

この当時の特に旧西ドイツ製オールドレンズ、Schneider-KreuznachやSteinheil München、Rodenstock、A.Schacht Ulm、ISCO-GÖTTINGENなどなど、凡そゼブラ柄モデルに関しては高難易度な整備スキルを要求されるオールドレンズばかり存在します。

例えば「イモネジ」と言うネジ頭が無くてネジ部にいきなりマイナスの切り込みを入れたネジ種がありますが、内部に使われているほぼ 全ての環 (リング/輪っか) にその「イモネジ」があったりします。

さらに金属材としてゼブラ柄時代のオールドレンズには、まだまだ 真鍮 (黄鋼) 製の環 (リング/輪っか) が多用されていた為「イモネジ」の締め付け具合如何で仕上がった時の操作性が大きく影響を受けます。パーツを締め付け固定する目的で「イモネジ」を用意したワケですが、それは「微調整を伴いつつ締め付け固定する」のか、或いは「純粋にその位置で締め付け固定する」のか大きく2つの意図を以て設計されています。

従って過去整備時の整備者がちゃんとその意図を汲み取って整備したのであれば、経年劣化の度合いもまた変わるのですが、今までにバラした2,000本以上のオールドレンズに関して言えば、たいていの場合「イモネジの意味を理解しない整備者の手で整備されている」事がとても多いですね(笑)

その「イモネジ」に限らず普通の固定用ネジ (皿頭ネジ/鍋頭ネジなど) の用途の違い、或いは「留具」の使い方すら理解しない整備者が意外に多くビックリです(笑) どうして整備者だと断言できるのかと言えば、ヘリコイド (オスメス) やその他をバラして組み上げられるスキルを持つので、いわゆる趣味レベルのシロウト整備ではありませんし、もっと言うならいまだに数多くの整備会社で似たような整備が続けられているワケで、甚だ「???」状態です(笑)

  ●               ● 

1956年に発売されたシルバー鏡胴モデル「Auto-Quinon 55mm/
f1.9 silver
」が初代の「Quinon (キノン)」銘オールドレンズになりますが、典型的な4群6枚のダブルガウス型構成の光学系です。
(左は発売当時のカタログより抜粋)

マウント規格が「M42マウント/exaktaマウント」と用意されますが、フィルムカメラ側の
シャッターボタンへのリリースボタンを備え「A/M切替操作」を兼ねた設計で登場していま した。事実上フィルムカメラ側シャッターボタンの機能を有する機構と言い替えられますが、実はここがポイントになります。

今回扱うゼブラ柄モデルが登場するのは1962年ですが、モデル銘に「Auto-D」が附随する新たなシリーズとして登場しています。

実はこの「Auto-D」の「D」について、某有名処サイトの解説では「Diaphragm (絞り)」でありマルチコーティングの事ではないと案内されていますが、当方の見解は全く違います。

何故なら「Diaphragm (絞り)」が自動化されたのは、1956年に登場したシルバー鏡胴時代で既に完結しています。シャッターボタンも兼ねるリリースボタン自体が「A/M切り替え操作も兼ねていた」ワケですから、自動化を今さらながらに「赤色文字で強調までして」発売させる意図がありません。ましてや旧西ドイツの製造メーカーとなれば、モデル銘を選定する際は、ラテン語/英語表記ではなくまずはドイツ語で相応しいモデル銘を選んでいたはずなので、ラテン語/英語表記の「Diaphragm (絞り)」をシリーズ銘に据える事は考えられません (ドイツ語の頭文字を採ってくるハズ)。

この当時の旧東西ドイツの光学メーカーの慣わしとして「コーティングについて赤色表記させる事が多かった」と言えます。例えば旧東ドイツはCarl Zeiss Jenaの「zeissのT」はモノコーティングであり、その後に登場したコンタックスブランドでのマルチコーティングが「T*」ですね。他にも「V」刻印を採用していたMeyer-Optik Görlitz (旧東ドイツ) やSchneider-Kreuznach (旧西ドイツ) では「」だったりします。

いずれも当時の最先端技術の一つとしてコーティング層の蒸着を「赤色表記」していたワケですが、今回のモデルで言えば上の広告を見る限り「光強度」つまりは「透過率」を向上させたモデルとして軽くドイツ語で説明しています。従ってこれを読み解くと「Das einfallende Licht Durchlässigkeit」と言う「入射光透過率」の頭文字を採った「Auto-D」シリーズとの当方考察に至ります。

要はマルチコーティングではなくてモノコーティングを指しますが、光の三原色に対してより反射率を低減させる事によって透過率が上がり「解像度の向上に寄与した」事を指す「D」と言うのが当方にとっては自ら納得できる考えです。

すると例えば同じ頃に存在した「MACRO S」の「S」はいったい何を指すのかと言う疑問が湧きます(笑)

実はこの「S」シリーズには「S」を附随しないモデルがあったりするので (内部構造同一) まさに米国向けにアメリカに於ける独占販売権を有する「Seymour (シーモア)」製モデルたる意味づけの「S」でありこちらこそまさしくコーティングなどの意味ではありません(笑)

  ●               ● 



上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端からピント面の背景の円形ボケに注目して溶けていく様をピックアップしましたが、そもそも円形ボケのエッジを維持させること自体が難しいようです。ある意味円形ボケが苦手な部類に入るワケで、それもそのハズ4群6枚のダブルガウス型光学系となれば仕方ありません。しかしここで注目したのは「そのピント面の鋭さ感」です。

鋭さ感」と「」を入れたのには意味があり、基本的に繊細で細いエッジを伴うピント面なのですが、アウトフォーカス部の滲み方に「対応力」があるようで、トロトロに溶けてしまう場合もあればコントラストが高く出てより一層ピント面を強調してしまう場合もあって、他のオールドレンズのように一概に「細いエッジ/骨太なエッジ」と共通項的に捉えられない独特な特徴がこのモデルにはあります。

二段目
それがこの二段目で集めたピックアップ写真で表現されていますが、繊細で細く写ったり骨太にも見えたりとアウトフォーカス部の滲み方が一定ではなく「様々なシ〜ンに対応できる」と受け取れます。

実はこの当時の評価記事を見ていて (英語圏) 似たような印象を受けた執筆者が居たようで(笑)当時の競合相手たる旧東ドイツはCarl Zeiss Jena製「Biotarシリーズ」や旧西ドイツのSchneider-Kreuznach製「Xenonシリーズ」さえも敵わないと最高評価を与えて絶賛している記事だったりします(笑)

三段目
そして極めつけがこの三段目で、左側の白黒写真 (2枚) を見ても「特にカラー写真とその雰囲気が変わらない」点に感心させられてしまいました。と言うのもこの当時のオールドレンズはシルバー鏡胴時代なら一般市場での主流はまだ白黒フィルムでしたから「カラーとはまた異なる描写傾向になる」のが普通です。一般市場でカラーフィルムが主流になるのは早くても1970年代ではないかと考えるので、すると今回のモデルが登場したゼブラ柄時代に於いてこれだけカラーと白黒とで同じ描写性 (表現性) をちゃんと維持できている事に、むしろ逆に感心させられてしまったと言うのが正直なところです。

それは右側の2枚の写真で確定してしまいました。このダイナミックレンジの広さはタダモノではないと、まさにBiotarやXenonよりも上だと評価されたのが納得できてしまいます。

前述のとおり光学系は典型的な4群6枚のダブルガウス型構成なのですがシルバー鏡胴の初代のモデルからゼブラ柄発売の段階で再設計している事が今回バラして光学系の清掃時に当方の手によるデジタルノギスでの計測で明確になりました。

上のカタログの抜粋に載っている構成図と比較してみると分かり易いです。従って「Auto-D」考察の裏付けにもなり検証できたと結論しています。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。内部の構造はそれほど複雑ではなく、構成パーツ点数自体も決して多くないのですが、何と言っても「飛んでもなく厄介な部位」が存在するので、そこだけで丸一日がかりです(笑)

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルはヘリコイド (オス側) が独立しているので別に存在します。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑5枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを鏡筒最深部にセットします。

↑完成した鏡筒を立てて撮影しましたが、上側が前玉側方向になり写真下が後玉側方向です。すると鏡筒からは「連係ガイド」と言う溝が1本飛び出ているだけの、非常にシンプルな設計です。

鏡筒最深部 (上の写真で下側) に絞りユニットが位置しますから、そこから連結して飛び出て いるのが「連係ガイド」でブルーの矢印のように移動範囲が決まっています。

ここでのポイントはグリーンの矢印で指し示した「連係ガイドの長さ」です。この長さ分だけ鏡筒が繰り出される話になるからです。

↑上の写真は完成した鏡筒を「前玉側方向」から見た時の状況を撮影しましたが、開閉環の縁 (の内径) よりも「絞り羽根が顔出ししている」ように見えます (と言うか実際に絞り羽根が出ている)。

↑こちらは今度はひっくり返して「後玉側方向」からの撮影です。すると「位置決め環の内径にピタリと合致している」のが明白であり「決して絞り羽根の顔出しではない」事がこれで分かりました。

ちなみに「開閉環/位置決め環」の相違は前述しています。

↑距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。

↑真鍮 (黄鋼) 製のヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑同じように無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでヘリコイド (オス側) をネジ込みます。このモデルでは全部で10箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

前述のとおり「連係ガイドの長さ分鏡筒が繰り出される」事が、このヘリコイド (オスメス) の長さを見ただけでも理解できます。もっと言うなら「オスメスのネジ山の勾配」を見れば相当に急勾配でネジ切りされているのが一目瞭然ですから、ゆっくり繰り出すのではなくググッググッとどんどん繰り出されるタイプのオールドレンズであることも分かりますね。

何を言いたいのか???

要はこれだけ長いネジ山の距離で急勾配のネジ切りとなれば「距離環を回すトルクを軽くするのが相当難しい」と言えます。ある意味マクロレンズにも匹敵するくらい急勾配なヘリコイドです。

↑ヘリコイド (オスメス) をネジ込んだ状態で「最短撮影距離の位置まで鏡筒を繰り出した状態」を再現しました。するとヘリコイド (オス側) に「直進キー」と言う板状パーツが両サイドで2箇所刺さっているのが分かります。さらにその「直進キー」の最先端部だけで引っ掛かって停止している事も分かりますね (グリーンの矢印)。

今回のオーバーホール/修理ご依頼内容の中に「距離環を回した時のトルクムラが酷い」と言うのがありましたが、その原因は「直進キーを完全固定していなかったから」です。

つまり今回の個体をバラしたところ「直進キーの固定用ネジ4本が完全に締め付けられていなかった」ワケです。従って両サイドの「直進キー」は多少グラついているような感じでした。

これは経年で締め付けネジが緩んだのではなく「過去の整備時に故意にワザと締め付けなかった」事が明白です。何故そう断言できるのかと言えば、両サイドに1本ずつヘリコイド (オス側) にささる「直進キー」には、それぞれ2本ずつの締付ネジがあるからです。

もしもこれが経年で緩んだのだとすれば、2本ずつある締付ネジの緩み方が違うハズだからです。おそらく内側のネジのほうの緩みが多くなり外側がそれほど緩んでいないのが経年の状況のハズです。

この事から導き出されたのは「使ったグリースではトルクが重くて仕方なかったので締付ネジを緩めて軽くした」いわゆる「ごまかし整備」の類です(笑) 従ってオーバーホール/修理の ご依頼内容の一つ「距離環のトルクムラ (特に最短撮影距離位置付近で重い)」は、まさにグラついていた「直進キー」の緩みと言うお話です。

↑そしてさらに注目すべきは上の写真で、グリーンの矢印で指し示したとおり「直進キーが刺さるべきヘリコイド (オス側) の溝」には途中に「ネジが突き出ている」箇所があります(笑)

この溝部分を「直進キー」の板状パーツが行ったり来たりスライドするのでヘリコイド (オス側) が繰り出されて鏡筒が飛び出てくる概念ですね。

直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目

何を言いたいのか???

今回の個体も同じですが、まず過去メンテナンス時に間違いなく「直進キーガイドにグリースをたくさん塗る」のが常であり(笑)、直進キーが滑らかにスライドするよう配慮しているつもりなのですが、実はそれは「整備者の思い込み」であり、この溝部分にグリースを塗ったくっても何も意味がありません。

特に今回のモデルのように「途中にネジが飛び出てきている」となれば、それが極僅かだとしても「平坦ではない事の証」には100%間違いないワケで、ではいったいどうやってここを スライドしていくのかと言う話に尽きます。

これこそが「原理原則」であり「観察と考察」であり、それを熟知しているか否かで仕上がり状態も全く別モノになります(笑)

ちなみに今回のオーバーホールではこの「直進キーガイド」部分には一切グリースを塗っていませんが(笑)、それでもちゃんととても滑らかで「軽い」操作性のトルク感に仕上がっています (基本的に当方のオーバーホールでは直進キーガイドにはグリースを塗らない)。逆に言うなら、この溝部分を板状パーツが互いに金属面で接触したままスライドしている状況と言えますから、このカラクリが分からない限り「整備者になる資質欠如」とも断言できますね(笑)

↑距離環を仮止めしてセットしますが、赤色矢印で指し示したように残念ながら今回の個体は「溶剤による洗浄時に距離環の距離指標値部分が剥がれてしまった」ワケです。

通常製産時に焼付塗装されているので「溶剤で洗浄しようが一切剥離しない」ので、今回の 個体は既に過去メンテナンス時点で剥がされ着色されていた個体と推測できます。

と言うのも、当初バラす前の時点で既に汚く剥がれており、触っているうちにさらにポロポロと剥がれました。溶剤で洗浄しただけで全て溶けてしまったので、逆に「磨き研磨」したのが赤色矢印の箇所です。

↑ベアリング+スプリングを組み込んでから絞り環をセットします。スプリングの長さがとても短いので絞り環を回す時のクリック感を強くすることができません。

↑こちらはマウント部内部の写真ですが、既に各構成パーツを取り外して当方により「磨き研磨」した後の状態を撮っています。

↑このマウント部内部にセットされるパーツが上の写真で、まさに「これでもかと言わんばかりに高難易度な微調整を強いられる箇所」であり、ここの組み立て工程とその微調整作業だけに丸一日かかったと言うワケです(笑)

マウント面から飛び出る「絞り連動ピン」があり、一方鏡筒から飛び出ている「連係ガイド」の溝部分に刺さってダイレクトに絞り羽根を開閉操作している「開閉アーム」も備わっています。「制御環」によって絞り羽根の開閉角度が決まる仕組みです。

するとグリーンの矢印で指し示した箇所の環 (リング/輪っか) が真鍮 (黄鋼) なのですが、実は当初バラした時は経年劣化に拠る酸化/腐食/錆びで「焦茶色」でした。「磨き研磨」したので上の写真の状態になっています。

↑すべて組み立てた状態を撮りましたが、マウント面から飛び出る「絞り連動ピン」が押し込まれると (ブルーの矢印①) そのチカラが何倍にも増大して「開閉アームを傾倒させる」仕組みなのですが、その移動量たるやブルーの矢印②ですから相当なモノです。

通常一般的なオールドレンズでは「絞り連動ピンが押し込まれた時のチカラはそのまま伝達」されますが、このモデルではそのチカラを増幅する工夫が設計されていたワケです。

そのカラクリの中心的存在なのが「吊り上げ具」であり、このカタチと歪曲度に「制御環の滑らかさ」が大きく影響して結果的に「開閉アームが望む傾倒位置まで倒れ込んでくる」と言う前代未聞の設計概念です(笑)

当方ではこの「吊り上げ具」を指して「安全ピン」と呼んでいます(笑)

↑反対側から撮影しましたが、こんな感じで「開閉アーム」がニョキッと倒立します。

↑実はさんざん組み立ててマウント部内部に組み込んで一通り組み上げてから絞り連動ピンの動きや最終的な「開閉アームの倒れ方」などをいろいろと微調整したのですが「何度やっても期待値に及ばない」ので「???」でした(笑)

この組み立て工程だけで微調整も含め一日目は4時間費やしましたが、結果的に「スプリングがもう1本足りない」との結論に至り、代用スプリングをセットしたのが上の写真です。いろいろな代用スプリングを見つけてはセットして「開閉アームの倒れ方」をチェックして、また探しては入れ替えてを延々と繰り返しました(笑)

スプリングは「常時絞り羽根を開こうととするチカラ (グリーンの矢印①)」と「常時閉じようとするチカラ (グリーンの矢印②)」の2つの相反するチカラが必要なのが一般的です。

何とお恥ずかしい事に「スプリングの欠品に気が付くのに一日かかっている」始末であり(笑)まさに如何に当方の技術スキルが低いのかを如実に物語っています(笑)

左写真は過去にオーバーホールした広角レンズ35mmの同じ部位ですが、全く同一の機構部として設計されているのが分かります。

最初から過去の写真データをひっくり返して探せば良いものを、面倒くさいからぶっつけ本番作業したのがそもそも間違いのもとです(笑)

過去メンテナンス時にどうしてスプリングを外してしまったのか、まだこの時点では気が付いていませんでした(笑) 逆に言うと「安全ピン (吊り上げ具)」のカタチ如何で「絞り連動ピン」を吊り上げたり/戻したりのタイミングが変わりますから、このカタチを過去メンテナンス時点で既にイジられてしまうと大変なことになります。

今回の個体のオーバーホールで丸々2日掛かりになってしまった根本的な理由は、過去メンテナンス時に「安全ピン (吊り上げ具) のカタチをイジった」からであり、吊り上げ/戻しが適切に動くよう「再びカタチを整える作業」が飛んでもなく大変だったからです(泣)

安全ピン (吊り上げ具)」の歪曲度合いはもちろん膨らみ方や絞り方、或いはバネの反発力の目的になっている互いが交差している箇所の曲がり具合など、凡そ全てのカタチについてほんの僅かに変わっただけで「絞り連動ピンと開閉アームの動き方がガラッと変わる」次第です。

どうしてこんな「安全ピン (吊り上げ具)」のカタチに設計してくれたのか(笑)、確か4年前も 相当恨んだのを記憶してます(笑) 今まさにそれと同じ状況なワケで「4年経っても何も学んでおらず技術スキルに進歩が無い」と言う情けない話ですね(笑)

↑何とも恨めしい写真ですが(笑)、こんな感じでマウント部が組み上がります。しかし、実は 上の写真は2日目の8時間後に撮った写真です(笑) 8時間も何をやっていたのか???(笑)

↑こんな感じで完成したマウント部がセットされます。

↑絞り羽根の開閉動作をチェックする為にマウントアダプタにセットしたら・・「!!!
赤色矢印のように隙間 (1mm) が空いてしまい最後までネジ込めません。もちろんこの状態では当然ながら「無限遠合焦しない」ワケです。

↑今度は日本製のRayqual製マウントアダプタに装着しますが、やはり赤色矢印のとおり隙間が空いています (約0.7mm)。同様無限遠が出ていません (アンダーインフどころの話ではなく 全く足りていない)。

↑それもそのハズで上の解説のとおり「ネジ山は8mmの突出」なので、マウントアダプタ側の「6mmの深さ」では対応できないのが当たり前です。

つまりこのモデルは「無限遠位置が違う」製品であり、装着対象のフィルムカメラの規格で 設計されている事が明白です (ウソだと言うなら8mmの説明をしてください)。SNSで当方は ウソつき呼ばわりなので(笑)、具体的に示さないと信じてもらう以前の話だったりします(笑)

さらに飛び出ている「絞り連動ピンの頭部分のカタチ」も記憶しておいてください。上の写真は過去にオーバーホールした別個体からの転用写真なのです (絞り連動ピンの頭が違う事を示す為)。

↑今度は前述の1mmの隙間が空いているK&F CONCEPT製マウントアダプタに装着した状態で後玉側方向から撮影しています。すると「ピン押し底面に絞り連動ピンが当たらない」もっと言うなら「絞り連動ピンの位置が相当内側」なのが分かると思います。

M42マウント」なのでマウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」を強制的に最後まで 押し込んでしまう「ピン押し底面」と言う棚が内側に張り出ているマウントアダプタを使います。

ところがその「ピン押し底面の内径よりもさらに内側に絞り連動ピンが居る」から絞り連動 ピンは一切押されないままと言う話です。

↑同様日本製Rayqual製マウントアダプタに装着しても同じです。やはり「絞り連動ピンは押されないまま」です。つまりこのモデルは「M42マウントの規格が別モノ」と言えるのではありませんか?

・・と言うとまたウソを載せていると非難囂々なので(笑)、取り敢えず何も言いません!(笑) さすがに「絞り連動ピンの位置」までは当方オーバーホールの技術スキルとは関係ないと考えるのですが、それすら認めてもらえないのでもぅいいです(笑)

↑最後に、上の写真は今度は「光学系前群の格納状況」を解説しています。鏡筒内側を見ても 光学系前群の外壁を見ても「何処にもネジ山が存在しない」事をグリーンの矢印で指し示しています。

鏡筒内部に「光学系前群がストンと落とし込まれてフィルター枠で締め付け固定しているだけ」と言う唖然としてしまう設計概念です(笑)

実は当初バラす前の実写チェック時点で既に「ピントが甘い」事を認知していたので何かしら原因があると分かっていました。さらにフィルター枠を見た時に「締め付け固定のイモネジが3箇所もある (オレンジ色矢印)」ので、もうその段階で「光学系前群は落とし込みなんだ!」と気づいていました。

つまり過去メンテナンス時の整備者はこの「原理原則」を無視した為、光学系前群が確実に格納されなかった為に「甘いピント面」に陥っていました。真鍮 (黄鋼) 製の光学系前群格納筒が経年劣化で酸化/腐食/錆びが発生してしまい、鏡筒内部に落とし込む際の抵抗/負荷/摩擦として擦っていた為に「本来の適正な光路長に至っていなかった」のが甘いピント面の原因です。

それ故「磨き研磨」してストンとちゃんと最後まで落とし込めるよう処置したワケです (グリーンの矢印)。光学系前群の上から締付環で締め付けるのであれば確実に格納できますが、フィルター枠では心許なく心配ですね(笑)

逆に言えばフィルター枠にあるイモネジが3本なのを見てすぐに気が付かないのがそもそもダメです(笑)

どうしてイモネジが1本で良いのか、どうして3本必要なのか・・その道理が理解できなければ注意すべき箇所すら分かりません。当然ながら今回のオーバーホールではキッチリ光学系前群を格納できたので「本来の鋭いピント面」に戻りました。

この後は全て組み上げてから無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行えば完成です。

修理広告DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑2016年以来4年ぶりとは言え、さすがに丸々2日掛かりなのは「技術スキルの低さを思い知った!」とひたすらに自己反省ですッ!(笑) そもそもスプリングの欠品に気が付かないと言うのがお話になりません!(笑)

結局「M42マウントの規格が違う」のでA/M切替スイッチを装備していても「手動 (M)」設定でしか使いようがありません (フィルムカメラなら別)。マウントアダプタの「ピン押し底面」が意味を成さないのではどうしようもありません。

従って2日目は一度仕上げた「自動絞り (A)」の状態を解除させて、再び「手動絞り (M)」の 内部状況に戻したワケですが、もっと言うなら一度「自動絞り (A)」での微調整に処置して しまったので「手動絞り (M)」に戻すと言っても、その微調整レベルが違います (安全ピン のカタチの問題)。

それに四苦八苦したのが2日目であり、さらに8時間も時間を費やしたワケです。

どんだけスキル低いんだョ!!!」と少々自己嫌悪状態・・(笑)

コーティング層はご覧のとおり「パープルアンバー」なのでマルチコーティングではなくモノコーティングですね(笑)

↑光学系内はコーティング層のハガレが多少ありますが透明度が高く、LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。

↑光学系後群側も特に後玉表面側にコーティング剥がれが多めですが写真には影響しません。もちろんLED光照射で極薄いクモリが皆無です。

上の写真のとおり「絞り連動ピンの頭が短い」のが今回の個体で、おそらく「絞り連動ピンの頭部分を切削してしまった」と考えられます。その理由は「マウントアダプタにネジ込めないから」であり、逆にフィルムカメラへの装着なら絞り連動ピンの押し込み板があるので関係ない話になり、ちゃんと最後までネジ込んで使えます。

つまり過去メンテナンス時の整備者はマウントアダプタでの使用として「絞り連動ピンの頭を切削してしまった」と考えられますが、そもそも「8mmのネジ山突出」なので、無限遠合焦せず切削しても意味がありません。

↑5枚の絞り羽根も油染みが残っていましたがキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正五角形を維持」したまま閉じていきます。しつこいですが 絞り羽根の駆動は「手動絞り」のみであり「A/M切替スイッチ」の設定は意味が無くなっています (つまり当初バラす前の状態に戻しました)。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑一応「それらしく黒っぽく着色」しましたが下手クソなので本当に申し訳御座いません。 もしもご納得頂けない場合はご請求金額よりご納得頂ける分の金額を減額下さいませ。減額の金額は「最大値ご請求額」までとして (つまり無償扱い)、大変申し訳御座いませんが弁償 などは対応できません。申し訳御座いません・・。
(当初バラす前の状態と同様に引っ掻いたり溶剤を付けたりすると塗膜がポロポロと剥がれたり溶けたりします)

塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」を使い「普通」人により「重め」の印象に感じられものの「全域に渡り完璧に均一」なトルクを維持しています。当初バラす前の段階で発生していたトルクムラは微塵もありません(笑)

またマウントアダプタ (K&F CONCEPT製/Rayqual製) に装着して隙間が空いた状態のままで「無限遠合焦する」ようヘリコイド (オスメス) をネジ込んだので、ちゃんと使えます。その際はK&F CONCEPT製マウントアダプタの「ピン押し底面」をひっくり返して「凹面」を向けてセットし直し下さい。そうする事でより深くネジ込めるようになります。

これは現在市場流通している「M42マウント規格」のマウントアダプタの中で「唯一ピン押し底面の深さを変更できるマウントアダプタ」であり、たかが僅か「0.5mm」程度の凹みですが「絞り連動ピン」への抵抗として考えると非常に大きなメリットになります。製造/販売元メーカーたるK&F CONCEPT社でさえ一切案内がありませんが(笑)、両面使いである事は確認済です (だからこそ当方の基準マウントアダプタに据えている)。

但しその影響を受けて (鏡筒の収納位置の問題から) 距離指標値の「7m〜∞」箇所に於いて「f16で停止して最小絞り値f22まで絞り羽根が閉じない」現象が発生します。これは無限遠合焦させる為に鏡筒をより深く格納させている為に、前述のマウント部内部にある「吊り上げ具 (安全ピン)」が突き当たるからであり、改善のしようがありません。

この点についてもご納得頂けない場合は同様減額対象とします (やはり弁償はできません)。 申し訳御座いません・・。

↑従って「A/M切替スイッチ」は「自動 (A) /手動 (M)」いずれの場合でも機能しないよう内部で処置してあるのでどちらにセットしても「手動絞り」でしか動きません。また距離環の距離指標値「3m〜0.35m」間についてはちゃんと最小絞り値「f22」まで絞り羽根が閉じます。

このモデル本来の「鋭いピント面」も復活しているのでご安心下さいませ。写真のように「Edixa-mat」刻印なので、旧西ドイツのwirgin製Edixa-mat Reflexフィルムカメラ用「M42マウント規格」として設計してあるのかも知れませんね。

Edixa-mat Reflexフィルムカメラの説明は多くのサイトが案内していますが、肝心な「M42 マウント規格の違い」については誰一人触れていないので、いつまで経っても当方が「自分のオーバーホールの仕上がりが上手く行かなかった言い訳でウソを載せている」「低い技術スキルを棚に上げて平気でウソを載せている」など非難囂々と言うワケです(笑) フィルムカメラのウンチクを並べるのも必要だと思いますが、まず第一にマウント規格の注意事項をちゃんと案内するのが読者に対する礼儀のような気がします

いわゆる「インスタ映えオールドレンズ」ではありませんが(笑)、それと似たようなフィルム カメラ側解説サイトが多いばかりで、肝心な「適切な写真を撮る為の心得 (注意事項)」のほうが蔑ろにされたままであり、せっかく所有者からこれから手に入れる人の為への有意義な情報提供に配慮の無さが寂しい限りです。「思いやり大国ニッポン」は過去のお話なのでしょうか・・(涙)

無限遠位置 (当初バラす前の位置から微調整済/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離35cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありません。またフード未装着なので多少ハレーション気味だったりします。

パッと見でピンボケにしか見えませんが(笑)、撮影時にはちゃんと手前側ヘッドライトの本当に電球の球部分にしかピントが合っていません (相当被写界深度が狭い/浅い)。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f4」で撮りました。

↑f値は「f5.6」に上がっています。

↑f値「f8」になりました。

↑f値「f11」です。

↑f値「f16」での撮影です。「回折現象」の影響が現れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。大変長い期間に渡りお待たせし続けてしまい本当に申し訳御座いませんでした。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。