◎ Carl Zeiss (カールツァイス) Planar 85mm/f1.4 T*《MMG》(C/Y)

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この掲載はオーバーホール/修理ご依頼分のオールドレンズに関するご依頼者様や一般の方々へのご案内です (ヤフオク! 出品商品ではありません)。
写真付解説のほうが分かり易い事もありますが、今回は記録として無料掲載しています (オーバーホール/修理の行程写真掲載/解説は有料です)。
オールドレンズの製造番号部分は画像編集ソフトで加工し消しています。


戦前の旧ドイツで1932年にZeiss Ikonから発売されたレンジファインダーカメラ「CONTAX I」が最初のCONTAXブランドになりますが、当初は単にCONTAXと呼称されていたようです (後の1936年発売のCONTAX II登場時点でCONTAX Iに変わった)。

今回扱うモデルは1975年にヤシカから発売された「CONTAX RTS」から始まる一眼レフ (フィルム) カメラ用交換レンズ群として登場したポートレートレンズですが、当初のレンジファインダーカメラ「CONTAX I/II」の時はCarl Zeiss Jena製ポートレートレンズ「Sonnar 8.5cm/f2 T」が用意されていたようです。

戦後になると旧西ドイツのZeiss Optonが「Bullseye (ブルズアイ)」の異名を持つ一眼レフ (フィルム) カメラ「CONTAREX」を1959年に発売しますが、このカメラに用意されたポートレートレンズは、Carl Zeissから発売され「Sonnar 85mm/f2 (CRX)」が登場しています (1959年発売)。

これらのポートレートレンズは、いずれも光学系が3群7枚のゾナー型なので今回扱う『Planar 85mm/f1.4 T*《MMG》(C/Y)』とは異なります。

 

一方同じ旧西ドイツのRolleiから1970年に発売された一眼レフ (フィルム) カメラ「Rolleiflex SL35 (QBM)」の交換レンズ群もCarl Zeissが供給し、ようやくポートレートレンズ「Planar 85mm/f1.4 HFT」が登場しています。

そして1971年にZeiss Ikonがフィルムカメラ事業から撤退してしまうと、旧西ドイツのブラウンシュヴァイク工場をRolleiに売却しますが、後にRolleiはシンガポールに自社工場を移管しています。

さらにレンズ協業先を模索していたZeiss Ikonは日本に目を付け、旭光学工業にコンタクトしますが協業契約に至らず1975年ヤシカとの技術提携に至っています。ここで再び「CONTAX」ブランドが復活し一眼レフ (フィルム) カメラ「CONTAX RTS」の発売に漕ぎ着けます。

【Planar 85mm/f1.4の製造番号にみる変遷】
※ネット上写真サンプル数120本を基に製造番号別に仕様を調査

製造番号:554xxxx〜564xxxx
ブランド銘:Carl Zeiss
コーティング:HFT
マウント:QBM
製産工場:ブラウンシュヴァイク工場

製造番号:634xxxxのみ
ブランド銘:Carl Zeiss
コーティング:HFT
マウント:QBM
製産工場:ブラウンシュヴァイク工場

製造番号:580xxxx〜681xxxx
ブランド銘:Carl Zeiss
コーティング:T*
マウント:C/Y
f16刻印ホワイト (AEG)
製産工場:ブラウンシュヴァイク工場

製造番号:681xxxx〜722xxxx
ブランド銘:Carl Zeiss
コーティング:T*
マウント:C/Y
f16刻印グリーン (MMG)
製産工場:ブラウンシュヴァイク工場

製造番号:722xxxx〜841xxxx
ブランド銘:Carl Zeiss
コーティング:T*
マウント:C/Y
f16刻印グリーン (MMJ)
製産工場:YASHICA (富岡光学製)

製造番号:1557xxxx〜/4975xxxx〜
ブランド銘:Carl Zeiss
コーティング:T*
マウント:ZE/ZF
製産工場:COSINA

今回サンプルとして調べた120本の中には、一部に製造番号シリアル値にそぐわない個体が存在し、例えば製造番号:621xxxxMMGが顕在し、或いはMMJの真っ直中である811xxxxにポツンとMMGが入っていたりします。しかし、これは製造番号を刻印しているフィルター枠部分だけをすげ替えた「ニコイチ」の可能性が捨てきれません。

絞り環刻印絞り値の最小絞り値「f16」がホワイト色刻印なら「AE」になりグリーン色刻印なら「MM」そして、製造国別に日本製なら「J」でドイツ製は「G」なので、AEJ/AEG、或いはMMJ/MMGなどの呼び方になるようです。

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上の写真はflickriver.comで、一番最初に登場したQBM (Quick Bayonet Mount) モデルであるCarl Zeiss製「Planar 85mm/f1.4 HFT」の実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

フツ〜に玉ボケまで含む円形ボケがキレイに表出しているのですが、最後の右端の写真をご覧下さいませ。円形ボケではなく「三角ボケ」になっています。今回のモデルを扱うまで全く知らなかったのですがこのQBMマウントモデルは2本共に絞り羽根が閉じていく時「三角形の開口部」になるのでご覧のようなボケ方になるワケです。

確かに「星ボケ」が表出するオールドレンズもあるので「三角ボケ」が存在していても良いワケですが、はたしてこのボケ方は当時受け入れられたのでしょうか? 或いは当時の人々はこのボケ味をどのように評価していたのでしょうか、なかなか興味深い話です。




上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端からキレイなシャボン玉ボケが表出し、そのエッジが破綻して薄く滲んで円形ボケへと変わっていく様を集めてみました。光学系構成がウルトロン型なので真円のシャボン玉ボケ表出が難しいハズなのですが、当モデルはちゃんと出ています。さらに驚いたのは、その破綻して滲んでいく際に一般的なウルトロン型構成に見られるような乱雑で崩れた (ある意味汚い) 円形ボケがワサワサと出てくるのではなく、均整の摂れた安心して見られる滲み方をしていく様に非常に感銘を受けました。こういう円形ボケの滲み方 (消え方) ならもっと背景ボケとして活用したくなると感じましたね。

二段目
溶けていく」と言うコトバが似合いそうなほどにスムーズな階調で滲んでいく円形ボケがハロと織り成す美しさを左端の写真に感じました。基本的にピント面のエッジが繊細なのですが際立って表出してくるのと同時にアウトフォーカス部の滲み方に独特な趣があり、巷でポートレートレンズの代表格と評価されていることが頷けます。

三段目
当方が「これは凄い」と感心したのが、この「空間表現」のパワー感です。まるで写真が語りかけているかの如く見えてしまう非常にエネルギッシュな表現性を伴いつつ、空気感や距離感などを写し込んでしまう素晴らしさに惚れ惚れしました。最後の4枚目 (右端) 写真のように。非常に広いダイナミックレンジと相まりピント面の際立ち方がより強調されているからこそ、繊細感漂う写真もインパクトある写真も、その場その場でこなしてしまうように受け取りました。

四段目
被写体の素材感や材質感を写し込む質感表現能力に非常に優れ、プラス「空間表現」を備え、まさしく焦点距離から来るポートレートレンズとしての要素たる「人物撮影」の素晴らしさなどに本当にオドロキました。

光学系は5群6枚のウルトロン型構成です。右図は今回バラして清掃時にデジタルノギスで計測してほぼ正確にトレースした構成図です (各硝子レンズのサイズ/厚み/凹凸/曲率/間隔など計測)。

一部ネット上で案内されている構成図とはビミョ〜に異なっており、特に第3群の大きな硝子の塊のカタチが違います (左写真赤色矢印)。

第3群の表側 (前玉側) がネット上では緩やかな凹になっていますが、バラした現物を清掃時にチェックすると洗浄液が中心に溜まらず均一でした (つまり平坦)。

さらに第5群 (後玉) も両凸レンズであるものの、ネット上の構成図 (表裏で同じ曲率) とは違い内側の曲率が高く、外側 (つまりカメラ側) が緩い曲率でした。

ネット上でよく掲載されている光学系構成図が右図です。第3群の裏面 (絞りユニット側) のカタチも全体的にすぼまっていませんでした。

またネットのサイトを見ていると、光学系内の光学硝子レンズのコバ端が着色されていないと案内しているサイトがありますが、上の写真のとおりちゃんとコバ着色されています (写真ではグレーに写ってしまいましたがちゃんとマットなブラックの着色です)。

これは左写真のように、第3群の光学硝子レンズでコバ端が黒色に着色されていない為に迷光 (光学系内で発生する内面反射のうち散乱した光) が生じてしまい、特に開放時のコントラスト低下や解像度不足を来していると解説されています (赤色矢印の部分)。

この問題は特に旧西ドイツ製の個体 (AEG/MMG) と日本製 (MMJ) を比較した時、日本製はちゃんと黒色になっていることを案内していますが、前述のサンプル数120本 (の第3群コバ端) をチェックすると、日本製でもほとんどが同じようにグレー状に見えるので生産国の相違による問題でもないように考えます。

もっと言うなら、皆さんよく内面反射を指摘されますが、そもそも絞りユニット内の「絞り羽根」が真っ黒なモデルを当方はまだ見たことがありません (2,000本以上バラした中で皆無)。最小絞り値まで絞り羽根を閉じてしまうなら迷光の影響も少ないでしょうが、仮に開放から数段分絞り羽根を閉じてきた時の迷光はどう説明すれば良いのでしょうか? その際絞り羽根に当たって反射した入射光の一部が迷光には絶対ならないと言い切れるものなのでしょうか? 当方は光学知識が皆無なのでよく分かりません。

光学硝子レンズのコバ端が着色されていない時、それは「白色」に硝子材が剥き出しになっている状態であることを、当方は数多くバラして確認しています。しかし上の写真のようにちゃんとコバ着色されていても、光学系内を覗き込んだ時「グレー色」に視認できるオールドレンズも数多く見てきました (今回の個体も同じ)。そして同時に、今まで扱った全てのオールドレンズで絞り羽根の色合いは黒色ではなく「メタリックグレー」が非常に多いと言わざるを得ません。もしも仮に迷光を厳密に問題視するなら、どうして絞り羽根が黒色ではないのでしょうか? そのへんの答えも、まだまだ修行が足りずに未熟な当方はまだ見出せていません(笑)

ちなみに上の写真では、第3群のコバ端以外の部分 (つまり硝子レンズ格納筒の内壁部分) はちゃんと黒色で焼付塗装のメッキが施されているので真っ黒に見えていますし、そのメッキ部分は溶剤で溶かして除去できません (メッキ部分は溶剤で溶けない)。また同様にコバ着色も製産時点に施されている部分は溶剤で溶けませんが、過去メンテナンス時に塗られた黒色遮光塗料の場合には溶剤で簡単に溶けて除去可能です。

すると製産時点でコバ端着色されていなかった光学硝子レンズのコバ端を、メンテナンス時に着色してしまった場合に硝子レンズ格納時の位置が適切なのかどうかと言う問題が逆に出てきます。何でもかんでもコバ端は黒色に着色しているほうが良いと考える整備者も確かに居ますが、はたして製産時点 (ひいて言えば設計時点) でコバ端着色していない (必要性を認識していない) 硝子レンズのコバ端着色に少なからず疑問を感じます。

なお、右図はコシナ製モデルの光学系構成図です。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。今回初めて当モデルをバラしましたが、内部構造の難しさよりも組み立て工程の手順を考えるほうが大変でした (つまりバラした順番どおりに組み上げられないモデル)。筐体サイズがバカデカイので、撮影に使っている楢材のお盆に並びきりません。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルはヘリコイド (オス側) が独立しているので別に存在します。

↑6枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。上の写真に写っているのは絞り羽根が刺さる「位置決め環」ですが、色合いは「梨地仕上げのグレー色焼き付けメッキ塗装」ですから黒色ではありませんし、もちろん絞り羽根も黒色ではなくメタリックグレー色です。

左写真はバラし始めた時に撮影した鏡筒 (裏側) とマウント部内部のパーツ (開閉環) です。赤色矢印で指し示している箇所のスプリングが既に伸びきっていました。

これは経年使用でスプリングが劣化して伸びたのではなく、過去メンテナンス時にスプリングを外す際に固定していた固着剤を除去せずにそのまま引っ張って外そうとしたから伸びてしまったワケで、そのまま使っています。今回のオーバーホールではもう一度巻き直ししてセットしました (ロクなことをしません)。

↑完成した鏡筒をひっくり返して裏側を撮影しました。「連係アーム」が絞り環と連動することで絞り羽根の開閉角度を決める「なだらかなカーブ」が移動するので「カム」が突き当たる場所の勾配が変化して、具体的な絞り羽根の開閉角度が決まります。

上の写真では「なだらかなカーブ」の勾配を登りつめた頂上にカムが突き当たっているので、絞り羽根は「開放状態」を維持しています (勾配の麓が最小絞り値側)。

↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。鏡筒側面に1箇所「絞り羽根開閉幅調整キー」がネジ止めされています。このキーの調整で鏡筒の位置が僅かにズレるので、最終的な絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/入射光量) 微調整ができます。

がしかし、この「絞り羽根開閉幅調整キー」をこの位置に用意しているのは富岡光学製オールドレンズでも同じです (つまり富岡光学製オールドレンズも初期〜中期モデルで鏡筒の位置調整により絞り羽根の開閉幅を微調整する設計概念)。

と言うことは、富岡光学がCarl Zeiss製オールドレンズの設計概念を「真似た」のでしょうか??? 何故なら、今回の個体は「MMG」なので旧西ドイツ製 (ブラウンシュヴァイク工場製) だからです (ちゃんとLens made in West Germanyと鏡胴に刻印している)。

或いは、主だったパーツを富岡光学で製産し構成パーツとして輸出したのをCarl Zeissが単に組み立てていただけなのでしょうか? どうもよく分からなくなってきました。

↑距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。絞り環にクリック感を与えているベアリング用の「板バネ」が過去メンテナンス時に故意に曲げられていたので (おそらくチカラを強める為) 適切なカタチに戻しました。もちろんそれでも確実でシッカリとした強さのクリック感に仕上がっています。

↑真鍮製 (黄銅) のヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑ヘリコイド (オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で9箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

↑指標値環をセットしてからベアリングを組み込んで絞り環を入れます。

↑後からセットできないので、ここで先に完成している鏡筒を組み込みます。同時に「開閉レバー環」の機構部もセットします。

赤色矢印で指し示している箇所にマウント部を締め付け固定するネジが3本入ります。この上から「マウントの爪」がセットされキーもネジ止めされるので、その「マウントの爪」が外れなければこのモデルはバラしていくことができません。しかしたいていの場合ネジ長分ビッチリ固着剤が塗られているので、まず人力では外れません。今回も「加熱処置」を執り行って初めてバラすことができましたが、今回の個体はさらに過去メンテナンス時に固着剤を至る箇所に注入されてしまったので、合計9回も「加熱処置」をするハメになりました。

どうして過去メンテナンス時の固着剤だと分かるのかと言えば、市販されているグリーン色の固着剤だからです。

↑距離環を仮止めしてから光学系前後群を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

距離環のラバー製ローレット (滑り止め) を外した時、上の写真のとおり「61、2.」の白文字印刷がありましたが、この数値の意味が不明です。1961年2月の製産品だとすると「MMJ」の登場タイミングに合わないように思いますし「昭和61年 (1986年) 2月」だとすると日本製になってしまいますが、この個体の製造番号からみた製産時期の推測 (1973年製) とも合いません。

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ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑今回初めて扱いましたが、完璧なオーバーホールが完了しました。当初バラす前のチェック時に実写すると、極僅かにピント面が甘い印象を受けました (初めての扱いなのでもっと鋭いのか不明)。しかしバラしたところ第2群の締め付けが極僅かに足りなかったようなので (すぐに緩んで外せた) 今回のオーバーホールではキッチリ締め付け固定しました。

従って、当初より鋭いピント面に仕上がっています。なお、このモデルのフィルター枠部分は回せば簡単に外れるのですが、過去メンテナンス時に固着剤でキッチリ固められていました。今回のオーバーホールでは数回の「加熱処置」でようやく外せたのですが、ここを固着剤で止めてしまうと外せない時に距離環もヘリコイド部も外すことができなくなります (つまり解体不能)。ムリなチカラで回そうとすると内部の「直進キー」と言うパーツを変形させてしまう懸念があります (下手すれば破断する)。

従って今回のオーバーホールでは専用工具を使って (簡単に外れないよう) 硬締めでネジ込んでいますので、附属の純正金属製フードやフィルターなどを硬くネジ込まないようご留意下さいませ。もしも必要があれば固着剤を注入しますが (再度送り返して下さい)、その場合将来的なメンテナンスができない懸念が高くなります。

↑光学系内の透明度が非常に高い個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。当初バラす前のチェック時に第4群に「円形状の極薄いヘアラインキズ数本」を視認しましたが、バラして清掃したところ過去メンテナンス時の汚れのようでした。完全除去できたので大変クリアになっていますが、1点だけ少々目立つ点キズが清掃でも除去できず残っています。

また全部で9回も清掃するハメに陥りましたが(笑)、第1群 (前玉) と第2群の裏面側コーティング層を清掃した時の「清掃痕」が反射させると見えるので、その都度バラして何度も清掃しました。しかし、一番最後に拭き取る時の清掃痕がどうしても残るので、特に曲率の高い第2群の清掃痕が光学系内を覗き込むと角度によっては視認できます (洗浄液の揮発時にその痕が残るから)。

一番キレイに抜き取れた状態で (一番少ない清掃痕の状態で) 清掃するのをやめました。それでも9回実施しています (表面からLED光照射で裏面側コーティング層を反射させた上で実際は裏面側を清掃して清掃痕を拭き取る作業) が切りが無いのでスミマセン、ご勘弁下さいませ。もしもご納得頂けない場合は「減額申請」にてご納得頂ける必要額分ご請求額より減額下さいませ。申し訳御座いません・・。

↑光学系後群側も大変透明度が高くLED光照射でも極薄いクモリすら皆無です (点キズのみ1点残っています)。

↑絞り羽根は当初バラす前の実写チェックで簡易検査具を使うと最小絞り値「f16」の閉じ具合が足りていなかったので、キッチリ合わせています。

↑塗布したヘリコイドグリースは、黄褐色系グリースの「粘性中程度軽め」を使い分けて塗りましたが、どうしても納得できず (ピント合わせし辛い) 再びバラして組み直し、黄褐色系グリースの「粘性軽め」に入れ替えました。

このモデルはピントの山がスパッと分かるので、ピント合わせ時の微動が軽くできないと使い辛く感じました。ご依頼では「正常品」とのことで承りましたが、大変申し訳御座いませんがトルク感を少々軽めに (変更して) 仕上げています。こちらももしもご納得頂けないようであれば必要額分減額下さいませ。申し訳御座いません・・。

↑今回初めて扱いましたが、当モデルが「銘玉中の銘玉」と評判なのがよ〜く理解できました。当時、このモデル欲しさにCONTAXを買ってしまったと言う人が居るのも納得できるくらいです。

ネット上の案内を見ると、開放ではピントが多少甘くなるとの評価でしたが、当方が実写した限りではそのように感じませんでした。特にピントの山も非常に明確に出てくるので、開放でも特にピント合わせし辛いとは思いません (確かに当初バラす前は甘い印象だった)。

どの絞り値で使っても期待以上の写真を吐き出す様は、見ていてハラハラドキドキです (良い意味で)(笑) 久しぶりにオールドレンズの醍醐味を味わったような新鮮な感覚に襲われました。確かにコントラストが利いてくるので彩度も高めですが、そう言いながらもナチュラルな表現性で写真を残す場合もあり、相応に撮影スキルが必要になるモデルなのではないかと感じます。逆に言えば、シ〜ンに見合う使い方が思い付けば、それこそプロのような写真も残せるのではないかと期待値に胸膨らむ感覚が心地良く感じます。特に被写体が自然に浮き上がる (強調されている) 写り方は、さすがだと思いました。

ネット上の解説で、一部に開放撮影時にパープルフリンジが憑きものと案内がありましたが、特に今回の個体を開放で使ってもパープルフリンジは確認できていません (そもそも色ズレがほぼ無い)。もちろん絞りを絞っても表出していません。おそらく当モデルの光学系 (特に前群側) の光学硝子レンズ格納時が非常にキツイので (硝子レンズを押し込まないとパチンと填らない)、極僅かに確実に格納できていない為に光軸ズレが生じていることからフリンジの発生に至っているのではないかと推察します。実際今回の個体も第2群の硝子レンズ格納が最後まで入っていなかったので (キツイから) ネット上で案内されていた個体もそのような与件が原因ではないかと考えます。

当モデルで光学硝子レンズ第2群の格納がキツイ理由は、硝子レンズコバ端が厚いからであり (或いは格納筒の内径がクリティカル)、硝子レンズ格納時に格納筒に落とし込んでもストンと最後まで入ってくれません (それ故最後はチカラを込めてパチンと押し込むしかない)。今回の個体はそれを気がつかず過去メンテナンス時に締め付け環で締め付け固定してしまったのではないかと推察しています。光学硝子レンズが確実に (適切な位置で且つ水平に) 格納できたのか否か確認する方法があるのですが、過去メンテナンス者はそれを知らないのか、或いは怠ったのではないかと思います。

ヤフオク! に整備済で出品している個体の掲載されている実写を見ても、時にフリンジがエッジに憑き纏う写真だったりします。するとその個体は整備時に光学硝子レンズの格納が適切ではなかった懸念が捨てきれません。それは例えばflickriver.comなどで同型モデルの実写を数多くチェックすると、仮に開放時だとしてもフリンジが出ていないことを確認できたりします (光学設計上フリンジが表出するなら全ての開放時写真でフリンジが視認できるハズ)。もちろん当方のオーバーホールでは簡易検査具だとしてもちゃんとチェックすれば光軸ズレは一目瞭然ですし、そもそも実写でフリンジは視認できてしまいます。

無限遠位置 (マウントアダプタ装着状態で適正化/ほぼピタリ)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

↑当レンズによる最短撮影距離1m付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

お送り頂いた現物に純正フードが付いていたので装着して撮影しています。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f2.8」で撮りました。

↑f値は「f4」に変わっています。

↑f値「f5.6」になります。

↑f値「f8」です。

↑f値「f11」になりました。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。大変長い期間に渡りお待たせし続けてしまい本当に申し訳御座いません。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。