◎ FUJI PHOTO FILM CO. (富士フィルム) FUJINON・W 35mm/f2.8《初期型》(M42)

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今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、フジカ製
広角レンズ『FUJINON・W 35mm/f2.8《初期型》(M42)』です。


今回の扱いが累計で3本目にあたりますが、当時のフジカ製広角レンズ焦点距離35mmで捉えると、他に開放f値「f1.9」の上位格モデルや、後に登場する「f2.8」の「前期型/後期型
或いは「f3.5」もあります。

これら焦点距離35mmのオールドレンズは、どう言うワケかほとんどの個体で光学系の前後玉コーティング層経年劣化の進行が酷く、たいていの場合で極薄いクモリを生じています。
(今までに扱ったそれらモデル20本以上の中で極薄いクモリが生じていなかった個体はゼロ)

【流通個体にみられる問題点】

光学系内前後玉のカビ発生
光学系内前後玉のコーティング層経年劣化進行
距離環を回した時のトルクムラ
絞り連動ピン連係不具合に伴う絞り羽根開閉異常

上記項目を必ずチェックして調達していますが、特に光学系内前後玉の状況はパッと見でキレイに見えてもLED光照射で確認するとクリアな個体がほぼありません。さらに絞り羽根の開閉異常もなかなか事前確認できないのが現実です (マウントアダプタに装着すると絞り羽根の開閉異常が起きる)。
その意味で、とてもリスキーなモデルの一つとも言えます。

特にに関して考察すると、この当時のフジカ製オールドレンズの広角レンズは、競合していたであろう他社モデルと比較して「圧倒的にコンパクト」に作られている印象です。前玉の外径サイズなどを見ても小口径で設計してきていることが分かります。ところがそれに反して後玉は逆に大口径の部類に入るのではないかと感じています。

そのことから見えてくるのは「筐体サイズありき」でそもそも設計がスタートしていたのではないかと考えています。焦点距離35mmの広角レンズである以上、光学系内の構成は当時としては「レトロフォーカス型」を採らざるを得ないワケですが、本来バックフォーカスを確保する必要がある為に前玉を大口径化してきたのが他社光学メーカーの競合モデルです (特に明るい開放f値モデルなどはバカデカイ)。

その中にあってこれら当時のフジカ製広角レンズが総じてコンパクトに仕上がっていたのは、そのような光学系設計の結果ではなく、むしろ逆に筐体サイズに合わせて光学系を設計していたと当方はみています。

つまりその影響 (制限) があったが為に、光学系は曲率を高く採って屈折率を突き詰めた設計が要求されていたのではないかと推測しています。それはそのまま光学硝子材の成分/配合にも配慮が必要なので、半世紀に近づく経年数が経過する現在に於いて、具体的なコーティング層の経年劣化に伴う極薄いクモリが生じていると言うのが現段階での当方考察です。

それが何を意味するのか・・残念ながら光学系内の状態が良いレベルを維持した個体を入手することは、もぅ既に不可能なのが現実なのかも知れません。今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体も、同様前玉表面の外周附近に順光目視の状態で容易に視認できる「極薄いクモリ」が残っています (コーティング層経年劣化なので清掃で除去できません)。

これをキレイにクリアに戻そうとすれば「硝子研磨とコーティング層再蒸着」が必要になりますが、当方にはそのような機械設備がありませんし、そもそも改めて再度蒸着するコーティング層は、当時のフジカの成分/配合率とは異なってしまうワケで、オリジナルの状態からは逸脱してしまいます。もちろんモノコーティングならそのまま複層膜コーティングで、マルチコーティングなら多層膜コーティングで現在の技術と成分/配合で新たなコーティング層再蒸着ができるので何ら問題ありませんが、その結果オリジナルのコーティング層が生み出していたであろう描写性は、少なからず改善してしまい解像度も向上することは容易に察しが付きます。
(オリジナルの光学系設計が求めていたであろう描写性とは変わってしまうと言う意味)

その意味でオールドレンズのオリジナルな描写性を可能な限り残そうとするなら、製産時点のコーティング層のままできるだけ長い期間維持させる配慮が必要と言う考えに行き着きます。

そしてそれが当方が実施しているオーバーホール「DOH」の基本思想に他なりません。

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今回のモデルは、1970年に当時のフジカ製フィルムカメラ「ST701」の交換レンズ群として用意された広角レンズの一つですが、1972年に以降発売された「開放測光機能」をフィルムカメラ側にまだ装備していない頃のモデルなので「純粋なM42マウント」モデルと言えます。逆に言うと後に登場する「前期型/後期型」にはマウント面に「開放測光用の爪」が1mmほど突出するので、そのまま普通のM42マウントと同じようにネジ込もうとしても「爪が当たる」ので最後までネジ込めません (つまり無限遠合焦もしない)。

【モデルバリエーション】
オレンジ色文字部分は最初に変更になった要素を示しています。

初期型:1970年発売「ST701」用

コーティング:モノコーティング
開放測光用の爪:無
距離環ローレット (滑り止め):金属製
レンズ銘板:金属製

前期型:1972年発売「ST801」用

コーティング:マルチコーティングEBC
開放測光用の爪:
距離環ローレット (滑り止め):ラバー製
レンズ銘板:金属製

後期型:1974年発売「ST901」用

コーティング:マルチコーティング「EBC
開放測光用の爪:有
距離環ローレット (滑り止め):ラバー製
レンズ銘板:プラスティック製




上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して単なる円形ボケ (背景ボケ) へと変わっていく様をピックアップしています。光学系がレトロフォーカス型構成なので、そもそもキレイな真円で大きなシャボン玉ボケの表出は難しいようですが、意外にもまともなエッジが細く出てくるシャボン玉ボケを表出できているのがオドロキでした。

二段目
基本的にフジカ製オールドレンズなので「元気の良い発色性」なのですが(笑)、コントラストが高めに出てくるものの後の時代に登場するマルチコーティング化された「EBC (Electron Beam Coating)」の効果と比較すると、僅かに残存収差が残っており、且つピント面の鋭さも僅かにマイルドです。パキッとした写りが好みの方は「前期型/後期型」モデルのほうが合っているでしょうし、モノコーティングの残存収差をむしろ「愉しみ」と捉えている人 (当方も同じ) にはむしろこの「初期型」のほうが向いています。

欄干の「朱色」が非常に鮮やかに出てきていますが、2枚目写真のように意外にもちゃんとナチュラルな被写体色に近い色合いを表現できていますから、コントラストが高い分そのような印象を受けるのかも知れません。残存収差の影響は最後の右端写真のような「息を飲む距離感」としてとてもリアルな1枚に現れてきます。

三段目
実はこのモデルはダイナミックレンジがそれほど広くなく、意外にも白飛び黒潰れが多い部類です。つまり暗部がストンと急に堕ちてしまうので陰影の境界部分で誇張感が現れるために撮影時のチェックが必要です。

ところが階調が滑らかなのでパッと見でダイナミックレンジの広い写真の如く使うことができます。それを表す写真を左から3枚集めました。明暗の差が激しくなければ右端のようなリアルな写真が残せますね。

四段目
被写体の材質感や素材感を写し込む質感表現能力に優れているので、左写真のように金属質とコンクリート材の相違やバックの水面などキッチリ表現できているのがさすがです。明暗部の墜落は次の写真でより明確に出ており盛大な白飛びと黒潰れが生じています。

光学系は当然ながらこの当時流行っていたレトロフォーカス型構成なのですが、意外にも6群7枚と拘りを持った設計です。

ネット上にはこのモデルの情報がほとんど無いのですが、今回バラして清掃時にデジタルノギスで計測しほぼ正確にトレースした構成図です。
(各硝子レンズのサイズ/厚み/凹凸/曲率/間隔など計測)

ところがこの光学系を見ていくと、確かに6群7枚のレトロフォーカス型ですが 部分を「ダブルガウス型」成分として基本に捉えることができます。さらに第1群 (前玉) をバックフォーカスを稼ぐ必要性から1枚追加配置しています ( 部分)。実際は第1群〜第2群でバックフォーカスをコントロールしているので、 部分をダブルガウス型構成の成分として見た時に、本来前玉に当たるハズの第2群部分が凸メニスカスではなく凹メニスカスとして設計してきています。また第6群 (つまり後玉) を相当大きなサイズで採ってきているので、この 部分がダブルガウス型構成を基本としているのも納得できます。

これらのことから 部分は相当屈折率を高めた設計を採っていることが分かり (屈折率が欲しかったのでダブルガウス型を基本にしたのか?)、実際それを裏付けるが如く第1群 (前玉) の曲率も相当なモノです ( 部分)。

そしてこの光学系がコンパクトな筐体に収まっている点を考えると、どうしても冒頭の解説「筐体サイズありきのスタート」に考察が至るワケです。筐体サイズを大きくして良いなら、こんなムリな光学設計を採らずに余裕のある曲率で開放f値「f2.8」を確保できたのではないかと思います。

なお、第3群の貼り合わせレンズ (2枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせてひとつにしたレンズ群) だけで色収差の補正が納得値に至らなかったようで、絞りユニット直下の第4群〜第5群を貼り合わせレンズではなく「空気レンズ」を内包する密着型 (硝子レンズの端部分で互いに密着して重なる/接するタイプ) に採ってきており、相当考え尽くされた光学設計ではないでしょうか。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。筐体サイズはコンパクトで小っちゃいですが、内部構造は相応に拘りをもった設計なのが判ります。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒 (ヘリコイド:オス側) です。レトロフォーカス型光学系を格納するので奥行き (深さが) 長い設計です・・と言いたいところですが、この当時の他社光学メーカーの同一焦点距離35mmクラスの開放f値「f2.8」モデルと比べると、明らかに第1群 (前玉) 外径が小口径です。そしてそれは、冒頭解説のとおり曲率を上げて (高くして) きているワケで、第2群以降を小サイズに採ってきていません (鏡筒が絞られていないから)。

つまり第1群 (前玉) で入射光を採るだけ取り込むみたいな感じでしょうか・・(笑)

↑鏡筒最深部に「制御系パーツ」を組み込んだところです。一般的なオールドレンズではこれら「制御系」は鏡筒裏側、或いはマウント部内部に配置されるのが常ですが、このモデルは何と鏡筒最深部に「埋め込んでしまった」設計を採っています。

実はこの構造を知って冒頭解説の考察に行き着いたのが正直な話です・・。

↑鏡筒最深部に組み込んだ「制御系パーツ」を、今度は後玉側方向から覗き込んで撮影しています。光学系後群直下ギリギリの位置にご覧のように「制御系」が配置しています。

制御環」が回ることで具体的な絞り羽根の開閉角度が決まるワケですが、それを決めているのは「制御環」の途中に位置する「なだらかなカーブ」です。ここに「カム」が突き当たることで、その勾配 (坂) から絞り羽根の開閉角度が決まります。坂の麓部分が最小絞り値側になり、坂を登りつめた頂上が開放側です (グリーンの矢印)。

僅か3mm程度の空間にこれだけの機能を仕込んでしまったワケで、実際はこの裏側 (前玉側方向) に絞り羽根が格納されている絞りユニットがセットされ、且つ光学系前群が入ります。

↑5枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。

製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています (左写真は絞り羽根を表裏でひっくり返して並べた写真)

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

↑すると絞りユニットをセットした後に再び鏡筒をひっくり返して後玉側方向から見るとご覧のように2本のアームが飛び出てきています。

絞り環を回すとことで「制御環」が連動して回り絞り羽根の開閉角度が決まる為、マウント面「絞り連動ピン」が押し込まれることで絞り羽根の「開閉キー」が瞬時に移動して「位置決めキーを軸にして絞り羽根の角度が変化する (つまり開閉する)」のが絞り羽根開閉の原理です。

また絞り羽根の開閉制御を司る「チカラの伝達」手法として「アーム」が用意されており、
開閉アーム/制御アーム」の2種類により具体的な絞り羽根開閉動作を実現しています (ブルーの矢印)。

開閉アーム
マウント面絞り連動ピン (レバー) が押し込まれると連動して動き勢いよく絞り羽根を開閉する

制御アーム
絞り環と連係して設定絞り値 (絞り羽根の開閉角度) を絞りユニットに伝達する役目のアーム

上の写真をよ〜く見ると、2本のアームは互いに向きが反転しています。これが実は冒頭の解説「筐体サイズありきの光学系設計」を裏付ける「」です。ワザワザアームの向きを反転させずともフツ〜に後玉側方向に向けて2本並べて出せば良いのに、どうして向きを反転させたのでしょうか?

答えは、光学系の第1群 (前玉)〜第6群 (後玉) の光路長が決まっていたからです。いくらでも余裕のある大きさ (長さ) で商品全高を設計できなかったことが、これらのムリな構造から容易に判ります。少ない限られたスペースに「制御系」を組み込んで、且つ絞りユニットを制御しつつも光学系の「後群側は大口径を維持させる設計」が必要だったことが、このようにバラしていくとよ〜く判ります。

つまりこのモデルは、決して廉価版の設定ではなく、むしろ結構本格的に (拘りを以て) マジッに設計していると当方は考えています。むしろ構造面からすれば同じ広角レンズでも焦点距離28mm/f3.5のほうが、当時のフジカとしては理に適った (ある程度) 余裕のある設計が許されていたのではないかと考えます。

その意味で、焦点距離28mmよりも明るい開放f値「f2.8」に拘ったのが窺える構造です。

↑距離環やマウント部を組み付けるための基台です。

↑無限遠位置のアタリを付けた場所までヘリコイド (メス側) をネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑ようやく完成している鏡筒 (ヘリコイド:オス側) を、やきり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で7箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

↑こちらはマウント部内部の写真ですが、既に各構成パーツを取り外して当方による「磨き研磨」が終わった状態で撮っています。当初バラした直後は、過去メンテナンス時に塗布されてしまった「白色系グリース」が経年劣化進行により液化してしまい「濃いグレー状」になってビッチリと附着していた為に、一部に酸化/腐食/錆びが生じていました。

↑外していた各構成パーツも全て「磨き研磨」を施してから組み込みます。上の写真で「制御爪/開閉爪」がそれぞれ鏡筒 (ヘリコイド:オス側) から飛び出てきている向きが互いに反転した「制御アーム/開閉アーム」をガチッと掴んだまま駆動します。

マウント面の「絞り連動ピン」が押し込まれると (ブルーの矢印①)、その押し込まれた量の分だけ「伝達カム」が上に押し上げられます ()。すると接触している「連係アーム」が内壁方向に向かって押されるので ()、そのチカラで「先端部の開閉爪」が移動します ()。結果、鏡筒の「開閉アーム」が瞬時に操作されて設定絞り値まで絞り羽根が閉じる仕組みですね。

つまりマウント面の「絞り連動ピン」が押し込まれると、これだけの各部位の動きを伴って「その絞り連動ピンを押し込んだチカラと押し込み量の分だけ」が確実に伝達されて最終的な絞り羽根を閉じるチカラへと伝わって実行します。

これがオールドレンズのポイントであり、マウント面の「絞り連動ピン」は単に絞り羽根を閉じるためだけに押し込んでいるのではなく「適切な押し込み量とそのチカラ」が必要なのであり、逆に言えば適切な押し込み量とチカラでなければ絞り羽根の開閉異常が発生することになります

皆さん「マウント面に絞り連動ピンを有するM42マウントのオールドレンズ」に対して、ここまでシッカリ認識していらっしゃる方が非常に少ないので、具体的な「絞り羽根の開閉異常」が生ずると「アンタの整備が悪い」とクレームを付けてきます。

然しそれは、装着した先が何なのか? フィルムカメラなのかマウントアダプタなのか。マウントアダプタなのだとすれば「ピン押し底面の深さ」は適合しているのか?・・等々チェックしない限り何とも言えません。実際はただただ平謝りで再整備料金も頂かずに (請求すると切れる人が居るから) 送料も当方負担でキッチリ適合させて返送しています(笑)

これほど腹立たしいタダ働きはありませんが(笑)、それが現実であり信用/信頼が低いワケでもあり、その程度にしか受け取られていない「」でもありますね(笑)

この絞り連動ピン機構部には左写真の2種類の「捻りバネ」が附随していますが、互いに「常に絞り羽根を開こうとするチカラ/閉じようとするチカラ」の相反するチカラを及ぼす目的で使われています。

するとこの一方 (或いは両方) が経年劣化で弱ってしまうと途端に「絞り羽根の開閉異常」を来します。さらに問題なのが上の写真でグリーンの矢印で指し示している箇所です。

必要以上に押し込まれてしまった「絞り連動ピンを押し込むチカラ」は附随する「捻りバネ」のチカラで逃がす許容範囲を超えてしまい、ついにの「連係アーム」が内壁 (実際は真鍮製の制御環) に接触してしまい「適切なチカラの伝達が妨げられる」のが絞り羽根が正しく動かない原因です。

ところが、こんなことを説明しようものなら「自分の整備が悪かったのにワケの判らないことをグダグダ言い訳して逃げている」と批判される始末でどうしようもありません(笑) 従って「平謝り」で全てタダ働きにするのが一番手っ取り早いですね(笑)

↑完成したマウント部にベアリングを埋め込んで、美しいホワイトシルバーな梨地仕上げの絞り環をセットします。

↑完成したマウント部を基台にセットします。

↑距離環を仮止めしてから光学系前後群を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

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ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑前玉の外周附近に「白っぽい」部分があるのはキズではなく「硝子レンズコバ端着色の経年劣化による浮き」です。「硝子レンズのコバ端」とは硝子レンズの側面のことで硝子レンズをカットした際の断面です。その箇所に「コバ塗膜着色」して組み込まれているワケですが、これを剥がして再着色すれば良いものの、それによって適正な光路長を確保できるか否か懸念が残るため、可能な限り製産時点のままを維持して組み込んでいます (従って今回出品個体はそのまま浮きが残っている)。

写真には一切影響しませんが「迷光」などを気にされる方は心の健康のために落札されないほうが良いと思います(笑) 「迷光」は光学系内で乱反射して一部は撮像面に届かない入射光でフレアやゴースト発生の一因になります。光学系後群側では影響が増大しますが前玉なので写真に影響しないレベルのため今回は処置をやめました (従って鋭いピント面を維持しています)。

↑光学系内の透明度が非常に高い個体ですが、残念ながら今までに扱った個体同様前玉表面の一部にはコーティング層の経年劣化に伴う極薄いクモリが順光目視でも視認できます (LED光照射で明確に視認できる)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。前述の前玉表面の極薄いクモリを撮影していますが写りませんでした (その程度のレベルですが然し極薄いクモリがあるのは事実なので)。

↑光学系後群側も非常に高い透明度を維持しています。LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です (コーティング層経年劣化部分だけは反射で視認できますが極薄いクモリはありません)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。ポチポチと写っている点状は「微細な塵/」ではなく清掃で除去できなかった経年のCO2溶解に伴う「極微細な点キズ」なので、何度清掃しても変わりません (内部に目立つ微細な点キズ1点あり/気泡かも知れません)。

【光学系の状態】(順光目視で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:9点、目立つ点キズ:4点
後群内:11点、目立つ点キズ:7点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内)
・バルサム切れ:無し (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):あり
(前玉表面端にLED光照射で視認可能)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
光学系内の透明度が非常に高い個体です
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑5枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「正五角形を維持」しています。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。マットな梨地仕上げのホワイトシルバー「絞り環」も「光沢研磨」してありますが、一部ジャギーのローレット (滑り止め) に経年の除去しきれなかった汚れが僅かに残っています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度と軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人によって「重め」に感じ「全域に渡って完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。

↑焦点距離35mmは、標準レンズ域が好きな方には少々広すぎる印象で広角レンズ域がメインの方にはちょっと物足りない感じでしょうか。しかし撮像素子がAPS-Cのミラーレス一眼に装着すると、フルサイズ35mm判換算で52mm〜60mm辺りの画角になるので使い易いかも知れませんね。

実は、どうしても前玉のコバ端の浮きが気になってしまい、ここで再びバラして前玉のコバ端着色を光路長に影響しない箇所のみ剥がしてから再着色しました。処置後の写真が以下になります。

処置前よりは多少外周附近の「白っぽい部分」の浮きが減ったように見えますが、たいして改善できませんでした。また後玉外周のコーティング層反射に「拭き残しの汚れ状」に見えているのは、清掃時の拭き残しではなく明確なコーティング層の経年劣化部分でしたので (光学系後群の第4群〜第6群も再びバラして清掃してみた)、これはやはり一切除去できません (つまり変化無し)。

いつも光学系を清掃していて何か気になる箇所があると、組み上げてこのブログに掲載した時に (拡大撮影するので) 明確に写っていたりしますから、そのような場合は必ず光学系の清掃時にもう一度清掃するよう心掛けています。今回はそれでも除去できていなかったのでムリだと思いつつ再挑戦しましたが同じでした(笑)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

ピント面の鋭さは当初バラす前の実写よりもだてぶ鋭く改善できていますから、過去メンテナンス時の光路長確保が適切ではなかったのだと推測します。

↑当レンズによる最短撮影距離40cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります。しかし簡易検査具による光学系の検査を実施しており光軸確認はもちろん偏心まで含め適正/正常です。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。

↑f値は「f8」に変わっています。

↑f値「f11」です。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。