◎ Chiyoko (千代田光学精工) SUPER ROKKOR C 45mm/f2.8《後期型》(L39)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、MINOLTAの前身である千代田光学精工(株) の標準レンズ『Chiyoko SUPER ROKKOR ©《後期型》(L39)』です。当初の「初期型」ではレンズ銘板のメーカー銘が「Chiyokō (チヨコー)」と「ō」表記していたようです。

【モデルバリエーション】
オレンジ色文字部分は初めて変更になった要素を表しています。
※発売年度と共に当時のセット用フィルムカメラのモデル銘を附記しています。

前期型:1947年発売 (Minolta-35 model A)

ピントレバー:無し
絞り羽根枚数:7枚
前玉固定環:ネジ切り無し
レンズ銘板:絞り値表示丸窓あり、Chiyokō

中期型:1951年〜 (Minolta-35 model E)

ピントレバー:有り
絞り羽根枚数:9枚
前玉固定環:ネジ切り⌀21.5mm有り
レンズ銘板:絞り値表示丸窓あり、Chiyokō

後期型-I:1953年〜1955年 (Minolta-35 model II)

ピントレバー:有り
絞り羽根枚数:9枚
前玉固定環:ネジ切り無し
レンズ銘板:絞り値表示丸窓無しChiyoko

後期型-II:1953年〜1955年 (Minolta-35 model II)

ピントレバー:有り
絞り羽根枚数:9枚
前玉固定環:ネジ切り無し
レンズ銘板:絞り値表示丸窓無し、Chiyoko

・・こんな感じです。ネット上の解説では「前期型」と「後期型」はよく出てくるのですが「中期型」が存在することはあまり案内されていないようです。また「後期型」に2つのバリエーションが存在することを発見しました。今回出品する個体は「後期型-II」になりますが、前玉固定環がツルツルのタイプがあったので、製造番号から「後期型-I」としています。
実際にはこのバリエーション以外にも細かい部分で一部の仕様を変更した個体が存在するようです。

梅鉢このモデルの俗称に「梅鉢」と言う呼称があるのですがネット上の解説では「梅の花を連想するのでそう呼んでいる」とありました・・実際は「家紋の梅鉢」になります。日本では天平時代には既に模様として使われていたようですが「家紋」として普及したのは平安時代からのようです。梅をあしらった家紋で捉えると100種類以上にも及ぶようですが一番身近な場所では天神様などで見かけるのではないでしょうか。しかし、このオールドレンズを真正面から眺めても距離環のローレット (滑り止め) 部分は全部で「6つの出っ張り」があるワケで「梅の花/梅鉢」などの花弁は「5枚」です・・?!

光学系は3群5枚ですが、トリプレット型を基本に第1群である前群の要素に2枚を追加した貼り合わせレンズ (3枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせてひとつにしたレンズ群) を配置した独特な設計です。骨太なエッジと共にとてもニュートラルな発色性と低めのコントラストが特徴でしょうか。ボケ味にもクセがあり背景に気を遣うこともあります。このモデルではまだモノコーティングが光学系に蒸着されていたワケですが、MINOLTAになってから登場する「アクロマチックコーティング (AC)」による「人間の目で見た自然な描写性」を少なからず感じ取れます。偏にコーティングの相違だけで描写性が変わるワケではないことの良い例ではないでしょうか・・素晴らしいモデルです。Flickriverにて、このモデルの実写を検索してみました・・決して画全体がシアン系に振られるワケでもないのにブルーがとてもキレイに出る画造りです。独特な赤色の表現性を得意としたオールドレンズは多々ありますが、このブルーの発色性はなかなかクセになりそうです。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。内部の構造自体は簡素ですが、ライカ判距離計連動の機構部を有するダブルヘリコイド方式なので、無限遠位置も含めた距離計連動ヘリコイドとの整合性を調整するのがポイントになります。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルでは鏡胴が「前部」と「後部」の二分割なので、ダブルヘリコイドは共に鏡胴「後部」に配置されています。

↑上の写真は9枚の絞り羽根を既に組み付けた状態の絞りユニットを撮影していますが、一般的なオールドレンズでは絞りユニットは前玉側方向から組み付けます。しかし、このモデルは少々変わっており、後玉側方向から完成した絞りユニットを落とし込む方式を採っています。従って、いつもは「絞り羽根位置決め環」を先に鏡筒内にセットしてから絞り羽根を1枚ずつ組み付けていきますが、今回は「絞り羽根位置決め環」自体に直接絞り羽根をセットして絞りユニットを完成させてから、最後に鏡筒に丸ごと落とし込む方法で工程を進めます。

  • 絞り羽根のキー:
    絞り羽根の表裏に1本ずつ打ち込まれている金属製の突起棒で、片側が「位置決めキー」で反対側が「制御キー」です。
  • 絞り羽根位置決め環:
    絞り羽根の「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか) で、絞り羽根の格納位置を決めるパーツです。
  • 絞り羽根開閉幅制御環:
    絞り羽根の「制御キー」が刺さる環 (リング/輪っか) で、絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を可変し絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) を調整制御するパーツです。

↑完成した絞りユニットを鏡筒内に落とし込み固定します。固定の際はイモネジ (ネジ頭が無くネジ部にいきなりマイナスの切り込みを入れたネジ種) 3本を使って鏡筒の外側から締め付け固定しますが、前玉側に強く絞りユニットを固定してしまうと絞り羽根の動きが悪くなりますし、逆に下すぎると今度は絞り環操作が重くなります。

↑この状態で鏡筒を立てて撮影しました。光学系前後群を組み付けてから、絞り環用のベース環をセットします。

↑後から組付けができないので、ここで先にレンズ銘板をセットします。レンズ銘板は絞り環用ベース環の押さえの役目も兼ねています。

↑絞り環をベース環にネジ込んでからイモネジ3本で締め付け固定します。これで鏡胴「前部」は完成したので、この後は鏡胴「後部」の組み立て工程に入ります。

↑距離環やマウント部を組み付けるための真鍮製の基台 (ヘリコイド:メス側) です。

↑無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでヘリコイド (オス側) をネジ込みます。このモデルでは全部で5箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

↑マウント部に距離計連動用のヘリコイド (オス側) を無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込んでから、完成しているヘリコイド部をセットして固定します。この時に距離計連動ヘリコイドの位置が適合していないと撮影時にズレが生じてしまいますから、このモデルのポイントがこの工程になります。

↑距離環を組み付けてから最後に完成している鏡胴「前部」をセットして無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認をそれぞれ執り行えば (それぞれ「解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認について」で解説しています)、いよいよ完成です。

 

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが終わった出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが完了した千代田光学精工製標準レンズ『Chiyoko SUPER ROKKOR ©《後期型》(L39)』です。

↑今回の個体は光学系内の透明度が非常に高い状態を維持しています。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが、白っぽい筋/影などはミニスタジオの写り込みなので、現物の光学系はキレイでクリアです。

↑光学系後群もキレイな状態を維持しています。

↑上の写真 (4枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。1枚目〜3枚目は極微細な点キズを撮っています。4枚目は光学系内の「微細な気泡」を後玉側より撮影しましたが、微細すぎて数点しか写りませんでした。前後群共にコーティング層の経年劣化進行に伴うコーティングムラ状に見える部分があります。

【光学系の状態】(順光目視で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:6点、目立つ点キズ:3点
後群内:2点、目立つ点キズ:1点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり
・バルサム切れ:無し (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):皆無
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが実際はカビ除去痕としての極微細な点キズです (清掃しても除去できません)。
光学系内の透明度が非常に高い個体です
・光学系内には複数の「気泡」がありますが、当時は正常品としてそのまま出荷されていました。
・いずれもすべて写真への影響はありませんでした。

↑9枚の絞り羽根もキレイになり絞り環操作とも相まり確実に駆動しています。

ここからは鏡胴の写真になります。経年の使用感をほとんど感じない大変キレイな状態をキープした個体です。筐体外装のクロームメッキに当方による「光沢研磨」を施したので、当時のような眩いばかりの光彩を放っています。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:重め」を塗布しています。距離環や絞り環の操作はとても滑らかになりました。
・距離環を回すトルク感は「普通〜重め」で滑らかに感じトルクは全域に渡り「完璧に均一」です。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。

【外観の状態】(整備前後拘わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。

↑このモデルは、距離環を回した時に、ピントレバーが備わっている距離環と一緒に「絞り環も回っていく」仕様になっています。その関係で、ピント合わせが終わってから絞り環操作してボケ量の調整をしている最中に、不用意にピント位置がズレないよう「ワザと絞り環の操作性を軽く仕上げています」ので、これもクレーム対象としません (逆に言うと距離環側のトルクをワザと重めにしています)。

オーバーホール/修理のご依頼を承っていても、時々逆のご依頼をお受けするのですが、基本的に絞り値の設定はピント合わせが終わってから行う撮影方法のほうが多いと言う前提で認識しているので、このような調整に至ります。

  1. 絞り値設定を最後に行う場合:
    開放状態で距離環を回してピント合わせをしてから、最後にボケ量の調整として絞り環を回して絞り値を設定する撮影方法。
  2. 絞り値設定を先に行う場合:
    予めボケ量の狙いが定まっており、先に絞り環を回して設定絞り値にした後、その絞り値のままピント合わせを行う撮影方法。

・・当方の整備では基本的に上記「1.」の撮影方法を前提として調整していますのでご留意下さいませ。逆に言うと、距離環側 (つまりヘリコイド側) のトルク感をワザと「僅かに重め」になるようヘリコイド・グリースの粘性を考慮して塗布しています。従って、絞り環の操作性が軽すぎると言うクレームはお受け致しません。

また、このモデルを距離計連動方式のフィルムカメラやデジカメ一眼に装着してご使用になる際、オールドレンズ単体の時とカメラに装着した後の距離環を回すトルク感に相違が生じる場合があります・・具体的には、オールドレンズ単体時の距離環を回すトルク感は軽かったのに、カメラに装着したら重くなったと言う場合です。これはカメラボディ側の距離計連動機構の強さの程度で変わるお話ですので、これもクレーム対象としません。

↑今回の個体には社外品ですがフィルター (中古品) が附属しています。フィルターは経年に拠る擦りキズやハガレなどがあり、枠にもペンチを使ったような凹みが6箇所ほどあります。一応、フィルターも「光沢研磨」と清掃はしておきました。

↑当レンズによる最短撮影距離1m附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」にセットして撮影しています。

↑さらに絞り環を回してF値「f5.6」で撮りました。

↑絞り値はF値「f8」になっています。

↑F値「f11」になりました。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。