◎ Carl Zeiss (カールツァイス) CONTAREX BーPlanar 50mm/f2 Blitz(CRX)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます
※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

今回完璧なオーバーホールか終わって出品するモデルは、Carl Zeiss製
標準レンズ・・・・、
 『CONTAREX B−Planar 50mm/f2 Blitz (CRX)』です。


↑アッと言う間にこのモデルの虜に堕ちてしまった「たった1枚の写真」が上の写真です。

この写真は当方が4年前の2016年に初めてこのモデルのオーバーホール/修理を承った際に、描写性能を知るために実写をピックアップした時に見つけた1枚です。
(クリックすると別ページで投稿者のページが表示されます/著作権が投稿者に帰属します)

上空を覆う重そうな雨雲が切れて晴れ間から微かに差し込む日射しを受けて、教会の照らされた焼きレンガのグラデーションの美しさ。弱い日射しながらも精一杯に陰影を残す木立の影。落ち葉の集まり方から窺える嵐が過ぎ去った後の静けさ。その一部始終を「光・色・音・湿度・匂い・風」などなど、それこそ自分が今まさにこの場所に佇んでいるかの如く瞬時に感じ入ってしまう「人の五感に訴える写真」こそが、当方にとっての全ての評価の基準であり基本的な感受性の源です。

嵐が過ぎ去った後の重苦しい湿度をたくさん含んだ戻り風が吹き抜ける中をジッと凝視してる「まるで映画のワンシ〜ンの如く感情移入してしまう」瞬間、鳥肌立ちながらも魅入るオールドレンズと言うのは、そう幾つもありません。

このモデルにアッと言う間に一目惚れしてしまった、まさにその瞬間でした・・。
人にとって一目惚れとは、そのように年数を経てもなお昨日のように想い起こせるひととき であり、決して色褪せずに今もその時の想いそのままに居る自分を感じる一瞬なのだと思い ます。

そしてそのオールドレンズの素晴らしさと言うのは「見えすぎない解像感」であり「決して 緻密ではないのに精緻に感じている」部分に「人の目で見た自然な情景描写」こそが今ドキのデジタルなレンズとの境界なのではないでしょうか。

従って、等倍鑑賞してチェックする事でそのオールドレンズの実力を知る手立てにもなるのかも知れませんが、知識に疎い当方はどうしても画全体の印象から入ってしまいます。然しその情緒的な印象から入る要素と言うのは、実は確かな個々の事実との相関関係に基づきそれこそ「職人」や「」の如く「感性と完成の一致」という一面をも有すると考えています。

  ●               ● 

1959年に旧西ドイツのZeiss Ikonから発売された一眼レフ (フィルム) カメラ「CONTAREX (コンタレックス)」は後に「CONTAREX I型」と呼ぶようになり、巷での俗称「Bullseye (ブルズアイ)」の愛称と 共に今もなお憧れの的であり続ける僅か約32,000台しか製産されなかったカメラです。

大きな円形窓が軍艦部に備わりますが絞り羽根開閉動作とシャッタースピードの両方に連動する世界初のクィックリターン式ミラーを装備した一眼レフ (フィルム) カメラですね。この円形窓を指して「Bullseye」と呼ばれますがセレン光電池式連動露出計であり、この俗称の由来は「bulls (雄牛) のeye (目) を射貫く」から来ており「射る的」転じて最近では軍用語でもある「攻撃目標地点 (ブルズアイ)」に至っています (攻撃目標を無線などで傍受されても分からないようする暗号として使われた)。

1967年には一から設計し直して800gの軽量化を達成した軽快な操作性を追求したモデル「CONTAREX professional」が登場し (製産台数約1,500台)、通称「CONTAREX P型」と区分けしています。

右写真はさらにその後登場したCdS受光素子を使ったTTL連動露出計を内蔵した「CONTAREX super」通称「CONTAREX S型」です。

これら1967年の大幅なモデルチェンジから以降カメラボディ側の意匠はほぼ踏襲され続けますが、同時にこのタイミングで黒色鏡胴のオプション交換レンズ群が追加で揃えられ、且つその中に2機種だけですが『フラッシュマチック』機構を装備したモデルを発売しています。

【フラッシュマチック機構内蔵モデル】
● 標準レンズ:B-Planar 50mm/f2 Blitz
● 広角レンズ:B-Distagon 35mm/f4 Blitz

いずれも当初よりシルバー鏡胴モデルが存在しますが、各々最短撮影距離が「30cm/20cm」だったのがこの2機種は「38cm」に仕様が後退しています。

この『フラッシュマチック機構』はフラッシュ (ストロボ) のガイドナンバーをセットすると、自動的に発光が届く距離とその時の適切な絞り値の2つを自動設定してしまう機能であり、特に当時は煩雑な計算をせずともストロボ撮影ができるフィルムカメラとして脚光を浴びたようです。

実際「GNプリセットスイッチ」のロックを解除してから該当するGNに「GNプリセット環」を回してセットすると、それに伴い自動で内部の駆動域が限定され「距離環の駆動域と 絞り羽根の開閉幅が限定される」機構になっているため、距離環でピント合わせする際に必然的にピントが合う位置で撮らざるを得ず、それはそのまま (同時に) 絞り羽根の閉じ具合まで 勝手に可変しているので (閉じているので) ボケ味も決まってしまいます。然し適切な光量で 美しい写真が本来 (当時は現在よりもさらに) 難しいストロボ撮影でも必ず残せると言うとてもありがたい概念ですね。

【今回の当方DOH挑戦内容】
これら『フラッシュマチック機構』により市場流通品の多くの個体でとても
重いトルク感に堕ちている問題を「軽快な操作性に仕上げる」事を命題とする

ちなみに一部サイトで「Blitz Matic (ブリッツ・マチック)」機構と解説していますが、それは誤りで「blitz (ブリッツ)」はドイツ語で「稲妻」を意味し、転じて「閃光」の意味として使われていますが、そもそも『フラッシュマチック機構』のパテントが既に存在するので「Blitz Matic」としていませんね (もちろんそのような商標登録も無い)(笑)

従って当時のカタログなどのモデル銘も「B-Planar/B-Distagon」が「Blitzモデル」を指しており、そのように印刷されています。

なお、今回このように「B-Planar」の扱いを選択した理由は、実は単に格好良いからであり(笑)、その精悍な出で立ちに惚れ込んでいるからでもあります。そもそも今ドキのデジタルな環境下でこの当時の『フラッシュマチック機構』にこだわる必要性は大変薄いのですが(笑)、然しその「ギミック感」と言うのが実は「所有欲」を掻き乱すワケで(笑)、仕方ありません。

【今回の出品で狙った成果】
一にも二にも仕様上後退してしまった最短撮影距離を38cmから短縮化する事
同時に何処まで疑似マクロ化できるかの挑戦 (改造等一切やらない)

・・というお題です。

  ●               ● 





上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して溶けて滲みながら円形ボケを経て背景ボケへと変わっていく様をピックアップしていますが、そもそも輪郭のエッジがアウトフォーカス部で瞬時に滲んでいくので「円形ボケの輪郭を明確に残さない (残せない)」のではないかと考えます。となれば円形ボケが苦手なモデルなのかと思いきや、実はそこそこの円形ボケをちゃんと表出でき、しかもその滲み方に違和感を感じないどころか「何とも繊細に微妙に控え目に溶けていく」様が堪りません。

ハッキリ言って円形ボケのこの溶け方 (素晴らしさ) は「まさにプラナーであるが由縁」としか言いようがないと評価しています。

二段目
さらに収差ボケを左端からピックアップしましたが、強烈な二線ボケ (左端) やまるで炎の如く燃え上がる「火焔ボケ」と当方が呼んでいる背景ボケが2枚目です。そしてその次の右側2枚の写真を見てください。

すると背景がトロトロと溶けていくワケですが、何と実に「ピント面の解像感のものすごさ」が異様に目だっています。ところがそのピント面をよ〜く観察すると「決して解像しているワケではなく (そんなに緻密ではない) そのように見てしまっただけ」なのが分かります。

これが当方が「いやぁ〜さすがプラナーだわ」と参ってしまった由縁ですね(笑)

この「本当は鋭くないのに鋭く見てしまっている」と言うのが「人の五感に対する反応の一つ」とも言えると考えています。単にコントラストや光の加減、或いはピント面とアウトフォーカス部との境界など、たいして解像していないクセに「らしく見せるの上手いでしょ?!」と言わんばかりに「緻密感タップリ」な写真だと言えないでしょうか、如何ですか?

三段目
冒頭の説明のとおり、この三段目の写真で完全ノックアウトKO勝ちです!(笑) 左端1枚目は冒頭写真の別角度ですね。2枚目の柵の写真をご覧下さい。この「まるで真ン前に立っているかのように見えてしまうリアル感」に唖然とした写真でもあります。さらに次の3枚目は「まさに空気が見えている?!」かのように感じ入ってしまう「臨場感タップリ」の1枚です。

例えば「心霊写真ではないのにそのようにおどろおどろしい写り」要は何か居るんではないか (写り込んでしまったのではないか) と言うような写真があると思いますが、まるでそのくらい感じるほどに光の陰影と距離感にまさに「空気 (空間)」が写っている写真と評価しています。

四段目
左の2枚は被写体の材質感や素材感を写し込む質感表現能力の高さを示しています。然し前述のとおり決して緻密ではないので (解像しているワケではないので) もっと質感表現能力が凄いオールドレンズはいくらでもあると思います。

せっかくなので「ゴッホの自画像写真」も入れておきました (いや違うから・・)(笑)

五段目
そして極めつけはこのグラデーションの素晴らしさです。これはさすがに画の性能が良くないとここまで滑らかな階調表現で、しかも全く違和感を感じずにそのまま (自然に) 魅入ってしまうレベルの色再現性です。

光学系は当初のシルバー鏡胴モデル「初期型」は実は典型的な4群6枚のダブルガウス型構成でした。この時の最短撮影距離が30cmですね。これは当時の「CONTAREX I型」の取扱説明書にもちゃんと構成図が印刷されているので間違いありません。右図は以前オーバーホールした際の光学系清掃時にデジタルノギスで計測したトレース図です。

さらに1967年の黒色鏡胴モデルへのラインナップチェンジの際には「中期型」として5群6枚の拡張ダブルガウス型構成に設計変更して います。

このタイミングで最短撮影距離が従前の「30cm38cm」へと仕様上後退してしまったワケです。つまり『フラッシュマチック機構』装備の光学系と同一の光学系のままで「非Blitzモデル」を揃えてきたと言うお話ですね (するとーシルバー鏡胴に黒色鏡胴が2種類で全部で3種類の併売状態だった)。

そして今回扱う『フラッシュマチック機構』装備が右図になり、やはり5群6枚の拡張ダブルガウス型構成です。Blitzモデルか否かで特に後群側の第3群〜第4群のカタチと曲率がほんの僅かだけ違っていました。
(そもそも第4群の外径サイズが違う)

単純に当初の「初期型」で4群6枚だった第3群の貼り合わせレンズを 分割してしまい「空気層を包括する事で色収差改善を狙った」とも考えられます。

なお、本当は今回このモデルを扱ったのは「自分で使うつもりだった」のです(笑) 従って気合い入れてオーバーホールした次第ですが、完成し期待通りに最短撮影距離を短縮化でき「疑似マクロ化」も達成したものの、実は愛用レンズ「Makro-Kilar」よりも相当重くなってしまいました。つまり重量の違いです (Makro-Kilarは小さいので)。

そこでヤフオク! に出品する事に急きょ変更した次第です。

疑似マクロ化」とは言え、さすがPlanarだけあって接写してもその描写性は明らかにイッパシのマクロレンズとは異にする「落ち着いた美しさ」を感じる素晴らしい表現性です。そんな「なんちゃってマクロ」を是非お楽しみ下さいませ。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。ハッキリ言ってこの「CONTAREX版Planar」を完全解体してまでオーバーホールすること自体がそもそも非常に希なのではないでしょうか?(笑)

今回の個体もそうでしたが、市場流通している個体の多くはヘリコイドグリースに「白色系グリース」が塗られており、下手するとそこに後から別の人の手で「潤滑油」を注入されている事があります。

すると化学反応してしまい「白色系グリースが粘性を帯びてくる」ので早ければ1年〜遅くとも数年で距離環が重すぎて回らない状況に陥ります (今回のモデルに限らず非常に多くのオールドレンズでその現象を毎月のように整備しています)。

もちろんそのままムリに使い続けると最後は「ヘリコイドネジ山の固着」に至ってしまい、ある日突然距離環が回らなくなってしまったと言う不具合に突き当たりますが、残念ながらその個体はもぅバラすことさえできません。ヘリコイドのネジ山が固着するのを「カジリ付」と言いますが、ネジ山の「材と材の癒着」なのでこれはどうにも人力では全く以てバラせません。

製品寿命」と言う最後に到達してしまいますね(怖)

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルはヘリコイド (オス側) が独立しており別に存在します。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑ここで9枚の絞り羽根を組み付ければ良いだけなのですが、上の写真は鏡筒をさらに分解したところです。すると後玉側方向から撮影していますが、鏡筒内部に「位置決めキー用の穴」が用意されていて、そこに絞り羽根を組み付けた後「光学系後群の格納筒」で蓋をする設計です。

至ってシンプルそのモノですね(笑)

↑こんな感じで9枚の絞り羽根が組み付けられて絞りユニットが完成します (まだ光学系後群側格納筒を被せていない状態)。

↑光学系後群側の格納筒をセットして完成したところです (前玉側方向からの撮影)。

↑今度は完成した鏡筒を真横から撮影しました。左側が前玉側方向になり右側が後玉側方向です。途中にはちゃんと「開閉アーム」が飛び出てきていますね。

今回の個体は何と珍しいことに「製産時に1,000本を越えたタイミング」を表すのかマーキングが既に施されていました。ちなみに製造番号とは全く一致しないので、純粋に1,000本台に乗ったと解釈しています。

↑こちらは距離環やマウント部が組み付けられる基台です。

左写真は以前扱った際に撮影した同じ「基台」の写真ですが、モデルが「初期型」のシルバー鏡胴なので、内部に『フラッシュマチック機構』を装備しないために、設計が異なっています。

もっと言うなら「直進キー」の設計概念まで違うので、シルバー鏡胴モデルと後の黒色鏡胴モデルとでは「ヘリコイドのトルク調整の手法が異なる」点に気が付かなければイケマセン。

直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目

アームガイド
鏡筒から飛び出る「開閉アーム」がスライドするガイド/溝部分

↑上の写真は今回の個体を撮影していますが「制御環」と言う「絞り値を決める環 (リング/輪っか)」に前述の「アームガイド」が用意されているので、必然的に設定した絞り値で「開閉アームの回す量/移動量が変化する」仕組みですね。

ところが今回のモデルは『フラッシュマチック機構』を装備しているので、その専用の「ギア」がプラスで附随します。この「ギア」の階段状に切削されている部分に『フラッシュマチック機構』の一部のパーツがカチカチと噛み合うことで「GNによる制御」が実現できます。

↑実際に「制御環」を組み込むとこんな感じになりますが、距離環を回してピント合わせする際に「一緒に開閉アームも移動する」ワケですから「開閉環も制御環も距離環もすべて共に回転する」設計です。

すると距離環を回す時のトルク感を軽い操作性で仕上げたいと考えるなら、その「回転するチカラ」をどのように滑らかにしているのかがポイントになってきますね。

その回転運動を滑らかに仕上げているのは「72個のベアリング達」と言うお話しです (グリーンの矢印)(笑)

この「72個」が1個でも欠品すると回転にムラが起きます。何故なら「このモデルの設計はベアリングが全周に隙間無く配置される仕様」だからです。

さらに特にここの工程で問題になるのが「制御環は基台を貫通してしまう外径サイズであること」です。

整備者がこの点に気を配ったのかどうかが最終的に組み上がった時の「距離環を回すトルクに具体的に現れる」と言えるからです。

この基台の内径よりも「制御環の外径が小さい」ために、単純にハメ込むとアッと言う間に下に (貫通して) 落下してしまいます。つまり「制御環を固定する方法が無い」ワケですね(笑)

従って「ベアリングの半径だけで制御環を保持している」からこそ (ベアリングの全周で/全球で保持しているからこそ) とても滑らかに軽い操作性で駆動させることができるワケです。

要は整備者が「ベアリングを使った理由」そして「72個の意味」同時に「滑らかに動く原理」等々、これらを逐一理解しているか否かが問われる瞬間です。

まさにこのモデルの「難関の一つ」とも言い替えられます。

↑完成した基台を今度は後玉側方向からひっくり返して反対側を撮影しました。制御環の裏側が写っており側面には「GNキー」と言う「」も刻まれています。

↑無限遠位置の当たりを付けた場所までヘリコイド (メス側) をネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでヘリコイド (オス側) をネジ込みます。このモデルは全部で10箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

ヘリコイドの繰り出し量/収納量と『フラッシュマチック機構』との連係状況 (カムの突き当たり状況)、それに絞り羽根の開閉幅の制御 (ギアとの連係状況) をそれぞれチェックしつつヘリコイドのネジ込みポジションを微調整しています (繰り出し量を最大限にするため)。

↑ヘリコイド (オス側) をネジ込んだ状態で完成したヘリコイド部の内部を撮影しました (前玉側方向寄り撮影)。ヘリコイド (オス側) の両サイドに1箇所ずつ「直進キーガイド」と言う「」が用意されており、そこを「直進キー」が行ったり来たりスライドするので、結果的に距離環を回した時「鏡筒が繰り出したり/収納したりする」仕組みです。

なお「直進キーのカタチ」にはちゃんと意味があり「集中するチカラを分散化させる役目」として形状が設計されていますから、反対の箇所に固定してしまったりそもそも固定自体をミスるとアッと言う間に「距離環のトルクムラ発生」と言う結末に至ります(笑)

実際上の写真を見れば一目瞭然ですが、当方のオーバーホールでは「直進キーにグリースを塗らない」ので、上の写真のとおりキーはそのままの状態です。然しそれでも「とても滑らかに軽い操作性で距離環が回る (回せる)」のが最大のメリットです。今まで2,000本以上のオールドレンズをバラしてオーバーホールしてきましたが、直進キーにグリースを塗っていない個体だったことが僅か数本しかありませんから、如何に過去メンテナンス時に「直進キーにはグリースを塗る」のかご理解頂けると思います。

それでもたいていの場合、過去メンテナンス時には「グリースを塗ったくってごまかせば何とかなる」処置が施されていますね(笑)

↑いよいよクライマックスに入ります。『フラッシュマチック機構』を組み付けて以下の項目について微調整を行い最終的な操作性の詰めに入ります。

【フラッシュマチック機構組み込みに係る微調整内容】
距離環の回転との連係
開閉アームとガイドのスライド駆動
『フラッシュマチック機構』のギアとの連係
カムと制御環との連係
絞り羽根開閉時の抵抗/負荷/摩擦の解消/低減
GNキーとの連係

・・とザッと挙げただけでもこれだけ出てきますから(笑)、これら全てを微調整して初めて各部位からのチカラの伝達がスムーズなのか、或いは距離環を回してピント合わせする際の滑らかな操作性に至っているのかが決まります。

するとなかなかこれだけの微調整工程を経て、且つ現実的に実際に組み上がった今回の出品個体を操作した時に「間違いなく出品ページの謳い文句どおりだ!」との判定に辿り着かない限りクレームになりますね(笑)

要は「まさに当方DOHの魅せどころ」と言い替えられます(笑)

↑上の写真は距離環の内側に備わる「なだらかなカーブ」に『フラッシュマチック機構』部から顔を出している「カム」が突き当たることで、その時の「/勾配の角度」により絞り羽根の開閉角度が決まる仕組みです。

上の写真ではちょうど距離環を回した時の刻印距離指標値「60cm (0.6m)」辺りで「コツン」と内部で何かが当たる感触が指に伝わってくるのですが、その原因を解説しています (グリーンの矢印)。

従って『フラッシュマチック機構』を装備したモデルの場合、必ず「なだらかなカーブ」に「カム」が突き当たる瞬間に「コツン」と感触が伝わります (繰り出し時/収納時の両方でコツンと伝わる)。

さらに一般的なオールドレンズでは「なだらかなカーブは1種類」だけあれば「絞り羽根の開閉開放最小絞り値」が決まりますが、このモデルの場合『フラッシュマチック機構』を装備しているので「設定GNの高低に従い使うべき/適したなだらかなカーブが違う」ので、上の写真のように「60cm」の前後両方向に向けて (左右に分かれて) それぞれ異なる勾配 (坂) で用意されています。

↑『フラッシュマチック機構』部の各構成パーツがセット完了し、且つ全ての微調整が終わった時点でようやく「GNプリセット環」を組み込むことができます。

↑マウント部を組み付けます。

↑鏡筒カバーや基準「」マーカーを正しい位置で固定します。

↑距離環を仮止めしてから光学系前後群を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にレンズ銘板をセットすれば完成です。

修理広告DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。ハッキリ言って「Blitzモデル」でこれだけ軽い操作性で滑らかにスムーズにピント合わせできる事が、まさに脅威ですね(笑) 当方は技術スキルが低いのですが「こだわり」だけは一丁前なので(笑)、時間を掛ければ掛けた分だけ良い仕上がりに至ります。

プロや技術スキルが高い整備者は「掛ける時間とは関係なく完璧に仕上げられる能力を持つ人達」とも言え、当方のように一日1本しか組み上げられないのではなく数本仕上げてしまいますからさすがです。

そこがプロなのかプロになれない単なる整備者なのかの分かれ目なのでしょう(笑)

↑今回この個体をチョイスした最大の理由が「この光学系の透明度の高さ」です。何処かの謳い文句ですが(笑)「スカッとクリア」な状態であり、もちろんLED光照射でコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリは皆無です。

当方が「皆無です」と言えば、まさにそのコトバの如く「皆無」です(笑)

開放時にご覧のとおり絞り羽根が完全に収納されていて顔出ししていない状況が適切な「開放 f値f2」です。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群側もLED光照射で極薄いクモリが皆無です。本当にこれだけ透明度が凄いと今まで使っていたのかと疑いたくなるくらい何もありません (経年の極微細な点キズだけは数点残っている)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:10点、目立つ点キズ:6点
後群内:11点、目立つ点キズ:6点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(極微細で薄い2ミリ長が数本あります)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内の透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑9枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動します。絞り羽根が閉じる際は「完璧に均質に閉じていく」よう仕上げています。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・距離環距離指標値「0.6m」の箇所でコツンと内部で何かが突き当たる音と感触が指に伝わりますが内部でフラッシュマチック機構のカムが突き当たっているだけですので仕様であり正常です。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
・附属の中古フィルターは清掃済ですが微かな拭きキズなどが残っています(実用レベルでキレイ)。
・附属のマウントアダプタ(2種)は新品を添付しており動作確認のために装着しています。

↑市場流通品を見ていると最小絞り値が閉じすぎている個体が時々ありますが、その場合逆に開放時に絞り羽根の端がほんの微かに顔出ししています。

↑上の写真は今回の出品に際し附属品をすべて並べたものです。この附属品だけで今回の出品に際し用意したところ1万円弱かかってしまいました

【今回出品の内容】
haoge製CRX→LMマウントアダプタ (絞り環装備) (新品)
haoge製LM→SONY Eマクロアダプタ (マクロヘリコイド装備) (新品)
ZEISS IKON製純正UVフィルター (B56) C1 (中古品)
汎用被せ式金属製前キャップ (中古品)
SONY Eマウント後キャップ (新品)
オールドレンズ本体「CONTAREX B-Planar 50mm/f2 Blitz (CRX)」

↑上の写真をクリックするとamazonの販売店のページが別ページで表示されます。

↑全てセットするとこんな感じになります。『フラッシュマチック機構』が「OFF」に設定されている時は、上の写真のようにマーキング「」と「」が上下で互いに合致しています (この時GNキーに刺さっていない状態)。つまりこの時、距離環は無限遠位置〜最短撮影距離位置までシームレスに駆動しますから、至って普通のオールドレンズと同じ状況です。

↑基準「」マーカーが細いので分かりにくいですがグリーンの矢印で指し示した箇所です。すると本体オールドレンズ側で無限遠位置〜最短撮影距離:38cmまでシームレスにムラ無く完璧に距離環を回せます。

さらに一番下のマクロアダプタのローレット (滑り止め) を回せば本体ごとググ〜ッと迫り出します。

ブルーの矢印で指し示したとおりマクロアダプタ側のローレット (滑り止め) を回すと上部の部分が丸ごと繰り出されます。

するとこの時、最大限繰り出した時の被写体からの最短撮影距離は「凡そ28cm (実測値)」になりましたから、設計の仕様上「38cm」を越えて近接撮影したい時に効果を発揮します。

但し、これはあくまでも設計上仕様範囲を超越した繰り出し量での撮影なので、必然的に各諸収差などの影響レベルも変化しますから、また違う写り方になります (オリジナルの38cmの時と同じ描写性のまま28cmになるワケではない)。これは何もこのモデルだけに限定した話ではなく全てのオールドレンズで同じですね(笑)

↑ここからは『フラッシュマチック機構』の操作方法を解説します。「GNプリセット環」に備わる「GNロックツマミ」をマウント方向に押し下げて (ブルーの矢印①) そのまま「GNプリセット環」を回すと、刻印GNにカチカチと小気味良くはまっていきます (ブルーの矢印②)。

GN刻印」は上がメートル表記 (白色) で下がフィート表記 (オレンジ色) です。

↑上の例では仮に「GN」を「90」をセットした場合 (のマーキングが90位置に合致している/オレンジ色矢印) 、距離環の駆動域はグリーンの矢印で指し示した範囲内しか駆動しません (停止する)。また同時にその際絞り羽根の開閉も制限が入り「開放f値f2f4手前辺り」までしか閉じません。

↑その時の絞り羽根の閉じ具合を見るとこんな感じで、勝手にピント合わせしている間に閉じてきています。従ってフラッシュの光量に見合う適切な絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量) に自動設定される仕組みです。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離38cm付近での開放実写です (1枚目)。またマクロアダプタのローレット (滑り止め) を繰り出して最短撮影距離を28cmまで短縮化した時の接写です (2枚目)。いずれもピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります (簡易検査具による光学系検査を実施済で偏心まで含め光軸確認は適正/正常)。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しました。1枚目がオリジナルの最短撮影距離38cmの状態で撮影し、2枚目がマクロアダプタのローレット (滑り止め) を最大限まで繰り出し、最短撮影距離28cmの距離で撮影しています。

↑さらに回して設定絞り値「f4」で撮影しました。

↑f値は「f5.6」に上がっています。

↑f値「f8」になりました。

↑f値「f11」です。

↑f値「f16」での撮影です。ギリギリ「回折現象」か明確に現れないレベルで耐え凌いでいます。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。